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二章 洋菓子作り
十七話 シフォンケーキ
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翌朝、美桜は意気揚々と厨房へ向かった。今日は、湖月に買ってもらった米油で、シフォンケーキを焼く予定だ。
厨房へ行くと、ライが待っていて、
「おはよう、美桜」
と、眠そうに挨拶をした。
「おはよう、ライちゃん。来てくれてありがとう」
心強い助っ人に礼を言う。
「美桜の菓子、うまいから、いいよ」
昨日は無愛想だったライも、美桜の菓子で軟化したのか、微笑してゆっくりと尻尾を振った。
美桜は、新しい米油を調理台の上に置くと、
「今日はシフォンケーキを作ろうと思うの」
と、レシピ本の該当ページを開けた。
「シフォンケーキはバターを使わないから、ベーキングパウダーとバニラエッセンス以外は、幽世の材料で作れる」
まずは、卵を割って、卵白と卵黄を分けた。卵黄に砂糖を入れて混ぜ合わせた後、米油を少しずつ加える。バニラエッセンス、粉類まで足したところで、卵黄は一旦横に置き、卵白の泡立てに入った。ツノが立つまで固く泡立てないといけないので、かなり大変だ。
「手では結構時間がかかる。ハンドミキサーが欲しいなぁ」
手が疲れてきたが、なんとか卵白を泡立て終えると、先程の卵黄に混ぜ込んだ。
出来上がったたねを、シフォンケーキ型に流し込み、オーブンに入れる。ライが体からパチパチと放電を始める。
焼いている間に、シフォンケーキに添えるための生クリームの準備をする。
(生クリームって賞味期限が短いよね。現世に頻繁に買い物に行くのって難しいと思うから、あまり使えない材料かも……)
とりあえず生クリームを泡立ててはみたものの、美桜は「うーん」と考え込んだ。
(ショートケーキも、作るのは難しいかもしれない……)
桃に目を向けて、
「あ!」
美桜は、妙案を思いついた。
「ジャムを作ろう!」
幽世の市場には、たくさんの果物が売られていた。ジャムならば、砂糖とレモンがあれば簡単に作れる。
「よし!」
雪女の早雪が冷気を込めているという冷蔵庫を開けてみると、うまい具合に、レモンがある。
「一つ、拝借」
美桜は桃を切ると、砂糖とレモン汁を入れてコトコトと煮始めた。次第に、桃にとろみが出てくる。
ジャムが完成したのと同時にシフォンケーキが焼き上がり、厨房は甘い香りでいっぱいになった。ライが早く食べたそうにしていたが、今回は、冷めるまで待って、型から取り出した。
「はい、ライちゃん。ライちゃんは桃食べられる?」
「うん! 好きだよ」
ライの前に生クリームとジャムをたっぷりのせたシフォンケーキを置く。ライははぐっとシフォンケーキに齧り付き、
「おいしー!」
と、尻尾を激しく振った。
美桜も味見をして、
「上手にできた。良かった」
と微笑む。
(翡翠にも持って行ってあげよう)
使い終わった道具類を片付けると、美桜はライに礼を言って別れ、シフォンケーキを手に、翡翠の部屋へと向かった。
厨房へ行くと、ライが待っていて、
「おはよう、美桜」
と、眠そうに挨拶をした。
「おはよう、ライちゃん。来てくれてありがとう」
心強い助っ人に礼を言う。
「美桜の菓子、うまいから、いいよ」
昨日は無愛想だったライも、美桜の菓子で軟化したのか、微笑してゆっくりと尻尾を振った。
美桜は、新しい米油を調理台の上に置くと、
「今日はシフォンケーキを作ろうと思うの」
と、レシピ本の該当ページを開けた。
「シフォンケーキはバターを使わないから、ベーキングパウダーとバニラエッセンス以外は、幽世の材料で作れる」
まずは、卵を割って、卵白と卵黄を分けた。卵黄に砂糖を入れて混ぜ合わせた後、米油を少しずつ加える。バニラエッセンス、粉類まで足したところで、卵黄は一旦横に置き、卵白の泡立てに入った。ツノが立つまで固く泡立てないといけないので、かなり大変だ。
「手では結構時間がかかる。ハンドミキサーが欲しいなぁ」
手が疲れてきたが、なんとか卵白を泡立て終えると、先程の卵黄に混ぜ込んだ。
出来上がったたねを、シフォンケーキ型に流し込み、オーブンに入れる。ライが体からパチパチと放電を始める。
焼いている間に、シフォンケーキに添えるための生クリームの準備をする。
(生クリームって賞味期限が短いよね。現世に頻繁に買い物に行くのって難しいと思うから、あまり使えない材料かも……)
とりあえず生クリームを泡立ててはみたものの、美桜は「うーん」と考え込んだ。
(ショートケーキも、作るのは難しいかもしれない……)
桃に目を向けて、
「あ!」
美桜は、妙案を思いついた。
「ジャムを作ろう!」
幽世の市場には、たくさんの果物が売られていた。ジャムならば、砂糖とレモンがあれば簡単に作れる。
「よし!」
雪女の早雪が冷気を込めているという冷蔵庫を開けてみると、うまい具合に、レモンがある。
「一つ、拝借」
美桜は桃を切ると、砂糖とレモン汁を入れてコトコトと煮始めた。次第に、桃にとろみが出てくる。
ジャムが完成したのと同時にシフォンケーキが焼き上がり、厨房は甘い香りでいっぱいになった。ライが早く食べたそうにしていたが、今回は、冷めるまで待って、型から取り出した。
「はい、ライちゃん。ライちゃんは桃食べられる?」
「うん! 好きだよ」
ライの前に生クリームとジャムをたっぷりのせたシフォンケーキを置く。ライははぐっとシフォンケーキに齧り付き、
「おいしー!」
と、尻尾を激しく振った。
美桜も味見をして、
「上手にできた。良かった」
と微笑む。
(翡翠にも持って行ってあげよう)
使い終わった道具類を片付けると、美桜はライに礼を言って別れ、シフォンケーキを手に、翡翠の部屋へと向かった。
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