47 / 83
47.進級出来ました。えっ飛び級ですか?
しおりを挟む 場も治まり、何人か項垂れている人はいたけれど問題もなく解散となった。
月原家の人達は監視付きで一先ずは帰すことになる。
今回の件は吸血鬼同士の事件となるため、ハンター協会は手を出すことはないし出来ないのだそう。
月原家に関しては後日吸血鬼達だけで処遇が決められるだろう、と田神先生が報告してくれた。
どうなるかは分からないけれど、もう私達に手を出してくることはないだろう。
……私が相愛の誓いを宣言したとき、伊織は希望を見るような目をしていた。
多分、シェリーのことを考えたんだろう。
まあ、どうするのかは彼らの自由だ。
これ以上関わってこないのならそれでいい。
始祖としての力はまだ扱える状態だけれど、力も馴染んで口調や態度がもとに戻ったからだろうか。
周囲も多少は緊張がほぐれたみたいだった。
「凄いことしちゃったわね?」
苦笑気味にそう言って近付いてきた嘉輪に、私も苦笑いで返す。
「うん、自分でもビックリだよ。……でも、やらずにはいられなかったんだ」
永人と共にあるために。
誰にも邪魔をされないために。
「そうね。……格好良かったわよ? 『これは相愛の誓いである。何人たりとも引き離すことは許されない!』だったかしら?」
わざわざ声マネまでして再現する嘉輪に唇を尖らせる。
「からかわないでよ」
「ごめんごめん、でも格好良いと思ったのも本当よ?」
「ふふ……ありがとう」
そうして笑い合った後、私は愛良の元へと向かった。
愛良は会場で戦闘が始まる前には零士によって連れ出されていたらしい。
事が終わった頃にはあてがわれた部屋に戻り、ベッドに寝かされていた。
「お姉ちゃん……綺麗……」
会って第一声がそれだったせいもあって、心配していたのに気が抜けてしまう。
偉そうな口調ではなくなっても最上の美しさはそのままなため、言いたくなるのも分かる気はするけれど……。
「愛良の方が綺麗だし可愛いぞ?」
横になっている愛良の頭を愛おしそうに撫でながらそう言う零士は相変わらず。
でも、始祖の魅力にすら惑わされないなんて逆にすごすぎる。
今回ばかりはその愛良への思い、本気で称賛に値すると思った。
「どんな様子? 薬がまだ体に残っているんでしょう?」
愛良に近付き状態をたずねる。
吸血鬼なら少し時間を置けば分解出来るような量でも、人間である愛良はそう簡単にはいかない。
体に影響が残るような薬ではないから、休んでいれば動けるようになるとはいえやっぱり時間はかかる。
「治してあげられればいいんだけど……」
永人のように血流を操って薬の成分だけを吐き出させることは出来なくはない。
でも、あれは永人が吸血鬼だから出来た事。
人間の愛良にそんなことをすれば不整脈を起こしかねない。
「永人。さっき持っていた中和剤ってまだあるの? 愛良に使っても大丈夫?」
完全な中和剤じゃないと言っていたけれど、少しでも愛良が楽になればいいと思って聞いた。
でも永人は眉を寄せ「止めておいた方がいい」と口にする。
「あの中和剤は不完全だし、どっちかっていうと気つけ薬に近いからな。俺達が飲むことしか想定してねぇからちょっと無茶な配合したし……」
だから人間である妹には飲ませない方がいいと言われた。
「そっか……」
結局は自然と薬が抜けるのを待つ方がいいってことか……。
「大丈夫だよお姉ちゃん。意識はもうハッキリしてるし、一晩眠っているうちに体も自由に動かせるようになるだろうって言われたから」
「……うん」
愛良の言う通りなのは分かっているけれど、それでも心配なものは心配だ。
「本当に大丈夫だよ。……零士先輩がついていてくれるから」
でも、幸せそうな笑みでそんなことを口にされたら居座るわけにもいかない。
というか、もしかしてお邪魔しちゃったのかな?
なんて思ってしまう。
仕方ないから、私は零士に口うるさいほど頼んだからね! と言い含めて愛良の部屋を出た。
***
「じゃあ永人、おやすみ」
部屋の前まで来ると、私はずっとついて来てくれていた永人に向かってそう言った。
「……」
でも永人は返事もせずスッと目を細める。
不満を覚えていそうなその仕草に、私何かしたっけ? と疑問に思った。
「……おやすみ、じゃねぇよ」
「え?」
低い声を出した永人は、私の肩を抱くようにしてそのまま部屋の中へ一緒に入ってしまう。
そのまま後ろ手にドアを閉め、カチャリと鍵を掛けた。
耳に届いたその音に、ドクンと心臓が大きく跳ねる。
肩を抱く永人の手が熱い気がして、トクトクトクと心音が早まった。
顎を掴まれ、上向かされる。
電気もつけず薄暗い部屋の中、ギラつくような漆黒の瞳と目が合った。
「……今夜は、寝かせるつもりねぇから」
「あ……」
その声音に確かな欲を感じて、ゾクリと体が震える。
怖いわけじゃない。寒いわけでもない。
むしろ、彼の視線や私に触れる手から熱が伝わって来たみたいで……熱い。
「二人きりで、ベッドもある。……そして時間もたっぷりあるしなぁ?」
「永人……」
「逃がさねぇよ」
「っ!」
真剣な目と声が、更に私を昂らせる。
強く私を求めてくれるその想いから、逃れる術なんて私にはない。
だって、その想いこそ私が欲しいものだから。
「お前を奪って良いって、言ったよな?」
小一時間前に言ったばかりの言葉。
「……うん、言ったよ」
「だったら俺は、遠慮なんかしねぇからな?」
遠慮しないと言いながらも、手を出す前にこうして確認してくれている。
そんな分かりづらい優しさも、私の好きな永人の一面。
「……うん。全霊を掛けて、奪ってくれるんだよね?」
顎を掴む永人の手にそっと触れた。
こうして想いを交わし触れ合うだけで、他のことが何も考えられなくなる。
頭の中も心の中も、もう永人でいっぱいになっていた。
「ああ、奪いつくしてやるよ。お前のすべてが、俺でいっぱいになるくらいにな」
妖艶さをも含んだ笑みが浮かべられる。
もう永人でいっぱいになってるよ。
その言葉は、すぐに唇を塞がれたせいで音にならなかった。
でも、きっと伝わっている。
だって、その後の行為で私達は溶け合ってしまうから。
何度も触れる唇に、柔肌を撫でる彼の手に。
与えられた熱で溶けて混ざり合うから。
だからきっと、私の想いも伝わっている。
「永人……」
「ああ……聖良」
名前を呼び合うだけでも、満たされる。
好きで、大好きで、愛しい相手。
私達を邪魔する者は、もういない。
新月の夜は、月でさえ私達を邪魔することはないのだから――。
『妹が吸血鬼の花嫁になりました。』【完】
月原家の人達は監視付きで一先ずは帰すことになる。
今回の件は吸血鬼同士の事件となるため、ハンター協会は手を出すことはないし出来ないのだそう。
月原家に関しては後日吸血鬼達だけで処遇が決められるだろう、と田神先生が報告してくれた。
どうなるかは分からないけれど、もう私達に手を出してくることはないだろう。
……私が相愛の誓いを宣言したとき、伊織は希望を見るような目をしていた。
多分、シェリーのことを考えたんだろう。
まあ、どうするのかは彼らの自由だ。
これ以上関わってこないのならそれでいい。
始祖としての力はまだ扱える状態だけれど、力も馴染んで口調や態度がもとに戻ったからだろうか。
周囲も多少は緊張がほぐれたみたいだった。
「凄いことしちゃったわね?」
苦笑気味にそう言って近付いてきた嘉輪に、私も苦笑いで返す。
「うん、自分でもビックリだよ。……でも、やらずにはいられなかったんだ」
永人と共にあるために。
誰にも邪魔をされないために。
「そうね。……格好良かったわよ? 『これは相愛の誓いである。何人たりとも引き離すことは許されない!』だったかしら?」
わざわざ声マネまでして再現する嘉輪に唇を尖らせる。
「からかわないでよ」
「ごめんごめん、でも格好良いと思ったのも本当よ?」
「ふふ……ありがとう」
そうして笑い合った後、私は愛良の元へと向かった。
愛良は会場で戦闘が始まる前には零士によって連れ出されていたらしい。
事が終わった頃にはあてがわれた部屋に戻り、ベッドに寝かされていた。
「お姉ちゃん……綺麗……」
会って第一声がそれだったせいもあって、心配していたのに気が抜けてしまう。
偉そうな口調ではなくなっても最上の美しさはそのままなため、言いたくなるのも分かる気はするけれど……。
「愛良の方が綺麗だし可愛いぞ?」
横になっている愛良の頭を愛おしそうに撫でながらそう言う零士は相変わらず。
でも、始祖の魅力にすら惑わされないなんて逆にすごすぎる。
今回ばかりはその愛良への思い、本気で称賛に値すると思った。
「どんな様子? 薬がまだ体に残っているんでしょう?」
愛良に近付き状態をたずねる。
吸血鬼なら少し時間を置けば分解出来るような量でも、人間である愛良はそう簡単にはいかない。
体に影響が残るような薬ではないから、休んでいれば動けるようになるとはいえやっぱり時間はかかる。
「治してあげられればいいんだけど……」
永人のように血流を操って薬の成分だけを吐き出させることは出来なくはない。
でも、あれは永人が吸血鬼だから出来た事。
人間の愛良にそんなことをすれば不整脈を起こしかねない。
「永人。さっき持っていた中和剤ってまだあるの? 愛良に使っても大丈夫?」
完全な中和剤じゃないと言っていたけれど、少しでも愛良が楽になればいいと思って聞いた。
でも永人は眉を寄せ「止めておいた方がいい」と口にする。
「あの中和剤は不完全だし、どっちかっていうと気つけ薬に近いからな。俺達が飲むことしか想定してねぇからちょっと無茶な配合したし……」
だから人間である妹には飲ませない方がいいと言われた。
「そっか……」
結局は自然と薬が抜けるのを待つ方がいいってことか……。
「大丈夫だよお姉ちゃん。意識はもうハッキリしてるし、一晩眠っているうちに体も自由に動かせるようになるだろうって言われたから」
「……うん」
愛良の言う通りなのは分かっているけれど、それでも心配なものは心配だ。
「本当に大丈夫だよ。……零士先輩がついていてくれるから」
でも、幸せそうな笑みでそんなことを口にされたら居座るわけにもいかない。
というか、もしかしてお邪魔しちゃったのかな?
