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おまけ
おまけ 媚薬を盛ろう! 後編
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口と喉を好き勝手に使ってもらう快感にうっとりしていたら、後孔に入ったままのローターが震え始めた。結腸口の奥に入った三つのそれの震えは、私の腰を溶かしてしまう。
「んんぅゔっ、んぐっ、んっ、んっ……!」
「はー……やっば。こんなえぐめのイラマチオ、趣味じゃないのに……薬やば……怖」
ワックスで固めてオールバックにして、フタとの差別化を図っている髪が鳴雷さんの手でどんどんぐしゃぐしゃにされていく。
「んっ、くぅっ……! んっ、ふ、んんっ……!」
鳴雷さんの匂いが鼻腔を犯して肺を満たす。鳴雷さんの味が舌を痺れさせていく。鳴雷さんの陰茎が私の喉を犯す音が鼓膜を通さず骨や肉から脳に伝わる。目を開けて見えるのは鳴雷さんの肌だけ……触覚は言わずもがな、五感の全てが鳴雷さんで埋め尽くされている。これほどの幸福と快楽は他にない。
「……さっきからちょくちょくイってません? イラマ好きなんですか?」
「ひゅ、き……」
腰を止めて尋ねてくれた鳴雷さんを必死に見上げて答えた。
「へぇ、ヒトさんプライド高いから嫌がると思ってやってるのに……いや、ヒトさんMでしたね、加虐性高めるような薬盛るくらいですもんね」
「んごっ……ぉ、ゔっ……ぅえっ……」
張ったカリが喉の粘膜をごりごり抉る。鳴雷さんの陰茎を追い出したい訳じゃないのに、勝手に嗚咽してしまう。
「組長がドMとか、やばくないですか?」
「ん……ふ、ぐっ……ほっ…………にゃう、かみ……ひゃん、らけ……」
「俺だけ? 俺に対してだけM? そうかなぁ、ボスとかに対しても結構Mじゃないですか? 歳下に虐められたいタイプなんですよヒトさんって。確かボスさんも歳下でしたよね」
鳴雷さんの両手がそっと首を掴む。
「あの人より俺の方がヒトさんのこと虐められるし、気持ちよく出来ますから、もうメス顔でボスボス言わないでくださいね」
メス顔なんてボスに対してはしていない、そう反論することは許されなかった。口を肉棒が埋めているからじゃない、それだけじゃない、鳴雷さんが私の首を絞め始めたからだ。
「……っ!? ゔ……! くっ…………!」
骨張った手が私の命を握っている。喉仏を指で転がして遊んでいる。苦しい。気持ちいい。苦しい。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。
「ん、んんっ……!」
全身を大きく跳ねさせて絶頂を迎えると、鳴雷さんは私の首から手を離した。
「ん……ぉ、おぉっ……!? ぇ、へぇっ……げほっ、けほ……」
同時にまだ勃ったままの陰茎を私の喉から引き抜き、涙と鼻水と唾液でぐしゃぐしゃになり、鼻の穴も口も大きく開きっぱなしの私の顔目掛けて射精した。
「……!? ぅあ……」
てっきり喉奥に流し込まれると思っていた。顔射とは……あぁ、鳴雷さんの精液の匂いが脳に染み込んでいく。温かさを肌が覚えてしまう。
「はっ……は…………ぁ、ん……」
毛穴一つ一つを犯されているような気分になり、必死で嗅いで身悶えする。
「顔射嬉しいですか? ヒトさん」
「うれしいれす……でも、目、開けられなくて……鳴雷さん見れないの、さみしいです……」
「コンちゃん、タオル取ってきて」
「神使いの荒い……」
脱衣所に置いてある何の変哲もない白いタオルが鳴雷さんの手に届けられた。どうする気だろうと辛うじて開く右目で観察していると、鳴雷さんはそのタオルで私の顔を覆った。
「よし。OK。ヒトさん、綺麗な顔がタオルで隠されちゃってますよ。顔の凹凸がギリギリ分かるくらいです、どうしましょうねぇ」
鳴雷さんはタオル越しに私の鼻をつまみ、コリコリと弄ぶ。乳首でも弄るみたいな手つきに、次第に興奮を高めていく。
「過剰拘束、マミフィケーション……それもイイんですけど、まぁ今回は別のプレイで。はい、綺麗になりましたよ」
顔にかかった精液を拭いてくれたみたいだ。鳴雷さんの精液でドロドロになったままでもよかったのに……
「ありがとうございます」
「どういたしまして、ヒトさん」
少し残念に思っていたけれど、精液を拭き取ったタオルが顔の真下に置かれ、そこから立ち上る匂いを感じ取った瞬間、その残念さは吹っ飛んだ。
「……! ん……ふ…………すぅ……は…………すぅ、はぁ、あっ……」
「嗅いだらいいなぁと思って置いたんですけど……はは、ホントに嗅いだ」
