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家のみんなにご報告 (水月+荒凪・セイカ)
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ふと、ヒトの言葉が気になって、食後俺は荒凪を膝に乗せた。初めは遠慮していたが頭を撫でてやってしばらくするとリラックスし始めた。
(……確かに、重い)
人魚の姿の時に重いのは分かる。下半身が長いからな。だが今重いのはどういう訳だ?
「…………荒凪くん、みんなのとこ行こっか」
「うん」
俺の膝から降りようとした荒凪は、自身の背と膝の裏に回された俺の腕に気付くと俺の首に腕を回した。ヒトのおかげでお姫様抱っこを覚えたらしい。
「おっ……!?」
おっも!? と言いかけた口を慌てて噤む。重い、重過ぎる、こんなに重かったか? 重くなってないか? 立てるか? 腰がヤバい。
「みつき」
「……っ、イケる!」
立てるか? じゃない。立つんだよ!
「よしっ、立ちさえすればどうにでもなる。行こ、荒凪くん」
荒凪を抱えてソファへ移した。
「ふぅ……」
「ららなぎ、たんてー、どうするしたです?」
「鳴雷、探偵さんは何て言ってたんだよ。荒凪のこと。人魚かどうか分かったか?」
「あぁ、今から話すよ……あの皆様、ちょっと詰めたりとかしてくれませんこと?」
テレビの前に置かれたソファは四人で満員。俺はあぶれている。しかし四人とも俺をじっと見つめるばかりで俺を座らせようとしない。
「セイカ様、俺のお膝に座ったりとか致しますん?」
「いたしません」
ぷいと顔を背け、アキの肩に頭を預ける。
「アキきゅんのお膝でもいいのですが……いかがです?」
「やだ」
途切れた腕でぎゅっとアキの二の腕を抱く。
「しょうがないなぁ」
仕方ない。カーペットは敷いてあるしそこそこ厚い、別に床でもいいや。
「探偵さんに霊視してもらった結果なんだけどな……」
俺はスイが教えてくれた荒凪の真実の一端をみんなに話した。翻訳待ちのアキだけは荒凪と手遊びをしていたけれど。
「……って、感じなんだ」
「アンタ勝手に人脈広げてるのねぇ」
「えっ、いけませんか?」
「別にいいわよ、ちっちゃい子でもあるまいし。反社じゃなきゃね」
反社の紹介みたいなものだし、スイ本人も手段は問わないと言っていたり未成年のくせに酒を飲んでいたり、まともではないことは確かだ。事務所の机には吸殻が入った灰皿も置かれていたし、煙草も吸っていそうだったな。
「しっかしあのバカ犬もとんでもない厄ネタ渡してくれたわね。最低でも人間二人は殺してるとこから盗み出してきたってことでしょ? あーぁ、引き受けるんじゃなかった」
「マ、ママ上、荒凪きゅんの前でそのような話は」
荒凪の霊視中にスイが吹っ飛んだことや、荒凪が町中を逃げ回ったことは母には伝えていない。それを言えば荒凪を返すと言い出しかねないからだ、しかし情報を絞っても母は返す判断をするかもしれない。もっと渡す情報を絞るべきだったか。
「この子視せて言われたんだから、荒凪くんも聞いたでしょ?」
「そうですけど、引き取るんじゃなかったとか……そういうことは」
「……悪かったわよ。でも、ヤバいヤツが取り返しに来ない保証はないでしょ。荒凪くん自身に不満はないわ、製作者共に不安があるのよ。真尋くんが徹底的に潰してくれてたらいいんだけど」
ネイがまだ調査中ということから考えて、組織丸ごとの壊滅はさせていないだろう。末端の集団を一つ潰しただけ、と言ったところか。
「なぁ、鳴雷。二人殺して作ったってことはさ、お前が前に言ってたリョウメンスクナ説、死んでないんじゃないか?」
「え、俺はむしろ死んだと思ってたけど。血縁だけど双子じゃないとか言ってたし」
「何? その説」
「あ、えーっとですな……」
俺は以前セイカに話した、昔ネットで有名になった怪談について伝えた。
「口裂け女とかのクチコミ系とは違う、ネット都市伝説ってヤツね。ちょっと元の話見てみるから待ってて」
「ほーい」
