冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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外出中の事件について (水月+ネイ・サキヒコ)

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俺がピザを無邪気に楽しめないのは、俺達がタダでピザを食べるための代金なのだ。そう考えよう。

「昨日、奇妙な事件がありました。死体が動いて人を襲ったんです」

「ゾンビ……!?」

「少し違います。順を追って話しますね。まず、あなたの家に来客があったようです。えぇと……無免許の天才外科医って感じの髪の子です」

ネイは自然にピザを食べている。言葉にも不自然な点がない。本当にすごい、腹話術師としてもやっていけそうだ。

「……もしくは、ダルメシアンの仔犬をコートにしようとしてる感じの髪の子です」

「白と黒のツートンでいいですよ。わざわざそんな分かりにくいこと言わなくても。って、え……? カサネ先輩……? カ、カサネ先輩が来てたってことですか? なんでっ? えっ俺呼んでないんですけど……」

「それは知りませんよ」

今、セイカに聞くか? いや、ネイはわざわざセイカの席を離したんだ、セイカを話に混ぜるようなことはしない方がいい。

「私は家でノヴェムの宿題を見てやっていたんです。悲鳴を聞いて外に出ました、そこでそのツートンの彼と出会ったんです。中年の男に襲われていました、それが死体だった……という訳です」

「モブおじゾンビ……!?」

「男を取り押さえたところ、ピクリとも動かなくなりました。瞳孔、脈拍、呼吸……全て確認しましたが、既に死亡していたことが分かりました。体温もなく、死斑があった……私が取り押さえるよりも前に死んでいた、ということです。ハッキリと喋り、少年を襲っていたというのに」

「……ミステリーだと死亡時刻がおかしい死体って、入れ替わりの焼死体だったり……冷暖房で弄られてたりしますけど、死体が動いてたんですもんね。何それ怖い」

「どう考えても怪異案件でしょう? 警察の判断もそうでした、死体が一つ見つかったというのに今何の処置もされていないでしょう」

「あ……なんかテープ貼ったり、チョークでヒトガタ描いたりするんですよね」

「……まぁ」

あ、なんか違うみたい。仕方ないだろ、俺は平和に暮らしている高校生だぞ? 死体が見つかった現場がどうなるかなんて知っている訳ないだろう。

「その、怪異案件? だと現場保存とかいらないんですか?」

「……知りません。誰かが解決しているのか、放置なのかすら……全く。それが怪異案件です」

「秘書さんが対処してる感じですかね?」

「若神子製薬の? どうでしょうね、日本全国となると怪異案件だけでもかなりの数です……彼が全てやってるというのはありえない。彼のような者が各地に配置されていると思いたいですが……そもそも彼、本職は秘書なんですよね? 怪異案件の対処だけでは職にならない証拠、まともな組織がない証拠です。やっぱり怪異対策は取れていないんですよ……警察内部に組織を作るべきなんです」

「怪異課、ってヤツですね。ワクワクしてきます」

フィクションでたまに見かける、超常的存在に対処する国営の組織。そういうの大好きだ。

「……っ、はぁー…………あればいいんですけどね、本当に。それさえあれば、解決した事件も、捕らえられた悪人も、救えた命も、きっとたくさん……はぁ」

「な、なんかすいません……深刻なんですね」

「かなり……それで、どう思いますか? 今回の件。神秘の会に何か関わりがあると思いますか?」

「えぇ……分かりませんよそんなの。サキヒコくんどう?」

「……はっきり喋ったと言いましたね、その死体。何を話したんですか?」

「そろそろ引くか、と。私が聞いたのはそれだけです。間田くんならもう少し聞いているかもしれませんね」

「先輩の名前は繰言カサネです」

「引く……?」

ピザを一切れ食べ終えたのでポテトに手を伸ばす。

「この件について私が知っているのはこれだけです。家の前で起こった事件だからと少しねだってみたんですが、関係ないから自分の仕事を続けろと……情報は集めやすい職業のはずなんですがね、怪異案件は別みたいです。やはり神秘の会が怪異案件だと知られてはならない……即時解散させなければならないカルト集団だという証拠、代表や幹部連中の逮捕……何も出来なくなる」

「色々大変そうですね」

「……他人事ですねぇ」

「だって……俺は何も情報持ってないし、協力出来ないし」

「情報の塊、持ってるじゃないですか」

ネイが視線で指したのは荒凪だ。確かに彼の記憶がしっかりしていれば、集団内の有力者や拠点の場所が分かるかもしれない。しかし──

「──荒凪くん、何も覚えてないんですよ」

「何か思い出していませんか?」

「ません……」

「……そうですか。彼よりも私の方へ優先的に情報を回してくださいね、私の方が公に役立てられますから」

二切れ目のピザを片手に頷いた。

「家の前を調べるなら私よりミタマ殿の方が向いているだろう。食べ終わったら誘ってみる」

「頼みます」

「だが、あまり期待はしないで欲しい。そうだミツキ、スイ殿なら霊視が可能だ。彼に頼んでみるのはどうだ?」

「あー……そうだね。その前にカサネ先輩にも話聞かないと。えっと、ネイさん、何か分かったらまた話すってことで……この話は、終わりでいいですか?」

「……そうですね。あぁ、その動いていた死体の写真があるのですが、見ていただけますか? 一応知った顔かどうか聞いておきたいのですが」

「あぁ、はい……えっ今!? いやいやいや……飯中は無理です死体は」

スマホを取り出したネイの手を慌てて押さえる。ネイはきょとんとした顔で俺を見つめ、不思議そうに首を傾げながらスマホをポケットに戻した。

「これだから死体見慣れてる警察は……!」

「公安はそんなに死体見ないですよ、別に損傷ありませんし……ちょっと顔色悪いだけなので、大丈夫かと。あなたこそ幽霊連れてるくせに死体は嫌だなんて」

「サキヒコくんは活き活きしてるんです」

職ゆえなのか、ネイ個人の問題なのか、彼は少しズレている。そんなところも可愛らしいと思ってしまう俺はもうダメだ、末期だ。
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