ギシ、とベッドが鳴る。鳴雷さんがベッドの上に居る。擦り寄ってみようかとぼやけた頭で考える私の腰を、鳴雷さんはポンっと叩いた。
「んひっ……!?」
叩かれた腰からビリビリと快楽が広がる。息を吸えば鼻や口にタオルが張り付き、精液の匂いを嗅がせる。息苦しさと雄の匂いで狂ってしまいそうだ。
「んぅっ! んっ、んっ、ひぃ……!」
尾骶骨の辺りを狙って何度も腰を叩かれている。鳴雷さんの手のひらの、手首に一番近いところ……掌底打ちで使う部分だ。衝撃がよく伝わる、ローターに刺激されて敏感になった腹の奥深くまで。
「気持ちいいんですか? ヒトさん。お尻叩かれて喘いじゃってますけど」
「んぁっ! はっ、はっ……気持ちいい、ですっ。気持ちいいですっ……」
「こんなので気持ちよくなっちゃうなんて──」
尻を叩かれても感じる淫乱、とするには証拠が弱い気がする。だって、私が叩かれているのは尾骶骨の辺りで、しかも全然痛がらせる気のない奥へ振動を伝えるための打ち方なのだから、私をマゾだと貶めたいのならこの叩き方じゃダメだと思う。もっと手のひら全体で、尻っぺたをパァンッ! と……あぁ、想像するだけで鳥肌が立つ。されてみたい。鳴雷さんになら、叩かれてみたい。
「──猫ちゃんみたいですよ」
「は……? んんっ! んっ、は……なに、をっ……くっ、ぅんっ!」
「尻尾の付け根ポンポン叩くと喜ぶのは猫の特徴の一つですよ。知りませんでした? 猫アレルギーですもんね。フタさんなら多分知ってると思いますけど」
私の呼吸器官を虐める猫のことだろうとも、フタより知識が浅いなんて私のプライドが許さない。
「知ってますっ! そのくらい、ひってぇんっ! は、話してる時に叩くのっ、らめっ、んひっ!」
「知ってましたか、失礼しました。やっぱりヒトさんは賢いですね、自分で飼ってない生き物のことでも詳しいなんて」
「ぁ……そ、そうです、私かしこい……」
「そんな賢い人が猫ちゃんみたいにお尻叩かれて感じちゃうの、すっごく可愛いですよ」
猫と同じだと言われるのは心外だけれど、賢いと褒められるのも可愛いと愛でられるのも心地いい。鳴雷さんの低くて甘い声には説得力と中毒性がある、彼の声は人の思考を奪って脳を蕩けさせてしまう。
「はっ、ぁ、ん……かわ、いい……? わた、しっ?」
「はい、とっても」
今鳴雷さんが叩いている腰には刺青が彫ってある。今彼の目の前にある私の背中には不動明王が居る。彼が少し前に揉みしだいた尻も、掴んだ太腿も、彼に抱きついた腕にも、どこもかしこも墨が入っている。ひと目で分かる裏社会の人間を、可愛い?
「わ、たしっ……かわ、い……」
「はい、可愛いです」
鳴雷さんより背が高いのに。191センチもあるのに。筋肉だってそこそこあるし、目はそれほど大きくないし、サンみたいに睫毛が長くないし、フタみたいに愛想も良くない。こんな私が──?
「ヒトさんは、可愛いんです」
鳴雷さんは私の頭を撫でながら、私の腰を手のひら全体で優しく撫でた。労わるような愛撫だ。
「…………!? ぅ……イっ、くぅゔゔっ!」
「……? 今何でイったんですか?」
「あ……? ぅ……わか、らにゃ……れすっ……あひゃま、じゅわ、ぱちぱち、なって」
「脳イキですかね? 本当に可愛い……撫でてイくなんて、最高です。このまま甘やかして脳イキとか深イキさせまくっても面白そうですけど、今日はお仕置きですからね」
顔の下に置かれていたタオルが奪われる。
「コンちゃん、タオルあと三枚お願い。あと、シェパードさん辺りからガーゼちょっともらってきて。くれるだけでいいから」
「神を顎で使いよる……」
「ヒトさん、立てますか?」
「立つん……れすか? こひっ、も……あし、もぉ……がくがくっ、で、だめ……」
「一旦ローターは止めておきますから。ここ座ってください」
鳴雷さんが何をしたいのかよく分からない。けれど、私は震える足で立ち上がった。鳴雷さんに支えられながら、ベッドのすぐ傍へ移された何の変哲もない椅子に腰を下ろした。
「んっ……! くっ、ふぅ……」
すっかり性器と化した腸は座った衝撃すら快楽に変換する。喘ぎ声を漏らした後、どうにか呼吸を整えようとしていると、右手首に締め付けられる感覚があった。
「鳴雷さん……? なに、を……?」
椅子の肘置きに右手が縛り付けられている。さっき精液を拭いたタオルで、だ。
「みっちゃん、ただいま」
「ありがとう、お疲れ様」
続けて左手も肘置きに縛られ、左右の足もそれぞれ椅子の足に縛り付けられる。
「怪我したんじゃったら手当てしに行こうかと言うとったぞ」
「断っておいて……あぁ、いや、情けないとこ見てもらいましょうか? ヒトさん」
「……!? やだっ、絶対いやです、もっとナメられる……!」
私を椅子に縛り付けながら、鳴雷さんは意地悪を言う。首を横に振って嫌がると、鳴雷さんはいつもの優しい笑顔になって私の耳にキスをした。
「ひぅっ……!」
「冗談ですよ、こんなに可愛いヒトさんを他の男に見せたりするもんですか」
「ワシは?」
「ぁ……ひと、り……じめ? うれしい、鳴雷さん……」
「ワシ……」
縛り終えると鳴雷さんは私から一歩離れ、縛られた私を眺めて楽しんだ。椅子に座る正しい姿勢での拘束の意図が分からない、縛って抱きたいのだとしたら後孔が座面に隠れるこの姿勢は適さない。
「鳴雷さん……?」
「ヒトさん、ようやくムラムラはちょっと治まってきたんですけど、イライラはなかなか治まらないんです。すごい薬ですね、これ。いくら可愛いとはいえ、こんなの盛った上にちょっと嘘までついたヒトさんには、お仕置きが必要です。土下座するほど反省してたんですから、お仕置き受け入れますよね?」
鳴雷さんはそう言いながら、分野さんから受け取ったガーゼにローションを染み込ませていく。
「乳首とおちんちんの先っぽ、ぴっかぴかに磨いてあげますね」
「へ……? んひぃっ!?」
ローションがたっぷり染み込んだガーゼが、私の亀頭をじゅりっと擦った。ローション由来の滑らかさと、ガーゼの目の荒さ、この二つのコンビネーションは凄まじい。
「ひぁあぁああっ!? やだっ、やあぁああっ!」
鳴雷さんは宣言通り私の亀頭を磨き始めた。
「黒くておっきくてカッコイーおちんちん、綺麗にしておかないともったいないでしょう? 擦ったらチェリーピンクに戻っちゃったりしないかな~、ってちょっと思ったり」
「やらぁあぁああっ! にゃくなるっ、なぐにゃるぅうっ! ちんっ、んひっ! ひぐぅうっ……! 先っ、ばっかぁ、やりゃあぁぁあっ!」
「ピンクと言えば、アキのってすごく綺麗なピンクなんですよ。セックスどころかオナニーもしてないって感じなんです、もちろんお尻も。沈着する色素がないってことなんですかね? 体毛薄い上に白いから見えにくいし、子供に手ぇ出してるみたいでちょっと、ねぇ? まぁ子供なのは子供なんですけど」
「イっでりゅっ、イっでまひゅっ、やめてくりゃはいぃっ!」
最も敏感な部位と言ってもいい亀頭に、こんな刺激を与えられたらおかしくなってしまう。もう気持ちいいのか何なのかすらよく分からない、腰が勝手に震える、喉が裂けそうなくらいに声を張り上げてしまう、瞼の裏に光が瞬く幻覚が見える、脳がばちばちしてる。
「イくまでやるなんて言ってませんよ俺。ヒトさんへのお仕置きなんです、これは。イってもやめませんよ」
「……! ごめんにゃひゃいっ、ごめんりゃしゃいっ! ごみぇっ、んぁああぁっ! ちんちんもぉやらぁあぁっ! もぉいらにゃっ、あぁあああーっ!?」
「謝罪と反省は受け付けました。だけど、謝ってるから……反省してるから、はい終わりってのも、ねぇ? 罰が必要じゃないですか。ヒトさんだってフタさんが謝っても罰与え続けたこと、あるでしょう?」
私の亀頭を磨く手はそのまま、鳴雷さんは私の右手の小指を甘く噛んだ。その瞬間私はぷしゅっと陰茎から何かを漏らした。
「お……? 潮吹きですか? すごぉいヒトさん! すごいです!」
ようやくガーゼを擦り付ける手が止まった。なのに、私の陰茎はまだビクビクと震えて、快楽に浸っている。
「……おちんちんばっかりしてちゃ、可哀想ですよね。次はこっちしましょうか」
ローションをまぶし直しながら鳴雷さんが見ているのは、私の胸元だ。鳴雷さんの予告を受けて乳首に意識が向く、痛いくらいに勃ってしまう。
「あぁ……硬くして、えらいですね」
「ゃ……ゃ、やめっ……ぃやあぁあああああっ!? なにっ、なんれぇっ、ぢぐびっ、ひぃいぃいいっ!? おがじっ、おがひぃっ、ぢぐびごんにゃっ、ぎもぢよくにゃかっひゃあっ!」
「そりゃ指で弄るのとローションガーゼは違いますよ」
ザラザラとしたガーゼの感触が、ローションによって滞りなく痛みなく滑らかに与えられ続ける。乳首という小さな部位に与えるにはあまりに過剰な快楽は、あっという間に全身に広がって私の身体を震わせた。
「やりゃっ、やらぁああっ! ぢくびっ、ごんにゃイぐのぉっ、ほっ、やりゃっ、やぁあああぁあっ! イぐっ、イぐぅうっ! ぢぐびイっでるっ!」
「服着てるだけで喘いじゃう胸にしちゃいましょうね~」
「やらぁっ! そんにゃっ、やっあぁあっ! イっでりゅっ、もぉイっでるぅゔっ! おがひっ、なりゅ、胸へんなるぅゔぅっ……!」