「……そうだお前タッグものだって嘘ついただろあの漫画」
「えっ、何のことですかな」
「両面宿儺だよ、尾獣とかミギーみたいな感じかと思ってたのに」
「あっ読み進めました? いやでも新規読者に下手なこと言えませんぞ、っていうか答え濁しましたよな私前聞かれた時! そんなんで嘘つきとか言われても困るんですけど」
「許せねぇよ……」
「そんなに怒る!?」
「バケモンがなんだかんだ人間にほだされて一緒に戦ってくれたり人間守ってくれたりする話が好きなんだよ俺は」
「ごめんて……まぁ好きなジャンルとはズレてたかもだけど続きも読んでよ、語ろうよ」
「そりゃお前が買ってる漫画は全部読む気だけどさ……あ、そういえば、アレ次の巻早く買ってくれよ。暗黒大陸での話あるんだろ? 早く読みたいんだけど」
「出たら買うよ……」
と、漫画の話をしているうちに読み終わったようで母がスマホを置いた。
「ママ上、どうです? 荒凪くんと関係ありそうです?」
「うーん……読んでみたけど、これを元に荒凪くんリョウメンスクナ説唱えるのはシーマンと人面犬を同種扱いするようなもん感があるわね。つまり無茶考察ってことよ」
「やっぱり? ですよなぁ。ほれセイカ様、この説死んでまそ」
セイカは俺の説の可能性をまだ信じてくれているようで納得していないような顔をしていたが、言葉にはせず頷いた。反論出来るだけの材料はなかったらしい。
「変なヤツが取り返しに来なきゃいいけど……」
「そこは不安要素ですな」
「……監視カメラ増やしとくわ」
「よろしくお願いしまっそ」
「後はまたあの犬に何か対策を、っと、お風呂沸いたわね。私入ってくるからアンタらゲームでもしてなさい」
「はーい」
と元気よく返事をしたが、俺はすぐにはコントローラーを持たず、スイによる霊視結果を秘書とネイに送った。
「鳴雷、まだか?」
「もう少し……OK! やろっか」
「荒凪には鳴雷が操作説明とかしろよ」
「分かってるよ。荒凪くん、まずコントローラーの持ち方なんだけど……」
ゲーム自体をよく知らない荒凪に口頭説明だけで全てを理解させるのは難しい。習うより慣れろとはよく言ったものだ、コントローラーを持てたらまずは一戦プレイさせてみようじゃないか。
(……確かに、重い)
人魚の姿の時に重いのは分かる。下半身が長いからな。だが今重いのはどういう訳だ?
「…………荒凪くん、みんなのとこ行こっか」
「うん」
俺の膝から降りようとした荒凪は、自身の背と膝の裏に回された俺の腕に気付くと俺の首に腕を回した。ヒトのおかげでお姫様抱っこを覚えたらしい。
「おっ……!?」
おっも!? と言いかけた口を慌てて噤む。重い、重過ぎる、こんなに重かったか? 重くなってないか? 立てるか? 腰がヤバい。
「みつき」
「……っ、イケる!」
立てるか? じゃない。立つんだよ!
「よしっ、立ちさえすればどうにでもなる。行こ、荒凪くん」
荒凪を抱えてソファへ移した。
「ふぅ……」
「ららなぎ、たんてー、どうするしたです?」
「鳴雷、探偵さんは何て言ってたんだよ。荒凪のこと。人魚かどうか分かったか?」
「あぁ、今から話すよ……あの皆様、ちょっと詰めたりとかしてくれませんこと?」
テレビの前に置かれたソファは四人で満員。俺はあぶれている。しかし四人とも俺をじっと見つめるばかりで俺を座らせようとしない。
「セイカ様、俺のお膝に座ったりとか致しますん?」
「いたしません」
ぷいと顔を背け、アキの肩に頭を預ける。
「アキきゅんのお膝でもいいのですが……いかがです?」
「やだ」
途切れた腕でぎゅっとアキの二の腕を抱く。
「しょうがないなぁ」
仕方ない。カーペットは敷いてあるしそこそこ厚い、別に床でもいいや。
「探偵さんに霊視してもらった結果なんだけどな……」
俺はスイが教えてくれた荒凪の真実の一端をみんなに話した。翻訳待ちのアキだけは荒凪と手遊びをしていたけれど。
「……って、感じなんだ」
「アンタ勝手に人脈広げてるのねぇ」
「えっ、いけませんか?」
「別にいいわよ、ちっちゃい子でもあるまいし。反社じゃなきゃね」
