上 下
1,686 / 1,940

来ない先輩と癒し系 (水月+カンナ・ハル・シュカ・ネザメ・ミフユ)

しおりを挟む
二人三脚の練習は十分ほどで終わってしまった。鳴り響くチャイムの中整列し、礼、解散。彼氏達と駄弁りながら更衣室へ向かう、その道中セイカが座った車椅子を回収。

「せーか大丈夫~? 保健室に居ればよかったのに、冷房入ってるっしょ」

「練習見たくて」

「そうなの? 変わってんね~。前は大人しく保健室待機だったじゃん」

「行進見ててもつまんないし……競技練習は俺ストップウォッチ持ったり、なんかアドバイス求められたりとか、役目があっていいんだ。今日は何にも出来なかったけど」

「ふーん、なんか健気~」

着替えを終えたら教室に戻り、弁当を取ってすぐに生徒会室へ。

「む、来たか。遅かったな」

「四時間目体育祭の練習だったんで、ちょっと」

「そうか、お疲れ様」

あまり感情の入っていない労いと共に弁当箱が渡される。俺の名前が彫られた俺専用の弁当箱、これを使うようになって長いけれど、いつまでも新鮮な嬉しさがある。

「ありがとうございます! ミフユさんのお弁当があるって思うと午前やる気出るし、美味しいお弁当食べたからって午後も元気出せるんです」

「そ、そうか。少し大袈裟に思うが……毎度そんなに喜んでもらえると、ミフユも作る甲斐があるというもの。ネザメ様にも見習っていただきたいものだ」

カサネの席として隣を一つ空けて席に着く。もう片方の隣の席はカンナが座った。控えめで大人しい彼がいつもしれっと俺の傍を確保するのが何だかおかしくて、愛おしい。

「ふふっ」

「……?」

俺の思考なんて知らないカンナは不思議そうに俺を見つめ返す。

「あれ、しゅー今日のお弁当タッパー?」

「穂張さんに作ってもらったんです」

「あ、そういや泊まるとか言ってたっけ~……わ、美味しそ。サンちゃん料理上手~」

「早朝に出て、自宅で着替えるくらいは出来たんですが弁当を作るとなると寝る時間がなくなりますからね。ありがたい……美味しいですし」

「お肉たっぷりだね~。ねっねっ唐揚げとウィンナー交換して~?」

生姜焼きや唐揚げ、ミニハンバーグなど茶色っぽいものばかりだ。色鮮やかな具材は大抵野菜だから、見た目で不評を買おうとも茶色い弁当が一番美味いんだよなぁ、野菜嫌いな俺からすれば。

「唐揚げかぁ……」

「ネザメ様も唐揚げがよろしかったですか?」

「ううん、そういう訳じゃないんだ。ほら、サンさん目が不自由だろう? 食材のカットを手探りで出来るのはまだ分かるのだけれど、揚げ物は一体どうしているのかなぁ、と思って」

「……ネザメ様、あまりそういうお話は」

「音と振動って言ってましたよ。揚げ物は一番美味しいタイミングで音が変わるんだとか」

「え~? うーん、確かにずっと同じ音じゃないけどさぁ~……それで分かんの? サンちゃんヤバ~」

「炒め物は感触だそうです。だからほら、ハンバーグやステーキ……箸で刺した跡があります」

「あ、ホントだ」

チラと覗いた時は見えなかったけれど、ミニステーキまで入っていたのか。豪華だな、いや、手の込み具合や食材の値段からすればミフユからの愛妻弁当の方が豪華なんだが、男子高校生としてはやはり肉たっぷりなお弁当に惹かれてしまう。

「しかし相変わらず霞染さんのお弁当は少ない上に野菜だけで……体育祭の練習があったのに、これで足りるんですか?」

「野菜だけじゃないって~、ほらササミも入ってる。夏場は露出増えるから痩せてないとみっともないの! ミニスカ履けないじゃん!」

「水月、どう思います?」

「ハルの体型調整は俺ウケを狙ってる訳じゃなくて、ハル自身の美意識から来てるから俺が何言ったって変わんないだろ?」

「どういう体型になって欲しいか聞いてる訳じゃなく、どう思うかって聞いてるだけですよ。ミニスカ履くためにこんな飯食ってるの」

「心配は心配だよなぁ、倒れたりしないかなって。健康保ててるなら言うことはないよ、理想のために努力出来てる人って好きだし尊敬する」

「ふっふーん、分かったら人のお弁当にケチつけんのやめなよね!」

ハルは得意気にふんぞり返ってみせた。

「シュカはハルが心配だったんだよなぁ、シュカはいっぱい食べるタイプだから低燃費なハルの感覚よく分からないんだよ。だろ?」

「まぁ、こんな飯で平気な感覚は分かりませんけど……別に心配してる訳じゃないですよ」

声が小さく、早口になっていく。

「心配してくれてるってんならまぁ~、悪い気はしないけど」

「……心配してないですってば」

「素直じゃないなぁしゅーは」

仲が良さそうで何よりだ。しかし、カサネはまだ来ないのか? 俺はもう弁当を半分食べ終わってしまったぞ。

(メッセ入れますかな)

食事中に堂々とスマホを弄ればミフユに行儀が悪いと叱られてしまう。俺は机の影にスマホを隠し、こっそりとカサネにメッセージを送った。

『生徒会室に集まってます。いつ頃お越しになられますか?』

返事は淡白で短いものだった、たったの四文字で「行かない」と。シンプルな言葉は拒絶された感覚が強い、気分がズンと落ち込む。

「……? みぃ、くん?」

来てくれないのは俺がセイカとのセックスを見せてしまったせいだろうか、その後話しかけた時に何か嫌なことを言ってしまっただろうか、と記憶を漁る俺の腕をカンナがくいくいと引いた。

「ん……? 心配してくれたのか? ちょっと疲れただけだから大丈夫だよ」

「そ、なの?」

「昨日遊びまくったからなぁ、カンナは一晩で回復出来たか?」

「ぅん……」

「そっか、すごいな」

カンナと接していると落ち込んだ心が浮ついてく。流石、俺の彼氏達の中で随一の癒し系だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集

夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。 現在公開中の作品(随時更新) 『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』 異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

処理中です...