乳首での絶頂という、三十年足らずの人生で鳴雷さんに出会ってからしか経験したことのないものが、経験したことのある人間は少ないであろう稀有なものが、今途切れなくやってきている。腰が勝手に跳ねて、触れられてもいない陰茎を情けなく揺らして、半勃ちのまま何なのか分からない汁を撒き散らす。
「はぁ……ヒトさん可愛い」
自分の半分ほどの歳の子供に乳首を責められ、連続絶頂で汁まみれなんて、情けないにも程がある。なのに鳴雷さんは私を心底から可愛いと評して、涙と鼻水と唾液でぐちゃぐちゃの私の顔を舐め回す。
「ん……」
絶頂し続けている私の顔を舐め回した末に、私の緩んだ口に舌を押し込んだ。乳首をローションガーゼで磨かれながら、快楽のあまり身体を痙攣させながら、彼の舌に移った私の体液由来だろうしょっぱさを恥じた。
「んっ、ぐぅうっ……! ふっ、ぅぐっ、んっ、んっ、くぅゔんっ!」
「んっ……ん、はぁ、ダメだ、我慢出来ない……出来ません、ヒトさんが薬盛るから悪いんですからね」
鳴雷さんはガーゼを投げ捨て、私の足を縛ったタオルをほどいて太腿を掴んだ。
「ローションガーゼ、ヒトさんが泣くまでしようと思ったけど……俺のタマが破裂する方が先ですよ。ヒトさんに注がせてくださいね」
ちゅ、ちゅ、と頬や耳にキスを繰り返しながら、鳴雷さんはそう呟いている。快楽に浸された脳では鳴雷さんの言葉を正しく理解出来なくて、後孔に擦り付けられている陰茎が欲しいばっかりで、気付けば鳴雷さんの腰に足を回し、腰をヘコヘコ揺らして鳴雷さんに媚びていた。
「入れてっ、くらひゃいっ……ひっ、ぁあああっ! ぁ、んっ…………ぉおっ!? ほっ、ぉぐっ、奥ぅゔっ! らめなひょこっ、はいりゅうっ!」
散々抱かれて緩んでいた穴は易々と再びの挿入を受け入れた。鳴雷さんは先程入れたローターがそのままであることを気にせず、亀頭でぐりぐりとローターを押し込んでいき、結腸口の向こう側まで入れてしまった。
「おっ…………ほ、ぉ……」
入ってはいけないような雰囲気のある性感帯に、ローターが三個と亀頭も入ってきた。当然私は絶頂し、腰をガクガクと揺らしながら雄としての屈服を示すちょろちょろとした弱々しい射精を行った。
「ほっ……ほ、ぉ…………ふっ……ゔあぁあっ!?」
ローターが動き出した。おそらく三個全てが最大の振動で私の未知の領域を責め立てる。その振動に私がまだ困惑している間に、鳴雷さんは私の太腿を掴んで激しく腰を振り始めた。
「ぁひっ!? ひっ、ィぐぅうっ! ゔあっ、ぁああっ!? おっ、ほぉっ!? ぉぐっ、ゔぅっ、ふっ、ゔぅんっ!」
ローターは結腸口の奥に残留したまま、鳴雷さんの太く固く逞しい肉棒が私の体内を掻き回す。腹の奥を震わせられ続ける快楽、結腸口をぐぽぐぽと弄ばれる快感、支配される悦び、敏感になった腸壁への刺激、全てが私の頭と身体を電撃のようなものとして走り回った。そのうちに私は意識を失い、気付けば全てが終わっていた。
「……っ、う……痛っ、痛たたた」
腰や太腿の裏など、普段あまり使っていない部位がダル痛い。後々ハッキリと筋肉痛になってくるのだろうこの部位は、セックス筋とでも呼ぶのかななんて考えて、笑みが漏れる。
「おはようございますヒトさん」
いつも以上に低い、鳴雷さんの声。隣に寝転がる彼は私を血走った目で睨んでいた。
「死ぬほど頭が痛いです。立てません。腰も辛い。タオルとかシーツ洗うのコンちゃんとサキヒコくんに頼んじゃいました、後でヒトさんからも謝っといてください」
「は、はい……頭、大丈夫ですか? 頭痛薬とか……いります?」
「これ絶対あの変な媚薬の副作用でしょ……痛い、死ぬほど痛い……これ本当に国の認可を受けた薬ですか」
試作品、しかも失敗作だと言えば鳴雷さんは私を軽蔑するかもしれない。私は黙って頷いた。
「マジか……日本、恨む…………でもそれ以上に、ヒトさん……ヒトさんですよ、よくもこんなもん飲ませましたね。ヒトさんを満足させられなかった、ヒトさんに素直に不満を話せる環境を用意してあげられなかった俺が悪いよねって感情が吹っ飛ぶほどの頭痛ですよ」
「ごめんなさい……私なんでもします、なんでもしますから、どうか嫌わないで……あなたに嫌われたら、私……もう」
「好きぃ……薬盛っちゃうヤバいとこも好き、萌えるぅ……ぁー、痛い、痛過ぎて板になる……ねぇヒトさん、許しませんよヒトさん……次のセックスは俺が言ったコスプレしてくれないと許しませんよ」
「し、します! そんなのでいいんですか?」
「よっしゃ……シチュ、シチュも決めていいですか……」
「なんでもします!」
「…………へへへへ。頭、痛いんで……ちょっと寝ます、寝たら、治るといいな……」
下品な笑みを浮かべたまま、鳴雷さんは気を失うように眠った。まさか副作用に激しい頭痛があるなんて、考えてもみなかった。申し訳なく思いながら彼の頭を撫で、こんな下品な笑顔なのに何故美貌が崩れないのだろうと少し不思議に思った。
「んんぅゔっ、んぐっ、んっ、んっ……!」
「はー……やっば。こんなえぐめのイラマチオ、趣味じゃないのに……薬やば……怖」
ワックスで固めてオールバックにして、フタとの差別化を図っている髪が鳴雷さんの手でどんどんぐしゃぐしゃにされていく。
「んっ、くぅっ……! んっ、ふ、んんっ……!」
鳴雷さんの匂いが鼻腔を犯して肺を満たす。鳴雷さんの味が舌を痺れさせていく。鳴雷さんの陰茎が私の喉を犯す音が鼓膜を通さず骨や肉から脳に伝わる。目を開けて見えるのは鳴雷さんの肌だけ……触覚は言わずもがな、五感の全てが鳴雷さんで埋め尽くされている。これほどの幸福と快楽は他にない。
「……さっきからちょくちょくイってません? イラマ好きなんですか?」
「ひゅ、き……」
腰を止めて尋ねてくれた鳴雷さんを必死に見上げて答えた。
「へぇ、ヒトさんプライド高いから嫌がると思ってやってるのに……いや、ヒトさんMでしたね、加虐性高めるような薬盛るくらいですもんね」
「んごっ……ぉ、ゔっ……ぅえっ……」
張ったカリが喉の粘膜をごりごり抉る。鳴雷さんの陰茎を追い出したい訳じゃないのに、勝手に嗚咽してしまう。
「組長がドMとか、やばくないですか?」
「ん……ふ、ぐっ……ほっ…………にゃう、かみ……ひゃん、らけ……」
「俺だけ? 俺に対してだけM? そうかなぁ、ボスとかに対しても結構Mじゃないですか? 歳下に虐められたいタイプなんですよヒトさんって。確かボスさんも歳下でしたよね」
鳴雷さんの両手がそっと首を掴む。
「あの人より俺の方がヒトさんのこと虐められるし、気持ちよく出来ますから、もうメス顔でボスボス言わないでくださいね」
メス顔なんてボスに対してはしていない、そう反論することは許されなかった。口を肉棒が埋めているからじゃない、それだけじゃない、鳴雷さんが私の首を絞め始めたからだ。
「……っ!? ゔ……! くっ…………!」
骨張った手が私の命を握っている。喉仏を指で転がして遊んでいる。苦しい。気持ちいい。苦しい。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。
「ん、んんっ……!」
全身を大きく跳ねさせて絶頂を迎えると、鳴雷さんは私の首から手を離した。
「ん……ぉ、おぉっ……!? ぇ、へぇっ……げほっ、けほ……」
同時にまだ勃ったままの陰茎を私の喉から引き抜き、涙と鼻水と唾液でぐしゃぐしゃになり、鼻の穴も口も大きく開きっぱなしの私の顔目掛けて射精した。
「……!? ぅあ……」
てっきり喉奥に流し込まれると思っていた。顔射とは……あぁ、鳴雷さんの精液の匂いが脳に染み込んでいく。温かさを肌が覚えてしまう。
「はっ……は…………ぁ、ん……」
毛穴一つ一つを犯されているような気分になり、必死で嗅いで身悶えする。
「顔射嬉しいですか? ヒトさん」
「うれしいれす……でも、目、開けられなくて……鳴雷さん見れないの、さみしいです……」
「コンちゃん、タオル取ってきて」
「神使いの荒い……」
脱衣所に置いてある何の変哲もない白いタオルが鳴雷さんの手に届けられた。どうする気だろうと辛うじて開く右目で観察していると、鳴雷さんはそのタオルで私の顔を覆った。
「よし。OK。ヒトさん、綺麗な顔がタオルで隠されちゃってますよ。顔の凹凸がギリギリ分かるくらいです、どうしましょうねぇ」
鳴雷さんはタオル越しに私の鼻をつまみ、コリコリと弄ぶ。乳首でも弄るみたいな手つきに、次第に興奮を高めていく。
「過剰拘束、マミフィケーション……それもイイんですけど、まぁ今回は別のプレイで。はい、綺麗になりましたよ」
顔にかかった精液を拭いてくれたみたいだ。鳴雷さんの精液でドロドロになったままでもよかったのに……
「ありがとうございます」
「どういたしまして、ヒトさん」
少し残念に思っていたけれど、精液を拭き取ったタオルが顔の真下に置かれ、そこから立ち上る匂いを感じ取った瞬間、その残念さは吹っ飛んだ。
「……! ん……ふ…………すぅ……は…………すぅ、はぁ、あっ……」
「嗅いだらいいなぁと思って置いたんですけど……はは、ホントに嗅いだ」
ギシ、とベッドが鳴る。鳴雷さんがベッドの上に居る。擦り寄ってみようかとぼやけた頭で考える私の腰を、鳴雷さんはポンっと叩いた。
「んひっ……!?」
叩かれた腰からビリビリと快楽が広がる。息を吸えば鼻や口にタオルが張り付き、精液の匂いを嗅がせる。息苦しさと雄の匂いで狂ってしまいそうだ。
