48 / 83
48.飛び級するには
しおりを挟む
花子は取り敢えず味がまったく分からなくなった食事を終えて祖母に挨拶すると部屋に引き上げた。
「お待ち下さい。」
セバスがかなり落ち込んでいる様子の花子に廊下で声を掛けて来た。
花子は訝し気に後ろを振り返った。
「ご存知でしょうか花子様?」
何を知っていると問われたのかわからなかった花子は首を振った。
「一応、飛び級するには幾つかクリアしなければならない条件がございます。」
「条件?」
唐突に始まった話に何が言いたいのかさらに花子は疑問符を浮かべた。
「一つは卒業までに魔法レベルがAA以上であることです。ですがこれはすでに花子様にはAAAの実力がありますのでクリアしております。」
「えっ、そうなの?」
意外にも飛び級条件の一つは知らないうちにクリアしていたようだ。
「はい。二つ目は高貴な血を持っていることとありますがそれもマリア様の血を引いているので問題ありません。そして最後ですがこれは四年間で取得する履修単位を満たしていることです。」
さすがにそれは無理よね。
花子は項垂れた。
「この三つ目ですが幾つか手段がございます。」
「手段?」
「はい。一つは最終試験を全て受けて合格することもしくは・・・。」
「もしくは?」
「大学内で行われる全学年を対象とした魔法試合で全勝することです。全学年対象魔法試合で全勝したものには特別履修単位が与えられますのでそれを持ってすれば・・・。」
「飛び級出来るのね。」
セバスは力強く頷いてくれた。
「セバスさん。」
セバスは花子の顔をまっすぐに見るとすぐに一礼する。
「お任せ下さい。すぐに試合の方には申し込みをしておきます。」
「お願いします。」
花子は嬉しそうに頷くとそこでセバスと別れ与えられた自分の寝室に入った。
これで少しは望みが出て来た。
よし。
やるぞぉー!
翌朝。
花子は朝食を終えるとすぐに大学に行こうとしたが何でかそれをセバスに止められ、今住んでいる”白の宮殿”の中にある訓練室に案内された。
「ここが魔法の訓練室?」
見るからに何もないガランとした空間が広がっていた。
「花子様。レベルはいかがいたしましょうか?」
「レベル?」
レベルって一体何のレベルを指しているんだろう。
花子が首を傾げているいるうちにセバスは壁の一部をタッチすると何かの操作パネルを引き出すとそれに数字をインプットした。
「それでは私お勧めのレベルを設定させていただきます。」
「えっと・・・じゃあそれで?」
よくわからず返事をすると今まで何もなかった空間が突然、前世でいう亜熱帯のジャングルに変化した。
何かの鳥や獣の鳴き声が周囲に響き渡る。
花子はその変化に目を瞠りながらもそのままそれらの音に耳を澄ませた。
耳を澄ませた瞬間にその音は突然、ピタリと聞こえなくなった。
瞬間。
シュッ!
何かが飛来して来た。
花子が無意識に自分の周囲に張り巡らした防御壁にびちゃびちゃとイヤーな音を立てながら真っ赤な血と肉片がその壁にぶち当たりすぐ後には重い衝撃音が障壁を揺さぶった。
何これ!
花子はゾワリとした背筋に這いあがってくる悪寒に防護壁を張ったままそこから移動した。
かなり高速で移動しているはずだがそのゾワリとした感覚が離れない。
花子は今度は無意識にその場で動きを止めるとそのゾワリとした感覚が強い空間に向け、小さな石を高速で飛ばした。
ガッ!
