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学業に回す余暇はない (水月+荒凪・サキヒコ・スイ・リュウ・ヒト・フタ・サン)
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変更した作戦を彼氏達にメッセージで伝えた俺は、再びプールに戻っていた。バスローブを脱ぎ捨てて冷たい水に身を浸し、荒凪が泡を被せてくれるのを待った。
「水月、おかえり」
頭が泡に包まれて水中呼吸が可能になる。目を開ければ荒凪が嬉しそうに笑っていて、俺の手に甘えるように擦り寄っていた。
「水月、今日ここ寝る?」
「うん、そのつもり。寝れるかなぁ、この浮遊感の中で寝れたら気持ちよさそうなんだけど」
人間は水中で眠れるのだろうか。寝転がったことはないがウォーターベッドというものはあるらしいし、寝違えたり寝癖がついたりしない究極の寝具にも思えるが、体温を奪われ続けるし、この擬似的な無重力状態は心地よいが不安を煽られもする。
「ずっと脱力してられたら気持ちいいけど、どうしてもどっかに力入れちゃうなぁ……」
荒凪を抱き締めて身体を撫で回し、鱗の下の筋肉の意味を知る。
「魚とかタコも全身筋肉みたいなもんだもんね……水中で生きるってのはそういうことなのか」
鉄筋に巻き付かせても簡単にへし折りそうだな、と荒凪の下半身に足を巻き取られながら思った。
翌朝、サキヒコに起こされた俺はプールから上がってくしゃみをした。
「ぅう、寒……水の中に居ればそうでもないのに、出た途端寒いってあるあるだよね」
「おはよう、ミツキ」
「おはよサキヒコくん。コンちゃんの様子見てきてもらっていい?」
「分かった」
熱いシャワーを浴びれば寒気なんて消え失せる。髪を乾かしているとサキヒコが壁をすり抜けて目の前に現れた。
「ミタマ殿はまだ動けそうにない」
「やっぱりか……」
「……ミツキ、服を着る前に姿見を確認した方がいい」
頭にハテナマークを浮かべつつもすぐに済むことなので質問も拒否もせず、アキの部屋に置かれた姿見に被せられた布を取り去り、バスローブを脱いだ。
「うわ」
身体のところどころに鱗の跡がある。足にはぐるぐると巻き付かれた跡があり、腕の内側にはびっしりと付いていた。腕のは荒凪を抱き締めていたことが理由だろう。
「足はまぁズボン履くからいいけど……腕どうしよう、ちょっとキモいよね」
「下ろしていればとりあえず見えないと思う」
「いやいや……それで隠し切るのは現実的じゃないでしょ。長袖着るよ」
圧迫してついた跡じゃない、霊的な痣だ。時間経過で消えるのは同じだがかかる時間が違う。人目につくまでに消えてくれないだろう。
朝食を食べ、自室に向かう。スイも一緒だ。
「制服着てればとりあえず学校には入れると思います。後は生徒会長室に居れば誰も来ないと思うので……それで大丈夫ですか?」
「校内なら何か来れば気付けると思うわ。校内図も覚えた。この部屋いい位置ね、この距離なら二年の教室も一年の教室も霊力使えば二秒で行ける、運動場と体育館はそれより早く行けるかな。で、今日は移動教室なしでしょ、大丈夫」
「生徒会長室から二秒で……!?」
「窓ぶち破って跳べばほぼ直線だもん。命に関わる緊急事態なんだから、それくらい許してよね」
「ぁ、はい、それはまぁ、俺の家の窓じゃないし」
俺の制服に身を包み、長い髪をヘアゴムでまとめたスイは鏡を見て小さく唸った。
「高校生……イケるかしら、ちょっと老けてない?」
「全然大丈夫ですよ、現役にしか見えませんって」
「制服を貸してしまってミツキはどうするんだ?」
「俺はカサネ先輩のとこ行くよ。あの人学校来ないだろうし、メッセで呼んでも家出ないだろうから迎えに行かなきゃ」
