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郊外の一軒家
しょじょがえり、さん
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キスをしたばかりなのに歯磨きをするのは嫌だなと思いつつ、朝の歯磨きを済ませて誕生日パーティのご馳走の前に座る。手を合わせていただきますと言ったはいいが、皿以外の食器がない。
「雪風達の方がいいご飯用意したよね、きっと。まぁ二人きりなんだしこじんまりしたのでいいよね、部屋も狭いし」
若神子邸の雪兎の私室に比べれば半分以下だが、庶民のリビングの倍くらいはありそうな部屋に対して随分な言い草だ。
「このチキン美味しかったよ。あ、僕は君が起きる前にもう食べたから気遣わないでいいよ」
そう言いながら雪兎はチキンの足首に当たる部分にペーパーを巻き、俺の口元に差し出した。俺は皿から直接食べるよりは上品かな、なんてどうでもいいことを考えながらチキンにかぶりつき、頬をソースで汚した。
「ん……美味しいです! すごく美味しい……ソースのレシピ習いたい」
「そういえばポチお料理頑張ってるんだったね。うん……そうだね、それはいいことだ。人をやっつける訓練なんかせずに、僕のために料理やマッサージを勉強しておくといいよ」
「はい」
「……僕は本気で言ってるのに」
俺は若神子邸に戻ったらマッサージを習わせてもらおうと決めた。訓練をやめたり減らしたりする選択肢はない、雪兎の命令でも聞けないことはある。
ご馳走を食べ終え、思わず腹を撫でる。俺は普段から大食いな訳ではないが、食べようと思えば結構食べられる方だと自分では思っている。そんな俺でも腹が膨れて動きたくなくなる量だった。
「ごちそうさまでした……ふぅ、おなかいっぱいです。ありがとうございました」
「え、おなかいっぱい? ケーキも用意してあるんだけど」
「……今すぐにはちょっと無理かもです。すいません」
「ふーん。ま、いいや。誕生日プレゼント先に渡しちゃうね」
「あの航空券じゃないんですか?」
「あれはジョーク」
ここに来れたことが本当に嬉しいから、雪兎がジョークやイタズラのつもりでも俺は満足している。雪兎に会えたこと以上のプレゼントなんてありえないと思いつつ、雪兎からのプレゼントを受け取る。
「丁寧に開けるよね、包装紙なんてビリビリ破りそうな見た目してるのに」
「ユキ様からの贈り物ですから、取っておくつもりですので」
「ふーん……? ふふ、君の宝箱はゴミでいっぱいになりそうだね」
「宝箱なんて本人以外にはゴミ箱みたいなもんですよ。ユキ様は宝箱に何を詰めます?」
「縛って玩具固定したポチかな」
是非とも詰められてみたい。なんて返事をしつつようやく中身を取り出した。布……服だ。黒い服、いや着物。
「ポチのサイズ測ってもらって、仕立ててもらったんだ。もう身長伸びないだろうしいいよね」
「俺の服……ありがとうございます! 着物って案外重いんですね」
「あぁ、防刃防弾機能のせいかな? 普通のよりちょっと分厚いし硬いと思う。でもうちの使用人さん達が来てるのそういう生地のスーツだし、うちでは普通! かな」
あの黒づくめの格好にも意味があったんだなと感心しつつ、もらったばかりの着物を広げてみる。黒一色かと思いきや、羽織の裏側には刺繍があった。見たことのない模様だ。神社でもらえる札に書かれた文字のようにも、魔法陣のようにも見える。
「ポチが幽霊に話しかけられたり足引っ張られたりするの見て、作ったんだ。ひと針ひと針、想いを込めて……」
「ユキ様が刺繍したんですか? すごい……綺麗に出来てますね。幽霊に対して何か効果あるんですか?」
目立たないようになのか、刺繍糸は黒っぽいものが使われている。完全な黒ではなく、赤が混じったような茶色っぽい……言っては何だが汚い色だ。
「僕のものだぞ、触れるなって威嚇してるんだよ。それを着れば、さながら歩く結界。注連縄で囲まれたようなもの……かな? 浮遊霊程度には手出しされないと思うよ、強いヤツには……まぁ、着ないよりはマシかな」
「ありがとうございます!」
雪兎の独占欲の証を受け取って嬉しくないはずがない。俺は着物を抱き締めて喜んだ。
「そういえば袴はないんですね」
付いているのは羽織と帯だけで、袴などはない。
「着流しってすごくセクシーだと思うんだよね。袴もいいんだけど、普段着なんだから着流しで十分でしょ」
袴の方が動きやすそうなのに……いや、あんなゆったりとしたズボンを履くよりは、不格好だが着物を捲り上げて生足を晒した方が動きやすいか?