派手な音が鳴った途端そのゾワリとした感触が無くなった。
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
「「「さすが花子様です。」」」
いつの間にかジャングルが無くなって先程の空間に戻っていた。
そして何もなかった空間に小さな穴の開いた箱がポツンと置かれていた。
よくわからないうちに何かの訓練が終わったようでその後花子はムツキとキサラギに送られ大学に向かった。
花子様を大学に送って行く間、ムツキとキサラギは満足感でいっぱいだった。
今朝唐突に行われた”白の宮殿”の”次代就任式”いや仲間うちでは”次代拷問式”と裏で密かに呼ばれている訓練機による試練を花子様はあっという間に終えてしまった。
これは連綿と受け継がれた来たルービック家の”白の当主においての次代就任式”ではまさにAAAクラスではなかろうか。
それにしてもセバス様には後でキサラギと二人、物申そうと目配せしあった。
花子様があの試練でもしも怪我でもしようものならどうするつもりだったのか。
それも何の説明もなくいきなりあんな超難易度の試練を課すなんて許せん。
二人は同時に拳を握っていた。
セバス様とは言え帰ったら花子様の代わりに鉄拳を食らわせる。
二人はもう一度頷き合った。
「お待ち下さい。」
セバスがかなり落ち込んでいる様子の花子に廊下で声を掛けて来た。
花子は訝し気に後ろを振り返った。
「ご存知でしょうか花子様?」
何を知っていると問われたのかわからなかった花子は首を振った。
「一応、飛び級するには幾つかクリアしなければならない条件がございます。」
「条件?」
唐突に始まった話に何が言いたいのかさらに花子は疑問符を浮かべた。
「一つは卒業までに魔法レベルがAA以上であることです。ですがこれはすでに花子様にはAAAの実力がありますのでクリアしております。」
「えっ、そうなの?」
意外にも飛び級条件の一つは知らないうちにクリアしていたようだ。
「はい。二つ目は高貴な血を持っていることとありますがそれもマリア様の血を引いているので問題ありません。そして最後ですがこれは四年間で取得する履修単位を満たしていることです。」
さすがにそれは無理よね。
花子は項垂れた。
「この三つ目ですが幾つか手段がございます。」
「手段?」
「はい。一つは最終試験を全て受けて合格することもしくは・・・。」
「もしくは?」
「大学内で行われる全学年を対象とした魔法試合で全勝することです。全学年対象魔法試合で全勝したものには特別履修単位が与えられますのでそれを持ってすれば・・・。」
「飛び級出来るのね。」
セバスは力強く頷いてくれた。
「セバスさん。」
セバスは花子の顔をまっすぐに見るとすぐに一礼する。
「お任せ下さい。すぐに試合の方には申し込みをしておきます。」
「お願いします。」
花子は嬉しそうに頷くとそこでセバスと別れ与えられた自分の寝室に入った。
これで少しは望みが出て来た。
よし。
やるぞぉー!
翌朝。
花子は朝食を終えるとすぐに大学に行こうとしたが何でかそれをセバスに止められ、今住んでいる”白の宮殿”の中にある訓練室に案内された。
「ここが魔法の訓練室?」
見るからに何もないガランとした空間が広がっていた。
「花子様。レベルはいかがいたしましょうか?」
「レベル?」
レベルって一体何のレベルを指しているんだろう。
花子が首を傾げているいるうちにセバスは壁の一部をタッチすると何かの操作パネルを引き出すとそれに数字をインプットした。
「それでは私お勧めのレベルを設定させていただきます。」
「えっと・・・じゃあそれで?」
よくわからず返事をすると今まで何もなかった空間が突然、前世でいう亜熱帯のジャングルに変化した。
何かの鳥や獣の鳴き声が周囲に響き渡る。
花子はその変化に目を瞠りながらもそのままそれらの音に耳を澄ませた。
耳を澄ませた瞬間にその音は突然、ピタリと聞こえなくなった。
瞬間。
シュッ!
何かが飛来して来た。
花子が無意識に自分の周囲に張り巡らした防御壁にびちゃびちゃとイヤーな音を立てながら真っ赤な血と肉片がその壁にぶち当たりすぐ後には重い衝撃音が障壁を揺さぶった。
何これ!
花子はゾワリとした背筋に這いあがってくる悪寒に防護壁を張ったままそこから移動した。
かなり高速で移動しているはずだがそのゾワリとした感覚が離れない。
花子は今度は無意識にその場で動きを止めるとそのゾワリとした感覚が強い空間に向け、小さな石を高速で飛ばした。
ガッ!
派手な音が鳴った途端そのゾワリとした感触が無くなった。
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
「「「さすが花子様です。」」」
いつの間にかジャングルが無くなって先程の空間に戻っていた。
そして何もなかった空間に小さな穴の開いた箱がポツンと置かれていた。
よくわからないうちに何かの訓練が終わったようでその後花子はムツキとキサラギに送られ大学に向かった。
花子様を大学に送って行く間、ムツキとキサラギは満足感でいっぱいだった。
今朝唐突に行われた”白の宮殿”の”次代就任式”いや仲間うちでは”次代拷問式”と裏で密かに呼ばれている訓練機による試練を花子様はあっという間に終えてしまった。
これは連綿と受け継がれた来たルービック家の”白の当主においての次代就任式”ではまさにAAAクラスではなかろうか。
それにしてもセバス様には後でキサラギと二人、物申そうと目配せしあった。
花子様があの試練でもしも怪我でもしようものならどうするつもりだったのか。
それも何の説明もなくいきなりあんな超難易度の試練を課すなんて許せん。
二人は同時に拳を握っていた。
セバス様とは言え帰ったら花子様の代わりに鉄拳を食らわせる。
二人はもう一度頷き合った。
0
お気に入りに追加
776
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる