冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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水月くんは英語が分からない (水月+ネザメ・ミフユ・カサネ・シュカ・セイカ・ハル・リュウ・カンナ)

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レイとビデオ通話していた時に聞こえた、あのガシャーンッ! という音。俺は義母が皿を割りまくった姿を見たことがあったから、また義母が何かドジをしたのだろうと思い込んだが、レイはアキが何かやらかしたと思っていた。実際どっちだったのだろう。

(アキきゅんだとしたら、怪我してないか不安ですな)

義母が怪我しようと俺はどうでもいいけれど、アキか荒凪が怪我をしたとしたら……考えるだけで鼓動が激しくなってくる。落ち着かない。

「もうこんな時間だね、そろそろ解散かな。それじゃあ皆、また放課後」

「はい、ネザメさん。また後で」

「また後で~……」

「待て繰言二年生! どこへ行く気だ、貴様は自分と同じクラスだろう」

「ほ、保健室に……」

「体調が悪い訳でもないのに保健室になど行かせられるものか! ほら、さっさと来い!」

「ぅうぅ……帰りてぇ……」

カサネは俺達に紛れて保健室へ逃げようとしたようだが、ミフユがそれを警戒していないはずもなく、目立つ髪色の彼はあっさり見つかりミフユに捕らえられてしまった。小柄なミフユに腕を掴まれ、二年生の教室へと引っ張られていくカサネの姿は情けないと言う他ない。

「あんなに授業サボりたがる怠け者で、よく十二薔薇の試験を突破しましたね。案外頭はいいんでしょうか?」

「さぁ……先輩の頭については何とも、あぁでもノヴェムくんと話出来てたな。英語は出来るみたいだったぞ」

「お前が英語苦手過ぎるだけだろ。ノヴェム、結構日本人に合わせてゆっくりめに話してくれてるし、普通に授業受けてりゃある程度は話せるはずだぞ」

「セイカの頭脳で普通を語るなよ……」

「確かに言い方アレだけど~、中身には同意~。俺も話せるし~」

「ハルは英語めちゃくちゃ得意じゃないか……リュウ、リュウは話せないよなっ?」

「英語は話されへんけど大阪弁は世界共通言語やから問題ないで」

「ほら!」

「あなたこれと一緒で本当にいいんですか?」

「そう言われると……かなり嫌だな、そう言うシュカはどうなんだよ」

「あのガキと話した覚えはありませんが、日常会話程度なら不自由はないと思いますよ。あなたと違ってちゃんと予習復習してますから」

悪口でもなく自然にガキ呼ばわりしたな……口悪いなぁホント。

「……カンナは? 英語全然分かんない俺の気持ち分かってくれるよなっ?」

「の、べむ……くん、なに言っ……か、は、だいた……分か…………よ?」

「カンナまで! クッ、そうだったカンナはどんなテストでも確実に八割もぎ取る秀才だった……えっじゃあ俺は本当にリュウと同レベルってこと? やだ」

「傷付くわぁ~」

微妙に口角が上がっている。こんなのでも嬉しいのか、このドM……試しに貶めてみたが上手くいったみたいだな。

「五時間目なんだっけ」

「コミュ英。総英より実戦向きなんだから、ノヴェムくんと話したいならちゃんと勉強しなよ~?」

「分かってるよ……でもなぁ、苦手なんだよなぁ、英語の聞き取り……」

可愛らしい男児の英語が聞き取れないんだ、美形でもない中年教師の英語など聞き取れるものか。勉強にはやる気が重要なのだ。

「せめて先生がもっとイケボなら……」

「うっとり聞き入って勉強の手が進まない、とか言うんでしょう。今度は」

「……そうかも」

「せーかや俺がみっつん甘やかして翻訳してあげるのがよくないよね、獅子は我が子を千尋の谷に落とす! 俺達も心を鬼にして翻訳せずノヴェムくんとみっつんを見守ろっ、ねっせーか」

「えっ、う、うん……コホンっ、ぁー……わ、分かったわ、あなた」

セイカは下手くそにしなを作って声を甲高くしてみせた。

「いや俺達で夫婦コントやろうとは言ってないから」

「…………我が子とか言うから!」

「慣用句じゃん! いや慣用句じゃないか……とにかくそういう感じのじゃん! 聞いたことあるでしょ獅子の子落とし! なんで急にボケるの!」

「夫婦コントやるんやとしてもハルが嫁役やろ」

「え~やだよこんな家事育児に協力しなさそうな夫」

「しないぞ。でも俺の介護はしろ」

「誰が結婚すんのこんなヤツと」

「誰!? 俺!? 俺! 俺俺俺俺!」

「うるさっ、急に歌わないで」

「セイカの世話は全て俺がする!」

「嫌だ運搬は秋風がいい」

「フラれたぁ!」

「……あ、先生来ましたよ」

「座れぇ!」

教室の窓から廊下を覗いていたシュカのおかげで教師には静かで授業のしやすいクラスだと感じてもらえただろう。

「なぁセイカ……オクトーバーって八月っぽいと思わないか」

「はぁ……オクトでタコ連想してるだけだろお前。いいか、お前のカタカナクソ発音だと伸ばし棒が二本だろ。タコの足は八本。足して十。十月だ」

「俺のレベルまで下がってくれてありがとう……」

だが、覚えやすい訳では決してない連想ゲームなので、俺はこれからも時々「八月」と答えて点を落とすのだろう。
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