「んぅっ! んっ、んっ、ひぃ……!」
尾骶骨の辺りを狙って何度も腰を叩かれている。鳴雷さんの手のひらの、手首に一番近いところ……掌底打ちで使う部分だ。衝撃がよく伝わる、ローターに刺激されて敏感になった腹の奥深くまで。
「気持ちいいんですか? ヒトさん。お尻叩かれて喘いじゃってますけど」
「んぁっ! はっ、はっ……気持ちいい、ですっ。気持ちいいですっ……」
「こんなので気持ちよくなっちゃうなんて──」
尻を叩かれても感じる淫乱、とするには証拠が弱い気がする。だって、私が叩かれているのは尾骶骨の辺りで、しかも全然痛がらせる気のない奥へ振動を伝えるための打ち方なのだから、私をマゾだと貶めたいのならこの叩き方じゃダメだと思う。もっと手のひら全体で、尻っぺたをパァンッ! と……あぁ、想像するだけで鳥肌が立つ。されてみたい。鳴雷さんになら、叩かれてみたい。
「──猫ちゃんみたいですよ」
「は……? んんっ! んっ、は……なに、をっ……くっ、ぅんっ!」
「尻尾の付け根ポンポン叩くと喜ぶのは猫の特徴の一つですよ。知りませんでした? 猫アレルギーですもんね。フタさんなら多分知ってると思いますけど」
私の呼吸器官を虐める猫のことだろうとも、フタより知識が浅いなんて私のプライドが許さない。
「知ってますっ! そのくらい、ひってぇんっ! は、話してる時に叩くのっ、らめっ、んひっ!」
「知ってましたか、失礼しました。やっぱりヒトさんは賢いですね、自分で飼ってない生き物のことでも詳しいなんて」
「ぁ……そ、そうです、私かしこい……」
「そんな賢い人が猫ちゃんみたいにお尻叩かれて感じちゃうの、すっごく可愛いですよ」
猫と同じだと言われるのは心外だけれど、賢いと褒められるのも可愛いと愛でられるのも心地いい。鳴雷さんの低くて甘い声には説得力と中毒性がある、彼の声は人の思考を奪って脳を蕩けさせてしまう。
「はっ、ぁ、ん……かわ、いい……? わた、しっ?」
「はい、とっても」
今鳴雷さんが叩いている腰には刺青が彫ってある。今彼の目の前にある私の背中には不動明王が居る。彼が少し前に揉みしだいた尻も、掴んだ太腿も、彼に抱きついた腕にも、どこもかしこも墨が入っている。ひと目で分かる裏社会の人間を、可愛い?
「わ、たしっ……かわ、い……」
「はい、可愛いです」
鳴雷さんより背が高いのに。191センチもあるのに。筋肉だってそこそこあるし、目はそれほど大きくないし、サンみたいに睫毛が長くないし、フタみたいに愛想も良くない。こんな私が──?
「ヒトさんは、可愛いんです」
鳴雷さんは私の頭を撫でながら、私の腰を手のひら全体で優しく撫でた。労わるような愛撫だ。
「…………!? ぅ……イっ、くぅゔゔっ!」
「……? 今何でイったんですか?」
「あ……? ぅ……わか、らにゃ……れすっ……あひゃま、じゅわ、ぱちぱち、なって」
「脳イキですかね? 本当に可愛い……撫でてイくなんて、最高です。このまま甘やかして脳イキとか深イキさせまくっても面白そうですけど、今日はお仕置きですからね」
顔の下に置かれていたタオルが奪われる。
「コンちゃん、タオルあと三枚お願い。あと、シェパードさん辺りからガーゼちょっともらってきて。くれるだけでいいから」
「神を顎で使いよる……」
「ヒトさん、立てますか?」
「立つん……れすか? こひっ、も……あし、もぉ……がくがくっ、で、だめ……」
「一旦ローターは止めておきますから。ここ座ってください」
鳴雷さんが何をしたいのかよく分からない。けれど、私は震える足で立ち上がった。鳴雷さんに支えられながら、ベッドのすぐ傍へ移された何の変哲もない椅子に腰を下ろした。
「んっ……! くっ、ふぅ……」
すっかり性器と化した腸は座った衝撃すら快楽に変換する。喘ぎ声を漏らした後、どうにか呼吸を整えようとしていると、右手首に締め付けられる感覚があった。
「鳴雷さん……? なに、を……?」
椅子の肘置きに右手が縛り付けられている。さっき精液を拭いたタオルで、だ。
「みっちゃん、ただいま」
「ありがとう、お疲れ様」
続けて左手も肘置きに縛られ、左右の足もそれぞれ椅子の足に縛り付けられる。
「怪我したんじゃったら手当てしに行こうかと言うとったぞ」
「断っておいて……あぁ、いや、情けないとこ見てもらいましょうか? ヒトさん」
「……!? やだっ、絶対いやです、もっとナメられる……!」
私を椅子に縛り付けながら、鳴雷さんは意地悪を言う。首を横に振って嫌がると、鳴雷さんはいつもの優しい笑顔になって私の耳にキスをした。
「ひぅっ……!」
「冗談ですよ、こんなに可愛いヒトさんを他の男に見せたりするもんですか」
