冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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性格に合わない性質 (水月+荒凪・ミタマ・アキ・セイカ)

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アキの体調不良の原因は荒凪、ミタマは真剣な顔でそう伝えてきた。

「…………荒凪くんのせい?」

「うむ」

「……そう、か。そっ……か。荒凪くん……が」

「敵意を向けた訳ではなさそうじゃぞ、単に悪影響を受けただけじゃ。故意ではない、怒ってやるなと言いたいところじゃが……悪意なく他に悪影響を及ぼすようなモノ、預かるのはやはり……」

《あの魚野郎のせいなのか?》

起き上がったアキがミタマに何か尋ねる。

「……ワシの言葉は伝わるんじゃったな。そうじゃ、彼奴の悪影響じゃ、ヤツを恨むか?」

《アイツのせいなら早くそう言えよな……なんかの病気かと思ったぜ。バケモンのせいならこっちにも対策のしようがあるっつーのに》

「対策じゃと?」

アキは棚を探り、金色のネックレスを取り出した。飾りは十字架……そうか、アレはネックレスじゃない、ロザリオだ。

《神様は全ての人間を赦し愛すらしい。まー俺は無神論者だがな》

ロザリオを首にかけるとアキは深く息を吐いた。

「……ほう」

《無神論者とか自称してるくせにそんなもん持ってたんだな》

《親父の友達がくれたんだ、高そうだから困窮したら売ろうと思って大事に持ってるぜ》

何の話をしているのか全く分からない。

「ふむ、外つ国の物はよく分からんが……ひとまず安心じゃな」

「ロザリオ効くの?」

「浄化されとる。そうさな、消毒に近い。負った傷は自然治癒に任せるしかないが、傷口から感染症などに罹る心配はひとまずなくなった、と言ったところじゃ」

「どくけしそう使えばどく状態は治るけど、減ったHPはやくそう使うなり何なりしなきゃってことだね。っていうか毒に侵されてた感じなんだ? アキ」

「呪いや穢れとはそういうものじゃ。ま、悪意があった訳ではないからか、そう強い穢れでもなく……浄化しなくとも体調が戻るのが数日遅れた程度じゃろうがな」

人外の時間感覚だな。

「俺の時はそんなに後引かなかったよね?」

「アレはワシが整えてやったじゃろうが」

「あっそっか。アキにやってあげたらよかったのに」

「もちろん。説明を終えたらあぶらげねだるつもりじゃったぞ、治療するには心もとない霊力じゃったからのぅ」

「母さんに言えばもらえたんじゃない? そんな俺が帰るまで何時間も待たなくても……アキしんどかっただろうし」

「話せばゆーちゃんはあっちゃんを返したがるはずじゃ。みっちゃん、あっちゃん気に入っとるじゃろ? 離れることになったら悲しむと思うてのぅ。あーちゃんの不調はそう酷いものではなかったからの、みっちゃん帰ってくるまで待っとったんじゃが……あーちゃんの体調を優先した方がよかったかの?」

「…………いや、今回の対応で大丈夫……ごめん責めるようなこと言っちゃって。俺、荒凪くんの様子見てくるよ。先にご飯食べといて」

ぐったりとしたアキを見て少し取り乱していた、だからってミタマに当たるなんて……と自己嫌悪を募らせつつ、一人プールに向かった。

「ぅっ……?」

薄らと妙な匂いがする。嫌な匂いだ。これは、腐卵臭……?

「荒凪くん、上がってたんだ」

荒凪はプールサイドで大きなタオルにくるまっていた。乾き、剥がれ落ちた鱗が散乱している。サンダルを履かなければ危ないな。

「ごはん……だから、人に、なて……きなさい、て」

「母さんが言ってたの? そっか、手伝うよ」

既に魚の尾は崩れ人間の足が現れている。後もう少しだ。タオルを取ってきて、荒凪の頭を拭いてやった。

(荒凪くんから変な匂いがしてる訳じゃありませんな。落ちた鱗とかからも別に魚っぽい匂いはしませんし……どこから来るんでしょう、この変な匂い。こっち、じゃなくてこっち側……? 水? プールの水が臭い?)

臭い。早くこの場を離れたい。

「荒凪くん、髪はタオルドライじゃ厳しいしある程度身体拭けたらアキの部屋に移ろう、ドライヤー使ってあげる」

「うん」

「……あとさ、なんか変な匂いしない? 卵が腐った感じの」

「たまご……? わかん、ない」

ずっとここに居たから感覚が麻痺しているのだろうか。俺の鼻が正しければこの腐卵臭はプールから漂ってきている、しかし荒凪には移っていない。髪に鼻を当てて嗅いでみても、全くの無臭。

「……そっか。ま、いいや。そろそろいいかな? 立てる? パッパッてして、鱗落として……うん、OK。ドライヤーの準備しとくから着替えたらおいで」

アキの部屋に移り、ドライヤーを準備。プールサイドの端に置かれていた服に着替えた荒凪がやってきたら、髪を乾かしてやる。

「きゅるるる……」

心地良さそうな声に癒される。

「きゅるぅ……きゅっ! みつき、わすれてた……おかえり、なさい」

「え? あぁ、ただいま、荒凪くん」

可愛い。いじらしい。愛おしい。彼の性格は善良そのものだ、傍に居るだけで他者を傷付ける体質が憎らしい。どうしてこんないい子がこんな習性を持たなきゃならないんだ。

(スイさんに相談したり、秘書さんの研究が進んだら、この厄介な呪いだか毒だかを生成する機能そのものを除去して、荒凪くんを無害な子に出来ないでしょうか)

そうでなければスキンシップもままならない。俺は荒凪の肩にかけたタオル越しに彼を抱き締めた。

「……? みつきー?」

「ん、いや、大丈夫……除去は無理でも、コントロールか、活用か……何か必ず解決策を見つけてみせる。見つけてもらってみせる、かな、俺は無力だから……」

霊感も、オカルト知識も、科学技術も、俺には何もない。

「そう……俺には何にも出来ないからさ、何にもない空っぽの頭、いっぱい下げる。哀れんで協力してくれるの祈るよ」

「みつきあったかい。これ、すき」

「ハグ好き? そっか……ふふ。そろそろ乾いたかな。耳ヨシ、水掻きナシ、爪ヨシ、足OK、鱗多分ナシ……よっし、行こう! ご飯ご飯っ」

「いこー、ごはーん」

荒凪の手を取り立ち上がる。まだ歩くのが覚束無い彼の手を引いて、ぼんやりと明るいダイニングへと歩を進めた。
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