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お盆

ふつかめ、に

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バラ鞭が胸を打つ。胸を覆っていた蝋が割れ、剥がれ、深紅の粉や欠片がパラパラと落ちていく。広範囲を打って主に肌を痛めつけるバラ鞭は蝋を剥がすのに打って付けだ。

「……っ、あぁああああっ!」

熱で責められ、焦らされた皮膚を鞭でいたぶられる快感は強い。真皮の下まで痛みは響くが、ヒリヒリと後を引く痛みは表面にしか残らない。もっとズキズキとした痛みを長時間抱えたい。

「あ、あぁっ……は、ぁ……痛い、痛いぃ、ユキ様ぁ……んぁああっ! ぁひぃっ!? 待っ、ぁあんっ! んぁあぁんっ!」

「……っ、ふふ……ふふふっ、あはははっ! 最っ高!」

ここまで上機嫌な雪兎は稀だ。拘束鞭打ちプレイなんてよくやることだから、きっと蝋燭が雪兎の機嫌をよくしているのだろう。飛び散る深紅の蝋の破片が血飛沫に似ていると無意識レベルの錯覚を起こし、血腥い暴力を求める生物としての加虐欲が刺激されているのだ。

「あっあぁあああっ! い、たっ……ぁああっ! も、むりっ……皮膚まで、剥がれちゃう……いっ、あぁああーっ!」

胸の谷間や下側にこびり付いた蝋はほとんど落ちた。雪兎は一旦鞭を振る手を止め、手首をぷるぷると揺らした。

「ポチ、痛い?」

「は、い……痛い、です。ヒリヒリして、ズキズキして……胸も太腿も、もう……痛くて、痛くて」

「……もう鞭で打たれるの嫌?」

「はい、嫌です……もう嫌、許してくださいユキ様」

先が分かれている形状のため、一点に狙いを絞れないバラ鞭で胸を散々叩いたのに、雪兎は俺の乳首に一発も与えなかった。乳首を覆う蝋は変わっていない。

「ねぇ、ポチ、本音言っていいよ」

バラ鞭の先端が乳首を掠る。力なく垂れた鞭が散々打たれた胸をくすぐる。

「……っ、もっと打ってください! 皮膚が裂けて血が出るまでっ、全身から皮膚がなくなるまで! 俺の全部叩きまくってください打ちまくってください!」

まだ乳首も腹も陰茎も蝋が残っている。

「ふふっ……痛いの好き?」

「ユキ様に与えられるものならば!」

「鞭、もっと欲しい?」

「はい! ください!」

この上なく上機嫌な雪兎は楽しそうに鞭を振るう。とうとう乳首に当てられ、蝋が少し剥がれた。

「……ひぁああっ!? ぁ、あぁああっ! 痛ぃっ、ひぃっ……乳首、取れるぅっ、あぁっ……ひぃいいんっ! 痛いっ、ひぃっ……! むり、イくっ……イくぅううっ!」

三発目、いや、四発目で絶頂を迎えた──のか?

「う、ぅ……? ぁ、えっ……? イけ、ない……イけてないっ! 出てないぃっ! ユキ様、ユキ様ぁ、出てませんっ、イけてませんっ!」

確かに絶頂へと至る快感だったのに、亀頭が蝋で覆われていて射精出来ていない。

「……ポチはドライオーガズムもやれるはずだけど、流石にナカ全く刺激してないと無理だろ? ノーハンド射精止まりだったみたいだね、だから射精が完全なものじゃないとイけた感じがしない……実際はイけてるのかもしれないよ?」

「イけてません……」

「ここに溜まってるだけで、射精のプロセスそのものはこなせたんじゃないの?」

すりすりと雪兎の指が裏筋を撫でる。

「……出せないとっ、イけたとは言えません……中イキは別ですけど」

「絶頂に必要なのは前立腺の収縮だ、射精の際にそれが起こる。前立腺を刺激して絶頂を錯覚させるのがお尻で気持ちよくなる方法だよ。ま、奥突かれてイけるようになってる君のイキ方はそれだけじゃないけど」

「絶頂の達成感に必要なのは放出ですっ! 外に出さないとイけた気がしません……!」

真っ向から雪兎に反論すると雪兎はにっこりと微笑み、鞭をぎゅっと握り直して先端を俺の陰茎に当てた。蝋越しの亀頭がぺちぺちと軽く当てられる鞭の感覚に昂る。期待に満ちた目を向けると雪兎は──

「次、お腹叩いていくよ」

──と微笑んだ。
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