「ワシは?」
「ぁ……ひと、り……じめ? うれしい、鳴雷さん……」
「ワシ……」
縛り終えると鳴雷さんは私から一歩離れ、縛られた私を眺めて楽しんだ。椅子に座る正しい姿勢での拘束の意図が分からない、縛って抱きたいのだとしたら後孔が座面に隠れるこの姿勢は適さない。
「鳴雷さん……?」
「ヒトさん、ようやくムラムラはちょっと治まってきたんですけど、イライラはなかなか治まらないんです。すごい薬ですね、これ。いくら可愛いとはいえ、こんなの盛った上にちょっと嘘までついたヒトさんには、お仕置きが必要です。土下座するほど反省してたんですから、お仕置き受け入れますよね?」
鳴雷さんはそう言いながら、分野さんから受け取ったガーゼにローションを染み込ませていく。
「乳首とおちんちんの先っぽ、ぴっかぴかに磨いてあげますね」
「へ……? んひぃっ!?」
ローションがたっぷり染み込んだガーゼが、私の亀頭をじゅりっと擦った。ローション由来の滑らかさと、ガーゼの目の荒さ、この二つのコンビネーションは凄まじい。
「ひぁあぁああっ!? やだっ、やあぁああっ!」
鳴雷さんは宣言通り私の亀頭を磨き始めた。
「黒くておっきくてカッコイーおちんちん、綺麗にしておかないともったいないでしょう? 擦ったらチェリーピンクに戻っちゃったりしないかな~、ってちょっと思ったり」
「やらぁあぁああっ! にゃくなるっ、なぐにゃるぅうっ! ちんっ、んひっ! ひぐぅうっ……! 先っ、ばっかぁ、やりゃあぁぁあっ!」
「ピンクと言えば、アキのってすごく綺麗なピンクなんですよ。セックスどころかオナニーもしてないって感じなんです、もちろんお尻も。沈着する色素がないってことなんですかね? 体毛薄い上に白いから見えにくいし、子供に手ぇ出してるみたいでちょっと、ねぇ? まぁ子供なのは子供なんですけど」
「イっでりゅっ、イっでまひゅっ、やめてくりゃはいぃっ!」
最も敏感な部位と言ってもいい亀頭に、こんな刺激を与えられたらおかしくなってしまう。もう気持ちいいのか何なのかすらよく分からない、腰が勝手に震える、喉が裂けそうなくらいに声を張り上げてしまう、瞼の裏に光が瞬く幻覚が見える、脳がばちばちしてる。
「イくまでやるなんて言ってませんよ俺。ヒトさんへのお仕置きなんです、これは。イってもやめませんよ」
「……! ごめんにゃひゃいっ、ごめんりゃしゃいっ! ごみぇっ、んぁああぁっ! ちんちんもぉやらぁあぁっ! もぉいらにゃっ、あぁあああーっ!?」
「謝罪と反省は受け付けました。だけど、謝ってるから……反省してるから、はい終わりってのも、ねぇ? 罰が必要じゃないですか。ヒトさんだってフタさんが謝っても罰与え続けたこと、あるでしょう?」
私の亀頭を磨く手はそのまま、鳴雷さんは私の右手の小指を甘く噛んだ。その瞬間私はぷしゅっと陰茎から何かを漏らした。
「お……? 潮吹きですか? すごぉいヒトさん! すごいです!」
ようやくガーゼを擦り付ける手が止まった。なのに、私の陰茎はまだビクビクと震えて、快楽に浸っている。
「……おちんちんばっかりしてちゃ、可哀想ですよね。次はこっちしましょうか」
ローションをまぶし直しながら鳴雷さんが見ているのは、私の胸元だ。鳴雷さんの予告を受けて乳首に意識が向く、痛いくらいに勃ってしまう。
「あぁ……硬くして、えらいですね」
「ゃ……ゃ、やめっ……ぃやあぁあああああっ!? なにっ、なんれぇっ、ぢぐびっ、ひぃいぃいいっ!? おがじっ、おがひぃっ、ぢぐびごんにゃっ、ぎもぢよくにゃかっひゃあっ!」
「そりゃ指で弄るのとローションガーゼは違いますよ」
ザラザラとしたガーゼの感触が、ローションによって滞りなく痛みなく滑らかに与えられ続ける。乳首という小さな部位に与えるにはあまりに過剰な快楽は、あっという間に全身に広がって私の身体を震わせた。
「やりゃっ、やらぁああっ! ぢくびっ、ごんにゃイぐのぉっ、ほっ、やりゃっ、やぁあああぁあっ! イぐっ、イぐぅうっ! ぢぐびイっでるっ!」
「服着てるだけで喘いじゃう胸にしちゃいましょうね~」
「やらぁっ! そんにゃっ、やっあぁあっ! イっでりゅっ、もぉイっでるぅゔっ! おがひっ、なりゅ、胸へんなるぅゔぅっ……!」
乳首での絶頂という、三十年足らずの人生で鳴雷さんに出会ってからしか経験したことのないものが、経験したことのある人間は少ないであろう稀有なものが、今途切れなくやってきている。腰が勝手に跳ねて、触れられてもいない陰茎を情けなく揺らして、半勃ちのまま何なのか分からない汁を撒き散らす。
「はぁ……ヒトさん可愛い」
