冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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眠る時にうるさい人 (水月+カサネ・リュウ・シュカ・カンナ・ミフユ・歌見)

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冬用の掛け布団、冬用のベッドカバー、座布団を三枚並べたもの……三人分の寝床の完成だ。

「カサネたんベッドカバーで寝てもらっていいですかな?」

「えー? ぁ、結構ふこふこしてる……これならいいよ」

煎餅布団よりマシな厚みと柔らかさの冬用ベッドカバーはカサネのお眼鏡にかなったようだ。ベッドカバーは犬用ベッドのすぐ傍に敷いてあるので、寝ながら腕を伸ばすだけで飼い犬を撫でられるというのも好ポイントだろう。俺の細やかな気配りを褒めて欲しい。

「よかった。では皆様を呼んだりあちらの寝床を整えたりしてきますゆえ」

「いてらー」

カサネの雑な見送りを受け、アキの部屋へ移動した。先程から眠そうだったシュカはとうとうリュウの肩に頭を預けている。

「シュカ寝てる?」

「寝とんで」

「寝てません」

まだ起きてはいるようだが、目は開いていない。眉毛が不自然に持ち上がったりしているから、瞼を開けようとはしているようだが、しっかりくっついた上下の瞼はもう離れないらしい。

「俺の部屋に寝床作ったから、リュウとカンナ、シュカ、おいで」

「ええけど、どやって部屋割り決めたん?」

「俺の部屋にはぷぅ太が居るからカンナは傍で寝るだろ? カサネ先輩もフランクちゃんが居るから俺の部屋で寝る。この緊張しやすい大人しめの二人が一番リラックス出来るのがお前なんだよ」

「……そーなん? へへ、なんや嬉しいわぁ」

「シュカはみんなと寝るの苦手だから、せめて俺とか……お前ら古参と一緒がいいかなって」

「寝てないです」

「布団用意したから、もう寝ていいからな」

ベッドの前に、シュカに背を向けて屈む。リュウにも手伝ってもらってシュカの腕を肩にかけ、シュカの太腿に腕を回す。

「よいっ、しょっ……! っとと、よし。行くぞリュウ、カンナ」

シュカをおぶって立ち上がった。リュウは俺の先を行って扉を開け、カンナはあまり俺に掴まる気のないシュカが落ちないよう背を支えてくれた。優しい子達だ。

「ありがとう」

窓を開け、俺の部屋の扉も開けてくれたリュウに礼を言い、シュカを冬用の掛け布団の上で下ろす。この布団は羽毛ではない、分厚い綿だ。体を痛めることはないだろう。

「水月……?」

「おやすみ、シュカ」

「ん……」

タオルケットをかけてやり、代わりに取ったメガネを机に置く。

「ずっと支えてくれてたな、カンナ。ありがとう」

後ろに立っているカンナの頬を撫で、礼を言う。触れていた頬がぽっと赤くなった。

「リュウとカンナはベッド使ってくれ、二人で寝れるよな?」

「ぉん、俺はええけど」

「ぼく、も……てんくん……なら、いー、よ」

「よしよし。じゃ、適当に寝支度整えて寝てくれ。シュカもう寝てるから静かにな」

声を潜めて「はーい」と返事をするリュウと、黙ったまま大きく頷いたカンナに思わず笑みが零れる。癒されるなぁ……

「みっ、な……鳴雷くんっ、座布団で寝んの……?」

「はい。先輩夜中までゲームとかしちゃダメですよ、そういうことするなら夜更かし組が溜まってるリビング行ってくださいね」

「い、いや今日は寝るけど……座布団でいいのっ? 俺端っこ寄ろうかっ? このベッドカバー詰めれば二人くらい寝れると思うけど」

「ふふ、大丈夫ですよ。ありがとうございます……ぁ、もしかして一緒に寝たいってお誘いだったりしました?」

「……!? ち、ちがっ……ちがうぅ……」

顔を真っ赤にしながらぶんぶんと首を横に振る。本当に違うらしいな……それはちょっとショックだが、同じ寝具で寝てもいいと思ってくれていることや、俺を気遣ったことは素直に嬉しい。

「ん……? どないしたんしぐ。うん、うん…………水月ぃ、ぷぅ太くん夜中よぉ動き回んねんて、とりりん嫌がらへんか気にしとるわ。自分らにも迷惑ちゃうかって」

「夜行性なのか? 俺は平気……というかアキやセイカの証言が正しいなら俺の方が迷惑かけると思う」

「なんで?」

「水月寝言酷いし寝相悪いんよ」

「へ、へぇ……」

「ヤってクタクタで寝とったら気にせず寝てられるんやけど、そやなかったらちょおうるさいわな」

俺、寝てる間何言ってんだろ……変なこと言ってないといいけど。

「俺はいっつも寝る時一人やからどんなんか分からんなぁ……今まで何回かみんなと寝たけど文句言われたことないし、大丈夫や思うけど寝相悪かったら堪忍なしぐぅ」

「だ……じょ、ぶ……」

「……先輩は寝相とかどうですか?」

「俺は動かないらしいぞ。呼吸すらかなり静からしくて、昔はよく親とかに起こされた。死んでんじゃねぇのかって」

「へぇ~……」

その「昔」がいつ頃のことなのか知らないが、闘病期間中のことだったなら、親御さんは気が気じゃなかったろうな。

「じゃあ俺だけがうるさいかもしれないのか……シュカに殴られる覚悟決めとくよ。じゃ、他のみんなにも寝床割り当ててくるから」

三人の見送りを受け、再びアキの部屋へ。アキはシュカとリュウが居なくなったベッドに寝転がってスマホを弄っていた。彼はあのまま自分のベッドを使うつもりだろうか。

「アキの部屋、俺の部屋より広いけど幅は狭いんだよな……細長い部屋で、でも縦に並べるほど長くはないから俺の部屋より寝る人数減っちゃうか……」

「ネザメ様はここで寝たいと言っている。その場合、ミフユもお傍に付きたいのだが」

「じゃあアキと、お二人でいっぱいですかね。三つは並べられなさそう……ネザメさんのベッドデカいし」

現在ミフユが膨らませている最中のネザメの外泊用ベッドはそこそこ大きい、贅沢者めと言いたくなるくらいに。

「ミフユさんはネザメさんのベッドで寝たりしませんか?」

「ミフユは寝袋を持ってきている、これで寝るつもりだ」

「そうですか、んじゃ歌見先輩は和室ですね。畳の匂い嫌いとかないですか?」

「大丈夫だ。ノヴェムくんはどうするんだ?」

「ちっちゃい子だしまともな布団で寝かせたいんですけど……アキに頼めませんかね?」

「通訳係が居ないからなぁ……日本語でイケるか?」

アキ専属翻訳係のセイカは現在リビングでアニメ鑑賞中。英語とは違い、ロシア語は他の誰にも話せない。

「ま、イケるでしょ。アキ~」

けれど、そこまで複雑な会話をするつもりではないのだから、日本語だけでも何とかなるはずだ。
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