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1巻
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第一章 祇園のえべっさん
「かんぱーい」
「お疲れ様でしたー!」
大阪駅近くの焼き鳥屋で、私――繁昌真璃は、同僚の白井典子と、ビアジョッキをかちんと合わせた。ビールはほどよく泡立っていておいしそうだ。私たちは顔を見合わせると、同時にビアジョッキに口を付けた。
「ぷはー。沁みるなぁ」
「仕事終わりのビールは最高! ……なんて、言えたらよかったんですけど」
白井さんが、ビアジョッキをテーブルに置いて、寂しそうに微笑む。その顔を見て、私もしんみりしてしまう。
「まさか、二年であたしたちのお店が閉店しちゃうとは思いませんでした」
肩を落としている白井さんに、私は「そうだね……」と相槌を打った。
私と白井さんは、服飾雑貨を扱う『Happy Town』という店で、店長と副店長という関係だった。
『Happy Town』の本社は東京にあり、全国に店舗を展開している。私が店長を務めていた店舗は、大阪の郊外に建つ商業施設の中にあった。週末になると車で家族連れが訪れ賑わう施設だったものの、立地の問題なのか、平日はガラガラだった。
オープン当初は順調だった店は、次第に平日の売り上げが落ち込んでいき、売り上げ目標を下回るようになり――先日、ついに閉店。
今日は、店の撤去作業の最終日。仕事が終わった後、私たちは、お疲れ様会と称し、焼き鳥屋でぱーっと飲もうと、繁華街へ繰り出したのだった。
売り上げを取り戻そうと、頑張ったんだけどな……。
売れ筋の商品を揃えたり、頻繁にフェアを開催したり、申し訳ないと思いつつもアルバイトスタッフのシフトを減らして人件費を抑えたり、打てる手は打ってきたつもりだ。けれど、売り上げ目標をかろうじてクリアするのが週末だけという有様では、店を守ることができなかった。
店の存続が叶わなかったことも悔しいし、今日の撤去作業のチェックに来た本社のマネージャーに、「繁昌店長、名前負けだったね」と嫌味を言われたことも悔しかった。
確かに私の名字は「繁昌」だし、店を繁盛させられなかった店長として、名前負けかもしれない。でも、あの言い方はない。
むしゃくしゃした気持ちを紛らわそうと、再びビアジョッキに口を付け、半分ほど一気に飲んだ。
「おやおや、いきますねぇ、繁昌店長」
白井さんは笑っているけれど、空元気なのが伝わってくる。
「あたし、あのお店、好きだったんですけどねぇ……」
「それは、私も同じ」
二人同時に溜め息が漏れた。
「もう終わったことだよ。頭、切り替えていこ! 白井さん、京都の店舗に異動が決まっているんでしょう? そっちで頑張ればいいんだよ」
暗い雰囲気を破るように明るい声で白井さんを励ます。
「そうですね。そういえば、繁昌店長はどうするんですか? 東京へ戻るんですか?」
「私は……」
白井さんの問いかけに口ごもる。
「お待たせしました。ねぎまとつくね、せせりです!」
元気な男性店員がやってきて、テーブルの上に焼き鳥の皿を置いた。
適度な焼き色が付いた焼き鳥が、良い匂いを放っている。
「その話は、また後で。食べよう!」
「ですね! モヤモヤした気持ちは、食べて飲んで発散です!」
私と白井さんは焼き鳥に手を伸ばすと、豪快に齧り付いた。
「お客さん、お客さん。大丈夫ですか?」
肩を揺さぶられる感覚があり、目を開けると、制服姿の駅員が、私の顔をのぞき込んでいた。
「あー……」
ぼんやりとした頭のまま、若い駅員を見上げる。
「もう終電も行ってしまいましたよ」
「……終電?」
「はい」
駅員は頷くと、私が目を覚まして安心したのか、離れていった。
ここ、どこ……?
ベンチの上で体を起こす。ホームの中に掲げられている駅名が目に入り、私は首を傾げた。
『京都河原町』? ここ、京都? なんで? 私、なんで京都にいるの?
そういえば――。
白井さんと焼き鳥屋で愚痴を言い合いながら、閉店までしこたま飲んだ。それから店の前で別れ、千鳥足で阪急電車の大阪梅田駅へ向かった。……その後はどうしたっけ? 記憶がない。
電車に乗ったものの、乗り過ごして、終点の京都まで来てしまった……ってことだよね。しかも、地下ホーム内のベンチで眠りこけていたなんて!
