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来ない先輩と癒し系 (水月+カンナ・ハル・シュカ・ネザメ・ミフユ)
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二人三脚の練習は十分ほどで終わってしまった。鳴り響くチャイムの中整列し、礼、解散。彼氏達と駄弁りながら更衣室へ向かう、その道中セイカが座った車椅子を回収。
「せーか大丈夫~? 保健室に居ればよかったのに、冷房入ってるっしょ」
「練習見たくて」
「そうなの? 変わってんね~。前は大人しく保健室待機だったじゃん」
「行進見ててもつまんないし……競技練習は俺ストップウォッチ持ったり、なんかアドバイス求められたりとか、役目があっていいんだ。今日は何にも出来なかったけど」
「ふーん、なんか健気~」
着替えを終えたら教室に戻り、弁当を取ってすぐに生徒会室へ。
「む、来たか。遅かったな」
「四時間目体育祭の練習だったんで、ちょっと」
「そうか、お疲れ様」
あまり感情の入っていない労いと共に弁当箱が渡される。俺の名前が彫られた俺専用の弁当箱、これを使うようになって長いけれど、いつまでも新鮮な嬉しさがある。
「ありがとうございます! ミフユさんのお弁当があるって思うと午前やる気出るし、美味しいお弁当食べたからって午後も元気出せるんです」
「そ、そうか。少し大袈裟に思うが……毎度そんなに喜んでもらえると、ミフユも作る甲斐があるというもの。ネザメ様にも見習っていただきたいものだ」
カサネの席として隣を一つ空けて席に着く。もう片方の隣の席はカンナが座った。控えめで大人しい彼がいつもしれっと俺の傍を確保するのが何だかおかしくて、愛おしい。
「ふふっ」
「……?」
俺の思考なんて知らないカンナは不思議そうに俺を見つめ返す。
「あれ、しゅー今日のお弁当タッパー?」
「穂張さんに作ってもらったんです」
「あ、そういや泊まるとか言ってたっけ~……わ、美味しそ。サンちゃん料理上手~」
「早朝に出て、自宅で着替えるくらいは出来たんですが弁当を作るとなると寝る時間がなくなりますからね。ありがたい……美味しいですし」
「お肉たっぷりだね~。ねっねっ唐揚げとウィンナー交換して~?」
生姜焼きや唐揚げ、ミニハンバーグなど茶色っぽいものばかりだ。色鮮やかな具材は大抵野菜だから、見た目で不評を買おうとも茶色い弁当が一番美味いんだよなぁ、野菜嫌いな俺からすれば。
「唐揚げかぁ……」
「ネザメ様も唐揚げがよろしかったですか?」
「ううん、そういう訳じゃないんだ。ほら、サンさん目が不自由だろう? 食材のカットを手探りで出来るのはまだ分かるのだけれど、揚げ物は一体どうしているのかなぁ、と思って」
「……ネザメ様、あまりそういうお話は」
「音と振動って言ってましたよ。揚げ物は一番美味しいタイミングで音が変わるんだとか」
「え~? うーん、確かにずっと同じ音じゃないけどさぁ~……それで分かんの? サンちゃんヤバ~」
「炒め物は感触だそうです。だからほら、ハンバーグやステーキ……箸で刺した跡があります」
「あ、ホントだ」
チラと覗いた時は見えなかったけれど、ミニステーキまで入っていたのか。豪華だな、いや、手の込み具合や食材の値段からすればミフユからの愛妻弁当の方が豪華なんだが、男子高校生としてはやはり肉たっぷりなお弁当に惹かれてしまう。
「しかし相変わらず霞染さんのお弁当は少ない上に野菜だけで……体育祭の練習があったのに、これで足りるんですか?」
「野菜だけじゃないって~、ほらササミも入ってる。夏場は露出増えるから痩せてないとみっともないの! ミニスカ履けないじゃん!」
「水月、どう思います?」
