冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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母親の話は出来る方が稀? (水月+レイ・サン・カサネ)

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風呂上がり、サンの髪を乾かし終えた俺達は冷たいジュースを飲みながら話した。

「男子高校生の正しい母親との距離感ってどんなもんよ」

「まだ気にしてたんすか。俺は……ん~、高校で家出したっすし……女性の人権が希薄なタイプのド田舎だったんで、母親とはまともに話したことないっす。サンちゃんは?」

そういえばサンの親の話はほとんど聞いたことがなかったな。ヤクザだし、異母兄弟が二人も居るし、聞にくいことこの上ないからな。

「血の気の多い人だったね。でも筋の通らない喧嘩は買うべきじゃないってボクには教えてくれてたよ」

「ヤクザっすねぇ……」

「先々々代組長の娘だから、組的には割と大事なお嬢様だったろうに……なんであんな叩き上げの腕っ節系ヤクザみたいな性格だったのかは永遠の謎だね」

「なるほど……外れ値二人じゃ参考にならないと思うっす、せんぱい。あっ、サキヒコく~ん、サキヒコくんってお母さんどんな人だったんすか?」

ジュースを飲み終え、コップを流し台に置いたレイはダイニングで文字の勉強をしているサキヒコと荒凪の元へ向かった。俺とサンもそれを追う。

「どんな……よく働く人だった」

年積家、大体そうだろ。

「せんぱいがお母さんとの距離感に困ってるんすけど、サキヒコくんはどんな感じっした?」

「年積家において親は上司、もしくは先輩。私の話はミツキの参考にはならないと思うし、ミツキの親子関係は良好で悩むことは何もないと思う」

「そっすか……ですってせんぱい、気にしなくていいんすよ。俺が原因なんで俺が言うのも変っすけど」

「荒凪くんは?」

サンはふらふらと手を漂わせ、荒凪の頭を探り当てると撫でながら尋ねた。

「きゅ? 僕達お母さん居ない」
「物心つく前に死んだ。顔も知らない」

「ありゃー……そっかぁ。まぁボクも親の顔はよく知らないよ、そういうもんそういうもん」

サンが知らないのは見えてないからだろ……ん? いや、サンは触れば顔は分かるはずだ。何故知らないんだ?

「顔知らないんすか?」

「母さんはメイク崩れるとか言って嫌がったし、父親の方は脂っぽくて触りたくなかったから」

呼び方の違いから複雑な親子関係を感じる。

「せーかくんは……聞かない方がいいっすよね? 多分」

「あぁ、やめてくれ」

「コンちゃんはダメだし……せんぱいの参考になる子居ないっすね」

クンネ達はどうだろう。故郷は滅んだとか言っていたし、聞くべきではないのかな。そもそも小人って小人同士で交尾して生まれるのか? なんか……木からポンッて生まれたりしてそうな気もする。

「明後日リュウにでも聞くよ」

「カサくんは?」

「今居ないんすよ。散歩でしたっけ、あの子も家庭環境に問題ありなんすか? せんぱい」

「あぁ、いや……全然分からん。悪くはないと思う、聞いてみるよ」

癌治療を受けさせたり、引きこもりや留年を許していたり、ペットを飼育していることから、家庭環境は良好なものだと察せられる。カサネには遠慮なく聞けそうだ。



──聞いてみた。

「親との距離感……? えぇ……いや、普通にしてりゃいいじゃん」

散歩から帰ってきたカサネはパグ犬の足を濡れタオルで拭きながら眉を顰めている。

「玄関まで来て聞くことかそれか」

「俺は母親に髪を切られ、服を選ばれ、食事制限を受けている訳ですが」

「俺はどれもしてねぇな。ゃ、俺は髪ねぇしカロリーバーしか食ってねぇからちょっと話変わってくっから、あんま気にしなくていいかも」

「せんぱいあのパグがでかでかとプリントされた部屋着、自分で選んでたんですか?」

「自分で買ってるに決まってんだろ……親に買ってもらった服なんて制服くらいだべ」

「……服、自分で買った方がいいですかね?」

「知らねぇよぉ……つーか俺十九だべ? 来年酒飲める歳だべ? ちょっと違うだろ」

とはいえ後三年で俺もその歳だ。

「今度ハルに服選びのコツ教えてもらおうかな……」

足を拭き終えたパグ犬は一直線にリビングへ向かう。カサネは愛犬を追うことはせず、キッチンで水道水を汲んで飲んだ。

「はぁっ…………なぁレイちゃん、鳴雷くんなんでこんなことなってんの」

「話の流れでマザコンって言っちゃって」

「ふーん……まぁ仲悪いよりはいいんじゃないか?」

「俺も本気で言った訳じゃないんすよ、なのにせんぱい気にしちゃって」

以前から何度か気にしたことがあった問題だ、改めて言われればそりゃ数十分は悩んでしまう。だがこれ以上彼氏達を悩ませるのは不本意だ。よし、何か別の話をしよう。話題を変えれば意識も次第に逸れていくだろう。

「……カサネせんぱい、お散歩って結構長時間なんですね」

「そうか? 二時間くらいだぞ」

「夏場は昼に散歩させると足焼けちゃうって聞いたっすけど、靴とか履いていくんすか?」

「ゃ、公園まで抱えて行った。いつもはペットカート乗せてんだけど、今日は大変だったなぁ……毛まみれだべ」

カサネはパグ柄の服についたクリーム色の毛を見下ろし、ため息をつく。

「玄関にコロコロあるよ」

「え、見逃してた……ごめん毛まみれのまま来ちゃって。コロコロしてくる」

ぺたぺたと足音が離れていく。

「玄関にコロコロ置いてるって珍しいっすね」

「フタ兄貴が来た時に玄関でかけないと、ヒト兄貴が来た時にうるさいからね」

「階違うとはいえ猫アレルギーで猫と同居してるっておかしいよやっぱり……」

「問題起こすから事務所住んでろってフタ兄貴に言ってるのヒト兄貴だし、家あるくせに事務所に住んでるのもヒト兄貴の勝手だから、どれだけ泣いても鼻水垂らしてもヒト兄貴が悪いんだよ」

サンのヒトに対する好感度の低さが伺える。苦笑いで誤魔化していると犬の毛を取り終えたカサネが戻ってきた。ゲームをしておらず、ペットに構っていないカサネは貴重だ。イチャつけないか狙ってみようかな。
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