冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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電車の中で予想大会 (水月+スイ・ネイ・ミタマ・サキヒコ)

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ネイがサキヒコに頼ったのは正しい選択だった。彼はスイの素性を隠したままスイの元に現れた死体について、先程パフェを食べながらスイが話した情報をほぼ全て開示した。

「ありがとうございました、サキヒコくん。ヒツジさん、あなたも死体から何も情報を得ていないんですね?」

「…………」

「ヒツジさん?」

「……あっ、うん、何も! 遠くからえいやってやっただけだし」

自分で考えた偽名なんだからちゃんと意識していて欲しい。

「水月くんの家の前に現れた死体を取り押さえた時、私は確かに聞きました。ヤツは倒れる間際「そろそろ引くか」と呟いたんです」

「喋るんだ……」

「何も聞かなかったんですね?」

「アタシは何にも。えっと……ナルちゃんの家の前に来た死体は、ナルちゃんの先輩だっけ? 襲ったのよね?」

「あ、はい。らしいです。先輩怖がっちゃって何にも話してくれませんけど」

「彼に何か話したのではないかと期待したのですが……情報はナシ、ですね」

「そぉ? 引くかってセリフで死体が何なのかは結構分かってきたわよ」

「本当ですか!? 聞かせてください」

ネイが目を輝かせる傍ら、俺は目を不安で満たしていた。暗い車窓の景色が知らないものへと変わっていくのだ、どこまで行くんだ? ミタマの鼻はどこを嗅ぎ当てたんだ?

「まず、木っ端浮遊霊が取り憑いたとかじゃない。その辺の幽霊じゃ死体動かすような力ないからね。本人の霊ならありえなくはないけど、それだと「そろそろ引く」って意味が分かんない。自分の身体から離れたくないだろうし、引いてどうすんだって話じゃない?」

「……つまり?」

「死体動かして遊んでただけの強めの怪異……でもこれは二体同時に居たってのがちょっと変だからナシ。式化された霊や怪異って線も、自分で判断してるような口ぶりからしてナシ」

「式化とは何ですか?」

「式神分かる? 漫画とかで見るっしょ。使い魔とかそういうの。言うこと聞いてくれる霊的存在のこと」

「何となく分かります、私結構漫画好きなので」

ネイが好きな漫画は多分俺が今ハマっているようなのではない。漫画の神様だとか、SF少し不思議だとか、そういう大御所も大御所、超大御所漫画家の漫画だと思う。

「式化ってのは式神にすること。怪異は大抵自分の存在を保つための霊力の確保に苦心するわ、生きてれば生命活動で得られるけど死んじゃったらもう自己生成はかなり難しいの。だから、アタシの霊力あげるから言うこと聞いて~って契約が成立するのよ」

「御恩と奉公、デスね」

「ま、そうね。式化すると行動がかなり制限されるから嫌がる怪異も多いみたいだけど……あぁそうそう。フタちゃんとこの化け猫共、アレ式化されてるわ」

「へぇー……」

「で、この式神ってのはあんまり自分で判断して行動しないから、引き時を自分で決めてるような言動は合わない。誰かの式神が死体を動かしてるって線はナシね」

「撤退は自己判断で、と命令された可能性は?」

「複雑な命令や自由行動の許可を出すと霊力の消費が増えるらしいから……そうねぇ、動けなくなったらとか、霊力が何割まで減ったらとか、そのくらいだと思うわ。プログラム組むみたいなもんね。そんなので「そろそろ引く」とか言うかしら? アタシ的にはしっくり来ないけど~……一般的な感覚じゃないのかしら、じゃあ式神説もなくはないかな?」

「……フタさんとこの猫ちゃん達かなり自由っぽいですけど」

「ペットだもん、自由にさせておきたいんでしょ。猫だし。三匹も居るし霊力かなり使ってると思うわ。でもフタちゃん疲れてるとこあんま見ないし、霊力の量と生成効率アタシより良いのかな~?」

「莫大な量と出力でそれをカバーしていた……ってヤツですか? え、フタさん……そんなにヤバい人だったんですか?」

「あの、今はその人の話はいいので……早くヒツジさんの中で最も有力な説を教えてください」

「ぁ、ごめんごめん。アタシの中で一番有力なのは、霊能力者による遠隔操作よ。幽体離脱して死体に取り憑いたり、何らかの術を施して操作したり……犯人は人間だと思うわ」

「…………神秘の会」

「狐、アンタ匂いでその辺分かんないの?」

「全く分からん」

「あらそう……」

「コンちゃん、結構遠くまで来たけど……まだ降りないの?」

「うむ。まだまだ道なり……線路なり、じゃな」

光が減ってきた。都会を離れ始めたのだ。不安が膨らむ、俺達は本当に犯人を追っているのだろうか。人気のないところへおびき出されているんじゃないのか?

「…………あの、フタさん強いんですか?」

ネイの質問が滞り、会話が途切れると余計に不安になった。俺は先程遮られた疑問を掘り返し、沈黙を避けようとした。

「分かんない。でもあんな化け猫三匹も自由にさせてたら相当霊力消費すると思うのよね」

「師匠……化け猫達は時々浮遊霊を食っている、それで補給しているのでは?」

「あ、そうなの?」

「ふーちゃんの霊力が特別多いと感じたことはないのぅ。増減せず一定に保たれとるのは珍しい……と思ったことはあるが」

「生成効率超良くてずっと満タンってことじゃない?」

「かもしれんのぅ。変わった子じゃ。ヌシも相当変わっとるが」

「…………ね、ねぇねぇ、俺は何か……ないの? 個性。変わってるとこ」

三人もの人外と暮らしているのだ、俺にも何かしらのオカルトな個性が発生していてもおかしくは──

「ないのぅ」

「特には……」

「別にないわね」

──ないんだ……俺、超絶美形なのに、特にないんだ。

「みっちゃんは顔以外は本当に平凡じゃ」

「私のような者を引き取ってくれる優しさは非凡なものだと思います」

「下心じゃろ」

「酷くない? ほんとに俺のこと好き……?」

「……私は下心だけとは思いません。それに、ミタマ殿を修理した際は下心の抱きようもない状況でした。それでもまだミツキの優しさは凡庸なものと言いますか?」

「ムキになるな。ワシだってみっちゃんは優しゅうてええ男じゃと思うとる。ただなぁ……そういうこと言うと調子に乗るじゃろ此奴、得体の知れぬ悪意の者を追っている今、調子に乗らすのは危険かと思うての」

「そうですね。ミツキ、優しさと考えなしは違うぞ。勇気と無謀も履き違えるなよ」

「はい……」

厳しい。けれど、心配の証だ。愛されている証拠だ。不貞腐れず受け止めよう。
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