上 下
1,744 / 1,942

アイドルとジュース共有 (〃)

しおりを挟む
カミアとジュースを分け合ったりしつつ、次のジェットコースターに向かった。

「次は屋外! 足がぶらぶらするのが売りなんだよ☆」

「大阪の……ぇー、プテラのヤツみたいな?」

「あぁ、あったねぇ! 確かにちょっと似てるかも?」

「乗ったことないけど。夏休みせっかく大阪行ったんだからついでに遊びに行けばよかったかなぁ」

「今度僕と行こうよ☆ 大阪は割と仕事で行くこと多いし」

今日のように呼び出される場合、大阪は遠いなぁなんて答えながら飲み終えたジュースの容器を眺めた。

「結構しっかりしたコップだな、プラゴミって感じじゃない」

「持って帰る人がほとんどだよ。込みの値段だし。色違うけどみぃくんどっちがいい?」

コップは透明で、白でロゴが描かれている。色が付いているのは底だけだ。透明感のある青と緑、爽やかな飲み口と同じで夏らしい。

「どっちも可愛いな、カミアは青と緑どっちが好きなんだ?」

「緑! 芝生みたいで好き~。そのコップの緑はあんまり芝生みないけど」

芝生が好きなのか……?

「じゃ、俺青な」

「いいの? みぃくん緑じゃなくて」

「あぁ、俺はちょうど青が欲しいと思ってた」

「……ほんとかなぁ」

疑うような目つきでジロっと俺を見上げる。もちろん冗談交じりのあまり鋭くない目で、だ。

「ふふっ、ほんとほんと」

「ならいいけど、緑の方がよかったら言ってね? 僕青も好きだから」

「ありがとう、本当に俺は青がいいんだよ」

鞄の内ポケットに常備するようにしているビニール袋にコップを入れ、鞄に押し込んだ。

「あ、ジュースいくらだった? 半分くらい飲んだし一杯分は払うよ」

「それより写真代だよぉ。いくらだったの?」

「……こんな人混みで財布開ける訳にもいかないし、この話はまた後でだな」

「そだねぇ、ふふふ……」

笑い合いながらプレミアムパスの列に並んだ。順番は数分で回ってきて気持ちを落ち着かせる暇がなく、ベルトが下りた後に深呼吸を始めた。

「……ぅわっ、ほ、本当に足ぶらぶらする」

発信前、席が傾いて宙ぶらりんになる。足を乗せるところはなく、ぶらぶらと空中に揺れている。ベルトは今まで乗ってきたジェットコースターとは比べ物にならないほどガッシリと締まっており、安全なのだろうが、怖い。

「…………や、やっぱ降りるっ」

「もう無理だよみぃくん」

「吊られるの思ったより怖いんだよ……! これ本当に大丈夫なのか? すっぽ抜けたりしないか?」

「大丈夫大丈夫、事故起こしたなんて聞いたことないから」

「一度目が俺達の番じゃないとは言えないだろ……!」

「心配性なんだぁ、みぃくん可愛いかも」

くすくすと笑っているカミアの顔は安全バーに隠れて見えない。こんなにも強靭な安全バーが必要ということは、それだけ振り回されるということで……あぁ、胃がキリキリしてきた。

「楽しみ楽しみ~」

カミアは足をプラプラさせている、俺はとても足を動かせそうにない。

「……っ、あぁあああああっ!?」

今まで乗ったジェットコースターとは比べ物にならない速度で坂を落ち、回転し、俺を振り回した。降りた後には俺はふらつき、カミアに支えられて荷物を置いた棚まで歩いた程だ。

「大丈夫?」

「あぁ……結構慣れてきたのか酔いはしなかったけど、怖かった。次これより怖いんだよな? ヤバいな」

「次はVRのヤツだけど、どうする? 休憩で別のアトラクション乗る?」

「なんかあるのか?」

「濡れる系」

「ボート乗るヤツ?」

「そうそう、ほんとはボートじゃなくてレールの上走るだけなんだけど。チェーンソー振り回す系殺人鬼に扮したハロウサちゃんがサメに乗って追っかけてくるから逃げるっていう」

