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放課後に時間を取って (水月+リュウ・カサネ・クンネ)
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リュウから何も聞き出せぬまま休み時間が終わり、教室へ戻った。
(収穫なし、か……)
俺は一番前の席に座っているから、後ろのリュウの様子を授業中に見るのは難しい。モヤモヤするけれど今日一日は耐えるしかないかもな、放課後に時間が取れればいいが。
(単にちょっと寝不足とかで明日には元気になってるかもしれませんしな)
ポジティブに考えて一旦頭の中からリュウを追い出し、授業に集中しようとした。けれど考えないようにしようとすればするほどリュウのことばかり考えてしまい、やはり授業には集中出来なかった。
帰り支度のため鞄をそっと開く。懐中電灯機能では流石に眩し過ぎるかと、画面の明るさを最大にして点けっぱなしにしたスマホの明かりの中、炒飯おにぎりを食べていたクンネが両手を上げた。
《ミツキ! 出ていいのか?》
「食べ終わった? ゴミもらうよ」
《もう腹いっぱいで動けねぇよ》
包装のビニールを捨て、満腹な様子のクンネをそっと持ち上げ、もう片方の手でタブレットや教科書類、筆記用具など荷物を詰めていく。最後にハンカチを敷いて、その上にクンネを乗せる。
「すぐ家に帰るからね」
そう言い残し、ファスナーを閉めた。
「よし……なぁみんな、今日俺バイトないんだ。誰か空いてないか?」
ホームルームが始まるまでの僅かな時間、彼氏達に話しかけてみる。予想通りハルは習い事があるからと悔しそうに断り、シュカも首を横に振った。
「カンナは……え、ぷぅ太ちゃん怪我したのか? 病院の……あぁ、アキが運ばれた時? そういや先輩と外に居たな、カンナ。俺が行った後ぷぅ太ちゃん久しぶりの外にはしゃぎ過ぎて転んで怪我した? マジか……ウサギってコケることあるんだ。大丈夫なのか? そっか、大したことないならよかった」
カンナはペットの擦り傷のため動物病院への通院があるそうだ、そんなに時間のかかるものでもなさそうだし、それに付き添った後カンナの家でしっぽり……というのもアリだよな。
「リュウは?」
リュウに断られたらカンナに交渉してみよう。
「あー……俺は暇やけど」
「おっ、じゃあデートな」
「勝手に決めよるわぁ、別にええけど」
俺が心配をかけていたから機嫌が悪いとか拗ねているとかそんなんじゃなく、心労が体調不良を引き起こしたとか寝不足だとかそんなことなら、外出は気が乗らないかもしれない。
「……お家デートにしようか、家帰らずか家帰ってから集合か、どっちにする?」
「どっちでもええわ」
「ノリ悪いなぁ……俺と放課後過ごすの嫌か?」
「……んなわけあらへんやん」
なんだ今の間。嘘をつくための間か? それとも的外れな質問にムッとしただけ?
「じゃ、直行な。今サンさん家にお世話んなってるから、そっち行こう」
「おー……」
「ほんとテンション低いな……嫌ならいいんだぞ?」
「嫌やないって」
お、ちょっと怒ったな。じゃあさっきのは的外れな質問にムッとした間だったのか?
「そっか。じゃ、いっぱい遊ぼうな」
約束し終えた頃、ちょうど担任が教室に戻ってきた。する意味があるのかないのかよく分からないホームルームを終えたら、下駄箱へ。その手前でカサネと合流、別の校門から帰るハルと別れ、駅へ。
「ほー……リュウくんと。んじゃ俺ダイニング居ればいい?」
「まぁご自由に……先輩は家帰らなくていいんですか?」
「正直帰りたい、パソコンねぇしフランクも家のが設備整ってていいだろうし」
「じゃあなんで帰らないんです? 俺は居てくれて嬉しいですけど」
「…………それが理由じゃん」
「……? あっ……!? なっ、先輩、もぉ~! 急にデレる!」
想定外のときめきを楽しんだりしながら、サンの家へ帰宅。カサネはパグ犬の元へ一直線、俺はまずはセイカの介助。
「暑かったぁ……鳴雷、シャワー浴びたい」
「あぁ、ゆっくり入っておいで」
「せーか一人で入れるん?」
「……大丈夫」
「何かあったら大声出しや」
靴を脱がせてやるとセイカは一直線に浴室へ向かった。車椅子を畳む俺をリュウが見つめている。
「何だ?」
「いや……風呂譲ったってよかったんか? 水月汗だくやん。言うたアレやけどせーか座っとっただけやし、重たいもん押しとった水月が一番に入った方がええ思うんやけど」
「……そういやそうだな!? アイツ座りっぱどころか下敷きで自分だけ扇ぎ続けてたよな!?」
「ぅお……何も考えとらへんかっただけなんかいな」
「まぁいいや、イチャつこうぜ」
「まずは家主に挨拶したいんやけど……」
やっぱりノリが悪い。いや、まぁリュウは見た目に反して礼儀正しい子だから、違和感はないけれども。
「ただいま~」
声をかけながらダイニングに入ると、文字の勉強をしていた荒凪と教師役のレイが笑顔で出迎えてくれた。クンネの妹も机の上に居たので、鞄から出した彼を届けておいた。
「サンはアトリエみたいだな、行ってみるか」
リュウと二人でアトリエへ。ノックをしても返事がなかったので、そっと扉を開けた。
「サンちゃーん、お邪魔しとるで~」
サンはキャンバスに迷いなく筆を走らせ続けている。長い髪が顔を隠しているが、彼に視界が塞がるという概念はない。
