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58.ご褒美
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「おはようございます。花子様。」
ムツキは朝早く花子の寝室の扉を開けるとベッドで寝ている花子をたたき起こした。
「こんなに朝も早くからどうしたの。」
花子はなんとかベッドから起き上がるとカーテンから差し込む光に目を細めた。
「お早くお食事を済ませてください。向かわなければならない場所があるんです。」
「行かなければならない場所?」
花子は疑問符を浮かべながらも言われるまま早めの朝食をすますとムツキと一緒に外に出た。
ムツキはさっそくセバスにもらった書類を手に花子を連れてその書類の書かれている場所に向かった。
「ムツキ。どこに行くの?」
「もうすぐです。」
ムツキは近くの大きな通りを抜け高級なお店が並ぶ通りを通り過ぎた。
「あった。ここです。」
ムツキはどう見ても行き止まりとしか見えないレンガ色をした壁の前に花子を案内した。
「ムツキ?」
ムツキは疑問顔の花子に昨晩セバスからもらった書類を手渡した。
「これは?」
「花子様。その書類に魔力を流してその壁に貼って下さい。」
「へっ・・・。」
花子は何を言われているのかまったくわからなかったが真剣な表情のムツキに言われるままにその書類に魔力を流すとそれを目の前の壁に貼り付けた。
壁に貼られた書類は最初そのままその壁に張り付いていた。
花子がいぶかし気に見ること数分。
突然レンガ色をしていた壁が白く光り出しそこに重厚な木造の扉が現れた。
なにこれ。
花子は驚愕のあまりその扉を前に固まった。
「さあ花子様。その扉を開けて中にお入りください。」
「入れるのこれ?」
「はい。もちろんです。」
花子は恐る恐る重厚な木造の扉に手を開けるとその中に足を踏み入れた。
ギィーギギギッ
花子とムツキが木造の扉の中に入ると扉は音もなく閉まった。
バタン
「花子様。こちらです。」
ムツキに促されるまま広いエントランス前から上に広がる階段を上るとそこにこじんまりとしたカウンターが現れた。
「おや、珍しいね。ルービック家の人間がここを訪れるなんて何十年ぶりかな。」
白髪でモノクルの片メガネをした小柄な老人が花子を見て呟いた。
「さて、それでご用件は?」
何と言えばいいのかわからない花子はそのまま黙った。
「ミート伯爵。こちらが閲覧許可書類です。」
ミート伯爵とムツキに呼ばれた人物はその書類に目を通すと引き出しから平らな石板をカウンターに取り出した。
「ではこちらに両手を開いた状態で押し当ててください。」
ミート伯爵に言わるまま花子はその石板に両手を押し当てた。
石板が白く光って花子の目の前に銀色をしたカギが浮かび上がった。
「これが閲覧許可証だ。」
ミート伯爵は浮かび上がったカギを手に取ると花子に渡してくれた。
「ありがとうございます。」
花子がミート伯爵から銀色のカギを受け取るとそれは白く光ってから花子の左手に吸い込まれるように消えた。
「では行きましょうか花子様。」
ムツキに促され花子はカウンター横の通路の奥に向かった。
通路の奥に先ほどと同じような重厚な扉があった。
「さあ花子様。先ほどと同じように扉を開けてください。」
花子は先ほどと同じようにその扉を開いた。
そこには懐かしい本の匂いが充満する広々とした空間が広がっていた。
思わず信じられない光景に固まった。
「花子様!」
何度もムツキが呼びかけてくれていたようでやっと硬直から脱すると手短な本棚に近づこうとしてムツキに止められた。
「ちょっ・・・なんで止めるのムツキ。」
「花子様。ここは魔法図書館です。所定の場所に座ってから欲しい本を先ほどもらったカギを出して念じればテーブルに現れます。」
「へっそうなの。」
「はい。ちなみに花子様の席はあちらです。」
ムツキに言われ中央よりやや右寄りにある結構豪華な椅子とテーブルがある場所に向かった。
花子はムツキに勧められるままそこに座った。
そしてすぐに先ほどもらったカギを出すと念願の続編が書かれた本を読みたいとそのカギに念じた。
するとカギが静かに振動して目の前のテーブルに続編がいきなり現れた。
「うそ!凄すぎ。」
思わず声をあげてしまいムツキに注意された。
「お静かにお願いします花子様。」
そうだった。
ここは図書館。
慌てて口を噤むとすぐに目の前に現れた本を手に取るとそれを読み始めた。
う・・・うれしい。
幸せ!