反社の紹介みたいなものだし、スイ本人も手段は問わないと言っていたり未成年のくせに酒を飲んでいたり、まともではないことは確かだ。事務所の机には吸殻が入った灰皿も置かれていたし、煙草も吸っていそうだったな。
「しっかしあのバカ犬もとんでもない厄ネタ渡してくれたわね。最低でも人間二人は殺してるとこから盗み出してきたってことでしょ? あーぁ、引き受けるんじゃなかった」
「マ、ママ上、荒凪きゅんの前でそのような話は」
荒凪の霊視中にスイが吹っ飛んだことや、荒凪が町中を逃げ回ったことは母には伝えていない。それを言えば荒凪を返すと言い出しかねないからだ、しかし情報を絞っても母は返す判断をするかもしれない。もっと渡す情報を絞るべきだったか。
「この子視せて言われたんだから、荒凪くんも聞いたでしょ?」
「そうですけど、引き取るんじゃなかったとか……そういうことは」
「……悪かったわよ。でも、ヤバいヤツが取り返しに来ない保証はないでしょ。荒凪くん自身に不満はないわ、製作者共に不安があるのよ。真尋くんが徹底的に潰してくれてたらいいんだけど」
ネイがまだ調査中ということから考えて、組織丸ごとの壊滅はさせていないだろう。末端の集団を一つ潰しただけ、と言ったところか。
「なぁ、鳴雷。二人殺して作ったってことはさ、お前が前に言ってたリョウメンスクナ説、死んでないんじゃないか?」
「え、俺はむしろ死んだと思ってたけど。血縁だけど双子じゃないとか言ってたし」
「何? その説」
「あ、えーっとですな……」
俺は以前セイカに話した、昔ネットで有名になった怪談について伝えた。
「口裂け女とかのクチコミ系とは違う、ネット都市伝説ってヤツね。ちょっと元の話見てみるから待ってて」
「ほーい」
「……そうだお前タッグものだって嘘ついただろあの漫画」
「えっ、何のことですかな」
「両面宿儺だよ、尾獣とかミギーみたいな感じかと思ってたのに」
「あっ読み進めました? いやでも新規読者に下手なこと言えませんぞ、っていうか答え濁しましたよな私前聞かれた時! そんなんで嘘つきとか言われても困るんですけど」
「許せねぇよ……」
「そんなに怒る!?」
「バケモンがなんだかんだ人間にほだされて一緒に戦ってくれたり人間守ってくれたりする話が好きなんだよ俺は」
「ごめんて……まぁ好きなジャンルとはズレてたかもだけど続きも読んでよ、語ろうよ」
「そりゃお前が買ってる漫画は全部読む気だけどさ……あ、そういえば、アレ次の巻早く買ってくれよ。暗黒大陸での話あるんだろ? 早く読みたいんだけど」
「出たら買うよ……」
と、漫画の話をしているうちに読み終わったようで母がスマホを置いた。
「ママ上、どうです? 荒凪くんと関係ありそうです?」
「うーん……読んでみたけど、これを元に荒凪くんリョウメンスクナ説唱えるのはシーマンと人面犬を同種扱いするようなもん感があるわね。つまり無茶考察ってことよ」
「やっぱり? ですよなぁ。ほれセイカ様、この説死んでまそ」
セイカは俺の説の可能性をまだ信じてくれているようで納得していないような顔をしていたが、言葉にはせず頷いた。反論出来るだけの材料はなかったらしい。
「変なヤツが取り返しに来なきゃいいけど……」
「そこは不安要素ですな」
「……監視カメラ増やしとくわ」
「よろしくお願いしまっそ」
「後はまたあの犬に何か対策を、っと、お風呂沸いたわね。私入ってくるからアンタらゲームでもしてなさい」
「はーい」
と元気よく返事をしたが、俺はすぐにはコントローラーを持たず、スイによる霊視結果を秘書とネイに送った。
「鳴雷、まだか?」
「もう少し……OK! やろっか」
「荒凪には鳴雷が操作説明とかしろよ」
「分かってるよ。荒凪くん、まずコントローラーの持ち方なんだけど……」
ゲーム自体をよく知らない荒凪に口頭説明だけで全てを理解させるのは難しい。習うより慣れろとはよく言ったものだ、コントローラーを持てたらまずは一戦プレイさせてみようじゃないか。
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