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57.後悔
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異母兄と花子は”白の宮殿”に戻ってくるとマリアが玄関前で待ち構えていた。
表情からして険しい。
「花子様、お疲れさまでございます。お風呂の用意はできておりますのでどうぞ夕食の前にお入りください。」
「セバスさん。ありがとうございます。」
すぐにムツキが花子を先導して玄関前からいなくなった。
いい連携だね。
でもこの表情のおばあ様をそのままここに放置は・・・出来ないか。
まああのキンソン家の令嬢である婚約者の弟に負けたんだからおばあ様の複雑な気持ちは理解できるけど頑張った花子のことを思うと・・・はぁー。
仕方ない。
ここは私がフォローをしてあげようかな。
異母兄は気難しい顔をしたマリアをお茶に誘った。
マリアは面白くなさそうな表情のまま異母兄と居間でお茶を飲むことに同意した。
「それで実際はどうなの。」
「力は圧倒的に花子の勝ちですよ。」
「ではなんで負けるなんてことになったの!」
「理由は単純です。あそこまで弱い相手と花子は戦ったことがなかったのが原因です。」
「弱いものと戦わないと何が問題なの?」
「魔力の加減ができなかったんですよ。」
「はあぁ?」
マリアが口をつけようと手に持っていたティーカップがピタリと止まった。
「相手の魔力が弱すぎてその魔力を消せなかったんです。」
「つまりどういうことなの。」
「本当ならばあの最後の魔法が放たれた時、花子はそれを防ぐんじゃなく消したほうがよかったんです。でも魔法を消すためには同等の魔力をぶつけるしかない。ところがとっさ過ぎてあの弱い魔力に強い魔力を持つ花子は合わせられなかった。だからとっさにその魔法を魔法障壁で防こうとしたんでしょうがそれが仇になってしまった。結局、弱すぎた魔法が花子が作った防御壁の隙間を通り抜けてしまい、その通り抜けてしまった魔法で負けたんです。」
異母兄の説明をじっと聞いていたマリアがティーカップを置くと顔をあげた。
「大丈夫です。今回の件を踏まえて次回につなげるために弱い魔力を使った訓練も入れていく予定だとムツキとキサラギがここに来るまでの間に花子と話し合いをしていましたから。」
「そう。なら私からはもう何もいいません。」
マリアは立ち上がると傍にいたセバスを無視してそのまま居間を出て行った。
異母兄はそれを大きなため息とともに見送った。
結局夕食にはまだ気分が悪いということでマリアは夕食の席には現れず、夕食は異母兄と花子の二人だけとなった。
異母兄は何度か花子を気遣って話しかけたがマリアから告げられた図書室の本を読む許可が下りなかったことで彼女は終始し俯いていた。
花子は早々と夕食を終えると言葉少なに異母兄に挨拶をして自室にすぐに向かった。
「あのー花子様。」
扉を閉めようとした花子にムツキが声を掛けた。
「ごめんなさい。今日は疲れたのでもう休みます。」
花子はそのまま扉を閉めるとでかいベッドにボスッと倒れ込んだ。
本当、何やってんだろ。
母さんが死んだって聞かされて異母兄弟がいるってわかって、いないと思ってた実父が現れて、お金持ちなら本がたくさん読めるはずだって思って興味もあった魔法学校に行ったけどそれほどそこには本がなくて・・・。
それでもって高校在学中に死んだはずの母さんが実は生きてて、母さんの両親も生きてて、小さい時読めなかった本をそこにあった蔵でたくさん読めたけど、結局今も読みたいのに読めない本があって・・・。
前世では本屋がいっぱいあったし、今ほど高価じゃなかったから読みたいほうだいで・・・。
続編も時間さえ待ってればそのうち出版してくれた。
あんまり努力しなくってもたくさん読める本があったな・・・。
ああーあの図書室に置いてある本を読み漁りたい!