「……集中してるみたいだ」
「無理に挨拶したらそっちの方が失礼そうやね」
「じゃあイチャつこうか」
「……ほんま好きやねぇ」
困ったように眉尻を下げてみせたリュウの口角は僅かに上がっている。機嫌が直ってきたようだ。
(収穫なし、か……)
俺は一番前の席に座っているから、後ろのリュウの様子を授業中に見るのは難しい。モヤモヤするけれど今日一日は耐えるしかないかもな、放課後に時間が取れればいいが。
(単にちょっと寝不足とかで明日には元気になってるかもしれませんしな)
ポジティブに考えて一旦頭の中からリュウを追い出し、授業に集中しようとした。けれど考えないようにしようとすればするほどリュウのことばかり考えてしまい、やはり授業には集中出来なかった。
帰り支度のため鞄をそっと開く。懐中電灯機能では流石に眩し過ぎるかと、画面の明るさを最大にして点けっぱなしにしたスマホの明かりの中、炒飯おにぎりを食べていたクンネが両手を上げた。
《ミツキ! 出ていいのか?》
「食べ終わった? ゴミもらうよ」
《もう腹いっぱいで動けねぇよ》
包装のビニールを捨て、満腹な様子のクンネをそっと持ち上げ、もう片方の手でタブレットや教科書類、筆記用具など荷物を詰めていく。最後にハンカチを敷いて、その上にクンネを乗せる。
「すぐ家に帰るからね」
そう言い残し、ファスナーを閉めた。
「よし……なぁみんな、今日俺バイトないんだ。誰か空いてないか?」
ホームルームが始まるまでの僅かな時間、彼氏達に話しかけてみる。予想通りハルは習い事があるからと悔しそうに断り、シュカも首を横に振った。
「カンナは……え、ぷぅ太ちゃん怪我したのか? 病院の……あぁ、アキが運ばれた時? そういや先輩と外に居たな、カンナ。俺が行った後ぷぅ太ちゃん久しぶりの外にはしゃぎ過ぎて転んで怪我した? マジか……ウサギってコケることあるんだ。大丈夫なのか? そっか、大したことないならよかった」
カンナはペットの擦り傷のため動物病院への通院があるそうだ、そんなに時間のかかるものでもなさそうだし、それに付き添った後カンナの家でしっぽり……というのもアリだよな。
「リュウは?」
リュウに断られたらカンナに交渉してみよう。
「あー……俺は暇やけど」
「おっ、じゃあデートな」
「勝手に決めよるわぁ、別にええけど」
俺が心配をかけていたから機嫌が悪いとか拗ねているとかそんなんじゃなく、心労が体調不良を引き起こしたとか寝不足だとかそんなことなら、外出は気が乗らないかもしれない。
「……お家デートにしようか、家帰らずか家帰ってから集合か、どっちにする?」
「どっちでもええわ」
「ノリ悪いなぁ……俺と放課後過ごすの嫌か?」
「……んなわけあらへんやん」
なんだ今の間。嘘をつくための間か? それとも的外れな質問にムッとしただけ?
「じゃ、直行な。今サンさん家にお世話んなってるから、そっち行こう」
「おー……」
「ほんとテンション低いな……嫌ならいいんだぞ?」
「嫌やないって」
お、ちょっと怒ったな。じゃあさっきのは的外れな質問にムッとした間だったのか?
「そっか。じゃ、いっぱい遊ぼうな」
約束し終えた頃、ちょうど担任が教室に戻ってきた。する意味があるのかないのかよく分からないホームルームを終えたら、下駄箱へ。その手前でカサネと合流、別の校門から帰るハルと別れ、駅へ。
「ほー……リュウくんと。んじゃ俺ダイニング居ればいい?」
「まぁご自由に……先輩は家帰らなくていいんですか?」
「正直帰りたい、パソコンねぇしフランクも家のが設備整ってていいだろうし」
「じゃあなんで帰らないんです? 俺は居てくれて嬉しいですけど」
「…………それが理由じゃん」
「……? あっ……!? なっ、先輩、もぉ~! 急にデレる!」
想定外のときめきを楽しんだりしながら、サンの家へ帰宅。カサネはパグ犬の元へ一直線、俺はまずはセイカの介助。
「暑かったぁ……鳴雷、シャワー浴びたい」
「あぁ、ゆっくり入っておいで」
「せーか一人で入れるん?」
「……大丈夫」
「何かあったら大声出しや」
靴を脱がせてやるとセイカは一直線に浴室へ向かった。車椅子を畳む俺をリュウが見つめている。
「何だ?」
「いや……風呂譲ったってよかったんか? 水月汗だくやん。言うたアレやけどせーか座っとっただけやし、重たいもん押しとった水月が一番に入った方がええ思うんやけど」
「……そういやそうだな!? アイツ座りっぱどころか下敷きで自分だけ扇ぎ続けてたよな!?」
「ぅお……何も考えとらへんかっただけなんかいな」
「まぁいいや、イチャつこうぜ」
「まずは家主に挨拶したいんやけど……」
やっぱりノリが悪い。いや、まぁリュウは見た目に反して礼儀正しい子だから、違和感はないけれども。
「ただいま~」
声をかけながらダイニングに入ると、文字の勉強をしていた荒凪と教師役のレイが笑顔で出迎えてくれた。クンネの妹も机の上に居たので、鞄から出した彼を届けておいた。
「サンはアトリエみたいだな、行ってみるか」
リュウと二人でアトリエへ。ノックをしても返事がなかったので、そっと扉を開けた。
「サンちゃーん、お邪魔しとるで~」
サンはキャンバスに迷いなく筆を走らせ続けている。長い髪が顔を隠しているが、彼に視界が塞がるという概念はない。
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