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01.序章
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はぁー、息切れる!
なんで図書館が二階とか別館とかじゃなくて六階なのよ。
普通は上の階じゃなく下の階にあるものでしょ。
下野美野里はひとめがないのをいいことに今どき珍しくなった白いセーラー服の胸元をバサバサと仰ぎながら普通の教室に本棚を揃えた教室の引き戸を開けると部屋に入った。
途端にほこりが舞った。
いつも通り掃除が行き届いていない。
「ふぅー。」
美野里はセーラー服の胸元から手を離すと傍の本棚に視線を移した。
真剣に書棚の本を順番に眺める。
ちょうど半分ぐらいの位置に目線がいった所でそこに一冊分だけ空いた空間を見つけた。
持っていた本をそこに戻すとその周囲をさらに丹念に見ていく。
「おかしいなぁ。普通次巻がすぐそばにあるはずなんだけど・・・?」
美野里は上の段から下の段に視線を移していく。
しかしその本の次巻は見つからない。
あきらめずに窓際まで視線を丹念に這わせ今度は窓際からユウターンして後ろ側に並んでいる本棚に視線を戻した。
根気よくその教室いっぱいに並べられている本棚をゆっくりと見ながら捜していく。
何度も丹念に見るが読みたい本の次巻が見つからない。
とうとう最後の本棚を見たが見つからなかった。
ガックリしてふと視線をグランドに向けるとそこではサッカー部が練習をしていた。
風が強いせいかほこりが舞って茶色の模様を上空に描いていた。
よくこんな風が強い中、ボールなんか蹴っていられるものだ。
呆れながらもその光景をボウーと見ているとそのサッカーを練習していいる部員を応援する黄色い歓声が風の音に乗って聞こえてきた。
「風祭先輩ステキー。」
ボールがゴールに入ってそれを見ていた誰かが叫んだようだ。
「キャーア!先輩がこっち見たわ。」
それと共にそんな声が聞こえた。
「ちょっとあなたたち練習の邪魔よ。それ以上グランドに入ったら・・・。」
たくさんの黒髪の少女たちとジャージを着たサッカー部のマネジャーが下でそんな会話をしていた。
もう、そんなのどうでもいいじゃない。
美野里は彼女たちの会話を聞いている自分にそう突っ込みを入れた。
それより次巻よ。
現実逃避している場合じゃない。
さっきまで読んでいた本の次巻を何が何でも見つけたい。
美野里は握り拳を固めると窓から目線を外しもう一度本棚を見た。
前巻がここにあったなら次巻もここにあるはず。
彼女はもう一度、目線を本棚の下に移した。
今度は下段から上段に見て行けば見つかるかもしれない。
視線を下段から順にあげていくとふと窓にある本棚に気がついた。
あれここって見たっけ?
美野里は屈みこむと窓下の低い位置に置いてあった本に手を伸ばした。
ボロボロでほこりをかぶって真っ白になっている。
なんだかそれに心を惹かれてほこりを払ってその本を開いた。
その瞬間、風に乗ってガス臭い匂いが窓から強烈な勢いでなだれ込んで来た。
「うっ・・・。」
思わず本を抱えたまま視線を窓に向けると風圧が自分を押し潰す勢いで迫って来た。
何も身動きが取れずに固まった。
ボッワーン!!!
ガァーー!!!
12月12日、午後12時12分。
その高校の周囲で起こったガス爆発によりその近辺一帯は一瞬にして何もなくなった。
なんで図書館が二階とか別館とかじゃなくて六階なのよ。
普通は上の階じゃなく下の階にあるものでしょ。
下野美野里はひとめがないのをいいことに今どき珍しくなった白いセーラー服の胸元をバサバサと仰ぎながら普通の教室に本棚を揃えた教室の引き戸を開けると部屋に入った。
途端にほこりが舞った。
いつも通り掃除が行き届いていない。
「ふぅー。」
美野里はセーラー服の胸元から手を離すと傍の本棚に視線を移した。
真剣に書棚の本を順番に眺める。
ちょうど半分ぐらいの位置に目線がいった所でそこに一冊分だけ空いた空間を見つけた。
持っていた本をそこに戻すとその周囲をさらに丹念に見ていく。
「おかしいなぁ。普通次巻がすぐそばにあるはずなんだけど・・・?」
美野里は上の段から下の段に視線を移していく。
しかしその本の次巻は見つからない。
あきらめずに窓際まで視線を丹念に這わせ今度は窓際からユウターンして後ろ側に並んでいる本棚に視線を戻した。
根気よくその教室いっぱいに並べられている本棚をゆっくりと見ながら捜していく。
何度も丹念に見るが読みたい本の次巻が見つからない。
とうとう最後の本棚を見たが見つからなかった。
ガックリしてふと視線をグランドに向けるとそこではサッカー部が練習をしていた。
風が強いせいかほこりが舞って茶色の模様を上空に描いていた。
よくこんな風が強い中、ボールなんか蹴っていられるものだ。
呆れながらもその光景をボウーと見ているとそのサッカーを練習していいる部員を応援する黄色い歓声が風の音に乗って聞こえてきた。
「風祭先輩ステキー。」
ボールがゴールに入ってそれを見ていた誰かが叫んだようだ。
「キャーア!先輩がこっち見たわ。」
それと共にそんな声が聞こえた。
「ちょっとあなたたち練習の邪魔よ。それ以上グランドに入ったら・・・。」
たくさんの黒髪の少女たちとジャージを着たサッカー部のマネジャーが下でそんな会話をしていた。
もう、そんなのどうでもいいじゃない。
美野里は彼女たちの会話を聞いている自分にそう突っ込みを入れた。
それより次巻よ。
現実逃避している場合じゃない。
さっきまで読んでいた本の次巻を何が何でも見つけたい。
美野里は握り拳を固めると窓から目線を外しもう一度本棚を見た。
前巻がここにあったなら次巻もここにあるはず。
彼女はもう一度、目線を本棚の下に移した。
今度は下段から上段に見て行けば見つかるかもしれない。
視線を下段から順にあげていくとふと窓にある本棚に気がついた。
あれここって見たっけ?
美野里は屈みこむと窓下の低い位置に置いてあった本に手を伸ばした。
ボロボロでほこりをかぶって真っ白になっている。
なんだかそれに心を惹かれてほこりを払ってその本を開いた。
その瞬間、風に乗ってガス臭い匂いが窓から強烈な勢いでなだれ込んで来た。
「うっ・・・。」
思わず本を抱えたまま視線を窓に向けると風圧が自分を押し潰す勢いで迫って来た。
何も身動きが取れずに固まった。
ボッワーン!!!
ガァーー!!!
12月12日、午後12時12分。
その高校の周囲で起こったガス爆発によりその近辺一帯は一瞬にして何もなくなった。
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