「ポチは顔が和風だから着物似合うと思うんだよね。だから、ポチの普段着は今日から着物! 外に出る時は羽織も着てね、家の中なら脱いでてもいいけど」
「はぁ……和風ですかね。一重で目が細いだけじゃ……」
「鼻は結構高いけど、目元とかの掘りは浅いよね。全体的に言えば平べったい顔してる。唇も薄めで、眉も細い……こうして特徴並べるとポチって化粧映えする地味顔なんだね!」
和風というのは地味を飾った意図の言葉だというのは理解していたつもりだったが、真正面から言われると少し傷付く。
「雪風達の方がいいご飯用意したよね、きっと。まぁ二人きりなんだしこじんまりしたのでいいよね、部屋も狭いし」
若神子邸の雪兎の私室に比べれば半分以下だが、庶民のリビングの倍くらいはありそうな部屋に対して随分な言い草だ。
「このチキン美味しかったよ。あ、僕は君が起きる前にもう食べたから気遣わないでいいよ」
そう言いながら雪兎はチキンの足首に当たる部分にペーパーを巻き、俺の口元に差し出した。俺は皿から直接食べるよりは上品かな、なんてどうでもいいことを考えながらチキンにかぶりつき、頬をソースで汚した。
「ん……美味しいです! すごく美味しい……ソースのレシピ習いたい」
「そういえばポチお料理頑張ってるんだったね。うん……そうだね、それはいいことだ。人をやっつける訓練なんかせずに、僕のために料理やマッサージを勉強しておくといいよ」
「はい」
「……僕は本気で言ってるのに」
俺は若神子邸に戻ったらマッサージを習わせてもらおうと決めた。訓練をやめたり減らしたりする選択肢はない、雪兎の命令でも聞けないことはある。
ご馳走を食べ終え、思わず腹を撫でる。俺は普段から大食いな訳ではないが、食べようと思えば結構食べられる方だと自分では思っている。そんな俺でも腹が膨れて動きたくなくなる量だった。
「ごちそうさまでした……ふぅ、おなかいっぱいです。ありがとうございました」
「え、おなかいっぱい? ケーキも用意してあるんだけど」
「……今すぐにはちょっと無理かもです。すいません」
「ふーん。ま、いいや。誕生日プレゼント先に渡しちゃうね」
「あの航空券じゃないんですか?」
「あれはジョーク」
ここに来れたことが本当に嬉しいから、雪兎がジョークやイタズラのつもりでも俺は満足している。雪兎に会えたこと以上のプレゼントなんてありえないと思いつつ、雪兎からのプレゼントを受け取る。
「丁寧に開けるよね、包装紙なんてビリビリ破りそうな見た目してるのに」
「ユキ様からの贈り物ですから、取っておくつもりですので」
「ふーん……? ふふ、君の宝箱はゴミでいっぱいになりそうだね」
「宝箱なんて本人以外にはゴミ箱みたいなもんですよ。ユキ様は宝箱に何を詰めます?」
「縛って玩具固定したポチかな」
是非とも詰められてみたい。なんて返事をしつつようやく中身を取り出した。布……服だ。黒い服、いや着物。
「ポチのサイズ測ってもらって、仕立ててもらったんだ。もう身長伸びないだろうしいいよね」
「俺の服……ありがとうございます! 着物って案外重いんですね」
「あぁ、防刃防弾機能のせいかな? 普通のよりちょっと分厚いし硬いと思う。でもうちの使用人さん達が来てるのそういう生地のスーツだし、うちでは普通! かな」
あの黒づくめの格好にも意味があったんだなと感心しつつ、もらったばかりの着物を広げてみる。黒一色かと思いきや、羽織の裏側には刺繍があった。見たことのない模様だ。神社でもらえる札に書かれた文字のようにも、魔法陣のようにも見える。
「ポチが幽霊に話しかけられたり足引っ張られたりするの見て、作ったんだ。ひと針ひと針、想いを込めて……」
「ユキ様が刺繍したんですか? すごい……綺麗に出来てますね。幽霊に対して何か効果あるんですか?」
目立たないようになのか、刺繍糸は黒っぽいものが使われている。完全な黒ではなく、赤が混じったような茶色っぽい……言っては何だが汚い色だ。
「僕のものだぞ、触れるなって威嚇してるんだよ。それを着れば、さながら歩く結界。注連縄で囲まれたようなもの……かな? 浮遊霊程度には手出しされないと思うよ、強いヤツには……まぁ、着ないよりはマシかな」
「ありがとうございます!」
雪兎の独占欲の証を受け取って嬉しくないはずがない。俺は着物を抱き締めて喜んだ。
「そういえば袴はないんですね」
付いているのは羽織と帯だけで、袴などはない。
「着流しってすごくセクシーだと思うんだよね。袴もいいんだけど、普段着なんだから着流しで十分でしょ」
袴の方が動きやすそうなのに……いや、あんなゆったりとしたズボンを履くよりは、不格好だが着物を捲り上げて生足を晒した方が動きやすいか?
「ポチは顔が和風だから着物似合うと思うんだよね。だから、ポチの普段着は今日から着物! 外に出る時は羽織も着てね、家の中なら脱いでてもいいけど」
「はぁ……和風ですかね。一重で目が細いだけじゃ……」
「鼻は結構高いけど、目元とかの掘りは浅いよね。全体的に言えば平べったい顔してる。唇も薄めで、眉も細い……こうして特徴並べるとポチって化粧映えする地味顔なんだね!」
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