上 下
65 / 83

65.箱の由来

しおりを挟む
 花子はなこが食事を終えて今度は定番の飲み物を飲んでいると治療を終えた大海おおみの意識が戻ったという知らせに四人は病室に駆け付けた。
「お祖母ばあ様。」
「あらあら心配かけちゃったわね。」
 大海おおみはベッドから半身を起こした。

「まだご無理をされないでください。」
 花子はなこの横にいたキサラギが起き上がった大海おおみの背中にクッションを入れるとベッドの背もたれを起こした。
「ありがとう。でも本当に無理なんかしていないから心配ないわよ。それより皆さんも今回の真相が知りたいでしょ。」
 大海おおみがにっこり微笑めば全員がちらりとお互いを見てから素直に頷いた。
「じゃあ・・・そうね。あの箱についてからがいいかしら。」
 お祖母ばあ様はそういうとあの箱が出来た経緯を話し出した。
 昔に恋人に裏切られて死んだ娘がいて、その娘が裏切った恋人を呪い殺そうとしたがその相手がその呪いに気が付いてその呪いから自分を守るために娘が込めた呪い事態を封じ込めるために作られたのがあの箱だったらしい。
 ところが時代を経るうちにあの箱は他の恋人に裏切られて死んだ娘の念まで吸い寄せるようになってしまいとうとう当時のその箱の持ち主があまりの怪異に八百万やおよろず神社にその箱を持ち込んだようだ。
 持ち込まれた当時も先ほどの王宮で見たような黒い臭気をまき散らしとても箱に近づけないようなものだったそうだ。
 それを代々神社で巫女が祈祷を行ってその怨念を沈めながら浄化することで箱の瘴気もかなり薄らいできていた。
「本当にあと少しで八百万やおよろず神社の本殿に封印されていた箱の浄化が終わるはずだったんだけど・・・。」
「「「だけど。」」」
「数年前の皇家との襲撃時にその封印が外れてちょうどいい具合に通り道が出来てしまって神社の結界を潜り抜けて消えてしまったのよ。」
 お祖母ばあ様。
 そんなあっさり消えたって・・・いいんですか。
「まあ最初は皇家に現れたって聞いたんでそのうち助けてって言ってくるんじゃないかと思ってめんどうだったんで放置してたんだけど・・・。」

 放置っていいんですか。

「待てど暮らせど連絡がなくてさすがに良心が咎めてこの間ひじりに調べに行かせたら。」

「「「行かせたら。」」」

「箱がこの帝国の王宮に送られたって聞いて大慌てで回収に来たのよ。」
「お言葉ですが大海おおみ様。いくら日ノ本の皇家とはいえ呪いの箱を帝国の王族に贈られたとわかればただではすまないかと・・・。」
「うーん。そこなんだけどうっかり皇家はあの箱の呪いに気が付かなかったみたいなのよね。」
「えーあんなに黒い冷気が噴出してるのに気が付かなかったんですか。」
 思わずキサラギが呆れて声を上げていた。

「気が付いたのはあなたたちが今虜にしたい異性がいないからなのよね。いればあの黒い冷気は甘い呟きに聞こえてしまうの。もっと簡単に説明するとあの箱には好きな人を虜に出来るっていう特典があるのよ。」
「ですがそれだけなら問題はないはずです。他になにかあるんでしょうか。」
 セバスが真面目な表情で大海おおみに問いただした。
「まあなんというか、あの箱の特典を使うと想いが成就した瞬間にもれなく魂をあの箱に取り込まれて絶命しちゃうっていうおまけがあるわね。」
「つまり死んじゃうってこと。」
 花子はなこの答えに大海おおみが静かに頷いた。
「ならあの小うるさい王妃が死ぬっていうことでしょうか。」
 ムツキが若干せいせいした表情で呟いた。

 ムツキ、過去に王妃となにかあったの。
 花子はなこが珍しく毒舌を吐いているムツキに目を見張った。

「何もしなければ確実に数日で死ぬわね。」
「数日もかかるのですか。」
 セバスが残念そうな声で呟いた。

「まあそうね。でもそれってさすがにまずいわよね。」
「私はむしろあの小うるさい王妃がいなくなるのならそれに越したことはありませんが。」

 セバス、どんだけ王妃様がきらいなの。
 花子はなこがいかにも残念な表情を見せるセバスに仰天した。

「あらあら。セバスさんは何か王妃に恨みでもあるのかしら。」
「恨みというほどではありませんが思うところは色々ありますね。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。 生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。 全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。 ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。 時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。 ゆるふわ設定の短編です。 完結済みなので予約投稿しています。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る

堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」  デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。  彼は新興国である新獣人国の国王だ。  新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。  過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。  しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。  先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。  新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...