冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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みんなずっと心配してたから (水月+カンナ・リュウ・シュカ・ハル・カサネ・)

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電車に揺られてカンナと合流する駅に到着。いつものように物陰に隠れて俺を待っていた彼は、挨拶よりも先に俺に抱きついた。

「っとカンナ、おはよう。熱烈だな、嬉しいよ」

「……みー、くん」

「ん?」

「け、が……」

顔を上げたカンナの視線はおそらく俺の首に注がれている。一切顔の上半分を見せないメカクレヘアでもカンナの見ているところが何となく分かるのは、彼が眼球ではなく首をよく動かす子だからだろう。見ている方に頭ごと向くのだ、可愛い。

「手……」

「コルセットは外れたし、手の包帯も外れたよ。元々ちょっと大袈裟だったんだよ」

「……痛く、ない?」

「大丈夫だよ、ありがとうな心配してくれて」

笑顔を作ってカンナの肩をさすったが、彼の表情はイマイチ暗いままだ。空元気だと思われているのだろうか、本当に痛みはないんだがな。

「きょ、の……た……く、けん……く、し……て」

「今日の体育見学してって? 大丈夫だってば。体育祭も近いしそんな訳にはいかないよ、俺ダンス下手だし」

カンナは首を横に振る。

「だめ……け、がく…………す、の……みぃくん」

シャツをきゅっと掴まれて、真剣な声色で言われては、思わず首を縦に振りそうになる。

「やるって、ぁ、ほら電車来たぞ」

やや強引に誤魔化してカンナを強引に電車内へ引き込む。満員電車に話し続ける余裕はなく、上手い具合に問題を先送りに出来た。



普段は単語帳や参考書を片手に俺達が声をかけるまで待っているシュカが、今日は駅を出てすぐに俺の方へ駆けてきた。

「水月っ……水月、コルセット外したんですね。もう平気なんですか? 手、手は……よかった、治ってますね。傷跡もないとは……あなた今回は治りがいいんですね。前に私を庇った時の傷はまだ薄く残っているのに……」

「大した傷じゃなかったんだよ。心配させてごめんな、申し訳ないのに嬉しくも思っちゃってることも……ごめんな」

「……構いません。あなたが無事なら、それでいいんです」

シュカは自身の胸に手を当てて深く息を吐く。俺をどれほど心配していたか、その仕草から伝わってくる。そんなシュカを見ていると罪悪感なのか喜びなのか自分でもよく分からない感情が湧いてきた。

「早く行きましょう。遅刻してしまいますよ」

目を細めて俺を見つめていたかと思えば、ハッとして先を行く。照れ隠しだろうか、可愛い。



学校に到着、カサネとは行き先が分かれてしまうので階段脇で少し話すことにした。カサネは申し訳なさそうにしているが、他の彼氏達は誰も気にしていない。自分に自信がない態度も愛らしいが、早く慣れて彼氏達との談笑の中での自然な笑顔を見せて欲しいものだ。

「かさねんはまた保健室居るんか?」

「かさねん…………あっ、えっと、そ、そうしようかなって……」

「せっかく朝から来たんですし授業出たらどうです?」

「朝から来たんで体力尽きたんだ」

昨日深夜まで配信をしていたからだろう、カサネは大きな欠伸をしてみせた。

「ほーん……まぁかさねんなりに頑張っとるっちゅう訳や、そんなかさねんには飴ちゃんやろ。何味がええ?」

「えっ? あ、ありがと……じゃあ、んー、レモン。したっけおやすみ……ちが、ぇー、勉強ガンバ!」

保健室を仮眠室だと思っているな、アイツ。中学時代、保健室と言ったら不良のたまり場だった。体調不良どころか怪我をしたって保健室には入りにくかったものだ。それを思えば不登校児が仮眠室代わりにしているなんて可愛いものだな、十二薔薇の治安がいい証だ。

「……! みっつん!」

教室へ着くと既に授業の準備まで終えていたハルが立ち上がった。椅子を蹴りどかし、俺の目の前まで小走りでやってると、他の彼氏達同様まず俺の首を見て、それから手を掴んで持ち上げた。

「おはようハル。手、繋ぎたいのか?」

「怪我見たいの……治ってる? 跡もないじゃん。あんな仰々しい包帯ぐるぐる巻きだったのに」

「大袈裟な病院だったよ」

「え~……? 猫の引っ掻き傷でももう少し残るよ。どこ怪我してたのか分かんない……よかったけどぉ」

納得していないような表情だ、確かに俺の無事を喜んでくれてはいるが不可解なことが多くてそれだけを表に出すのは難しいらしい。

「綺麗に治ってんからええやん、なぁ水月ぃ」

「いいのはいいんだって~……嬉しいよ水月が元気そうで。ずっと心配してたんだもん……」

俺を見つめるハルの目が潤む。

「みっつん……俺、ホントに心配で、みっつん、無事でぇ……無事でよかったぁ~! ぅ、ふっ……ぅう、ゔえぇえんっ……ぁ、ご、ごめんっ、なんかぁ、顔見たら安心して……無事なの分かってたんだけどっ、金曜に会ったんだけどぉ……改めて、だと……なんかぁ」

「ぁ……な、泣くなよ、ハル……ごめんな、心配かけて」

ぽろぽろと涙を溢れさせたハルを慌てて抱き締めた。華奢ながらに男だと確かに分かる肩の具合は何度触れても興奮する。

「みっづん死んじゃうがもっで思っででぇ……でも元気ぃ~! 良がっだぁ~! ふぇえええん……みっつん、みっつぅん…………みつきぃ……」

「ハル……ありがとうな、心配してくれて」

ぽんぽんと優しく背を叩いて撫でていると、不意に鋭い視線に気が付いた。リュウは慈愛に満ちた目で俺達を見つめ、カンナは慌てた様子でハルの二の腕をさすってなだめている。セイカは自身の机の端にハムスターのぬいぐるみをセッティング中だ。

「…………シュカ、どうした?」

俺とハルを睨んでいるのはシュカだ、元々目つきの悪い子だがこんなには悪くなかった。何か明確な意志を持って俺達を睨んでいる。

「……そうやって抱き締めてると、シャツを黒く染められますよ。メイクなんてしてやがりますからねソイツは。さっさと離した方がよろしいかと」

「涙くらいで落ちたりしないし! ハグ羨ましいならそう言えば~? そっちのがみっつんん可愛がってくれるよ」

「こら煽るな。シュカ、気遣ってくれてありがとうな。いいメイク用品だから大丈夫みたいだ。もし他に言いたいことやしたいことがあるんなら、また休み時間にでも時間作って二人で話し聞くよ」

「……別に、話なんてありませんよ」

シュカはふいっとそっぽを向いて、そのまま席に着いた。しようのないヤツだ、次の休み時間呼び出してやるか。
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