やばい。さっきの駅員さん、終電、行っちゃったって言ってた……。
私が住んでいるマンションの最寄り駅は高槻市駅。高槻市駅は、大阪梅田駅と京都河原町駅の中間あたり。終電がないということは、帰れない。
若い女が飲みすぎてホームで寝ていたなんて恥ずかしい。一体、何人ぐらいの人が、私の醜態を見ていったのだろう。
「うー……」
頭を抱えて呻いた後、気を取り直して、ベンチの上に倒れていたショルダーバッグを引き寄せた。スマホやハンカチ、化粧ポーチなどが、中から飛び出している。それらをかき集めてバッグの中に収め、ふと気が付いた。
財布が、ない。
さあっと血の気が引いた。ショルダーバッグの中をまさぐってみたが、どう見ても財布だけがない。
「まさか、盗られた?」
その可能性しか考えられない。
しばらくの間、呆然としていたけれど、ハッと我に返り、慌てて手帳を探した。
「よかった。これは盗られてなかった……」
ほっとしながら表紙をめくり、中に挟み込まれている封筒を手に取る。
可愛いクマのキャラクターが描かれた封筒には、「おねえちゃんへ」と書かれている。封筒の中から、ハート型に変形折りされた便箋を取り出し、丁寧に開いた。そこには、子供の字で、
『おみせのおねえちゃん。いっしょに、おかあさんのプレゼントをえらんでくれて、ありがとう。てぶくろ、おかあさんがよろこんでくれました』
と、感謝の言葉が綴られている。
覚えてしまうほどに、何度も読み返した文面だ。
この手紙は、『Happy Town』がオープンして間もない頃、私が接客した小学生の姉妹がくれたサンキューレターだ。「おかあさんのおたんじょうびに、おこづかいでプレゼントをかうことにしたの。なにがいいかなぁ?」と相談され、私が対応をした。三人で頭を悩ませ、「じてんしゃでおかいものに行くおかあさんの手がさむそうだから」と、毛糸の手袋を選んだ。二人は嬉しそうに購入し、「おねえちゃん、ありがとう」と言って帰っていったのだけれど、後日、母親と一緒に再び来店し、この手紙を渡された。可愛いお客様からの感謝の言葉に、私は感激し、それ以来、お守りのように、この手紙を持ち歩くようになった。
最初は、彼女たちに接客をした時のように、お客様一人一人に向き合い、喜んでもらえるような接客をしたいと思っていた。けれど、数字しか見ていないマネージャーからは、売り上げを伸ばすことばかりを要求され、次第に、いかにしてお客様に商品を買わせるかを目的とした接客をするようになっていった。
確かに、売り上げは大切。でも、本当は、心のない接客はしたくなかった。その二つを両立させることは無理だったのかな……。
手紙を畳み直して、封筒にしまう。
感傷に浸っていると、先ほどの駅員が戻ってきた。
「お客さん、改札を閉めますよ」
私がちっとも階段を上がってこないので、もう一度、呼びに来たようだ。
「あ……はい」
とりあえず、駅から出なければならない。
しょんぼりと肩を落としながら改札をくぐり、地下から地上に出ると、そこは百貨店の前だった。商店街の店舗はどこも閉まっている。ここが京都市の中心で、一番の繁華街とはいえ、時刻が深夜零時を回っているのだから、当たり前だ。
私はショルダーバッグからスマホを取り出し、クレジットカード会社に連絡を入れた。とりあえずカードは止めてもらったので一安心だ。
財布が見つかる可能性は低そう……。一応、明日、警察署に行ってみよう。
次は、今夜の宿を考えなくちゃ。
本来なら、終電もなく、財布もない状態では途方に暮れるところだけれど、私には、泊めてもらえそうな場所のあてがあった。
京都には、母方の祖母が住んでいて、ここ四条河原町からも近い、祇園という場所で和雑貨店を営んでいる。
かなり長い間、行っていないけれど、急に「泊めてほしい」って訪ねたら、おばあちゃん、驚くかな……。
けれど、今夜は仕方がない。
私は祇園に向かって歩き出した。