なんて思ってしまう。
仕方ないから、私は零士に口うるさいほど頼んだからね! と言い含めて愛良の部屋を出た。
***
「じゃあ永人、おやすみ」
部屋の前まで来ると、私はずっとついて来てくれていた永人に向かってそう言った。
「……」
でも永人は返事もせずスッと目を細める。
不満を覚えていそうなその仕草に、私何かしたっけ? と疑問に思った。
「……おやすみ、じゃねぇよ」
「え?」
低い声を出した永人は、私の肩を抱くようにしてそのまま部屋の中へ一緒に入ってしまう。
そのまま後ろ手にドアを閉め、カチャリと鍵を掛けた。
耳に届いたその音に、ドクンと心臓が大きく跳ねる。
肩を抱く永人の手が熱い気がして、トクトクトクと心音が早まった。
顎を掴まれ、上向かされる。
電気もつけず薄暗い部屋の中、ギラつくような漆黒の瞳と目が合った。
「……今夜は、寝かせるつもりねぇから」
「あ……」
その声音に確かな欲を感じて、ゾクリと体が震える。
怖いわけじゃない。寒いわけでもない。
むしろ、彼の視線や私に触れる手から熱が伝わって来たみたいで……熱い。
「二人きりで、ベッドもある。……そして時間もたっぷりあるしなぁ?」
「永人……」
「逃がさねぇよ」
「っ!」
真剣な目と声が、更に私を昂らせる。
強く私を求めてくれるその想いから、逃れる術なんて私にはない。
だって、その想いこそ私が欲しいものだから。
「お前を奪って良いって、言ったよな?」
小一時間前に言ったばかりの言葉。
「……うん、言ったよ」
「だったら俺は、遠慮なんかしねぇからな?」
遠慮しないと言いながらも、手を出す前にこうして確認してくれている。
そんな分かりづらい優しさも、私の好きな永人の一面。
「……うん。全霊を掛けて、奪ってくれるんだよね?」
顎を掴む永人の手にそっと触れた。
こうして想いを交わし触れ合うだけで、他のことが何も考えられなくなる。
頭の中も心の中も、もう永人でいっぱいになっていた。
「ああ、奪いつくしてやるよ。お前のすべてが、俺でいっぱいになるくらいにな」
妖艶さをも含んだ笑みが浮かべられる。
もう永人でいっぱいになってるよ。
その言葉は、すぐに唇を塞がれたせいで音にならなかった。
でも、きっと伝わっている。
だって、その後の行為で私達は溶け合ってしまうから。
何度も触れる唇に、柔肌を撫でる彼の手に。
与えられた熱で溶けて混ざり合うから。
だからきっと、私の想いも伝わっている。
「永人……」
「ああ……聖良」
名前を呼び合うだけでも、満たされる。
好きで、大好きで、愛しい相手。
私達を邪魔する者は、もういない。
新月の夜は、月でさえ私達を邪魔することはないのだから――。
『妹が吸血鬼の花嫁になりました。』【完】
0
お気に入りに追加
776
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

後悔はなんだった?
木嶋うめ香
恋愛
目が覚めたら私は、妙な懐かしさを感じる部屋にいた。
「お嬢様、目を覚まされたのですねっ!」
怠い体を起こそうとしたのに力が上手く入らない。
何とか顔を動かそうとした瞬間、大きな声が部屋に響いた。
お嬢様?
私がそう呼ばれていたのは、遥か昔の筈。
結婚前、スフィール侯爵令嬢と呼ばれていた頃だ。
私はスフィール侯爵の長女として生まれ、亡くなった兄の代わりに婿をとりスフィール侯爵夫人となった。
その筈なのにどうしてあなたは私をお嬢様と呼ぶの?
疑問に感じながら、声の主を見ればそれは記憶よりもだいぶ若い侍女だった。
主人公三歳から始まりますので、恋愛話になるまで少し時間があります。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる