冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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バイト先に現れたのは (水月+リュウ・レイ・スイ)

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五、六時間目の授業をやり過ごし、帰路に着く。バイト先の本屋がある俺の家の最寄り駅でリュウも電車を降りた。

「ほな俺は家行っとるわ」

「泊まってくなら母さんに晩飯増やしてもらわないとだし、連絡しとくけど……どうする?」

「ええわ、今日お好み焼きやねん」

「しょっちゅうじゃん」

「そうでもないで。ってかウチの晩飯知らんやろ」

リュウの家の夕飯はだいたい毎日分かる。前日の夕飯の残りが昼食だからな。

「昨日はトンカツだろ」

「なんで分かるん」

本当に気付いていないのかボケなのか、どっちなんだ。

「まぁええわ。終わったら帰るつもりやけど……いつ終わるか分からんねんなぁ、俺が出来ひん言うんをコンちゃんがいつ信用してくれはるかやね」

「りゅーちゃんなら絶対出来るっちゅうとろうに」

「出来へんて言うてますやん……」

「……ま、頑張れよ。じゃあ俺バイトだから」

「おー、ほなな水月ぃ、また明日」

「また明日。あ、コンちゃん。リュウがなんか唱えたり踊ったり葉っぱ振り回したりするようなら撮っといてよ。じゃあまた後でね」

リュウとミタマと別れ、バイト先の本屋へ。

「あっセンパイ、こんにちはーっす」

「……お前もう関係者じゃないんだからバックヤード上がり込むなよ」

バックヤードにはレイが居た。ソファに座り、レモンジュースを飲んで……いやよく見たら酒だなこれ。レモンサワーだ。

「昼間っから呑んで……ったくいいご身分だな」

「仕事終わりに呑まずいつ飲むんすか」

「なんか描き終わったのか?」

「ふっふっふ……秘密っす! あのソシャゲ確かセンパイやってたはずっすから、実装されたら是非引いて欲しいっす」

「……俺がやってるのでレイが描いてるキャラか。結構心当たりあるなぁ、どれだろ。ゃ、新キャラか?」

「実装をお楽しみにっすね」

仕事終わりで浮かれているからとわざわざ辞めたバイト先の店のバックヤードで呑んでるなんて、少し不自然だ。俺に会いに来たと考えるべきだな。

「ウチ来るなら先に母さんに連絡しとけよ、晩飯の用意とかあるんだから」

「行ってもいいんすかっ?」

「……そのつもりで来たのかと思ってたけど、自惚れだったかな」

「行くっす行くっす泊まるっす!」

「そっか。ここで待ってるのも退屈だろうし、先家行っとけよ。アキ辺り構ってやってくれ」

「はーい! お家でお帰りをお待ちしてるっす、新妻のように!」

酒缶片手に大きく手を振り、レイはバックヤードを出ていった。普段以上に陽気なのは酒のせいだろうか。

「サキヒコくん、ちょっとレイ送ってくれない? 酔っ払ってるしちょっと心配でさ……」

「承知した」

「ごめん、お願いね」

さて、そろそろ仕事を始めよう。エプロンを締めて、店に出て……まずは倉庫だな。



倉庫整理を終え、店頭に出る。接客は声をかけられた時だけでいいので気が楽なはずだが、顔のせいか女性客が困ってもいないことで困ったように話しかけてくるから倉庫作業の方が好きだ。

「ふぅ……」

本を並べ、腰を叩く。本屋のバイトは腰にクる。

「ねぇねぇ~」

また女か。いい加減にして欲しいな、俺のこの顔は可愛い男子達のためのものなのだ。女に振りまく愛想はない。

「はーい……」

「きゃ、エプロン似合うー!」

頬に手を当ててキャーとわざとらしい声を上げ、微笑む亜麻色の髪の女性。俺より少し背が高く、女性にしては肩幅が広い。

「………………スイ、さん?」

「なんで半信半疑なのよぅ!」

「いや、だって……なんか、ちっちゃい」

「あぁ……前までは理想のプロポーション作ってたからちょっと大きくなり過ぎちゃってたんだけど、今日は肉体に貼り付けるようにガワ作ってみたの。頭デカいし、足もう少し長くしたいし、くびれないし、肩幅広いし……色々納得行かないんだけど、こっちの方が霊力節約出来るしぃ」

「はぁ」

「……興味なさそうね?」

「だって俺が好きなのスイさんの素顔ですもん。俺女の子興味ないし……」

「そうよ。ナルちゃんがその態度だからアタシ、ガワに力入れないことにしたの。でも素顔でウロつくのは嫌、ナルちゃんにとっては好みでもアタシ的にはクソブスなんだもん」

スイは美人だ。二重でぱっちりした目でなければ可愛くないと思い込んでいる彼には言っても分かってもらえないかもしれないけれど。

「スイさん綺麗なのに……あ、そういえば何か本お探しですか?」

「ナルちゃんと話しに来ただけよ」

「……俺ここでバイトしてるって言いましたっけ。たまたま会ったのかと思っちゃって、すいません」

「アタシ探偵だもん」

調べたってことか? やっぱり言ってないよな、バイト先がどこかなんて。

「なるほどぉ。で、お話とは……? 告白をOKする感じのな返事とかだと大変嬉しいんですけど」

「あー……えっと、違くて」

「……そうですか」

「ご、ごめんね? その……もう少し考えたくて」

「いえいえいえ、お気になさらず……じゃあ、何のご用で?」

「信じられないかもなんだけどぉ、その……アタシの事務所の周りウロウロ探ってた変なおっさんが、実は何時間も前に死んでたーって……ぅー、ごめん、分かんないよね、もうちょいまとめる……」

「…………え」

動く死体の話? スイのところにも来たのか?

「ちょっ、その、その話っ、あの、その死体、俺のとこにも来て……!」

話し始めたその時、ベルが鳴った。

「あっすいません、レジの呼び出しベルが……ちょっと待っててください。この話絶対したいので、すぐ戻ります!」

今優先しなければならないのは仕事だと分かっているけれど、内心苛立ちながらレジへと急いだ。
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