おばあちゃんの娘、つまり私の母親は、大学時代の同級生で東京出身の父親と結婚した。私が六歳の頃までは京都に住んでいて、その後、父親の転職を機に、東京へと引っ越した。だから私は出身は京都とはいえ、ほぼ東京育ちだ。
都内の大学を卒業した後、『Happy Town』を展開する企業に就職。当初は関東地区の店舗で販売職に就いていたけれど、入社二年目にして関西地区の新規店舗の店長に抜擢され、大阪へ異動してきた。
大阪と京都は近いので、おばあちゃんの家には、行こうと思えばいつでも行くことができたものの、小学校以来、御無沙汰しているおばあちゃんの家を訪ねるのは気が引けて、足が向かないままに、二年が過ぎてしまった。
暗い四条通を東に向かって進むと、鴨川が見えてきた。橋を渡った先が、祇園と呼ばれているエリアだ。
歩きながらも、やはり思うのは、自分が潰してしまった店のこと。ああすればよかったのかな、こうすればよかったのかなと、後悔ばかりしてしまう。白井さんに焼き鳥屋で、「繁昌店長はどうするんですか?」と聞かれた後、私は結局、答えなかった。
異動の話はあるけど、会社、辞めようかな……。
あのマネージャーのもとでこれ以上働きたくはないし、店を潰した私は確実に降格だろう。それに、もう、小売業界で販売職としてやっていく自信がない。
ふぅと溜め息をつきながら南座の前を通り過ぎる。南座は歌舞伎などが興行される劇場だ。子供の頃は「まるでお城のようだ」と感じていた建物を横目に見て、四条通沿いの祇園商店街に入ると、店舗はどこも閉まっていて暗かった。
しばらく通りを歩いていくと、商店街の中に、雰囲気のいい京町家が現れた。
「ああ、何も変わっていない」
私は懐かしい気持ちで町家に近づいた。
ここが、おばあちゃんの営む和雑貨店。店名は『七福堂』。
思い出の中の『七福堂』は、開店中は入口の戸が開け放たれていて、誰でも自由に出入りできるようになっていた。お香の香りが漂う店内に並べられた、扇子や、布小物、紙雑貨は華やかで、幼い私の目には、それら全てがキラキラとした宝物に見えていた。おばあちゃんの店は私の憧れで、だからきっと私は、就職先に小売業界を選んだのだと思う。
私は戸に手をかけ、引いてみた。開かない。
深夜なので、鍵がかかっているのは当然だ。
私は『七福堂』の横の路地へ向かうと、人が一人通るだけでいっぱいになる、狭い道に足を踏み入れた。
子供の頃、この路地が、秘密の場所に繋がっているみたいで、ワクワクしたっけ。
路地を入って数メートル先に、おばあちゃんの家の入口があった。今は閉まっている戸のそばに、風情のある建物には不似合いなインターフォンが付いている。
深夜に訪ねてきて、びっくりするかな。……ていうか、久しぶりすぎて、おばあちゃん、私のことがわかるかな。
ドキドキしながらインターフォンを押す。
しばらく待ってみたけれど、誰も出てこなかったので、もう一度、押してみる。すると、ようやく、がらりと戸が開いた。
「こんな夜中に誰だ?」
無愛想に声をかけられた私は、びっくりして固まってしまった。中から現れたのはおばあちゃんではなく、墨色の浴衣を着た若い男性だった。背が高く、すらっとした体型の男性は、少し垂れ目。長すぎず短すぎない黒髪には艶がある。顔のパーツのバランスが整っていて、ハッとするほどの美形だった。
男性は私の顔を見下ろし、僅かに目を見開いた。
「お前……」
「あなた、誰? おばあちゃんは?」
混乱した頭で反射的に問いかける。けれどすぐに言葉足らずだったと思い、言い直した。
「私はここに住んでいる城山百合子の孫で、繁昌真璃っていうんですけど……失礼ですが、あなたは誰ですか?」
もしかして、おばあちゃん、私が知らないうちに引っ越しちゃったとか?
そんな話は両親から聞いていないのに。
「百合子の孫……」
男性は私の顔を、穴が開くのではないかと思うほど、まじまじと見つめた。
なんでそんなに見るんだろう。私、顔に何か付いてる?
「八束さん、来はった人、誰でした?」
怪訝に思っていると、懐かしい声が聞こえた。男性の後ろから顔を出したのは、紛れもなく祖母の百合子だ。記憶の中のおばあちゃんよりも、少し老けている。
「おばあちゃん!」
久しぶりに会ったおばあちゃんは、私を見て目を丸くした。
「もしかして……真璃ちゃん?」
「うん、そう! 真璃だよ!」
すぐにわかってもらえたことに安心して、声を弾ませる。
「まあ、大きゅうなって。こないな夜中に急に来て、どないしたん?」
「久しぶりなのにごめんなさい。あのね、実は仕事帰りに終電を逃してしまって、帰れなくなったの。できたら今晩泊めてほしいんだけど……」
「お願い」と手を合わせると、おばあちゃんは「あらあら」と言って笑った。
「ええよ。中に入り」
八束と呼ばれた男性は、まだ私の顔を見つめていたけれど、おばあちゃんが私を手招いたので、戸の前から体をどけた。その横をすり抜け、玄関から家の中へと入る。
あ、昔と変わっていない……。
玄関の隣は、小さな庭に面した和室だった。部屋の中には正方形のローテーブルが置かれていて、テレビもある。おばあちゃんはこの部屋を、今も、居間、兼、食事をする部屋として使っているようだ。ガラス戸の向こうには台所が見える。台所の様子も昔の記憶のままだ。
「真璃ちゃん、そこ座っとき」
私はおばあちゃんが指し示した座布団に腰を下ろした。向かい側に八束という男性が座る。相変わらず、じっと私の顔を見ている。
「……あのぅ、八束さん、でしたっけ? 私の顔に何か付いてます?」
不躾な視線に、若干、気を悪くしながら問いかけると、
「いや、大きくなったもんだな、と思って……」
八束さんは感心したように軽く息を吐いた。
「人の成長は早いな」
「は?」
まるで昔の私を知っているかのような口ぶりに、首を傾げる。
「私、どこかであなたに会ったこと、ありましたっけ?」
「覚えていないのか?」
驚いた顔をした八束さんを見て、考え込む。
八束さんは、私と歳はそう変わらないように見える。もし子供の頃に会っているとするならば、私がおばあちゃんの家に遊びに来た時に会った可能性が高い。ちなみに、いとこは女なので、親戚の子ではない。
近所の子かな? 一緒に遊んだ子とかいたっけ……?
「ごめんなさい。覚えていないです」
「なら、いい」
八束さんは素っ気なく視線を逸らした。それ以上、突っ込んで聞くことのできない雰囲気になってしまったので、口を閉ざす。
もしかして、私が覚えていないから、気を悪くさせちゃった?
八束さんを気にしていたら、おばあちゃんがお茶を持って戻ってきた。
「おあがり」
ローテーブルの上に置かれた湯飲みを手に取り、口を付けると、スモーキーな味がした。京都で日常的に飲まれている京番茶だ。
「ほんで、真璃ちゃんは、一体なんのお仕事をしてるんえ? こないに帰りが遅くなるなんて、大変なお仕事やなぁ」
おばあちゃんの心配そうな表情を見て、苦笑いを浮かべる。
「服飾雑貨店の店長をしていたの。でも、私のお店、売り上げが落ちて潰れちゃって。今日は、閉店作業の最終日だったんだ」
溜め息交じりに説明をしたら、おばあちゃんは、
「まあ、それは残念やったねぇ」
と、頬に手をあてた。
「真璃ちゃんは頑張ったんやね」
優しい微笑みを向けられ、思わず鼻の奥がツンとした。
「うん。……頑張ったんだよ、私」
涙声になったことに、おばあちゃんは気が付いたのだろう。「真璃ちゃんは偉い」と言うと、私の頭をいい子いい子するように撫でた。その途端、心の中で何かの糸がプツリと切れ、私の目から涙がこぼれた。
「わ、私っ……頑張ったの。頑張ったんだけど…………」
漏れてくる嗚咽を堪えながら、おばあちゃんに訴えると、おばあちゃんは「わかってるえ」と言うように、私の肩を抱き寄せ、何度もさすった。
「うわあぁぁん……!」
子供のように泣き声を上げる私を、おばあちゃんはずっと抱きしめてくれた。
どれぐらいの間、泣き続けていたのだろう。
すっかり目が痛くなった頃、おばあちゃんは「お布団敷いてくるさかい、真璃ちゃんは二階で寝たらええよ」と言って、階段を上がっていった。
勧められるがままに二階へ移動し、おばあちゃんが準備をしてくれた部屋に入ると、敷かれていた布団の中に潜り込んだ。疲れていたのか、あっという間に睡魔が襲ってきて――。
「かんぱーい」
「お疲れ様でしたー!」
大阪駅近くの焼き鳥屋で、私――繁昌真璃は、同僚の白井典子と、ビアジョッキをかちんと合わせた。ビールはほどよく泡立っていておいしそうだ。私たちは顔を見合わせると、同時にビアジョッキに口を付けた。
「ぷはー。沁みるなぁ」
「仕事終わりのビールは最高! ……なんて、言えたらよかったんですけど」
白井さんが、ビアジョッキをテーブルに置いて、寂しそうに微笑む。その顔を見て、私もしんみりしてしまう。
「まさか、二年であたしたちのお店が閉店しちゃうとは思いませんでした」
肩を落としている白井さんに、私は「そうだね……」と相槌を打った。
私と白井さんは、服飾雑貨を扱う『Happy Town』という店で、店長と副店長という関係だった。
『Happy Town』の本社は東京にあり、全国に店舗を展開している。私が店長を務めていた店舗は、大阪の郊外に建つ商業施設の中にあった。週末になると車で家族連れが訪れ賑わう施設だったものの、立地の問題なのか、平日はガラガラだった。
オープン当初は順調だった店は、次第に平日の売り上げが落ち込んでいき、売り上げ目標を下回るようになり――先日、ついに閉店。
今日は、店の撤去作業の最終日。仕事が終わった後、私たちは、お疲れ様会と称し、焼き鳥屋でぱーっと飲もうと、繁華街へ繰り出したのだった。
売り上げを取り戻そうと、頑張ったんだけどな……。
売れ筋の商品を揃えたり、頻繁にフェアを開催したり、申し訳ないと思いつつもアルバイトスタッフのシフトを減らして人件費を抑えたり、打てる手は打ってきたつもりだ。けれど、売り上げ目標をかろうじてクリアするのが週末だけという有様では、店を守ることができなかった。
店の存続が叶わなかったことも悔しいし、今日の撤去作業のチェックに来た本社のマネージャーに、「繁昌店長、名前負けだったね」と嫌味を言われたことも悔しかった。
確かに私の名字は「繁昌」だし、店を繁盛させられなかった店長として、名前負けかもしれない。でも、あの言い方はない。
むしゃくしゃした気持ちを紛らわそうと、再びビアジョッキに口を付け、半分ほど一気に飲んだ。
「おやおや、いきますねぇ、繁昌店長」
白井さんは笑っているけれど、空元気なのが伝わってくる。
「あたし、あのお店、好きだったんですけどねぇ……」
「それは、私も同じ」
二人同時に溜め息が漏れた。
「もう終わったことだよ。頭、切り替えていこ! 白井さん、京都の店舗に異動が決まっているんでしょう? そっちで頑張ればいいんだよ」
暗い雰囲気を破るように明るい声で白井さんを励ます。
「そうですね。そういえば、繁昌店長はどうするんですか? 東京へ戻るんですか?」
「私は……」
白井さんの問いかけに口ごもる。
「お待たせしました。ねぎまとつくね、せせりです!」
元気な男性店員がやってきて、テーブルの上に焼き鳥の皿を置いた。
適度な焼き色が付いた焼き鳥が、良い匂いを放っている。
「その話は、また後で。食べよう!」
「ですね! モヤモヤした気持ちは、食べて飲んで発散です!」
私と白井さんは焼き鳥に手を伸ばすと、豪快に齧り付いた。
「お客さん、お客さん。大丈夫ですか?」
肩を揺さぶられる感覚があり、目を開けると、制服姿の駅員が、私の顔をのぞき込んでいた。
「あー……」
ぼんやりとした頭のまま、若い駅員を見上げる。
「もう終電も行ってしまいましたよ」
「……終電?」
「はい」
駅員は頷くと、私が目を覚まして安心したのか、離れていった。
ここ、どこ……?
ベンチの上で体を起こす。ホームの中に掲げられている駅名が目に入り、私は首を傾げた。
『京都河原町』? ここ、京都? なんで? 私、なんで京都にいるの?
そういえば――。
白井さんと焼き鳥屋で愚痴を言い合いながら、閉店までしこたま飲んだ。それから店の前で別れ、千鳥足で阪急電車の大阪梅田駅へ向かった。……その後はどうしたっけ? 記憶がない。
電車に乗ったものの、乗り過ごして、終点の京都まで来てしまった……ってことだよね。しかも、地下ホーム内のベンチで眠りこけていたなんて!