「ハルの体型調整は俺ウケを狙ってる訳じゃなくて、ハル自身の美意識から来てるから俺が何言ったって変わんないだろ?」
「どういう体型になって欲しいか聞いてる訳じゃなく、どう思うかって聞いてるだけですよ。ミニスカ履くためにこんな飯食ってるの」
「心配は心配だよなぁ、倒れたりしないかなって。健康保ててるなら言うことはないよ、理想のために努力出来てる人って好きだし尊敬する」
「ふっふーん、分かったら人のお弁当にケチつけんのやめなよね!」
ハルは得意気にふんぞり返ってみせた。
「シュカはハルが心配だったんだよなぁ、シュカはいっぱい食べるタイプだから低燃費なハルの感覚よく分からないんだよ。だろ?」
「まぁ、こんな飯で平気な感覚は分かりませんけど……別に心配してる訳じゃないですよ」
声が小さく、早口になっていく。
「心配してくれてるってんならまぁ~、悪い気はしないけど」
「……心配してないですってば」
「素直じゃないなぁしゅーは」
仲が良さそうで何よりだ。しかし、カサネはまだ来ないのか? 俺はもう弁当を半分食べ終わってしまったぞ。
(メッセ入れますかな)
食事中に堂々とスマホを弄ればミフユに行儀が悪いと叱られてしまう。俺は机の影にスマホを隠し、こっそりとカサネにメッセージを送った。
『生徒会室に集まってます。いつ頃お越しになられますか?』
返事は淡白で短いものだった、たったの四文字で「行かない」と。シンプルな言葉は拒絶された感覚が強い、気分がズンと落ち込む。
「……? みぃ、くん?」
来てくれないのは俺がセイカとのセックスを見せてしまったせいだろうか、その後話しかけた時に何か嫌なことを言ってしまっただろうか、と記憶を漁る俺の腕をカンナがくいくいと引いた。
「ん……? 心配してくれたのか? ちょっと疲れただけだから大丈夫だよ」
「そ、なの?」
「昨日遊びまくったからなぁ、カンナは一晩で回復出来たか?」
「ぅん……」
「そっか、すごいな」
カンナと接していると落ち込んだ心が浮ついてく。流石、俺の彼氏達の中で随一の癒し系だ。
「せーか大丈夫~? 保健室に居ればよかったのに、冷房入ってるっしょ」
「練習見たくて」
「そうなの? 変わってんね~。前は大人しく保健室待機だったじゃん」
「行進見ててもつまんないし……競技練習は俺ストップウォッチ持ったり、なんかアドバイス求められたりとか、役目があっていいんだ。今日は何にも出来なかったけど」
「ふーん、なんか健気~」
着替えを終えたら教室に戻り、弁当を取ってすぐに生徒会室へ。
「む、来たか。遅かったな」
「四時間目体育祭の練習だったんで、ちょっと」
「そうか、お疲れ様」
あまり感情の入っていない労いと共に弁当箱が渡される。俺の名前が彫られた俺専用の弁当箱、これを使うようになって長いけれど、いつまでも新鮮な嬉しさがある。
「ありがとうございます! ミフユさんのお弁当があるって思うと午前やる気出るし、美味しいお弁当食べたからって午後も元気出せるんです」
「そ、そうか。少し大袈裟に思うが……毎度そんなに喜んでもらえると、ミフユも作る甲斐があるというもの。ネザメ様にも見習っていただきたいものだ」
カサネの席として隣を一つ空けて席に着く。もう片方の隣の席はカンナが座った。控えめで大人しい彼がいつもしれっと俺の傍を確保するのが何だかおかしくて、愛おしい。
「ふふっ」
「……?」
俺の思考なんて知らないカンナは不思議そうに俺を見つめ返す。
「あれ、しゅー今日のお弁当タッパー?」
「穂張さんに作ってもらったんです」
「あ、そういや泊まるとか言ってたっけ~……わ、美味しそ。サンちゃん料理上手~」
「早朝に出て、自宅で着替えるくらいは出来たんですが弁当を作るとなると寝る時間がなくなりますからね。ありがたい……美味しいですし」