「え、ちょっと待ってよ、ナルちゃんも学校来るんじゃないの!? これ予備の制服じゃないの!? ナルちゃん守れると思ってアタシこの依頼引き受けたのにっ、その先輩って子のとこ行って家に帰ってくるまでの間に何かあったらどうするの!」
「一応考えてあります。先にフタさんとこ行くつもりなんです。そこで猫を二匹借りて、一匹を歌見先輩に届けて、もう一匹にボディガード頼んでカサネ先輩のとこに行きます。だから、ヤバいのはフタさんとこ行くまでなんですけど……隣町で、すぐですし、流石に大丈夫かなって」
化け猫が本当にフタの傍を離れられるかどうか分からないから、この作戦もしっかりとしたものではないのだが、とりあえずこの場はスイを納得させられればいい。
「前にリュウが作ってくれた身代わり人形もありますし、大丈夫ですよ」
「すっごい不安なんだけど……分かったわ、信じる。駅までは一緒に行くのよ?」
「はい、色々すいません。お願いします」
出発前にそんな話をした。駅でリュウと合流し、スイの紹介がてら軽く話した。
「ほーん、霊能探偵はん……漫画じみてきたなぁ水月ぃ」
「はは……」
まぁそもそも激ヤセで超絶美形になって高校デビューなんて、ラノベっぽい人生のリセットを行っているから今更だな。
「ボディガードしてくれはるんやんね、それが必要な実感未だに湧いてへんねんけど……まぁ、おおきに。よろしゅうおたのもうしますー」
「じゃあ俺今日は学校休むから、スイさんと仲良くな」
「……制服着てへんなぁとは思ててん。長袖暑ない?」
「暑くない、平気だよ。授業しっかり聞いといてくれ、後で教えて」
「しぐかせーか辺りに頼みぃや」
「お、電車来た。じゃあまた放課後な」
電車に乗った彼氏達に手を振り、俺は一人……いや、見えないけれどサキヒコも一緒だ。二人で戸鳴町に向かった。スイの不安は的中せず、何事もなく穂張事務所に到着。一階の仮眠室に集まっていたらしい三兄弟に出迎えられた。
「おはようございます、ヒトさんフタさんサンさん」
190超えの三人が並んでいると圧迫感がある。さっさと座らせてしまおうと俺は出迎えてくれた彼らを仮眠室に押し戻した。
「オカルト詳しくないんだけど、なーんかすごいことになってるんだってね。ヤバい組織に狙われてるんならウチの出番って思うんだけど、敵がお化けじゃね~」
「盲目はこういう時にこそ役に立つものじゃないですか? 見えないモノこそ視える目、みたいなの。定番でしょう」
「あははっ、フィクションと現実を混同してるバカ発見~。ボクの目はただの飾りだよ」
「しばらく三人で過ごしてもらうことになるかもしれないんですから、仲良くしてくださいね……? ところで、あの、ヒトさん……なんか目赤くないですか? 鼻とかも……」
「……っ、フタが猫の毛まみれの服で部屋から出てきたんですよ! 散々言ったのに!」
なるほど、ゴミ箱から溢れているアレは使用済みの粘着シートか。
「フタさん、ヒトさんはアレルギーで苦しいんですから、猫ちゃんの毛には気を付けないといけませんよ? 目とか鼻とか痒くて痛くて大変なんですよ、くしゃみ止まらなくなっちゃったり苦しいんです」
「……? うん。みつき、おはよぉ。どったの? なんか約束してたっけ」
「昨日話したじゃないですか! あぁもうっ……!」
「ヒ、ヒトさん落ち着いて……あのですね、フタさん、俺変なのに狙われてて」
ヒトとサンには事前にメッセージで状況や作戦を伝えておいた。だが、当然と言うべきかフタには伝わっていない。改めての説明が必要かと内心ため息をつきながら話し始めた俺の目の前に三匹の猫が現れた。
「わっ、あ、猫又……フタさんの化け猫達ですね」
「昨日またノートパソコンを使って話しました。イチとニィという猫達が歌見さんのボディガードにつくと決めたそうです」
決めたのはフタではなく猫達なのか。
「ありがとうございますヒトさん、説明の手間が省けました。えっと、どっちがどっちなんでしょう」
「毛が長いのがイチで柄が汚らしいのがニィです」
サビ柄の猫が毛を逆立ててヒトを威嚇する。
「お、落ち着いてニィちゃん……ヒトさんも言葉選んでくださいね。じゃあ、もう行きます。早くボディガードつけないと危ないかもですし……失礼しますっ、ありがとうございました!」
「みつき? 帰るの? ばいばー……? イチ? ニィ? どうしたの、みつき帰るんだよ? 着いてっちゃダメだよ、おいで」
猫達の姿は俺が立ち上がった時にはもう消えていた、だがフタにはまだ見えているらしい。
「フタには私達で説明しておきます。さ、早く行ってください」
「は、はい……」
そうだ、急がなくては。歌見の身に危険が迫っているかもしれないんだ。何ともない可能性もそこそこ高いけど。
「待ってよみつきどこ行くの、なんでイチとニィ連れてくの? 待って、待っ……待て! 行くな! 待って! 置いてかないで! 離せっ、離してヒト兄ぃ、嫌、いやっ、やだ! イチ! ニィ!」
「水月さん早く! 姿が見えなくなればすぐ忘れますから!」
「……っ、ごめんなさいフタさん後で必ずちゃんと謝りますから!」
フタの絶叫を聞きながら穂張事務所を後にした。静かな繁華街を走り抜け、また駅に着く。
「はぁ……罪悪感やっば。ぅー、でも、説得してもどうせ忘れて別れる時にはまた騒ぐんだろうなってのが分かってるからな~……猫ちゃん達は納得して着いてきてくれてるみたいだし。ごめんねフタさん泣かせて……この辺に居るのかな?」
振り返り、足元に向かって謝罪する。
「師匠達はミツキの頭と肩の上に居るぞ。重くないのか?」
「えっ嘘態度デカ。流石猫」
「……イチ師匠は欠伸をしている。ニィ師匠は顔を洗っている。フタ殿のことは特に気にしていなさそうだ、早く歌見殿のところへ行ってしまおう」
「えぇ……ドライ……まぁ、助かるけど」
フタはあんなに喚いていたのに片思いなのかと少し切なくなりつつも、作戦が滞りなく進んでいることには安堵を覚えた。
「水月、おかえり」
頭が泡に包まれて水中呼吸が可能になる。目を開ければ荒凪が嬉しそうに笑っていて、俺の手に甘えるように擦り寄っていた。
「水月、今日ここ寝る?」
「うん、そのつもり。寝れるかなぁ、この浮遊感の中で寝れたら気持ちよさそうなんだけど」
人間は水中で眠れるのだろうか。寝転がったことはないがウォーターベッドというものはあるらしいし、寝違えたり寝癖がついたりしない究極の寝具にも思えるが、体温を奪われ続けるし、この擬似的な無重力状態は心地よいが不安を煽られもする。
「ずっと脱力してられたら気持ちいいけど、どうしてもどっかに力入れちゃうなぁ……」
荒凪を抱き締めて身体を撫で回し、鱗の下の筋肉の意味を知る。
「魚とかタコも全身筋肉みたいなもんだもんね……水中で生きるってのはそういうことなのか」
鉄筋に巻き付かせても簡単にへし折りそうだな、と荒凪の下半身に足を巻き取られながら思った。
翌朝、サキヒコに起こされた俺はプールから上がってくしゃみをした。
「ぅう、寒……水の中に居ればそうでもないのに、出た途端寒いってあるあるだよね」
「おはよう、ミツキ」
「おはよサキヒコくん。コンちゃんの様子見てきてもらっていい?」
「分かった」
熱いシャワーを浴びれば寒気なんて消え失せる。髪を乾かしているとサキヒコが壁をすり抜けて目の前に現れた。
「ミタマ殿はまだ動けそうにない」
「やっぱりか……」
「……ミツキ、服を着る前に姿見を確認した方がいい」
頭にハテナマークを浮かべつつもすぐに済むことなので質問も拒否もせず、アキの部屋に置かれた姿見に被せられた布を取り去り、バスローブを脱いだ。
「うわ」
身体のところどころに鱗の跡がある。足にはぐるぐると巻き付かれた跡があり、腕の内側にはびっしりと付いていた。腕のは荒凪を抱き締めていたことが理由だろう。
「足はまぁズボン履くからいいけど……腕どうしよう、ちょっとキモいよね」
「下ろしていればとりあえず見えないと思う」
「いやいや……それで隠し切るのは現実的じゃないでしょ。長袖着るよ」
圧迫してついた跡じゃない、霊的な痣だ。時間経過で消えるのは同じだがかかる時間が違う。人目につくまでに消えてくれないだろう。
朝食を食べ、自室に向かう。スイも一緒だ。
「制服着てればとりあえず学校には入れると思います。後は生徒会長室に居れば誰も来ないと思うので……それで大丈夫ですか?」
「校内なら何か来れば気付けると思うわ。校内図も覚えた。この部屋いい位置ね、この距離なら二年の教室も一年の教室も霊力使えば二秒で行ける、運動場と体育館はそれより早く行けるかな。で、今日は移動教室なしでしょ、大丈夫」
「生徒会長室から二秒で……!?」
「窓ぶち破って跳べばほぼ直線だもん。命に関わる緊急事態なんだから、それくらい許してよね」
「ぁ、はい、それはまぁ、俺の家の窓じゃないし」
俺の制服に身を包み、長い髪をヘアゴムでまとめたスイは鏡を見て小さく唸った。
「高校生……イケるかしら、ちょっと老けてない?」
「全然大丈夫ですよ、現役にしか見えませんって」
「制服を貸してしまってミツキはどうするんだ?」
「俺はカサネ先輩のとこ行くよ。あの人学校来ないだろうし、メッセで呼んでも家出ないだろうから迎えに行かなきゃ」
「え、ちょっと待ってよ、ナルちゃんも学校来るんじゃないの!? これ予備の制服じゃないの!? ナルちゃん守れると思ってアタシこの依頼引き受けたのにっ、その先輩って子のとこ行って家に帰ってくるまでの間に何かあったらどうするの!」
「一応考えてあります。先にフタさんとこ行くつもりなんです。そこで猫を二匹借りて、一匹を歌見先輩に届けて、もう一匹にボディガード頼んでカサネ先輩のとこに行きます。だから、ヤバいのはフタさんとこ行くまでなんですけど……隣町で、すぐですし、流石に大丈夫かなって」
化け猫が本当にフタの傍を離れられるかどうか分からないから、この作戦もしっかりとしたものではないのだが、とりあえずこの場はスイを納得させられればいい。
「前にリュウが作ってくれた身代わり人形もありますし、大丈夫ですよ」
「すっごい不安なんだけど……分かったわ、信じる。駅までは一緒に行くのよ?」
「はい、色々すいません。お願いします」
出発前にそんな話をした。駅でリュウと合流し、スイの紹介がてら軽く話した。
「ほーん、霊能探偵はん……漫画じみてきたなぁ水月ぃ」
「はは……」
まぁそもそも激ヤセで超絶美形になって高校デビューなんて、ラノベっぽい人生のリセットを行っているから今更だな。
「ボディガードしてくれはるんやんね、それが必要な実感未だに湧いてへんねんけど……まぁ、おおきに。よろしゅうおたのもうしますー」
「じゃあ俺今日は学校休むから、スイさんと仲良くな」
「……制服着てへんなぁとは思ててん。長袖暑ない?」
「暑くない、平気だよ。授業しっかり聞いといてくれ、後で教えて」
「しぐかせーか辺りに頼みぃや」
「お、電車来た。じゃあまた放課後な」
電車に乗った彼氏達に手を振り、俺は一人……いや、見えないけれどサキヒコも一緒だ。二人で戸鳴町に向かった。スイの不安は的中せず、何事もなく穂張事務所に到着。一階の仮眠室に集まっていたらしい三兄弟に出迎えられた。
「おはようございます、ヒトさんフタさんサンさん」
190超えの三人が並んでいると圧迫感がある。さっさと座らせてしまおうと俺は出迎えてくれた彼らを仮眠室に押し戻した。
「オカルト詳しくないんだけど、なーんかすごいことになってるんだってね。ヤバい組織に狙われてるんならウチの出番って思うんだけど、敵がお化けじゃね~」