訳が分からないな。でも、楽しそうに説明してくれたカミアに正直な気持ちは伝えにくい。

「……面白そうだな」

「面白いよ! 行く?」

「濡れるのはなぁ。今日ジメッとしてて乾きにくそうだし」

「ふっふっふ……これなーんだ☆」

カミアは鞄を大きく開いて中身を見せた。舐めしゃぶりたくなる指が差しているのはナイロンの何か、袋ではない。ボタンも見える。レインコートか?

「カッパ☆ 二着あるよ」

「全くお前は最高だぜカミア……」

しかも、ボートのアトラクションはVRを使ったジェットコースターへの道中にあるらしい。回り方を心得ているようだ、流石この遊園地の大ファンと言うべきか。

「みぃくんのカッパLサイズにしたけど、大丈夫そう?」

「あぁ、しっかり着れてる……カミア、カッパって言うんだな。なんか意外」

「……? そう? カッパ変?」

「変じゃないけどさ、レインコートとかそっち系の言い方なイメージあったよ」

「えー、長いじゃん。ふふ」

カミアが用意してくれたレインコートは紺色で透けておらず、顔を隠すのにもぴったりだった。カミアにその意識はないようだが……本当に芸能人か? 何故変装に頓着がないんだ?

「ハロウサ、最初は確か右手奥の方から来るからそっち見てるといいよっ☆」

ボートを模した乗り物には安全バーもベルトもない、急な坂下りや回転などはないのだろう。酔うことも怖がることもなく楽しめそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる

海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?

犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~

雷音
BL
全12話 本編完結済み  雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ 一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。 ※闇堕ち、♂♂寄りとなります※ 単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。 (登場人物は全員成人済みです)

ポチは今日から社長秘書です

ムーン
BL
御曹司に性的なペットとして飼われポチと名付けられた男は、その御曹司が会社を継ぐと同時に社長秘書の役目を任された。 十代でペットになった彼には学歴も知識も経験も何一つとしてない。彼は何年も犬として過ごしており、人間の社会生活から切り離されていた。 これはそんなポチという名の男が凄腕社長秘書になるまでの物語──などではなく、性的にもてあそばれる場所が豪邸からオフィスへと変わったペットの日常を綴ったものである。 サディスト若社長の椅子となりマットとなり昼夜を問わず性的なご奉仕! 仕事の合間を縫って一途な先代社長との甘い恋人生活を堪能! 先々代様からの無茶振り、知り合いからの恋愛相談、従弟の問題もサラッと解決! 社長のスケジュール・体調・機嫌・性欲などの管理、全てポチのお仕事です! ※「俺の名前は今日からポチです」の続編ですが、前作を知らなくても楽しめる作りになっています。 ※前作にはほぼ皆無のオカルト要素が加わっています、ホラー演出はありませんのでご安心ください。 ※主人公は社長に対しては受け、先代社長に対しては攻めになります。 ※一話目だけ三人称、それ以降は主人公の一人称となります。 ※ぷろろーぐの後は過去回想が始まり、ゆっくりとぷろろーぐの時間に戻っていきます。 ※タイトルがひらがな以外の話は主人公以外のキャラの視点です。 ※拙作「俺の名前は今日からポチです」「ストーカー気質な青年の恋は実るのか」「とある大学生の遅過ぎた初恋」「いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました」の世界の未来となっており、その作品のキャラも一部出ますが、もちろんこれ単体でお楽しみいただけます。 含まれる要素 ※主人公以外のカプ描写 ※攻めの女装、コスプレ。 ※義弟、義父との円満二股。3Pも稀に。 ※鞭、蝋燭、尿道ブジー、その他諸々の玩具を使ったSMプレイ。 ※野外、人前、見せつけ諸々の恥辱プレイ。 ※暴力的なプレイを口でしか嫌がらない真性ドM。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

処理中です...