1,887 / 2,051
水月くんは英語が分からない (水月+ネザメ・ミフユ・カサネ・シュカ・セイカ・ハル・リュウ・カンナ)
しおりを挟む
レイとビデオ通話していた時に聞こえた、あのガシャーンッ! という音。俺は義母が皿を割りまくった姿を見たことがあったから、また義母が何かドジをしたのだろうと思い込んだが、レイはアキが何かやらかしたと思っていた。実際どっちだったのだろう。
(アキきゅんだとしたら、怪我してないか不安ですな)
義母が怪我しようと俺はどうでもいいけれど、アキか荒凪が怪我をしたとしたら……考えるだけで鼓動が激しくなってくる。落ち着かない。
「もうこんな時間だね、そろそろ解散かな。それじゃあ皆、また放課後」
「はい、ネザメさん。また後で」
「また後で~……」
「待て繰言二年生! どこへ行く気だ、貴様は自分と同じクラスだろう」
「ほ、保健室に……」
「体調が悪い訳でもないのに保健室になど行かせられるものか! ほら、さっさと来い!」
「ぅうぅ……帰りてぇ……」
カサネは俺達に紛れて保健室へ逃げようとしたようだが、ミフユがそれを警戒していないはずもなく、目立つ髪色の彼はあっさり見つかりミフユに捕らえられてしまった。小柄なミフユに腕を掴まれ、二年生の教室へと引っ張られていくカサネの姿は情けないと言う他ない。
「あんなに授業サボりたがる怠け者で、よく十二薔薇の試験を突破しましたね。案外頭はいいんでしょうか?」
「さぁ……先輩の頭については何とも、あぁでもノヴェムくんと話出来てたな。英語は出来るみたいだったぞ」
「お前が英語苦手過ぎるだけだろ。ノヴェム、結構日本人に合わせてゆっくりめに話してくれてるし、普通に授業受けてりゃある程度は話せるはずだぞ」
「セイカの頭脳で普通を語るなよ……」
「確かに言い方アレだけど~、中身には同意~。俺も話せるし~」
「ハルは英語めちゃくちゃ得意じゃないか……リュウ、リュウは話せないよなっ?」
「英語は話されへんけど大阪弁は世界共通言語やから問題ないで」
「ほら!」
「あなたこれと一緒で本当にいいんですか?」
「そう言われると……かなり嫌だな、そう言うシュカはどうなんだよ」
「あのガキと話した覚えはありませんが、日常会話程度なら不自由はないと思いますよ。あなたと違ってちゃんと予習復習してますから」
悪口でもなく自然にガキ呼ばわりしたな……口悪いなぁホント。
「……カンナは? 英語全然分かんない俺の気持ち分かってくれるよなっ?」
「の、べむ……くん、なに言っ……か、は、だいた……分か…………よ?」
「カンナまで! クッ、そうだったカンナはどんなテストでも確実に八割もぎ取る秀才だった……えっじゃあ俺は本当にリュウと同レベルってこと? やだ」
「傷付くわぁ~」
微妙に口角が上がっている。こんなのでも嬉しいのか、このドM……試しに貶めてみたが上手くいったみたいだな。
「五時間目なんだっけ」
「コミュ英。総英より実戦向きなんだから、ノヴェムくんと話したいならちゃんと勉強しなよ~?」
「分かってるよ……でもなぁ、苦手なんだよなぁ、英語の聞き取り……」
可愛らしい男児の英語が聞き取れないんだ、美形でもない中年教師の英語など聞き取れるものか。勉強にはやる気が重要なのだ。
「せめて先生がもっとイケボなら……」
「うっとり聞き入って勉強の手が進まない、とか言うんでしょう。今度は」
「……そうかも」
「せーかや俺がみっつん甘やかして翻訳してあげるのがよくないよね、獅子は我が子を千尋の谷に落とす! 俺達も心を鬼にして翻訳せずノヴェムくんとみっつんを見守ろっ、ねっせーか」
「えっ、う、うん……コホンっ、ぁー……わ、分かったわ、あなた」
セイカは下手くそにしなを作って声を甲高くしてみせた。
「いや俺達で夫婦コントやろうとは言ってないから」
「…………我が子とか言うから!」
「慣用句じゃん! いや慣用句じゃないか……とにかくそういう感じのじゃん! 聞いたことあるでしょ獅子の子落とし! なんで急にボケるの!」
「夫婦コントやるんやとしてもハルが嫁役やろ」
「え~やだよこんな家事育児に協力しなさそうな夫」
「しないぞ。でも俺の介護はしろ」
「誰が結婚すんのこんなヤツと」
「誰!? 俺!? 俺! 俺俺俺俺!」
「うるさっ、急に歌わないで」
「セイカの世話は全て俺がする!」
「嫌だ運搬は秋風がいい」
「フラれたぁ!」
「……あ、先生来ましたよ」
「座れぇ!」
教室の窓から廊下を覗いていたシュカのおかげで教師には静かで授業のしやすいクラスだと感じてもらえただろう。
「なぁセイカ……オクトーバーって八月っぽいと思わないか」
「はぁ……オクトでタコ連想してるだけだろお前。いいか、お前のカタカナクソ発音だと伸ばし棒が二本だろ。タコの足は八本。足して十。十月だ」
「俺のレベルまで下がってくれてありがとう……」
だが、覚えやすい訳では決してない連想ゲームなので、俺はこれからも時々「八月」と答えて点を落とすのだろう。
(アキきゅんだとしたら、怪我してないか不安ですな)
義母が怪我しようと俺はどうでもいいけれど、アキか荒凪が怪我をしたとしたら……考えるだけで鼓動が激しくなってくる。落ち着かない。
「もうこんな時間だね、そろそろ解散かな。それじゃあ皆、また放課後」
「はい、ネザメさん。また後で」
「また後で~……」
「待て繰言二年生! どこへ行く気だ、貴様は自分と同じクラスだろう」
「ほ、保健室に……」
「体調が悪い訳でもないのに保健室になど行かせられるものか! ほら、さっさと来い!」
「ぅうぅ……帰りてぇ……」
カサネは俺達に紛れて保健室へ逃げようとしたようだが、ミフユがそれを警戒していないはずもなく、目立つ髪色の彼はあっさり見つかりミフユに捕らえられてしまった。小柄なミフユに腕を掴まれ、二年生の教室へと引っ張られていくカサネの姿は情けないと言う他ない。
「あんなに授業サボりたがる怠け者で、よく十二薔薇の試験を突破しましたね。案外頭はいいんでしょうか?」
「さぁ……先輩の頭については何とも、あぁでもノヴェムくんと話出来てたな。英語は出来るみたいだったぞ」
「お前が英語苦手過ぎるだけだろ。ノヴェム、結構日本人に合わせてゆっくりめに話してくれてるし、普通に授業受けてりゃある程度は話せるはずだぞ」
「セイカの頭脳で普通を語るなよ……」
「確かに言い方アレだけど~、中身には同意~。俺も話せるし~」
「ハルは英語めちゃくちゃ得意じゃないか……リュウ、リュウは話せないよなっ?」
「英語は話されへんけど大阪弁は世界共通言語やから問題ないで」
「ほら!」
「あなたこれと一緒で本当にいいんですか?」
「そう言われると……かなり嫌だな、そう言うシュカはどうなんだよ」
「あのガキと話した覚えはありませんが、日常会話程度なら不自由はないと思いますよ。あなたと違ってちゃんと予習復習してますから」
悪口でもなく自然にガキ呼ばわりしたな……口悪いなぁホント。
「……カンナは? 英語全然分かんない俺の気持ち分かってくれるよなっ?」
「の、べむ……くん、なに言っ……か、は、だいた……分か…………よ?」
「カンナまで! クッ、そうだったカンナはどんなテストでも確実に八割もぎ取る秀才だった……えっじゃあ俺は本当にリュウと同レベルってこと? やだ」
「傷付くわぁ~」
微妙に口角が上がっている。こんなのでも嬉しいのか、このドM……試しに貶めてみたが上手くいったみたいだな。
「五時間目なんだっけ」
「コミュ英。総英より実戦向きなんだから、ノヴェムくんと話したいならちゃんと勉強しなよ~?」
「分かってるよ……でもなぁ、苦手なんだよなぁ、英語の聞き取り……」
可愛らしい男児の英語が聞き取れないんだ、美形でもない中年教師の英語など聞き取れるものか。勉強にはやる気が重要なのだ。
「せめて先生がもっとイケボなら……」
「うっとり聞き入って勉強の手が進まない、とか言うんでしょう。今度は」
「……そうかも」
「せーかや俺がみっつん甘やかして翻訳してあげるのがよくないよね、獅子は我が子を千尋の谷に落とす! 俺達も心を鬼にして翻訳せずノヴェムくんとみっつんを見守ろっ、ねっせーか」
「えっ、う、うん……コホンっ、ぁー……わ、分かったわ、あなた」
セイカは下手くそにしなを作って声を甲高くしてみせた。
「いや俺達で夫婦コントやろうとは言ってないから」
「…………我が子とか言うから!」
「慣用句じゃん! いや慣用句じゃないか……とにかくそういう感じのじゃん! 聞いたことあるでしょ獅子の子落とし! なんで急にボケるの!」
「夫婦コントやるんやとしてもハルが嫁役やろ」
「え~やだよこんな家事育児に協力しなさそうな夫」
「しないぞ。でも俺の介護はしろ」
「誰が結婚すんのこんなヤツと」
「誰!? 俺!? 俺! 俺俺俺俺!」
「うるさっ、急に歌わないで」
「セイカの世話は全て俺がする!」
「嫌だ運搬は秋風がいい」
「フラれたぁ!」
「……あ、先生来ましたよ」
「座れぇ!」
教室の窓から廊下を覗いていたシュカのおかげで教師には静かで授業のしやすいクラスだと感じてもらえただろう。
「なぁセイカ……オクトーバーって八月っぽいと思わないか」
「はぁ……オクトでタコ連想してるだけだろお前。いいか、お前のカタカナクソ発音だと伸ばし棒が二本だろ。タコの足は八本。足して十。十月だ」
「俺のレベルまで下がってくれてありがとう……」
だが、覚えやすい訳では決してない連想ゲームなので、俺はこれからも時々「八月」と答えて点を落とすのだろう。
40
お気に入りに追加
1,240
あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる