転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

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65.箱の由来

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 花子はなこが食事を終えて今度は定番の飲み物を飲んでいると治療を終えた大海おおみの意識が戻ったという知らせに四人は病室に駆け付けた。
「お祖母ばあ様。」
「あらあら心配かけちゃったわね。」
 大海おおみはベッドから半身を起こした。

「まだご無理をされないでください。」
 花子はなこの横にいたキサラギが起き上がった大海おおみの背中にクッションを入れるとベッドの背もたれを起こした。
「ありがとう。でも本当に無理なんかしていないから心配ないわよ。それより皆さんも今回の真相が知りたいでしょ。」
 大海おおみがにっこり微笑めば全員がちらりとお互いを見てから素直に頷いた。
「じゃあ・・・そうね。あの箱についてからがいいかしら。」
 お祖母ばあ様はそういうとあの箱が出来た経緯を話し出した。
 昔に恋人に裏切られて死んだ娘がいて、その娘が裏切った恋人を呪い殺そうとしたがその相手がその呪いに気が付いてその呪いから自分を守るために娘が込めた呪い事態を封じ込めるために作られたのがあの箱だったらしい。
 ところが時代を経るうちにあの箱は他の恋人に裏切られて死んだ娘の念まで吸い寄せるようになってしまいとうとう当時のその箱の持ち主があまりの怪異に八百万やおよろず神社にその箱を持ち込んだようだ。
 持ち込まれた当時も先ほどの王宮で見たような黒い臭気をまき散らしとても箱に近づけないようなものだったそうだ。
 それを代々神社で巫女が祈祷を行ってその怨念を沈めながら浄化することで箱の瘴気もかなり薄らいできていた。
「本当にあと少しで八百万やおよろず神社の本殿に封印されていた箱の浄化が終わるはずだったんだけど・・・。」
「「「だけど。」」」
「数年前の皇家との襲撃時にその封印が外れてちょうどいい具合に通り道が出来てしまって神社の結界を潜り抜けて消えてしまったのよ。」
 お祖母ばあ様。
 そんなあっさり消えたって・・・いいんですか。
「まあ最初は皇家に現れたって聞いたんでそのうち助けてって言ってくるんじゃないかと思ってめんどうだったんで放置してたんだけど・・・。」

 放置っていいんですか。

「待てど暮らせど連絡がなくてさすがに良心が咎めてこの間ひじりに調べに行かせたら。」

「「「行かせたら。」」」

「箱がこの帝国の王宮に送られたって聞いて大慌てで回収に来たのよ。」
「お言葉ですが大海おおみ様。いくら日ノ本の皇家とはいえ呪いの箱を帝国の王族に贈られたとわかればただではすまないかと・・・。」
「うーん。そこなんだけどうっかり皇家はあの箱の呪いに気が付かなかったみたいなのよね。」
「えーあんなに黒い冷気が噴出してるのに気が付かなかったんですか。」
 思わずキサラギが呆れて声を上げていた。

「気が付いたのはあなたたちが今虜にしたい異性がいないからなのよね。いればあの黒い冷気は甘い呟きに聞こえてしまうの。もっと簡単に説明するとあの箱には好きな人を虜に出来るっていう特典があるのよ。」
「ですがそれだけなら問題はないはずです。他になにかあるんでしょうか。」
 セバスが真面目な表情で大海おおみに問いただした。
「まあなんというか、あの箱の特典を使うと想いが成就した瞬間にもれなく魂をあの箱に取り込まれて絶命しちゃうっていうおまけがあるわね。」
「つまり死んじゃうってこと。」
 花子はなこの答えに大海おおみが静かに頷いた。
「ならあの小うるさい王妃が死ぬっていうことでしょうか。」
 ムツキが若干せいせいした表情で呟いた。

 ムツキ、過去に王妃となにかあったの。
 花子はなこが珍しく毒舌を吐いているムツキに目を見張った。

「何もしなければ確実に数日で死ぬわね。」
「数日もかかるのですか。」
 セバスが残念そうな声で呟いた。

「まあそうね。でもそれってさすがにまずいわよね。」
「私はむしろあの小うるさい王妃がいなくなるのならそれに越したことはありませんが。」

 セバス、どんだけ王妃様がきらいなの。
 花子はなこがいかにも残念な表情を見せるセバスに仰天した。

「あらあら。セバスさんは何か王妃に恨みでもあるのかしら。」
「恨みというほどではありませんが思うところは色々ありますね。」
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