冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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一般人だけで行かせられない (水月+スイ・ミタマ)

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俺の想像を聞いたスイは神妙な顔で頷く。

「……ありえる」

「えっ」

「何よぉ、ナルちゃんが言ったのよ?」

「いや、だって、こんなのが当たってるかもなんて……」

「ナルちゃんの家と、アタシの事務所。この二箇所でしか動く死体は目撃されてない……仮にこの二箇所以外には現れていないとすると、共通点はあの子の存在でしょ。ナルちゃん挟んで座ってるサキちゃんと狐は、ずっと憑いて一緒にウロウロしてるのよね? なら居る時間の長い学校とかにも現れそうなものじゃない。一度しか来たことのないアタシの事務所にその子ら目当てで来るとは思えないわ。アタシはナルちゃん家行ってないし、他に霊力の高い子の共通点ないし……まぁ今言った通り死体が二箇所にしか現れてないって仮定したらの話なんだけどね」

俺には今二人の姿は見えないけれど、彼らは俺の両隣を埋めているのか。俺の左右の空間を見るスイの目が鋭い訳だ。

「荒凪くんはオークションに出品予定だった人造妖怪……もし荒凪くんのことを気にするヤツが居るとすれば、そのオークションの関係者ですよね。商品を回収して売り直したい出品者側か、手に入るはずだったモノを手に入れたい購入者側か……」

「うーん……遠いとこから祓っちゃわないで、もう少し調べればよかったわね。襲われた先輩は死体から何か聞いてないの? 死体が話すかどうかなんて知らないけど」

「分かりません。先輩すっかり怯えちゃって家出れなくなったみたいで……怖がってるからまだあんまり話も聞けてなくて」

「……そう。現場は分かってるから霊視出来なくはないけどタダ働きだし、きな臭いの相手にするのもなぁ。でも一人襲われてるなら次は何が起こるか怖いわよねぇ。ん……? 何、狐ちゃん」

隣を見ても誰も居ない。だが、声は聞こえた。

「家の前に現れたモノは鼻で追うつもりじゃ、匂いを辿るなら勘付かれる可能性は低かろう。じゃが、匂いは残って明日まで……いや、明後日、うぅむ……とにかく、明明後日以降は確実に、追える濃さではなくなっていく。今日か明日かに追いたいのじゃが……」

「明日は先輩の家に行く予定だよ」

「一日中居る訳でもあるまい、ゆーちゃんには外泊を告げて追いに行くぞ」

「待って、夜に行くの? それじゃナルちゃん寝る時間なくなっちゃわない? それに危ないわよ、死体操るようなの追っかけるなんて、ナルちゃん霊能力者じゃないのに」

「ねいを付き合わせる予定じゃ」

「誰それ」

「警察の人。警察は怪異案件に手ぇ出せないけど、その人は怪異を使った組織犯罪はお化け祓うだけの霊能力者に任せてらんないって勝手に調査進めてる人なんです。俺その人に協力してるんです」

「子供付き合わせる警察ねぇ……ろくなもんじゃなさそう。その人は霊能力は?」

「ないのぅ。実体化してやらねばワシらを視ることも叶わん」

「パンピーじゃないのよ! 大人ならいいとか、警察ならいいとか、霊能力者相手はそういう話じゃないわ。ナルちゃん、アタシも行く。いいわね」

「え、そりゃ俺は心強いし嬉しいですけど……いいんですか? スイさん、警察とかに知られて」

「悪いけど顔変えて行くわ。ナルちゃん俺の顔好きだけど……ごめんね?」

「残念ですけど、まぁ……仕方ないですよね」

公安警察に顔と名前を控えられるなんて、俺だって何となく嫌だ。霊能力を使った探偵業を営み、不法行為にも手を出していそうなスイはより嫌だろう。

「その追跡って今日この後にすることは出来ない? アタっ、俺明日は仕事入ってるし……この後すぐからならナルちゃんの睡眠時間確保出来るんじゃない?」

「ふむ、時間は経たん方が匂いも追いやすい、ワシは賛成じゃ。みっちゃんは?」

「俺も大丈夫、ネイさんに聞いてみよっか。後、母さんに帰るの遅れるって連絡しないと……ちょっとスマホ弄りますね、スイさん」

「気にしないで」

「失礼します。ぁ、後、俺の睡眠時間も気遣ってくれたのすごく嬉しいです、俺のこと心配して着いてきてくれるのもそうだし……ありがとうございます」

「…………ナルちゃん、軽率に微笑んじゃダメよ……何その威力、美形こわい……お礼一つで命張れるわ、ヤバ……」

「……すーちゃんちょっとみっちゃんっぽいのぅ」

「コンちゃんの俺のイメージ何?」

この後すぐから追跡を開始してもいいかというメッセージをネイに送ったところ、彼はすぐに了承の返事を寄越した。母には歌見の家に寄るからと嘘を吐き、帰宅が遅れる旨を伝えた。

「よしっ、送信完了」

「パフェ食べたらお仕事ね~……顔どうしよっかな、探偵として使ってる普段のガワ見せるのもなぁ。新しい顔作った方がいいかな?」

「アンパンくれるヒーローみたいな言い草ですね」

「一から顔作るのって難しいのよね、普段のガワだって弟参考にしてるしぃ……お父さん……いや、身内に繋がるのもちょっと……」

「参考資料あればいい感じですか? じゃあなんかもうAIとかに存在しない人の顔作らせれば……ほら、このサイトとかどうです?」

「ナルちゃん賢い! どれどれ……んー、ちょっと気に入らないなぁ、もうちょい、ぁ、この顔いいかも。えー最近のAIってすごーい」

画像生成サイトを紹介しただけなのにすごいはしゃぎようだ。

「この顔の人って存在しないのよね?」

「ネットに上がってる人間の顔を組み合わせて作ってるような感じだと思うんで、多分その通りの顔は居ないと思いますけど……そっくりな人が居ないって断言も出来ませんね」

「まぁ、そうよね。でもアタシの知り合いじゃないし、警察がアタシに繋がらなきゃOK! この顔にしよっ」

どうやら決まったようだ。渡していたスマホを受け取り、スイが表示していたAI生成の顔写真を見る。

「……女かぁ」

女性だ。多分美人。好みの男の顔になられても、ただのガワなのだから虚しい話だが、これから数時間隣を歩くだろう者が女性の姿というのは……テンション下がるなぁ。
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