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ご主人様の留学
おもいでになった、さん
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二~三分で勃起するという雪風の予測は外れた。爽やかな笑顔にときめいた俺が即座にむくむくと性器を膨らませたからだ。
「…………お前本当に絶倫だな」
雪風はそう言いながら辺りを見回す。先程空気を読んで出ていった使用人は帰ってきていないので、部屋には俺達二人しか居ない。
「じゃ、頼むぜ真尋ぉ」
念の為にと鍵をかけて雪風は爽やかさを捨て、淫らさを身につける。
「頼むって何だよ……それより先に教えてくれ、雪兎は? どこだ?」
「はぁ? あぁ、そっか……なるほど。雪兎ならちょっと前にジェット乗って日本出たぜ」
この家には当然のように自家用ジェットがある。一族の者は通常の旅客機には乗らず、それで移動するのだ。
まぁ全くふざけた富豪だが、今回はそんな嫌味を言っている暇はない。
「日本出た!? そんなっ……俺、挨拶も何も……」
「雪兎、言ってたぜ。ポチの顔見てたら離れたくなくなっちゃうって。ポチに見送られたら行くの嫌がっちゃうから失神させてきたって」
「そんな……」
無意識に指が首輪の跡をなぞる。指で押し上げてしまった赤い首輪、これを引く雪兎はもう居ない。二年間会えない。
「雪兎……ユキ、様ぁ……そんなっ、嫌だ……」
俺の最後の言葉は何だった? 汚ったない絶叫か何かじゃなかったか? 覚えてもいないなんて最低だ、ちゃんと自分の気持ちを伝えたかったのに。
好きだって、愛してるって、待ってるって言いたかったのに。
「真尋ぉ、落ち込んでもしゃーないし俺抱けよぉ、なぁ」
落ち込んで蹲った俺の身体を開こうと雪風が俺の肩を押す。
「ビクともしねぇ……」
ついさっきまで雪風に欲情して勃起していた陰茎はもう萎んでいる。
「……真尋ぉ」
雪風もそれに気付き、寂しげな声を出す。
「…………今日はやめとくか。じゃ、またな。俺明日は会社だろうけど……電話くれよ、いつでも時間作るからさ」
都合のいい奴のような言い方だが、これは雪風の自己犠牲的な精神ではなく、いつでもどこでも発情出来る淫乱さを示している。
「じゃあ、な。ごめんな、なんか」
しかし自己犠牲精神がないというのも間違いだ。俺は部屋を出ていこうとする雪風を追いかけ、扉の寸前で彼を背後から抱き締めた。
「……なんだよ、やっぱりしたいのか?」
「今日はやめとく……雪風、愛してる」
酷い誘いの断り方だったと思ったから俺は埋め合わせのためにキスでもしようと雪風の顔を撫でた。
「……やめろ! 抱く気ないのにムラムラさせんな! お前が嫉妬深いからディルドも使わないでやってんのに……今度こそ、じゃあな」
突き飛ばされてしまった。趣のない奴だ。まぁ、おかげで暗い気分はマシになった。夕飯までの時間潰しは腹筋にするかな。
──それが、雪兎が留学した当日の思い出。
俺は留学直前の最後のセックスで雪兎に首を絞められて気を失い、意識が戻った頃にはもう雪兎は旅立っていた。
雪風を抱くことも出来ないほどに酷く落ち込んでいた。けれど心はどこかさっぱりとしていた、二年間の寂しさを舐めていたのだろう。自身の心の弱さを甘く見ていたのだろう──
「…………お前本当に絶倫だな」
雪風はそう言いながら辺りを見回す。先程空気を読んで出ていった使用人は帰ってきていないので、部屋には俺達二人しか居ない。
「じゃ、頼むぜ真尋ぉ」
念の為にと鍵をかけて雪風は爽やかさを捨て、淫らさを身につける。
「頼むって何だよ……それより先に教えてくれ、雪兎は? どこだ?」
「はぁ? あぁ、そっか……なるほど。雪兎ならちょっと前にジェット乗って日本出たぜ」
この家には当然のように自家用ジェットがある。一族の者は通常の旅客機には乗らず、それで移動するのだ。
まぁ全くふざけた富豪だが、今回はそんな嫌味を言っている暇はない。
「日本出た!? そんなっ……俺、挨拶も何も……」
「雪兎、言ってたぜ。ポチの顔見てたら離れたくなくなっちゃうって。ポチに見送られたら行くの嫌がっちゃうから失神させてきたって」
「そんな……」
無意識に指が首輪の跡をなぞる。指で押し上げてしまった赤い首輪、これを引く雪兎はもう居ない。二年間会えない。
「雪兎……ユキ、様ぁ……そんなっ、嫌だ……」
俺の最後の言葉は何だった? 汚ったない絶叫か何かじゃなかったか? 覚えてもいないなんて最低だ、ちゃんと自分の気持ちを伝えたかったのに。
好きだって、愛してるって、待ってるって言いたかったのに。
「真尋ぉ、落ち込んでもしゃーないし俺抱けよぉ、なぁ」
落ち込んで蹲った俺の身体を開こうと雪風が俺の肩を押す。
「ビクともしねぇ……」
ついさっきまで雪風に欲情して勃起していた陰茎はもう萎んでいる。
「……真尋ぉ」
雪風もそれに気付き、寂しげな声を出す。
「…………今日はやめとくか。じゃ、またな。俺明日は会社だろうけど……電話くれよ、いつでも時間作るからさ」
都合のいい奴のような言い方だが、これは雪風の自己犠牲的な精神ではなく、いつでもどこでも発情出来る淫乱さを示している。
「じゃあ、な。ごめんな、なんか」
しかし自己犠牲精神がないというのも間違いだ。俺は部屋を出ていこうとする雪風を追いかけ、扉の寸前で彼を背後から抱き締めた。
「……なんだよ、やっぱりしたいのか?」
「今日はやめとく……雪風、愛してる」
酷い誘いの断り方だったと思ったから俺は埋め合わせのためにキスでもしようと雪風の顔を撫でた。
「……やめろ! 抱く気ないのにムラムラさせんな! お前が嫉妬深いからディルドも使わないでやってんのに……今度こそ、じゃあな」
突き飛ばされてしまった。趣のない奴だ。まぁ、おかげで暗い気分はマシになった。夕飯までの時間潰しは腹筋にするかな。
──それが、雪兎が留学した当日の思い出。
俺は留学直前の最後のセックスで雪兎に首を絞められて気を失い、意識が戻った頃にはもう雪兎は旅立っていた。
雪風を抱くことも出来ないほどに酷く落ち込んでいた。けれど心はどこかさっぱりとしていた、二年間の寂しさを舐めていたのだろう。自身の心の弱さを甘く見ていたのだろう──
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