44 / 83
44.皇家と神の力、そして裏取引!
しおりを挟む
「大巫女様。おかえりなさいませ。お客様がお待ちです。」
「あら以外に早かったわね。」
大海はすぐに赤い巫女服に着替えるとお客様を待たせている部屋に向かった。
「お待たせしました。」
大海が部屋に入るとそこには黄金色の髪を上品に束ねたもう一人の祖母が護衛に囲まれて座っていた。
二人は互いに相手を細かく観察し合う。
数分後、部屋で待っていたもう一人の祖母が手に待っていたカップをカチャリとソーサーに置くとそれを合図にして部屋の扉近く立っていた大海が彼女のすぐ前に腰を降ろした。
「はじめまして、私がこの八百万神社の巫女をしている大海です。」
「こちらこそ、はじめまして。私が”白の宮殿”の当主マリアです。さっそくですがお手紙にありました真実とやらを知りたいのですがすぐにお話くださいますか。」
大海は一度彼女の瞳を見てから頷いて当時のことを語り始めた。
当時、この八百万神社の跡取りとなる人間は神力をまったく扱えない信子しかいなかった。
それに対して皇家には聖の血を継いでなおかつ神力を扱える第一皇子がいた。
そこで彼らは神力が扱えないものが跡を取るのはおかしいと難癖をつけて来た。
大海はそれを一笑したが皇家がこれに反発。
彼らは裏で当時キンソン家の対立候補であるルービック家の後継者を殺すという代償の代わりに八百万神社の巫女である大海暗殺の協力を彼らに依頼した。
もっとも彼らが襲って来たのが八百万神社に大海が滞在している時だったので彼女は聖域の力を使って彼らを撃退しただけでなく逆に襲って来た人間を全て返り討ちにした。
「な・・・そんな馬鹿なことがあるわけないわ。キンソン家と皇家が結託しているわけが・・・。本当にそれは間違いないことですか?」
マリアは拳を真っ白になるまで握りしめた。
「間違いありません。だからルービック家のお二人が殺されたのです。」
「そ・・・そんな・・・。しょ・・・証拠はあるんですか?」
思わず前のめりになって倒れそうになったマリアを彼女の横にいたフィーアが肩を押さえてソファーの背もたれに戻した。
「証拠は彼らが自ら証明してくれますわ。あと数刻で彼らはここに攻撃を仕掛けて来るでしょう。そしてそのメンバーを見ればあなたにも私の話がウソか本当かはっきりわかるはずです。」
「攻撃を仕掛けてくる?」
「ええ。先ほど私の孫である花子が皇家の後継者である第一皇子を倒しましたのですぐに彼らは報復に動くでしょう。」
マリアは目を見開いた後、コホンと咳ばらいをすると付け加えた。
「私の孫でもありますわ。」
大海も目を見開くと目尻に皺を寄せて優しく微笑んでから訂正した。
「これは失礼。私たちの孫でしたわ。」
マリアは頷くとソーサーに置いたカップを手に持ってそれを一口含んでからさらに大海に要求した。
「まだ半信半疑ですがあなたが言うことが真実なら襲撃してきた輩を殲滅する時に私たちも加わりたいですわ。」
「もちろん構いません。」
ここでルービック家と山田家の間で裏取引が成立した。
二人がその話をしてから半刻ほどで花子を連れた実父が八百万神社に戻って来た。
二人が神社の本殿に着いた途端、神社に物凄い轟音が轟いた。
「うわっ・・・なに?」
花子は本殿前で固まった。
「信子!」
実父は花子をその場に放置して本殿の中にいるはずの妻を捜して駆け出した。
”攻撃されました。全員、裏庭に向かってください。”
”攻撃されました。全員、裏庭に向かってください。”
八百万神社に敵の襲撃を告げる声が響き渡った。
本殿前に置き去りにされた花子は走り去った実父の背中を呆れ顔で見やってからすぐに先程聞こえて来た声に言われるまま裏庭に向かった。
そこにはすでに紅い巫女服を着た人たちが何かが書かれた和紙を片手に裏庭から続く山道に駆け出していくところだった。
「花子ちゃんは私と一緒にこちらに行きますわよ。」
花子が紅い巫女服を着た人たちの後を追うとすると後ろから祖母に声を掛けられた。
「お祖母様。何があったんですか?」
「皇家の馬鹿たちによる襲撃です。私たちはこちらで迎え撃ちます。」
「皇家?なんでまた。」
大海はそこから断崖絶壁に続く小道を歩き出したながら花子の疑問に対しては理由を説明した。
「結論からいうと花子ちゃんに負けた第一皇子によるたんなる逆恨みによる襲撃ね。」
「へっ・・・?」
大海はちょうど断崖がよく見える道の端に立つとそこからスッと一点を指示した。
そこでは最終試合で花子のパートナーを務めてくれたフレッドが敵と刃を交えていた。
そのすぐ横では敵が断崖を登って交戦している背後からこちらの味方に襲いかかろうとそのまま背後の位置まで断崖を登って来ていた。
「はい。花子ちゃんはこれね。」
大海は和紙の束を花子に渡した。
