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アイドルとまた会う日まで (水月+カミア・ミタマ)

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ビュッフェ形式の朝食の後、俺がミタマに願ったせいでボサボサになったカミアの髪を整え直してやった。トリートメントを使い、再び乾かすだけで彼の髪は簡単に元の姿へと戻った。

「わぁ……! 元通りだ、すごいよみぃくんありがとう!」

「喜んでもらえてよかったよ」

くりくりと巻いた髪に指を絡めて遊びながら、思う。普段よりも多めにトリートメントを塗り込み、櫛を通しながらドライヤーを当てたのに、何故こんなにもくりくりのままなんだ……と。少しくらいストレートに近付いてもいいんじゃないか、と。

「天パって不思議だな……櫛とかで引っ張ったらちゃんと真っ直ぐになるのに、離したらすぐくりんってなるんだもんな」

「あははっ、僕からしたらみぃくんやハルちゃんみたいに髪の毛真っ直ぐな方が不思議だよ~」

「……そういうもんなのか」

「しかもみぃくんって水とドライヤーだけで結構自由に癖つけられるんだよね?」

「ん、あぁ、ワックスなくてもある程度は髪型弄れるぞ」

「何その形状記憶ヘア! 羨ましい!」

「どっちかって言うと形状記憶はカミアみたいな天パのことだろ」

なんて話しながら洗面所を出てソファに腰を下ろす。カミアは少しの躊躇いの後、俺の膝の上にそっと座った。

「……えへへ」

「なぁカミア、何時までに出ればいいんだ?」

「んー、後一時間ないくらいかな」

「そうか……荷物は整理してあるし、出発まではイチャついて過ごすか」

「うん!」

では早速、とカミアの太腿に両手を伸ばす。左右それぞれの太腿の内側を手のひらですりすり撫で回す。ズボン越しでも十分楽しい。

「カミア、腰辛かったりしないか? 太腿だるかったりとか」

「……? 別に……なんで?」

「何回かセックスしたろ? みんな三回くらいヤると次の日辛がるんだよ、でもカミアは平気そうだな……ライブじゃ二時間以上踊ったりするんだもんな、一般人とは体力が違うんだな」

「そういうこと……なのかなぁ? うーん、筋肉痛とかダルいとか、そういうのはないけど……余韻はあるよ。なんかまだ違和感ある。入ってた感? しばらくお尻気にしちゃいそう」

「そっか。ま、仕事に響かなさそうでよかったよ。割とやりたい放題ヤっちゃったから心配だったんだ、初めてなのに無理させたかなって」

「してって無理言ったのは僕だよ」

「……だな」

腕の中に収まる小さな身体。強く抱き締めれば俺の腕を握り返してくれる。

「カミアも結構体温高いよな」

「も?」

「カンナ。子供体温なんだよ」

「そうなの?」

「温かい同士じゃ分かんないかな」

「……平熱、6.4くらいだけどなぁ。僕」

「そうなのか。じゃあなんで温かく感じるんだろ……表に出やすいとかかな? 熱伝導率がいい的な」

「知らないよぉ。さっきから随分ぎゅーぎゅーしてくるし、温かいとか言うし……もしかしてみぃくん寒いの?」

空調は快適な温度だ。寒い訳がない。

「カミアとひっついてたいだけ。もう少しでお別れだろ? また会う時までの分、カミアをたっぷり補給してないとな」

「……ふふふっ、僕もみぃくん補給する~」

「次、いつ会えそうとか分かる?」

「んー……どうだろ、スケジュール調整は頑張ってるけど、急な変更とか追加とか割とある業界だからな~。空き日が出来ても近々で連絡することになっちゃうかも……」

「そっかぁ。どっちにしろ俺には待つしか出来ないなぁ」

「僕……他の子との約束破らせちゃったり、してない?」

「大丈夫だよ、そんな何日も前から決めてないし」

「……ほんと?」

みんなカミアのスケジュールを最優先するべきだと理解してくれている。残念がりはするだろうが、ちゃんと俺が埋め合わせをすれば不満は出ないはずだ。カミアにそう説明する必要はない、他の彼氏を気遣ったり萎縮したりしてはカミアと会う機会が減るかもしれない。

「ほんとほんと」

「……そっかぁ。頑張って一週間前には言うようにするね」

「あぁ、でも当日隙間が出来るって分かっても遠慮せず連絡してみてくれよ? なんか……バイトとか、通院とか、相当な理由じゃなきゃ行ってみせるから」

「なんか悪いなぁ……」

「俺もカミアに会いたいんだ、会えるタイミングは逃さず教えてくれよ」

「……うん!」

腕の中で俺を見上げる満面の笑顔。そこに一点の曇りもない、俺に隙間時間を知らせることへの躊躇いは消え去ったようだ。



その後時間がやってくるまでずっとカミアを膝に乗せたままイチャついて過ごした。幸せな時間だった。

「……そろそろ行かなきゃだね」

「あぁ、名残惜しいよ」

「駅までは一緒だよ?」

外に出れば手を繋ぐことも出来ない。俺は部屋を出る前にカミアを強く抱き締めた。


チェックアウトを済ませ、ホテルを後にする。恋人らしい仕草や話など出来ず、友達同士とそう変わらない話をしながら駅のホームで電車の到着を待った。

「みぃくん、じゃあまた。バイバイっ!」

俺が乗るのは次の次の電車だ。俺の家とは反対方向へ向かう新幹線に乗るカミアを窓の外から見守った。

「……バイバイ」

車内から手を振るカミアに手を振り返し、発車を見送った。部屋を出る前に散々キスし、抱擁したけれど、やはり本当の別れのタイミングでしたい。

「行ってしもうたな。これからどうする? どこかに寄るのか?」

「荷物多いし一旦帰るよ。その後は……まぁ家でゆっくり休むと思うよ」

ベンチに腰を下ろして電車を待ちながら、喪失感を噛み締めた。
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