花子は次にムツキから声がかかるまでひたすらそこに座って読書し続けた。
ムツキは朝早く花子の寝室の扉を開けるとベッドで寝ている花子をたたき起こした。
「こんなに朝も早くからどうしたの。」
花子はなんとかベッドから起き上がるとカーテンから差し込む光に目を細めた。
「お早くお食事を済ませてください。向かわなければならない場所があるんです。」
「行かなければならない場所?」
花子は疑問符を浮かべながらも言われるまま早めの朝食をすますとムツキと一緒に外に出た。
ムツキはさっそくセバスにもらった書類を手に花子を連れてその書類の書かれている場所に向かった。
「ムツキ。どこに行くの?」
「もうすぐです。」
ムツキは近くの大きな通りを抜け高級なお店が並ぶ通りを通り過ぎた。
「あった。ここです。」
ムツキはどう見ても行き止まりとしか見えないレンガ色をした壁の前に花子を案内した。
「ムツキ?」
ムツキは疑問顔の花子に昨晩セバスからもらった書類を手渡した。
「これは?」
「花子様。その書類に魔力を流してその壁に貼って下さい。」
「へっ・・・。」
花子は何を言われているのかまったくわからなかったが真剣な表情のムツキに言われるままにその書類に魔力を流すとそれを目の前の壁に貼り付けた。
壁に貼られた書類は最初そのままその壁に張り付いていた。
花子がいぶかし気に見ること数分。
突然レンガ色をしていた壁が白く光り出しそこに重厚な木造の扉が現れた。
なにこれ。
花子は驚愕のあまりその扉を前に固まった。
「さあ花子様。その扉を開けて中にお入りください。」
「入れるのこれ?」
「はい。もちろんです。」
花子は恐る恐る重厚な木造の扉に手を開けるとその中に足を踏み入れた。
ギィーギギギッ
花子とムツキが木造の扉の中に入ると扉は音もなく閉まった。
バタン
「花子様。こちらです。」
ムツキに促されるまま広いエントランス前から上に広がる階段を上るとそこにこじんまりとしたカウンターが現れた。
「おや、珍しいね。ルービック家の人間がここを訪れるなんて何十年ぶりかな。」
白髪でモノクルの片メガネをした小柄な老人が花子を見て呟いた。
「さて、それでご用件は?」
何と言えばいいのかわからない花子はそのまま黙った。
「ミート伯爵。こちらが閲覧許可書類です。」
ミート伯爵とムツキに呼ばれた人物はその書類に目を通すと引き出しから平らな石板をカウンターに取り出した。
「ではこちらに両手を開いた状態で押し当ててください。」
ミート伯爵に言わるまま花子はその石板に両手を押し当てた。
石板が白く光って花子の目の前に銀色をしたカギが浮かび上がった。
「これが閲覧許可証だ。」
ミート伯爵は浮かび上がったカギを手に取ると花子に渡してくれた。
「ありがとうございます。」
花子がミート伯爵から銀色のカギを受け取るとそれは白く光ってから花子の左手に吸い込まれるように消えた。
「では行きましょうか花子様。」
ムツキに促され花子はカウンター横の通路の奥に向かった。
通路の奥に先ほどと同じような重厚な扉があった。
「さあ花子様。先ほどと同じように扉を開けてください。」
花子は先ほどと同じようにその扉を開いた。
そこには懐かしい本の匂いが充満する広々とした空間が広がっていた。
思わず信じられない光景に固まった。
「花子様!」
何度もムツキが呼びかけてくれていたようでやっと硬直から脱すると手短な本棚に近づこうとしてムツキに止められた。
「ちょっ・・・なんで止めるのムツキ。」
「花子様。ここは魔法図書館です。所定の場所に座ってから欲しい本を先ほどもらったカギを出して念じればテーブルに現れます。」
「へっそうなの。」
「はい。ちなみに花子様の席はあちらです。」
ムツキに言われ中央よりやや右寄りにある結構豪華な椅子とテーブルがある場所に向かった。
花子はムツキに勧められるままそこに座った。
そしてすぐに先ほどもらったカギを出すと念願の続編が書かれた本を読みたいとそのカギに念じた。
するとカギが静かに振動して目の前のテーブルに続編がいきなり現れた。
「うそ!凄すぎ。」
思わず声をあげてしまいムツキに注意された。
「お静かにお願いします花子様。」
そうだった。
ここは図書館。
慌てて口を噤むとすぐに目の前に現れた本を手に取るとそれを読み始めた。
う・・・うれしい。
幸せ!
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