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精飲の人魚 (〃)

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荒凪に中出ししてやった。挿入はせず、中出しだけをしてやった。開いたままの穴にぶっかけてやった。それだけだから入り口近くに白く濁った水たまりが出来ただけだけれど、十分な光景だ。

「はぁ……はぁ……」

胸を大きく上下させている荒凪のコンドームを処理しながら、彼の後孔がヒクヒクと震える様を凝視した。震えながら穴はゆっくりと閉じていき、元の縦長の筋へと戻った。

「…………」

飲み損なったモノが唇の端から垂れるように、穴の縁には俺の精液が垂れている。まだ荒凪を抱いてはいないのに、既に抱いた気になりながら、俺は彼の後孔の縁に指を添えてくぱぁっと拡げてみた。

「あれ……?」

俺の精液が一滴も見当たらない。さっき出したばかりなのに、たった今精液を飲み込みながら穴が閉じていくのを見送ったばかりなのに。もう奥に入り込んだのだろうか、少しくらい皺やひだの隙間に溜まっていてくれてもいいものを。

(精液って確かずっと入れっぱなしだとお腹痛くなるんですよな)

セックス後の処理をせず寝落ちしてしまったり、彼氏の方から「もう少し入れていたい」とか言って中出しの後処理を延期させられたり、そんな理由で彼氏達の腹を壊させた過去がある。

「荒凪くん、荒凪くん」

「きゅるるる…………何、水月っ、ん……ぅー……お腹変」

アナルパールを使って与えた快感の余韻がまだ濃いのだろう、上体を起こした荒凪は微かに喘ぎ、下腹を摩った。

「余韻だね。それ好きな子も居るんだけど……荒凪くんは嫌い?」

「……? 分かんない」

「まだ分かんないか。あのね荒凪くん、本っ当にごめんなんだけど……中に入れちゃったじゃん、俺の……その、精液。アレ入れっぱなしだとお腹痛くなるかもだから、自分で踏ん張って出せる? トイレ行く時みたいに…………荒凪くんトイレ行かないっけ」

荒凪はトイレまで着いてくるけれど、彼が入ったところは見たことがない。ミタマもそうだ。サキヒコは食事すらしていないから当然なのだが、食事をしている二人が何故トイレに行かないのかは気になる点だ。

「…………じゃあなんで穴あんの? えっ……お、俺とヤるためですかぁ~? へへへえっろたまんねっ」

「水月……?」

「あっ、あぁ、ごめん。はは、いや……冗談だよ。出せそう?」

「……? 何も、ない。出す物」

「お尻の中にゅるにゅるしない? お尻って言うか、ここ……」

下半身が魚なので尻と呼べる部位がどこにあるのか分からない。尻ヒレのある位置でいいのか? やっぱり穴のある辺りか? 上半身の人間の体を参考にして、鋭い背ビレがあるところか?

「ない」

「そ、そう? 奥まで入っちゃったのかな……まぁ、意識しておいてよ。出せそうだったら出して」

「……ないのに」

妙に断言するなぁ、胃ならともかく腸の中身なんて自分ではよく分からないだろうに。

「ないならいいけど……」

入れたものがなくなる訳はない。だが、出せないのなら仕方ない。腹が痛くなったら慰めてやろう。俺は一人考えなしの中出しを猛省だ。

「……水月」

「ん?」

「もっと」

「まだしたいの? 荒凪くんえっちなんだなぁ、最高……でもあんまり擦ると後で痛くなっちゃうよ?」

いや、ミタマに噛まれた傷もすぐに治ったし、荒凪なら平気かも……と考え込む俺の肩を彼は掴んだ。

「水」

「みず……? わっ!? ちょっ待っ……ごぼっ」

尻尾で強くプールサイドを叩き、俺を抱えてプールに飛び込む。随分パワフルじゃないか、来たばかりの頃プールサイドに上がるのも一苦労だった腕力や、風呂に入った時に身体を持ち上げてすぐにぷるぷるし始めていた持久力は何だったんだ? 体重の増加は荒凪が強くなったからだと考えていいのか?

「……っ、はぁ、はぁ……びっくりした、もう……」

潜水士や宇宙飛行士の被るヘルメットのように、俺の頭は泡で包まれている。荒凪が作ってくれた泡だ、水中での呼吸や会話が可能になる。

「水月……」

甲の方には鱗がびっしりと生え揃った、鋭い爪のある手が俺を抱き締める。足には太い魚の尾が絡み付き、俺の股間には荒凪の陰茎が押し付けられた。

「きゅるるっ……! ん、ぅっ……水月ぃ……」

「……よしよし。手でしてあげるから、少し緩めて?」

強く抱き締められて身体の真横から腕が動かせない。手首だけで腰を撫でると荒凪は腕の力を緩め、俺に陰茎を握らせてくれた。

「水月っ……」

「気持ちいい? 好きなだけイかせてあげるから遠慮しないで言ってね」

荒凪の陰茎は冷たい水中でも問題なく勃つようだ、冷えても萎えないのは男として羨ましいような……いや、冷やして萎えさせる最終手段が使えないのは困るな。

「もっと……」

しかし性欲旺盛だな。開発を進めて抱けるようになったら、アキ以上に俺の腰を痛めつける彼氏になるかもしれない。
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