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ボディブロー並の萌え (水月+カサネ・アキ・レイ・荒凪)
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傷の手当てを終え、犬の生活基盤を整え終わり、俺とカサネはアキを探してプールへ向かった。
「……! にーに!」
プールサイドに座って膝から下を水に浸し、昼食を取っていたアキが満面の笑顔を俺に向けた。
「おかえりなさいっすせんぱい」
「おかえり」
レイはデッキチェアで、荒凪はプールから上半身だけを出してそれぞれ食事をしていた。
(複腕でプールサイドに掴まってお食事……姿勢が安定してますな、腕四本あるの便利そう。わたくしも欲しいですなぁ、六本くらい……服には困りそうですが、同時にイチャつける人数が増えまそ)
妄想しつつ紙皿の中を覗く。茶色い。米か?
「何食べてるんだ?」
「そばめしっす」
「……なんだそれ」
「焼きそばと焼き飯の合体したヤツ……? っすかね。俺も食べたの人生三回目くらいなんで詳しくないっす……アキくん変わり種の冷食色々買ってるみたいっすね」
平日の昼間、アキは料理下手の母親と二人きりだ。昼食を冷凍食品やインスタント食品で済ませることが多い、だから自室に冷蔵庫やレンジを置いているのだろう。俺ならお気に入りを三つ四つ作ってローテーションで食べるが、アキは好奇心旺盛らしく色々買っている。
「食ったことない冷食食う勇気って意外と出ないんだよな俺」
「気持ちは分かるっすね。そちらは……?」
「……あっ、ぉ、お邪魔してますっ。く、繰言重音です」
「あぁカサネくんすか! せんぱいにすっぽり隠れちゃって全然分かんなかったっすよ~」
俺の真後ろに立っていたカサネはそろそろと俺の斜め後ろに移った。
「かさね!」
「アっ、アキ……ちゃん。ひっ、久しぶり……でも、ないか」
「誰?」
荒凪が真っ直ぐな目でカサネを見上げる。
「……っ、は、は……はじめまして。カサネ……です」
俺の留守中に動画の撮り方だとかをアキとセイカに教えに来たと聞いたが、荒凪には会わなかったのか。だが、昨日写真と動画を送ったから荒凪が人間ではないことは知っているはずだ。まぁそれでも実際に目にすると衝撃が大きいのだろう、挨拶が出来ただけでもすごいことなのかもしれない。
「カサネ」
「カサネ先輩も俺の彼氏だよ」
「……仲間?」
「そうそう。荒凪くんの仲間。仲良くしてね」
「きゅ」
鳴きながら頷くと荒凪は箸を持ち直した。
「はぁー……画面越しに見るのとは迫力が違うわ。ちょっと覗いていい? うわ……長っ」
カサネはプールを覗き込み、水面の下をゆらゆらと揺れる荒凪の下半身を眺めた。
「…………なんか、アレみてぇな色してる。あの、貝の……内っ側」
「真珠みたいな光沢ありますよね、人間に変身する時に鱗剥がれるんですけど、螺鈿みたいですごく綺麗なんです。それで螺鈿細工作るのが当面の夢ですね」
荒凪の身体を離れた鱗には他者を害する力はないと分かっているから、個人的な手芸の材料にしたっていいと思う。
「さて……アキ、にーに部屋戻るから、何かあったら呼べよ」
「……? だ!」
しっかり伝わっていない気もするが、まぁいいだろう。
「カサネ先輩、俺の家で過ごすにあたってちょっとした諸注意があるんですけど」
「あぁ……まぁ、あるわな。何?」
「この家で注意すべきは一人だけ、アキのお母さんです。俺の母は俺のハーレムを知ってますし、目の前で俺が誰とキスしようが、なんならセックスしようが無反応です。後でテクがどうこうってダメ出しされることはありますけど」
「イカれてんなぁ……」
「アキのお母さんの方は俺のハーレムを知りませんが、色々あって……レイだけが俺の彼氏だと思ってます。なので、先輩には悪いんですけどあの人の前では俺との関係は隠してください」
「……まぁ、話す気も人前でイチャつく気もねぇし、言われなくてもって感じ」
「そうですか……?」
「あぁ、ホントする気はねぇけどさ、一応……写真とかねぇの? どっちがアキちゃんのお母さんか分かんねぇべや」
「美人な方が俺の母さんです」
「怒られろ」
女性の美醜には疎い俺でも、世間一般的に言えば義母が美人に分類されるのは分かる。俺の母も俺に負けず劣らずの面食いだし。けれど、女性の容姿に頓着のない俺でも分かる。俺と同じ超絶美形、絶世の美女たる母と並べば容易に差がつくと。
「でも本当に美人な方で分かるはずですよ? うーんじゃあ、話しててなんか癪に障るなってなった方がアキのお母さんです」
「お前アキちゃんママ嫌いなの?」
「はは、アレでママを名乗るか」
「嫌いなんだ……」