花子は読めるはずの本の続きが読めなかったのと今回の試合での疲れがあったせいかそのまま涙を流しながらの状態で眠りについていた。
その頃、扉の前では心配したムツキがそのまま立ち去ることも出来ずに突っ立っていた。
そこにセバスが何かの書類をもって現れた。
「ムツキ。明日は大学もありませんし、この場所に花子様を案内してあげなさい。」
「これは!」
渡されたものを見てムツキの顔が輝いた。
「花子様が喜ばれます。でもよろしいのですか。」
「今回の件は花子様がというよりは対戦相手の情報を細かく把握できなかった我々が原因です。ですからこれは花子様が当然享受できる権利があります。」
ムツキが無言で頷くとそれを手に明日の準備のため下がって行った。
セバスがその後姿を見送っていると背後から異母兄に声を掛けられた。
「”白の宮殿”の現当主が許可していないのに知られたらどうするつもりだい!」
異母兄は自分の時とはたいぶ違うセバスの態度に思わず声を荒げた。
「私が謝りますので問題ありません。」
生真面目なセバスからでた言葉に異母兄が目を見開いた。
「セバスは最近花子に甘すぎないかい。」
「これほどの力を持った主人に仕えられるのです。これ以上の幸せはありません。」
異母兄はその言葉に目を見開いた。
さすが魔力至上主義者。
すべてがそれで納得できるって顔だな。
結局異母兄はセバスの言葉にやれやれといった様子で肩をすくめるとそのまま自室に引き上げた。
表情からして険しい。
「花子様、お疲れさまでございます。お風呂の用意はできておりますのでどうぞ夕食の前にお入りください。」
「セバスさん。ありがとうございます。」
すぐにムツキが花子を先導して玄関前からいなくなった。
いい連携だね。
でもこの表情のおばあ様をそのままここに放置は・・・出来ないか。
まああのキンソン家の令嬢である婚約者の弟に負けたんだからおばあ様の複雑な気持ちは理解できるけど頑張った花子のことを思うと・・・はぁー。
仕方ない。
ここは私がフォローをしてあげようかな。
異母兄は気難しい顔をしたマリアをお茶に誘った。
マリアは面白くなさそうな表情のまま異母兄と居間でお茶を飲むことに同意した。
「それで実際はどうなの。」
「力は圧倒的に花子の勝ちですよ。」
「ではなんで負けるなんてことになったの!」
「理由は単純です。あそこまで弱い相手と花子は戦ったことがなかったのが原因です。」
「弱いものと戦わないと何が問題なの?」
「魔力の加減ができなかったんですよ。」
「はあぁ?」
マリアが口をつけようと手に持っていたティーカップがピタリと止まった。
「相手の魔力が弱すぎてその魔力を消せなかったんです。」
「つまりどういうことなの。」
「本当ならばあの最後の魔法が放たれた時、花子はそれを防ぐんじゃなく消したほうがよかったんです。でも魔法を消すためには同等の魔力をぶつけるしかない。ところがとっさ過ぎてあの弱い魔力に強い魔力を持つ花子は合わせられなかった。だからとっさにその魔法を魔法障壁で防こうとしたんでしょうがそれが仇になってしまった。結局、弱すぎた魔法が花子が作った防御壁の隙間を通り抜けてしまい、その通り抜けてしまった魔法で負けたんです。」
異母兄の説明をじっと聞いていたマリアがティーカップを置くと顔をあげた。
「大丈夫です。今回の件を踏まえて次回につなげるために弱い魔力を使った訓練も入れていく予定だとムツキとキサラギがここに来るまでの間に花子と話し合いをしていましたから。」
「そう。なら私からはもう何もいいません。」
マリアは立ち上がると傍にいたセバスを無視してそのまま居間を出て行った。
異母兄はそれを大きなため息とともに見送った。
結局夕食にはまだ気分が悪いということでマリアは夕食の席には現れず、夕食は異母兄と花子の二人だけとなった。
異母兄は何度か花子を気遣って話しかけたがマリアから告げられた図書室の本を読む許可が下りなかったことで彼女は終始し俯いていた。
花子は早々と夕食を終えると言葉少なに異母兄に挨拶をして自室にすぐに向かった。
「あのー花子様。」
扉を閉めようとした花子にムツキが声を掛けた。
「ごめんなさい。今日は疲れたのでもう休みます。」
花子はそのまま扉を閉めるとでかいベッドにボスッと倒れ込んだ。
本当、何やってんだろ。
母さんが死んだって聞かされて異母兄弟がいるってわかって、いないと思ってた実父が現れて、お金持ちなら本がたくさん読めるはずだって思って興味もあった魔法学校に行ったけどそれほどそこには本がなくて・・・。
それでもって高校在学中に死んだはずの母さんが実は生きてて、母さんの両親も生きてて、小さい時読めなかった本をそこにあった蔵でたくさん読めたけど、結局今も読みたいのに読めない本があって・・・。
前世では本屋がいっぱいあったし、今ほど高価じゃなかったから読みたいほうだいで・・・。
続編も時間さえ待ってればそのうち出版してくれた。
あんまり努力しなくってもたくさん読める本があったな・・・。
ああーあの図書室に置いてある本を読み漁りたい!
花子は読めるはずの本の続きが読めなかったのと今回の試合での疲れがあったせいかそのまま涙を流しながらの状態で眠りについていた。
その頃、扉の前では心配したムツキがそのまま立ち去ることも出来ずに突っ立っていた。
そこにセバスが何かの書類をもって現れた。
「ムツキ。明日は大学もありませんし、この場所に花子様を案内してあげなさい。」
「これは!」
渡されたものを見てムツキの顔が輝いた。
「花子様が喜ばれます。でもよろしいのですか。」
「今回の件は花子様がというよりは対戦相手の情報を細かく把握できなかった我々が原因です。ですからこれは花子様が当然享受できる権利があります。」
ムツキが無言で頷くとそれを手に明日の準備のため下がって行った。
セバスがその後姿を見送っていると背後から異母兄に声を掛けられた。
「”白の宮殿”の現当主が許可していないのに知られたらどうするつもりだい!」
異母兄は自分の時とはたいぶ違うセバスの態度に思わず声を荒げた。
「私が謝りますので問題ありません。」
生真面目なセバスからでた言葉に異母兄が目を見開いた。
「セバスは最近花子に甘すぎないかい。」
「これほどの力を持った主人に仕えられるのです。これ以上の幸せはありません。」
異母兄はその言葉に目を見開いた。
さすが魔力至上主義者。
すべてがそれで納得できるって顔だな。
結局異母兄はセバスの言葉にやれやれといった様子で肩をすくめるとそのまま自室に引き上げた。
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