冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ベッドはガリガリ順に (水月+歌見・レイ・サン・セイカ・カサネ・荒凪)

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ほこほこという擬態語が似合う、湯上がりのカサネに質問を投げかけてみた。兄と弟どっちが欲しいか、甘えるのと甘えられるのどっちが好きか、そんな質問だ。

「え~……急に聞かれても分かんねぇよ」

思い付きの話題として急に聞かれがちな質問だと思うのだが。

「ボクみたいな弟と」

「俺みたいな兄貴なら」

「どっちがいいっすか?」

「え、サンちゃんかナナくん? えー……ナナくん、かなぁ」

「よっしゃ!」

「ボク不人気だなぁ、ナナくんにもキツいとか言われたし」

年齢、体格、収入、全てを上回る弟を笑顔で受け入れられる兄はこの世にそう多くないと思う。

「理由とかあります?」

「……一緒にゲーム出来そうだから」

「お兄ちゃんいくらでもやってやるぞ!」

「はぁ~ヤダヤダ目明の遊びだよ全くゲームなんてさぁ」

ゲームには視力が必須だ。サンは面白くない結果への八つ当たりのようにベッドに勢いよく寝転がり、ベッド全体に長い黒髪を広げた。

「な、なんかごめん……俺、一人っ子だし、ちっちゃい頃は祖父母の家に預けられまくってたし、それからは入院ばっかで同級生ともあんま関わりなかったからさ、歳上との方が付き合いやすくて……だから、兄貴の方がいいかなって」

「ボク歳上だよ!」

突然ガバッと起き上がるサンは身長と長髪のせいで下手なお化けより怖い。

「う、うん……ゃ、弟か兄かってんだから、年齢操作してのもしも話だと思ったんだけど……?」

「気にするな弟よ。サンのアレは自分が一番じゃないと気に入らない末っ子気質ってヤツだ」

「お、おぉ……もう弟認定されてる」

上京して妹の世話をしなくてよくなってせいせいした、なんてことをよく言っているけれど、世話をする弟妹を求めるような言動が多いんだよな。サンが末っ子気質なら、歌見はとことん兄気質なんだろう。

「甘えていいぞ」

「あ、甘え……? いや、よく分かんねぇし、別にいい……」

ある意味自立した生活を送る、悪く言えば孤独なカサネは、甘え方も甘やかし方もよく分かっていないのだろう。そういうのは俺が教えるので、歌見にはもうしばらくカサネへの兄ムーブは控えてもらおう。

「お……?」

困惑していたカサネを背後から抱き締めてくるんと回り、歌見に背を向ける。

「……ふふ」

可愛いヤキモチだとでも言うような笑いと共に頭を撫でられた。

「なっ、鳴雷くんっ? ななっな、何? な、なんで、なに……なん……なっ……」

カサネは俺の腕の中でモゾモゾ動き、とつぜんの抱擁にますます困惑を深めた。ウブな反応が可愛くて腕の力を強めてしまう。

「荒凪くんは弟っすよね」

「あぁ、間違いない。荒凪くんはかなりの弟キャラだ」

「きゅ? 僕達、おとーと」

「俺のことお兄ちゃんだと思って甘えていいからな」

カサネの頭頂部に鼻を押し付けて大きく息を吸いながら、荒凪に兄ヅラをする歌見の様子を横目で見る。

「……? なな、僕達の兄、違う」
「ギュアッ!」

「うわっ!?」

喉から響く威嚇の声と共に、荒凪の複腕がペチンっと歌見の腰を叩いた。

「きゅ! なな叩く、ダメ!」
「ギュルルル……弟盗るな」

主腕で複腕を押さえ、自分の腹辺りに向かって怒る荒凪の姿は何だか滑稽だ。

「痛た……何だ? 不思議なことになってるな」

「荒凪くんは兄弟が合体してるんすよ、お兄ちゃんの方が怒ってるんす。せんぱいがお兄ちゃんそっちのけで俺がお兄ちゃんだとか言うから」

「そこまでは言ってないが……えぇと、悪かったな、荒凪くん……荒夜くん、だったか? お兄さんの方は。兄の座を奪おうなんて思っちゃいない、兄弟まとめて甘やかしてやるよ。ほら、おいで」