「お肉たっぷりだね~。ねっねっ唐揚げとウィンナー交換して~?」
生姜焼きや唐揚げ、ミニハンバーグなど茶色っぽいものばかりだ。色鮮やかな具材は大抵野菜だから、見た目で不評を買おうとも茶色い弁当が一番美味いんだよなぁ、野菜嫌いな俺からすれば。
「唐揚げかぁ……」
「ネザメ様も唐揚げがよろしかったですか?」
「ううん、そういう訳じゃないんだ。ほら、サンさん目が不自由だろう? 食材のカットを手探りで出来るのはまだ分かるのだけれど、揚げ物は一体どうしているのかなぁ、と思って」
「……ネザメ様、あまりそういうお話は」
「音と振動って言ってましたよ。揚げ物は一番美味しいタイミングで音が変わるんだとか」
「え~? うーん、確かにずっと同じ音じゃないけどさぁ~……それで分かんの? サンちゃんヤバ~」
「炒め物は感触だそうです。だからほら、ハンバーグやステーキ……箸で刺した跡があります」
「あ、ホントだ」
チラと覗いた時は見えなかったけれど、ミニステーキまで入っていたのか。豪華だな、いや、手の込み具合や食材の値段からすればミフユからの愛妻弁当の方が豪華なんだが、男子高校生としてはやはり肉たっぷりなお弁当に惹かれてしまう。
「しかし相変わらず霞染さんのお弁当は少ない上に野菜だけで……体育祭の練習があったのに、これで足りるんですか?」
「野菜だけじゃないって~、ほらササミも入ってる。夏場は露出増えるから痩せてないとみっともないの! ミニスカ履けないじゃん!」
「水月、どう思います?」
「ハルの体型調整は俺ウケを狙ってる訳じゃなくて、ハル自身の美意識から来てるから俺が何言ったって変わんないだろ?」
「どういう体型になって欲しいか聞いてる訳じゃなく、どう思うかって聞いてるだけですよ。ミニスカ履くためにこんな飯食ってるの」
「心配は心配だよなぁ、倒れたりしないかなって。健康保ててるなら言うことはないよ、理想のために努力出来てる人って好きだし尊敬する」
「ふっふーん、分かったら人のお弁当にケチつけんのやめなよね!」
ハルは得意気にふんぞり返ってみせた。
「シュカはハルが心配だったんだよなぁ、シュカはいっぱい食べるタイプだから低燃費なハルの感覚よく分からないんだよ。だろ?」
「まぁ、こんな飯で平気な感覚は分かりませんけど……別に心配してる訳じゃないですよ」
声が小さく、早口になっていく。
「心配してくれてるってんならまぁ~、悪い気はしないけど」
「……心配してないですってば」
「素直じゃないなぁしゅーは」
仲が良さそうで何よりだ。しかし、カサネはまだ来ないのか? 俺はもう弁当を半分食べ終わってしまったぞ。
(メッセ入れますかな)
食事中に堂々とスマホを弄ればミフユに行儀が悪いと叱られてしまう。俺は机の影にスマホを隠し、こっそりとカサネにメッセージを送った。
『生徒会室に集まってます。いつ頃お越しになられますか?』
返事は淡白で短いものだった、たったの四文字で「行かない」と。シンプルな言葉は拒絶された感覚が強い、気分がズンと落ち込む。
「……? みぃ、くん?」
来てくれないのは俺がセイカとのセックスを見せてしまったせいだろうか、その後話しかけた時に何か嫌なことを言ってしまっただろうか、と記憶を漁る俺の腕をカンナがくいくいと引いた。
「ん……? 心配してくれたのか? ちょっと疲れただけだから大丈夫だよ」
「そ、なの?」
「昨日遊びまくったからなぁ、カンナは一晩で回復出来たか?」
「ぅん……」
「そっか、すごいな」
カンナと接していると落ち込んだ心が浮ついてく。流石、俺の彼氏達の中で随一の癒し系だ。
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