「まさか、可愛い弟の母親ですよ。今のアキを形作った大きな要素だと思うと本っ当に腹が立つ唯一の功績は日本に逃げてきたことですかねあれそう考えるとそんなに嫌いでもないかもです配送の人か何かだと思うようにしましょうオイ届いた荷物傷入ってんぞクソが」
「息継ぎして? 読みにくいよ?」
「それを言うなら聞き取りにくいでしょう、変なこと言わないでください」
「先に変なこと言ったのお前な?」
「……変なこと言って欲しくなかったらアキの両親、セイカの母親、ハルの父親、レイの元カレ、この辺の話は避けてください」
「お、おぉ……分かった」
「すいません面倒臭くて……あぁ、先輩一人の時間ないと嫌な人でしたっけ。どうしましょう俺、ここに居るの嫌ならプールで遊んできますけど」
言いながら一歩プールへの扉の方へ下がると、カサネに服の裾を掴まれた。つい、だとか、咄嗟に、だとか、そんな動きと表情だ。
「あっ…………う、うんっ、遊んできて……」
「いやいやいやいや無理無理無理無理。言ってくださいよ、俺と一緒に居てもいい……俺と一緒に居たいと思ってくれているのなら! ほら!」
「……怖いの、見たし……怪我したし、フランク寝てるし、心細いから……一緒に居て」
「先輩」
「きゅ、急に落ち着くなよ……何?」
「セイカタイプのなかなかデレねぇ厄介なツンデレと見せかけておいて、一回のおねだりで強めのデレ寄越してくれるの心臓に悪い。車酔いでフラフラしてる時にボディブロー入れられてる感覚」
「心臓じゃなくて腹じゃん。何、嫌なの、お前が正直に言えって言うから素直に言ってんのに……恋愛の駆け引きってヤツ? したいの?」
「違います……すごく、キく。って言ってるだけです。先輩の萌えポイントを語っただけです」
「お、おぉ? 萌え? あぁそう……じゃあ俺このままでいいのね?」
「はい、でも、気を付けないと俺をときめかせ過ぎて俺の理性が飛んだ場合は、先輩は襲われます。性的に」
「…………今みたいなすぐ隣に人が居るとかいう状況なら嫌だけど……本当に二人きりで、乱暴にしないなら、別に……しても、いいっぅおわぁああっ!? 何!? なんで急に壁に頭突きしたの!?」
「フーッ…………先輩、落ち着いたら聞こうと思ってたんですけど、お家で怪奇現象起こってたんですか?」
「お前が一番怖い」
「よかった、先輩の感情を一番揺さぶるのは俺であって欲しいんで」
「負の感情でもそうなんだ……? 怖……」
「まぁまぁ座ってください。ジュース出しますよ」
「柑橘系欲しい……」
額がズキズキと痛む中、俺はカサネをいつもセイカが使っているクッションに誘導し、小さな冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した。
「……! にーに!」
プールサイドに座って膝から下を水に浸し、昼食を取っていたアキが満面の笑顔を俺に向けた。
「おかえりなさいっすせんぱい」
「おかえり」
レイはデッキチェアで、荒凪はプールから上半身だけを出してそれぞれ食事をしていた。
(複腕でプールサイドに掴まってお食事……姿勢が安定してますな、腕四本あるの便利そう。わたくしも欲しいですなぁ、六本くらい……服には困りそうですが、同時にイチャつける人数が増えまそ)
妄想しつつ紙皿の中を覗く。茶色い。米か?
「何食べてるんだ?」
「そばめしっす」
「……なんだそれ」
「焼きそばと焼き飯の合体したヤツ……? っすかね。俺も食べたの人生三回目くらいなんで詳しくないっす……アキくん変わり種の冷食色々買ってるみたいっすね」
平日の昼間、アキは料理下手の母親と二人きりだ。昼食を冷凍食品やインスタント食品で済ませることが多い、だから自室に冷蔵庫やレンジを置いているのだろう。俺ならお気に入りを三つ四つ作ってローテーションで食べるが、アキは好奇心旺盛らしく色々買っている。
「食ったことない冷食食う勇気って意外と出ないんだよな俺」
「気持ちは分かるっすね。そちらは……?」
「……あっ、ぉ、お邪魔してますっ。く、繰言重音です」
「あぁカサネくんすか! せんぱいにすっぽり隠れちゃって全然分かんなかったっすよ~」
俺の真後ろに立っていたカサネはそろそろと俺の斜め後ろに移った。
「かさね!」
「アっ、アキ……ちゃん。ひっ、久しぶり……でも、ないか」
「誰?」
荒凪が真っ直ぐな目でカサネを見上げる。
「……っ、は、は……はじめまして。カサネ……です」
俺の留守中に動画の撮り方だとかをアキとセイカに教えに来たと聞いたが、荒凪には会わなかったのか。だが、昨日写真と動画を送ったから荒凪が人間ではないことは知っているはずだ。まぁそれでも実際に目にすると衝撃が大きいのだろう、挨拶が出来ただけでもすごいことなのかもしれない。
「カサネ」
「カサネ先輩も俺の彼氏だよ」
「……仲間?」
「そうそう。荒凪くんの仲間。仲良くしてね」
「きゅ」
