冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
1,688 / 2,304

性格に合わない性質 (水月+荒凪・ミタマ・アキ・セイカ)

しおりを挟む
アキの体調不良の原因は荒凪、ミタマは真剣な顔でそう伝えてきた。

「…………荒凪くんのせい?」

「うむ」

「……そう、か。そっ……か。荒凪くん……が」

「敵意を向けた訳ではなさそうじゃぞ、単に悪影響を受けただけじゃ。故意ではない、怒ってやるなと言いたいところじゃが……悪意なく他に悪影響を及ぼすようなモノ、預かるのはやはり……」

《あの魚野郎のせいなのか?》

起き上がったアキがミタマに何か尋ねる。

「……ワシの言葉は伝わるんじゃったな。そうじゃ、彼奴の悪影響じゃ、ヤツを恨むか?」

《アイツのせいなら早くそう言えよな……なんかの病気かと思ったぜ。バケモンのせいならこっちにも対策のしようがあるっつーのに》

「対策じゃと?」

アキは棚を探り、金色のネックレスを取り出した。飾りは十字架……そうか、アレはネックレスじゃない、ロザリオだ。

《神様は全ての人間を赦し愛すらしい。まー俺は無神論者だがな》

ロザリオを首にかけるとアキは深く息を吐いた。

「……ほう」

《無神論者とか自称してるくせにそんなもん持ってたんだな》

《親父の友達がくれたんだ、高そうだから困窮したら売ろうと思って大事に持ってるぜ》

何の話をしているのか全く分からない。

「ふむ、外つ国の物はよく分からんが……ひとまず安心じゃな」

「ロザリオ効くの?」

「浄化されとる。そうさな、消毒に近い。負った傷は自然治癒に任せるしかないが、傷口から感染症などに罹る心配はひとまずなくなった、と言ったところじゃ」

「どくけしそう使えばどく状態は治るけど、減ったHPはやくそう使うなり何なりしなきゃってことだね。っていうか毒に侵されてた感じなんだ? アキ」

「呪いや穢れとはそういうものじゃ。ま、悪意があった訳ではないからか、そう強い穢れでもなく……浄化しなくとも体調が戻るのが数日遅れた程度じゃろうがな」

人外の時間感覚だな。

「俺の時はそんなに後引かなかったよね?」

「アレはワシが整えてやったじゃろうが」

「あっそっか。アキにやってあげたらよかったのに」

「もちろん。説明を終えたらあぶらげねだるつもりじゃったぞ、治療するには心もとない霊力じゃったからのぅ」

「母さんに言えばもらえたんじゃない? そんな俺が帰るまで何時間も待たなくても……アキしんどかっただろうし」

「話せばゆーちゃんはあっちゃんを返したがるはずじゃ。みっちゃん、あっちゃん気に入っとるじゃろ? 離れることになったら悲しむと思うてのぅ。あーちゃんの不調はそう酷いものではなかったからの、みっちゃん帰ってくるまで待っとったんじゃが……あーちゃんの体調を優先した方がよかったかの?」

「…………いや、今回の対応で大丈夫……ごめん責めるようなこと言っちゃって。俺、荒凪くんの様子見てくるよ。先にご飯食べといて」

ぐったりとしたアキを見て少し取り乱していた、だからってミタマに当たるなんて……と自己嫌悪を募らせつつ、一人プールに向かった。

「ぅっ……?」

薄らと妙な匂いがする。嫌な匂いだ。これは、腐卵臭……?

「荒凪くん、上がってたんだ」

荒凪はプールサイドで大きなタオルにくるまっていた。乾き、剥がれ落ちた鱗が散乱している。サンダルを履かなければ危ないな。

「ごはん……だから、人に、なて……きなさい、て」

「母さんが言ってたの? そっか、手伝うよ」

既に魚の尾は崩れ人間の足が現れている。後もう少しだ。タオルを取ってきて、荒凪の頭を拭いてやった。

(荒凪くんから変な匂いがしてる訳じゃありませんな。落ちた鱗とかからも別に魚っぽい匂いはしませんし……どこから来るんでしょう、この変な匂い。こっち、じゃなくてこっち側……? 水? プールの水が臭い?)

臭い。早くこの場を離れたい。

「荒凪くん、髪はタオルドライじゃ厳しいしある程度身体拭けたらアキの部屋に移ろう、ドライヤー使ってあげる」

「うん」

「……あとさ、なんか変な匂いしない? 卵が腐った感じの」

「たまご……? わかん、ない」

ずっとここに居たから感覚が麻痺しているのだろうか。俺の鼻が正しければこの腐卵臭はプールから漂ってきている、しかし荒凪には移っていない。髪に鼻を当てて嗅いでみても、全くの無臭。

「……そっか。ま、いいや。そろそろいいかな? 立てる? パッパッてして、鱗落として……うん、OK。ドライヤーの準備しとくから着替えたらおいで」

アキの部屋に移り、ドライヤーを準備。プールサイドの端に置かれていた服に着替えた荒凪がやってきたら、髪を乾かしてやる。

「きゅるるる……」

心地良さそうな声に癒される。

「きゅるぅ……きゅっ! みつき、わすれてた……おかえり、なさい」

「え? あぁ、ただいま、荒凪くん」

可愛い。いじらしい。愛おしい。彼の性格は善良そのものだ、傍に居るだけで他者を傷付ける体質が憎らしい。どうしてこんないい子がこんな習性を持たなきゃならないんだ。

(スイさんに相談したり、秘書さんの研究が進んだら、この厄介な呪いだか毒だかを生成する機能そのものを除去して、荒凪くんを無害な子に出来ないでしょうか)

そうでなければスキンシップもままならない。俺は荒凪の肩にかけたタオル越しに彼を抱き締めた。

「……? みつきー?」

「ん、いや、大丈夫……除去は無理でも、コントロールか、活用か……何か必ず解決策を見つけてみせる。見つけてもらってみせる、かな、俺は無力だから……」

霊感も、オカルト知識も、科学技術も、俺には何もない。

「そう……俺には何にも出来ないからさ、何にもない空っぽの頭、いっぱい下げる。哀れんで協力してくれるの祈るよ」

「みつきあったかい。これ、すき」

「ハグ好き? そっか……ふふ。そろそろ乾いたかな。耳ヨシ、水掻きナシ、爪ヨシ、足OK、鱗多分ナシ……よっし、行こう! ご飯ご飯っ」

「いこー、ごはーん」

荒凪の手を取り立ち上がる。まだ歩くのが覚束無い彼の手を引いて、ぼんやりと明るいダイニングへと歩を進めた。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...