「きゅっ! きゅ? きゅ~……行こ?」
「…………分かった」

喉の奥から響いていた低く唸るような声が了承の返事をすると、荒凪はようやく足を動かし、歌見に抱きついた。

「おっ……!? とっ、とと……意外と重いな。よしよし」

「きゅふふ、なな好き~」
「叩いた、ごめんなさい」

「ん? あぁ、気にするな」

ふらつきながらも歌見は荒凪を受け止め、頭を撫で回した。

「……なぁ、まだ寝ないのか?」

微笑ましく見守る俺の服の裾を引いたのはセイカだ。

『眠いのか?』

「……? セイカくん眠いんすか?」

「えっ、ぁ、いや、別に……まだ大丈夫だけど」

あぁ、失敗した。セイカはこういう状況で正直に答えられる子じゃない。バカみたいに聞き返すのはセイカには合わないんだ。

『俺はそろそろ眠いかな』

「明日は土曜日で夜更かし日和なんすけど、俺も……ふわ、眠いっす。仕方ないっすね、寝ましょ」

「ん、そろそろ寝るか? えーと、床に毛布が敷かれてるが……これの上で寝ていいんだよな?」

「生憎ウチに敷布団はなくてね。背中痛めないように各々工夫した寝相でよろしく頼むよ」

「俺はベッド~、っす!」

ぼふんっ、と勢いよくレイがベッドに飛び込む。これで成人済なんだよな、レイ……

「あっおい木芽、勝手に寝るな。ベッドは家主の物だろ」

「水月と相談して決めたんだよ、ボクと後二人くらいは寝れるから床で寝たら身体痛めそうなガリガリ達はベッドで一緒に寝ようって」

「俺別にガリガリじゃないすけど、歌見せんぱいのナイスバディとは天地レベルで差があるっすからね」

ちょっと身体を反らすだけで肋骨が浮いて見えるヤツのどこがガリガリじゃないって言うんだ。

「会議に入れなくて悪いね。リビングのソファはまだ空いてるよ、一人になっちゃうけど寝心地は床よりずっといいと思うから、好きに使って」

「一人か、うーん……ん? おい木芽、ガリガリ順に二人なら繰言とセイカだろ」

『セイカは俺と寝たいって可愛くおねだりして来たので』

「……!? してない!」

「してたじゃん。ボクも聞いたよ?」

「し、したっちゃしたけど、可愛くおねだりとか、そんなんじゃない!」

「そういうことならいいんだ。悪いなセイカ、つっついて」

セイカは顔を赤くしつつもそれ以上は何も言わず、床に敷かれた毛布の上に腰を下ろした。その隣に俺も座り、義足を外すのを手伝ってやると、セイカは気まずそうに俯いた。手を出さない方がよかったかな?

「カサネくん右と左どっちがいいっすか?」

「真ん中は譲らないよ」

「えっ、えぇ……俺、人と寝るの、ちょっと……俺ソファで寝るよ。フランク、リビング居させてもらってるし……」

「そう? じゃあナナくんか荒凪くんがベッド……どっちがガリガリ?」

「歌見せんぱいムッチムチっすから荒凪くんすかねぇ」

「おい、ムキムキって言え」

カサネがタオルケットを持って寝室を出ていったので、余ったベッドの枠に荒凪が入ることになった。彼は誘われるままにベッドに入り、サンの二の腕に頭を置いた。

『先輩、一緒に寝ましょう』

「あぁ、三人ならその方がいいかもな」

敷布団に変えられた毛布は二枚あったが、そのうち一枚は無人のままとなることが決定した。

「あ、電気消さないと……サン、電灯のスイッチってどこだ?」

「灯り点けてたの? 消えろって言ったら消えるよ」

半信半疑と言った様子で歌見が声を上げると、灯りはフッと消えた。スマート家電に馴染みのない歌見は興奮冷めやらぬと言った具合に俺の隣に寝転がり、俺とセイカをまとめて抱き締めた。
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