鳴きながら頷くと荒凪は箸を持ち直した。
「はぁー……画面越しに見るのとは迫力が違うわ。ちょっと覗いていい? うわ……長っ」
カサネはプールを覗き込み、水面の下をゆらゆらと揺れる荒凪の下半身を眺めた。
「…………なんか、アレみてぇな色してる。あの、貝の……内っ側」
「真珠みたいな光沢ありますよね、人間に変身する時に鱗剥がれるんですけど、螺鈿みたいですごく綺麗なんです。それで螺鈿細工作るのが当面の夢ですね」
荒凪の身体を離れた鱗には他者を害する力はないと分かっているから、個人的な手芸の材料にしたっていいと思う。
「さて……アキ、にーに部屋戻るから、何かあったら呼べよ」
「……? だ!」
しっかり伝わっていない気もするが、まぁいいだろう。
「カサネ先輩、俺の家で過ごすにあたってちょっとした諸注意があるんですけど」
「あぁ……まぁ、あるわな。何?」
「この家で注意すべきは一人だけ、アキのお母さんです。俺の母は俺のハーレムを知ってますし、目の前で俺が誰とキスしようが、なんならセックスしようが無反応です。後でテクがどうこうってダメ出しされることはありますけど」
「イカれてんなぁ……」
「アキのお母さんの方は俺のハーレムを知りませんが、色々あって……レイだけが俺の彼氏だと思ってます。なので、先輩には悪いんですけどあの人の前では俺との関係は隠してください」
「……まぁ、話す気も人前でイチャつく気もねぇし、言われなくてもって感じ」
「そうですか……?」
「あぁ、ホントする気はねぇけどさ、一応……写真とかねぇの? どっちがアキちゃんのお母さんか分かんねぇべや」
「美人な方が俺の母さんです」
「怒られろ」
女性の美醜には疎い俺でも、世間一般的に言えば義母が美人に分類されるのは分かる。俺の母も俺に負けず劣らずの面食いだし。けれど、女性の容姿に頓着のない俺でも分かる。俺と同じ超絶美形、絶世の美女たる母と並べば容易に差がつくと。
「でも本当に美人な方で分かるはずですよ? うーんじゃあ、話しててなんか癪に障るなってなった方がアキのお母さんです」
「お前アキちゃんママ嫌いなの?」
「はは、アレでママを名乗るか」
「嫌いなんだ……」
「まさか、可愛い弟の母親ですよ。今のアキを形作った大きな要素だと思うと本っ当に腹が立つ唯一の功績は日本に逃げてきたことですかねあれそう考えるとそんなに嫌いでもないかもです配送の人か何かだと思うようにしましょうオイ届いた荷物傷入ってんぞクソが」
「息継ぎして? 読みにくいよ?」
「それを言うなら聞き取りにくいでしょう、変なこと言わないでください」
「先に変なこと言ったのお前な?」
「……変なこと言って欲しくなかったらアキの両親、セイカの母親、ハルの父親、レイの元カレ、この辺の話は避けてください」
「お、おぉ……分かった」
「すいません面倒臭くて……あぁ、先輩一人の時間ないと嫌な人でしたっけ。どうしましょう俺、ここに居るの嫌ならプールで遊んできますけど」
言いながら一歩プールへの扉の方へ下がると、カサネに服の裾を掴まれた。つい、だとか、咄嗟に、だとか、そんな動きと表情だ。
「あっ…………う、うんっ、遊んできて……」
「いやいやいやいや無理無理無理無理。言ってくださいよ、俺と一緒に居てもいい……俺と一緒に居たいと思ってくれているのなら! ほら!」
「……怖いの、見たし……怪我したし、フランク寝てるし、心細いから……一緒に居て」
「先輩」
「きゅ、急に落ち着くなよ……何?」
「セイカタイプのなかなかデレねぇ厄介なツンデレと見せかけておいて、一回のおねだりで強めのデレ寄越してくれるの心臓に悪い。車酔いでフラフラしてる時にボディブロー入れられてる感覚」
「心臓じゃなくて腹じゃん。何、嫌なの、お前が正直に言えって言うから素直に言ってんのに……恋愛の駆け引きってヤツ? したいの?」
「違います……すごく、キく。って言ってるだけです。先輩の萌えポイントを語っただけです」
「お、おぉ? 萌え? あぁそう……じゃあ俺このままでいいのね?」
「はい、でも、気を付けないと俺をときめかせ過ぎて俺の理性が飛んだ場合は、先輩は襲われます。性的に」
「…………今みたいなすぐ隣に人が居るとかいう状況なら嫌だけど……本当に二人きりで、乱暴にしないなら、別に……しても、いいっぅおわぁああっ!? 何!? なんで急に壁に頭突きしたの!?」
「フーッ…………先輩、落ち着いたら聞こうと思ってたんですけど、お家で怪奇現象起こってたんですか?」
「お前が一番怖い」
「よかった、先輩の感情を一番揺さぶるのは俺であって欲しいんで」
「負の感情でもそうなんだ……? 怖……」
「まぁまぁ座ってください。ジュース出しますよ」
「柑橘系欲しい……」
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