やばい。さっきの駅員さん、終電、行っちゃったって言ってた……。
私が住んでいるマンションの最寄り駅は高槻市駅。高槻市駅は、大阪梅田駅と京都河原町駅の中間あたり。終電がないということは、帰れない。
若い女が飲みすぎてホームで寝ていたなんて恥ずかしい。一体、何人ぐらいの人が、私の醜態を見ていったのだろう。
「うー……」
頭を抱えて呻いた後、気を取り直して、ベンチの上に倒れていたショルダーバッグを引き寄せた。スマホやハンカチ、化粧ポーチなどが、中から飛び出している。それらをかき集めてバッグの中に収め、ふと気が付いた。
財布が、ない。
さあっと血の気が引いた。ショルダーバッグの中をまさぐってみたが、どう見ても財布だけがない。
「まさか、盗られた?」
その可能性しか考えられない。
しばらくの間、呆然としていたけれど、ハッと我に返り、慌てて手帳を探した。
「よかった。これは盗られてなかった……」
ほっとしながら表紙をめくり、中に挟み込まれている封筒を手に取る。
可愛いクマのキャラクターが描かれた封筒には、「おねえちゃんへ」と書かれている。封筒の中から、ハート型に変形折りされた便箋を取り出し、丁寧に開いた。そこには、子供の字で、
『おみせのおねえちゃん。いっしょに、おかあさんのプレゼントをえらんでくれて、ありがとう。てぶくろ、おかあさんがよろこんでくれました』
と、感謝の言葉が綴られている。
覚えてしまうほどに、何度も読み返した文面だ。
この手紙は、『Happy Town』がオープンして間もない頃、私が接客した小学生の姉妹がくれたサンキューレターだ。「おかあさんのおたんじょうびに、おこづかいでプレゼントをかうことにしたの。なにがいいかなぁ?」と相談され、私が対応をした。三人で頭を悩ませ、「じてんしゃでおかいものに行くおかあさんの手がさむそうだから」と、毛糸の手袋を選んだ。二人は嬉しそうに購入し、「おねえちゃん、ありがとう」と言って帰っていったのだけれど、後日、母親と一緒に再び来店し、この手紙を渡された。可愛いお客様からの感謝の言葉に、私は感激し、それ以来、お守りのように、この手紙を持ち歩くようになった。
最初は、彼女たちに接客をした時のように、お客様一人一人に向き合い、喜んでもらえるような接客をしたいと思っていた。けれど、数字しか見ていないマネージャーからは、売り上げを伸ばすことばかりを要求され、次第に、いかにしてお客様に商品を買わせるかを目的とした接客をするようになっていった。
確かに、売り上げは大切。でも、本当は、心のない接客はしたくなかった。その二つを両立させることは無理だったのかな……。
手紙を畳み直して、封筒にしまう。
感傷に浸っていると、先ほどの駅員が戻ってきた。
「お客さん、改札を閉めますよ」
私がちっとも階段を上がってこないので、もう一度、呼びに来たようだ。
「あ……はい」
とりあえず、駅から出なければならない。
しょんぼりと肩を落としながら改札をくぐり、地下から地上に出ると、そこは百貨店の前だった。商店街の店舗はどこも閉まっている。ここが京都市の中心で、一番の繁華街とはいえ、時刻が深夜零時を回っているのだから、当たり前だ。
私はショルダーバッグからスマホを取り出し、クレジットカード会社に連絡を入れた。とりあえずカードは止めてもらったので一安心だ。
財布が見つかる可能性は低そう……。一応、明日、警察署に行ってみよう。
次は、今夜の宿を考えなくちゃ。
本来なら、終電もなく、財布もない状態では途方に暮れるところだけれど、私には、泊めてもらえそうな場所のあてがあった。
京都には、母方の祖母が住んでいて、ここ四条河原町からも近い、祇園という場所で和雑貨店を営んでいる。
かなり長い間、行っていないけれど、急に「泊めてほしい」って訪ねたら、おばあちゃん、驚くかな……。
けれど、今夜は仕方がない。
私は祇園に向かって歩き出した。
おばあちゃんの娘、つまり私の母親は、大学時代の同級生で東京出身の父親と結婚した。私が六歳の頃までは京都に住んでいて、その後、父親の転職を機に、東京へと引っ越した。だから私は出身は京都とはいえ、ほぼ東京育ちだ。
都内の大学を卒業した後、『Happy Town』を展開する企業に就職。当初は関東地区の店舗で販売職に就いていたけれど、入社二年目にして関西地区の新規店舗の店長に抜擢され、大阪へ異動してきた。
大阪と京都は近いので、おばあちゃんの家には、行こうと思えばいつでも行くことができたものの、小学校以来、御無沙汰しているおばあちゃんの家を訪ねるのは気が引けて、足が向かないままに、二年が過ぎてしまった。
暗い四条通を東に向かって進むと、鴨川が見えてきた。橋を渡った先が、祇園と呼ばれているエリアだ。
歩きながらも、やはり思うのは、自分が潰してしまった店のこと。ああすればよかったのかな、こうすればよかったのかなと、後悔ばかりしてしまう。白井さんに焼き鳥屋で、「繁昌店長はどうするんですか?」と聞かれた後、私は結局、答えなかった。
異動の話はあるけど、会社、辞めようかな……。
あのマネージャーのもとでこれ以上働きたくはないし、店を潰した私は確実に降格だろう。それに、もう、小売業界で販売職としてやっていく自信がない。
ふぅと溜め息をつきながら南座の前を通り過ぎる。南座は歌舞伎などが興行される劇場だ。子供の頃は「まるでお城のようだ」と感じていた建物を横目に見て、四条通沿いの祇園商店街に入ると、店舗はどこも閉まっていて暗かった。
しばらく通りを歩いていくと、商店街の中に、雰囲気のいい京町家が現れた。
「ああ、何も変わっていない」
私は懐かしい気持ちで町家に近づいた。
ここが、おばあちゃんの営む和雑貨店。店名は『七福堂』。
思い出の中の『七福堂』は、開店中は入口の戸が開け放たれていて、誰でも自由に出入りできるようになっていた。お香の香りが漂う店内に並べられた、扇子や、布小物、紙雑貨は華やかで、幼い私の目には、それら全てがキラキラとした宝物に見えていた。おばあちゃんの店は私の憧れで、だからきっと私は、就職先に小売業界を選んだのだと思う。
私は戸に手をかけ、引いてみた。開かない。
深夜なので、鍵がかかっているのは当然だ。
私は『七福堂』の横の路地へ向かうと、人が一人通るだけでいっぱいになる、狭い道に足を踏み入れた。
子供の頃、この路地が、秘密の場所に繋がっているみたいで、ワクワクしたっけ。
路地を入って数メートル先に、おばあちゃんの家の入口があった。今は閉まっている戸のそばに、風情のある建物には不似合いなインターフォンが付いている。
深夜に訪ねてきて、びっくりするかな。……ていうか、久しぶりすぎて、おばあちゃん、私のことがわかるかな。
ドキドキしながらインターフォンを押す。
しばらく待ってみたけれど、誰も出てこなかったので、もう一度、押してみる。すると、ようやく、がらりと戸が開いた。
「こんな夜中に誰だ?」
無愛想に声をかけられた私は、びっくりして固まってしまった。中から現れたのはおばあちゃんではなく、墨色の浴衣を着た若い男性だった。背が高く、すらっとした体型の男性は、少し垂れ目。長すぎず短すぎない黒髪には艶がある。顔のパーツのバランスが整っていて、ハッとするほどの美形だった。
男性は私の顔を見下ろし、僅かに目を見開いた。
「お前……」
「あなた、誰? おばあちゃんは?」
混乱した頭で反射的に問いかける。けれどすぐに言葉足らずだったと思い、言い直した。
「私はここに住んでいる城山百合子の孫で、繁昌真璃っていうんですけど……失礼ですが、あなたは誰ですか?」
もしかして、おばあちゃん、私が知らないうちに引っ越しちゃったとか?
そんな話は両親から聞いていないのに。
「百合子の孫……」
男性は私の顔を、穴が開くのではないかと思うほど、まじまじと見つめた。
なんでそんなに見るんだろう。私、顔に何か付いてる?
「八束さん、来はった人、誰でした?」
怪訝に思っていると、懐かしい声が聞こえた。男性の後ろから顔を出したのは、紛れもなく祖母の百合子だ。記憶の中のおばあちゃんよりも、少し老けている。
「おばあちゃん!」
久しぶりに会ったおばあちゃんは、私を見て目を丸くした。
「もしかして……真璃ちゃん?」
「うん、そう! 真璃だよ!」
すぐにわかってもらえたことに安心して、声を弾ませる。
「まあ、大きゅうなって。こないな夜中に急に来て、どないしたん?」
「久しぶりなのにごめんなさい。あのね、実は仕事帰りに終電を逃してしまって、帰れなくなったの。できたら今晩泊めてほしいんだけど……」
「お願い」と手を合わせると、おばあちゃんは「あらあら」と言って笑った。
「ええよ。中に入り」
八束と呼ばれた男性は、まだ私の顔を見つめていたけれど、おばあちゃんが私を手招いたので、戸の前から体をどけた。その横をすり抜け、玄関から家の中へと入る。
あ、昔と変わっていない……。
玄関の隣は、小さな庭に面した和室だった。部屋の中には正方形のローテーブルが置かれていて、テレビもある。おばあちゃんはこの部屋を、今も、居間、兼、食事をする部屋として使っているようだ。ガラス戸の向こうには台所が見える。台所の様子も昔の記憶のままだ。
「真璃ちゃん、そこ座っとき」
私はおばあちゃんが指し示した座布団に腰を下ろした。向かい側に八束という男性が座る。相変わらず、じっと私の顔を見ている。
「……あのぅ、八束さん、でしたっけ? 私の顔に何か付いてます?」
不躾な視線に、若干、気を悪くしながら問いかけると、
「いや、大きくなったもんだな、と思って……」
八束さんは感心したように軽く息を吐いた。
「人の成長は早いな」
「は?」
まるで昔の私を知っているかのような口ぶりに、首を傾げる。
「私、どこかであなたに会ったこと、ありましたっけ?」
「覚えていないのか?」
驚いた顔をした八束さんを見て、考え込む。
八束さんは、私と歳はそう変わらないように見える。もし子供の頃に会っているとするならば、私がおばあちゃんの家に遊びに来た時に会った可能性が高い。ちなみに、いとこは女なので、親戚の子ではない。
近所の子かな? 一緒に遊んだ子とかいたっけ……?
「ごめんなさい。覚えていないです」
「なら、いい」
八束さんは素っ気なく視線を逸らした。それ以上、突っ込んで聞くことのできない雰囲気になってしまったので、口を閉ざす。
もしかして、私が覚えていないから、気を悪くさせちゃった?
八束さんを気にしていたら、おばあちゃんがお茶を持って戻ってきた。
「おあがり」
ローテーブルの上に置かれた湯飲みを手に取り、口を付けると、スモーキーな味がした。京都で日常的に飲まれている京番茶だ。
「ほんで、真璃ちゃんは、一体なんのお仕事をしてるんえ? こないに帰りが遅くなるなんて、大変なお仕事やなぁ」
おばあちゃんの心配そうな表情を見て、苦笑いを浮かべる。
「服飾雑貨店の店長をしていたの。でも、私のお店、売り上げが落ちて潰れちゃって。今日は、閉店作業の最終日だったんだ」
溜め息交じりに説明をしたら、おばあちゃんは、
「まあ、それは残念やったねぇ」
と、頬に手をあてた。
「真璃ちゃんは頑張ったんやね」
優しい微笑みを向けられ、思わず鼻の奥がツンとした。
「うん。……頑張ったんだよ、私」
涙声になったことに、おばあちゃんは気が付いたのだろう。「真璃ちゃんは偉い」と言うと、私の頭をいい子いい子するように撫でた。その途端、心の中で何かの糸がプツリと切れ、私の目から涙がこぼれた。
「わ、私っ……頑張ったの。頑張ったんだけど…………」
漏れてくる嗚咽を堪えながら、おばあちゃんに訴えると、おばあちゃんは「わかってるえ」と言うように、私の肩を抱き寄せ、何度もさすった。
「うわあぁぁん……!」
子供のように泣き声を上げる私を、おばあちゃんはずっと抱きしめてくれた。
どれぐらいの間、泣き続けていたのだろう。
すっかり目が痛くなった頃、おばあちゃんは「お布団敷いてくるさかい、真璃ちゃんは二階で寝たらええよ」と言って、階段を上がっていった。
勧められるがままに二階へ移動し、おばあちゃんが準備をしてくれた部屋に入ると、敷かれていた布団の中に潜り込んだ。疲れていたのか、あっという間に睡魔が襲ってきて――。
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