「盲目はこういう時にこそ役に立つものじゃないですか? 見えないモノこそ視える目、みたいなの。定番でしょう」
「あははっ、フィクションと現実を混同してるバカ発見~。ボクの目はただの飾りだよ」
「しばらく三人で過ごしてもらうことになるかもしれないんですから、仲良くしてくださいね……? ところで、あの、ヒトさん……なんか目赤くないですか? 鼻とかも……」
「……っ、フタが猫の毛まみれの服で部屋から出てきたんですよ! 散々言ったのに!」
なるほど、ゴミ箱から溢れているアレは使用済みの粘着シートか。
「フタさん、ヒトさんはアレルギーで苦しいんですから、猫ちゃんの毛には気を付けないといけませんよ? 目とか鼻とか痒くて痛くて大変なんですよ、くしゃみ止まらなくなっちゃったり苦しいんです」
「……? うん。みつき、おはよぉ。どったの? なんか約束してたっけ」
「昨日話したじゃないですか! あぁもうっ……!」
「ヒ、ヒトさん落ち着いて……あのですね、フタさん、俺変なのに狙われてて」
ヒトとサンには事前にメッセージで状況や作戦を伝えておいた。だが、当然と言うべきかフタには伝わっていない。改めての説明が必要かと内心ため息をつきながら話し始めた俺の目の前に三匹の猫が現れた。
「わっ、あ、猫又……フタさんの化け猫達ですね」
「昨日またノートパソコンを使って話しました。イチとニィという猫達が歌見さんのボディガードにつくと決めたそうです」
決めたのはフタではなく猫達なのか。
「ありがとうございますヒトさん、説明の手間が省けました。えっと、どっちがどっちなんでしょう」
「毛が長いのがイチで柄が汚らしいのがニィです」
サビ柄の猫が毛を逆立ててヒトを威嚇する。
「お、落ち着いてニィちゃん……ヒトさんも言葉選んでくださいね。じゃあ、もう行きます。早くボディガードつけないと危ないかもですし……失礼しますっ、ありがとうございました!」
「みつき? 帰るの? ばいばー……? イチ? ニィ? どうしたの、みつき帰るんだよ? 着いてっちゃダメだよ、おいで」
猫達の姿は俺が立ち上がった時にはもう消えていた、だがフタにはまだ見えているらしい。
「フタには私達で説明しておきます。さ、早く行ってください」
「は、はい……」
そうだ、急がなくては。歌見の身に危険が迫っているかもしれないんだ。何ともない可能性もそこそこ高いけど。
「待ってよみつきどこ行くの、なんでイチとニィ連れてくの? 待って、待っ……待て! 行くな! 待って! 置いてかないで! 離せっ、離してヒト兄ぃ、嫌、いやっ、やだ! イチ! ニィ!」
「水月さん早く! 姿が見えなくなればすぐ忘れますから!」
「……っ、ごめんなさいフタさん後で必ずちゃんと謝りますから!」
フタの絶叫を聞きながら穂張事務所を後にした。静かな繁華街を走り抜け、また駅に着く。
「はぁ……罪悪感やっば。ぅー、でも、説得してもどうせ忘れて別れる時にはまた騒ぐんだろうなってのが分かってるからな~……猫ちゃん達は納得して着いてきてくれてるみたいだし。ごめんねフタさん泣かせて……この辺に居るのかな?」
振り返り、足元に向かって謝罪する。
「師匠達はミツキの頭と肩の上に居るぞ。重くないのか?」
「えっ嘘態度デカ。流石猫」
「……イチ師匠は欠伸をしている。ニィ師匠は顔を洗っている。フタ殿のことは特に気にしていなさそうだ、早く歌見殿のところへ行ってしまおう」
「えぇ……ドライ……まぁ、助かるけど」
フタはあんなに喚いていたのに片思いなのかと少し切なくなりつつも、作戦が滞りなく進んでいることには安堵を覚えた。
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