自分の半分ほどの歳の子供に乳首を責められ、連続絶頂で汁まみれなんて、情けないにも程がある。なのに鳴雷さんは私を心底から可愛いと評して、涙と鼻水と唾液でぐちゃぐちゃの私の顔を舐め回す。
「ん……」
絶頂し続けている私の顔を舐め回した末に、私の緩んだ口に舌を押し込んだ。乳首をローションガーゼで磨かれながら、快楽のあまり身体を痙攣させながら、彼の舌に移った私の体液由来だろうしょっぱさを恥じた。
「んっ、ぐぅうっ……! ふっ、ぅぐっ、んっ、んっ、くぅゔんっ!」
「んっ……ん、はぁ、ダメだ、我慢出来ない……出来ません、ヒトさんが薬盛るから悪いんですからね」
鳴雷さんはガーゼを投げ捨て、私の足を縛ったタオルをほどいて太腿を掴んだ。
「ローションガーゼ、ヒトさんが泣くまでしようと思ったけど……俺のタマが破裂する方が先ですよ。ヒトさんに注がせてくださいね」
ちゅ、ちゅ、と頬や耳にキスを繰り返しながら、鳴雷さんはそう呟いている。快楽に浸された脳では鳴雷さんの言葉を正しく理解出来なくて、後孔に擦り付けられている陰茎が欲しいばっかりで、気付けば鳴雷さんの腰に足を回し、腰をヘコヘコ揺らして鳴雷さんに媚びていた。
「入れてっ、くらひゃいっ……ひっ、ぁあああっ! ぁ、んっ…………ぉおっ!? ほっ、ぉぐっ、奥ぅゔっ! らめなひょこっ、はいりゅうっ!」
散々抱かれて緩んでいた穴は易々と再びの挿入を受け入れた。鳴雷さんは先程入れたローターがそのままであることを気にせず、亀頭でぐりぐりとローターを押し込んでいき、結腸口の向こう側まで入れてしまった。
「おっ…………ほ、ぉ……」
入ってはいけないような雰囲気のある性感帯に、ローターが三個と亀頭も入ってきた。当然私は絶頂し、腰をガクガクと揺らしながら雄としての屈服を示すちょろちょろとした弱々しい射精を行った。
「ほっ……ほ、ぉ…………ふっ……ゔあぁあっ!?」
ローターが動き出した。おそらく三個全てが最大の振動で私の未知の領域を責め立てる。その振動に私がまだ困惑している間に、鳴雷さんは私の太腿を掴んで激しく腰を振り始めた。
「ぁひっ!? ひっ、ィぐぅうっ! ゔあっ、ぁああっ!? おっ、ほぉっ!? ぉぐっ、ゔぅっ、ふっ、ゔぅんっ!」
ローターは結腸口の奥に残留したまま、鳴雷さんの太く固く逞しい肉棒が私の体内を掻き回す。腹の奥を震わせられ続ける快楽、結腸口をぐぽぐぽと弄ばれる快感、支配される悦び、敏感になった腸壁への刺激、全てが私の頭と身体を電撃のようなものとして走り回った。そのうちに私は意識を失い、気付けば全てが終わっていた。
「……っ、う……痛っ、痛たたた」
腰や太腿の裏など、普段あまり使っていない部位がダル痛い。後々ハッキリと筋肉痛になってくるのだろうこの部位は、セックス筋とでも呼ぶのかななんて考えて、笑みが漏れる。
「おはようございますヒトさん」
いつも以上に低い、鳴雷さんの声。隣に寝転がる彼は私を血走った目で睨んでいた。
「死ぬほど頭が痛いです。立てません。腰も辛い。タオルとかシーツ洗うのコンちゃんとサキヒコくんに頼んじゃいました、後でヒトさんからも謝っといてください」
「は、はい……頭、大丈夫ですか? 頭痛薬とか……いります?」
「これ絶対あの変な媚薬の副作用でしょ……痛い、死ぬほど痛い……これ本当に国の認可を受けた薬ですか」
試作品、しかも失敗作だと言えば鳴雷さんは私を軽蔑するかもしれない。私は黙って頷いた。
「マジか……日本、恨む…………でもそれ以上に、ヒトさん……ヒトさんですよ、よくもこんなもん飲ませましたね。ヒトさんを満足させられなかった、ヒトさんに素直に不満を話せる環境を用意してあげられなかった俺が悪いよねって感情が吹っ飛ぶほどの頭痛ですよ」
「ごめんなさい……私なんでもします、なんでもしますから、どうか嫌わないで……あなたに嫌われたら、私……もう」
「好きぃ……薬盛っちゃうヤバいとこも好き、萌えるぅ……ぁー、痛い、痛過ぎて板になる……ねぇヒトさん、許しませんよヒトさん……次のセックスは俺が言ったコスプレしてくれないと許しませんよ」
「し、します! そんなのでいいんですか?」
「よっしゃ……シチュ、シチュも決めていいですか……」
「なんでもします!」
「…………へへへへ。頭、痛いんで……ちょっと寝ます、寝たら、治るといいな……」
下品な笑みを浮かべたまま、鳴雷さんは気を失うように眠った。まさか副作用に激しい頭痛があるなんて、考えてもみなかった。申し訳なく思いながら彼の頭を撫で、こんな下品な笑顔なのに何故美貌が崩れないのだろうと少し不思議に思った。
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