そこには試合が始まる前に花子が”書の道”の練習で使った和紙の束だった。
「これは?」
「花子ちゃんはパートナーを守りなさい。」
大海はそれだけ言うと同じような和紙の束を片手にその断崖を軽やかに駆け降りて行った。
「お祖母様って人間なの?」
あまりの離れ技に思わず崖下を覗き込めば大海はほんの少しばかり出っ張っている岩の突起に足を掛けながら片手に持っている和紙に魔力を込めてはそれを敵に放って彼らを崖下に突き落としていた。
怖!
これを自分にもやれとか行き成りの無茶ぶりに引き攣りながらも花子は”無重力”の文字を思い描いてそれに魔力を流すと同じように崖にある突起に向かって飛び下りた。
そしてそこに降り立つと今まさに自分のパートナーに背後から襲いかかろうとしていた敵に”火砕流”と書かれた文字に魔力を流して実体化させるとそのままその進路上にいた敵を全て消した。
敵に対しながらもフレッドは背後の崖から響いて来る尋常ではない音に背筋を震わせていた。
ゾッゾゾー。
何でかわからないけど背筋がさぶい!
「あら以外に早かったわね。」
大海はすぐに赤い巫女服に着替えるとお客様を待たせている部屋に向かった。
「お待たせしました。」
大海が部屋に入るとそこには黄金色の髪を上品に束ねたもう一人の祖母が護衛に囲まれて座っていた。
二人は互いに相手を細かく観察し合う。
数分後、部屋で待っていたもう一人の祖母が手に待っていたカップをカチャリとソーサーに置くとそれを合図にして部屋の扉近く立っていた大海が彼女のすぐ前に腰を降ろした。
「はじめまして、私がこの八百万神社の巫女をしている大海です。」
「こちらこそ、はじめまして。私が”白の宮殿”の当主マリアです。さっそくですがお手紙にありました真実とやらを知りたいのですがすぐにお話くださいますか。」
大海は一度彼女の瞳を見てから頷いて当時のことを語り始めた。
当時、この八百万神社の跡取りとなる人間は神力をまったく扱えない信子しかいなかった。
それに対して皇家には聖の血を継いでなおかつ神力を扱える第一皇子がいた。
そこで彼らは神力が扱えないものが跡を取るのはおかしいと難癖をつけて来た。
大海はそれを一笑したが皇家がこれに反発。
彼らは裏で当時キンソン家の対立候補であるルービック家の後継者を殺すという代償の代わりに八百万神社の巫女である大海暗殺の協力を彼らに依頼した。
もっとも彼らが襲って来たのが八百万神社に大海が滞在している時だったので彼女は聖域の力を使って彼らを撃退しただけでなく逆に襲って来た人間を全て返り討ちにした。
「な・・・そんな馬鹿なことがあるわけないわ。キンソン家と皇家が結託しているわけが・・・。本当にそれは間違いないことですか?」
マリアは拳を真っ白になるまで握りしめた。
「間違いありません。だからルービック家のお二人が殺されたのです。」
「そ・・・そんな・・・。しょ・・・証拠はあるんですか?」
思わず前のめりになって倒れそうになったマリアを彼女の横にいたフィーアが肩を押さえてソファーの背もたれに戻した。
「証拠は彼らが自ら証明してくれますわ。あと数刻で彼らはここに攻撃を仕掛けて来るでしょう。そしてそのメンバーを見ればあなたにも私の話がウソか本当かはっきりわかるはずです。」
「攻撃を仕掛けてくる?」
「ええ。先ほど私の孫である花子が皇家の後継者である第一皇子を倒しましたのですぐに彼らは報復に動くでしょう。」
マリアは目を見開いた後、コホンと咳ばらいをすると付け加えた。
「私の孫でもありますわ。」
大海も目を見開くと目尻に皺を寄せて優しく微笑んでから訂正した。
「これは失礼。私たちの孫でしたわ。」
マリアは頷くとソーサーに置いたカップを手に持ってそれを一口含んでからさらに大海に要求した。
「まだ半信半疑ですがあなたが言うことが真実なら襲撃してきた輩を殲滅する時に私たちも加わりたいですわ。」
「もちろん構いません。」
ここでルービック家と山田家の間で裏取引が成立した。
二人がその話をしてから半刻ほどで花子を連れた実父が八百万神社に戻って来た。
二人が神社の本殿に着いた途端、神社に物凄い轟音が轟いた。
「うわっ・・・なに?」
花子は本殿前で固まった。
「信子!」
実父は花子をその場に放置して本殿の中にいるはずの妻を捜して駆け出した。
”攻撃されました。全員、裏庭に向かってください。”
”攻撃されました。全員、裏庭に向かってください。”
八百万神社に敵の襲撃を告げる声が響き渡った。
本殿前に置き去りにされた花子は走り去った実父の背中を呆れ顔で見やってからすぐに先程聞こえて来た声に言われるまま裏庭に向かった。
そこにはすでに紅い巫女服を着た人たちが何かが書かれた和紙を片手に裏庭から続く山道に駆け出していくところだった。
「花子ちゃんは私と一緒にこちらに行きますわよ。」
