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夏休み

かいがいでのおさんぽ、ご

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喘ぎ声を出したくない。腰を振りたくない。だから快感なんて欲しくない。そんな俺の意思に反して腸壁はきゅうきゅうと前立腺マッサージ器具を締め付け、動かし、前立腺をトントン叩かせる。

「……っ、ん……」

トンと一度叩かれると、全身に快楽の波が伝わる。ビクンと身体を跳ねさせてしまう類のものだが、耐えてリラックスしている客を装う。

「く……ふっ……」

何度も叩かれると快楽の波が俺の身体中でうねり、ぶつかり、全身を走る快楽が泡立っていく。ぱちんぱちんとどこかで何かが弾ける錯覚を覚え、一つ弾ける度に理性が剥がれていく。

「ィ、くっ……」

貞操帯に締め付けられて勃起するだけで痛む陰茎から射精は出来ない。常に中イキだ。
何度も、何度も、何度も、何度も、絶頂し続ける。余韻に浸る暇もなく前立腺を責められる。

「……どうでしょう、跡継ぎ様」

「わぁ! お兄ちゃんカッコいい! 短髪も似合うねぇ……ふふ、ぁ、耳の上もうちょい切ってよ」

美容師の指が耳の上の髪をつまみ、持ち上げ、耳のすぐ近くで鋏を鳴らす。上等な鋏は何も切らずとも動かすだけで金属がシャリシャリと音を立てる。その音は子気味よく、耳に快楽を与える。

「うなじももう少し……OK、これでいいよ、ありがとう」

美容師の指が今度はうなじをくすぐった。首の真後ろで鋏の音が鳴る。もう快楽で頭がどうにかなってしまいそうだ。

「完成! あ、待って、アイマスクは僕が外すよ」

「少しお待ちください跡継ぎ様、鋏を片付けますので……」

鋏を片付けているのだろう物音の後、美容師のものとは全く違う小さな指がアイマスクを外した。

「……あはっ、ほら、お兄ちゃんも鏡見て」

洒落た短髪になっていることよりも、俺は恐ろしかったはずの三白眼がすっかり毒気を抜かれてトロンと蕩けていることの方が気になった。潤んだ瞳はろくに焦点が合っていないし、開いたままの口からは舌と唾液が今にも零れてしまいそうだ。

「ポチ……お口、お行儀悪いよ」

雪兎は俺の口を左手で塞ぐと右手で下腹を強く押しながら撫で始めた。

「よしよし……ワンちゃんはなでなで好きだもんねー?」

ただでさえ雪兎の顔を見て前立腺マッサージ器具を締め付けているのに、下腹を押さえられたりしたら快楽が強過ぎる。

「……っ! ぐっ、んっ、んんんんっ……!」

声は抑えられなくなったし、腰がガクガクと揺れるのも止まらない。美容師は今荷物を片付けるため奥へ引っ込んでいるから誰も見てはいないが、すぐに戻ってくるだろう。平静を装う自信がない。

「ふふ……喉までよだれ垂れてるよ。この喉仏がカッコいい喉まで。ふふっ……子供の手二本に負けてよだれ垂らしてるなんて、カッコいいのが台無しだね」

耳元でひっそりと蔑まれ、俺は椅子の上だと言うにも関わらず弓なりに身体を跳ねさせた。
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