花子が紅い巫女服を着た人たちの後を追うとすると後ろから祖母に声を掛けられた。
「お祖母様。何があったんですか?」
「皇家の馬鹿たちによる襲撃です。私たちはこちらで迎え撃ちます。」
「皇家?なんでまた。」
大海はそこから断崖絶壁に続く小道を歩き出したながら花子の疑問に対しては理由を説明した。
「結論からいうと花子ちゃんに負けた第一皇子によるたんなる逆恨みによる襲撃ね。」
「へっ・・・?」
大海はちょうど断崖がよく見える道の端に立つとそこからスッと一点を指示した。
そこでは最終試合で花子のパートナーを務めてくれたフレッドが敵と刃を交えていた。
そのすぐ横では敵が断崖を登って交戦している背後からこちらの味方に襲いかかろうとそのまま背後の位置まで断崖を登って来ていた。
「はい。花子ちゃんはこれね。」
大海は和紙の束を花子に渡した。
そこには試合が始まる前に花子が”書の道”の練習で使った和紙の束だった。
「これは?」
「花子ちゃんはパートナーを守りなさい。」
大海はそれだけ言うと同じような和紙の束を片手にその断崖を軽やかに駆け降りて行った。
「お祖母様って人間なの?」
あまりの離れ技に思わず崖下を覗き込めば大海はほんの少しばかり出っ張っている岩の突起に足を掛けながら片手に持っている和紙に魔力を込めてはそれを敵に放って彼らを崖下に突き落としていた。
怖!
これを自分にもやれとか行き成りの無茶ぶりに引き攣りながらも花子は”無重力”の文字を思い描いてそれに魔力を流すと同じように崖にある突起に向かって飛び下りた。
そしてそこに降り立つと今まさに自分のパートナーに背後から襲いかかろうとしていた敵に”火砕流”と書かれた文字に魔力を流して実体化させるとそのままその進路上にいた敵を全て消した。
敵に対しながらもフレッドは背後の崖から響いて来る尋常ではない音に背筋を震わせていた。
ゾッゾゾー。
何でかわからないけど背筋がさぶい!
0
お気に入りに追加
776
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。


[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します
シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。
両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。
その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです
灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。
それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。
その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。
この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。
フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。
それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが……
ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。
他サイトでも掲載しています。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。
まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。
この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。
ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。
え?口うるさい?婚約破棄!?
そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。
☆
あくまでもまりぃべるの世界観です。王道のお話がお好みの方は、合わないかと思われますので、そこのところ理解いただき読んでいただけると幸いです。
☆★
全21話です。
出来上がってますので随時更新していきます。
途中、区切れず長い話もあってすみません。
読んで下さるとうれしいです。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる