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壊滅的リズム感 (水月+カンナ・ハル・リュウ・シュカ・セイカ)

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四時間目は体育なので、その手前の休み時間は着替えで潰れて誰とも何も出来ない。

「みぃ、くん……だん、す……ぼく、達……いちば……め」

広範囲に残る火傷跡を誰にも見せないよう、女子のように肌を出さない着替えをしてみせたカンナは俺の二の腕をつついてそう言った。

「今日は俺達のグループが最初にダンスルーム使っていいのか。集合せずに行っていいんだっけ?」

「ぅん……」

「じゃ、ダンスルーム行こうか。っと、ハル! まだかー?」

リュウもシュカもとっくに着替えを終えているけれど、ハルだけは準備に手間取っている。日焼け止めを塗っているようだ。

「待ってぇ~!」

「日焼け止めなんか朝塗ってこいよ」

「そんな何時間も持つヤツじゃないの! 今日日差しヤバいしみんなも塗っときなよ~」

「朝塗ったしなぁ……アレ半日保つヤツだったよな、セイカ」

「知らね」

「ダンスルーム屋内やぞ」

「その後外出るじゃんバカりゅー!」

ま、チャイムが鳴るまでに終わらせるのなら大目に見てやろう。

「先行ってCDの準備でもしとくか。カンナ、セイカ。段差あるからちゃんと俺の腕掴んでろよ」

左腕にカンナが、右腕にセイカが抱きつく。付き合いはそれなりに長いし何度もセックスした仲なのに、二人とも遠慮しているのか腕に抱きつく力が弱い。

「……ん、準備OK」

「出来た? ありがとうなセイカ」

「い、つも……ありがと。ょ……ろ、しく」

「俺何にも出来ないんだし、このくらいの雑用は進んでやるよ。礼言われるようなことじゃない」

「そう言うなよ、言い過ぎて困るってことはないんだから」

「せー、くん……今、かけて。みぃくん……リズム感、ダメ……メ、だか……ら、ちょ……と、確かめ……」

俺、リズム感ダメダメなんだ……

「鳴雷たまに音ゲーやってるからリズム感ありそうなのに、ダンスだと本当カスだよな。行くぞー」

「カス!?」

「さん、にー」

「えっと、カンナ、俺だけ踊るの?」

「てびょ……し、して」

「いち」

音楽が鳴り始める。慌てて手拍子を始める。音量を最大まで上げているせいか音質が悪いな、なんて思いながら手を叩く。

「……せーくん、どう……思う?」

「んー……なんで同じ間隔で手を叩き続けることが出来ないんだろうって思うかな」

「がんば、て……音、聞こうとして……なんか、変……なってる」

「たまに裏拍子打ってるよな」

「ぅん……ズレて、の……気付いて、なんか……いっぱ、叩いた……する、し…………めちゃ、くちゃ」

「鳴雷、音ゲーは本当に上手いんだぞ? 難易度一番高いやつフルコンボだったんだ」

「目で、やって……じゃ、ない……かな?」

「それでもリズム感身に付かないもんなのか? ゲームって本当に無意味なのかよ」

「……ど、だろ。ぼく……ゲーム、しな……から、よく、知らな……」

泣きそう。なんで俺手叩いてんの?

「お待たせ~! もうやってんの? え、みっつんなんで手叩いてんの?」

俺も知りたい。

「水月はリズム感がゴミカスとよく言われてますから、特訓中ってとこでしょう」

「そこそこのイケメンやったらダンスちょお下手なくらい、可愛ええなぁで済むんやけどなぁ」

「みっつん人外級ルックスだから完璧じゃないとこ逆に不自然なんだよね~。俺らはみっつんのこと色々知ってるし、ダンスダメなのもイイんだけど~」

「体育祭で初めて見る方々はそうではない……とんでもない美形が居ると思ったら、下手。悪目立ちしますよね」

「せやねんなぁ。ネットに晒されたりせぇへんやろか」

「それは下手でも上手くても晒されそうだし~……下手でも上手くてもバズりそうだけど~……実際みっつんの隠し撮りとか放送事故ことごとくバズってるし」

俺、普段からもっと顔隠した方がいいのかな。

「体育祭は大丈夫じゃないですか? 撮影はOKですけど、不特定多数に閲覧が可能なサイト等へのアップロードは禁止ですし」

「禁止とか守んの~?」

「法的措置取るらしいですよ」

「わぉ……流石~って感じ? みっつんも今までの盗撮犯訴えたりすればぁ? 本屋のとかぁ、遊園地のとかぁ~」

「めんどくさいし……下手に訴えて変なことになったら嫌だし……」

「変って?」

「コラ素材化とか」

「なるわけないじゃ~ん。みっつん面白~い」

音楽が終わった。ハル達と話しながらも手を叩いていたが、カンナの満足のいく出来ではなかったようで彼の表情は渋い。

「体育祭って体育の日だよな?」

「ぅん……まに、あう……かな。ダンス……むずか、かった……かな。しっぱ……した、ら……ぼくの……せぇ、かなぁ」

「そんなに難しいダンスじゃないんだから鳴雷が運動音痴なだけだ、気負うなよ」

「あー! アンタまたそんなこと言って! 踊ってないくせにぃ!」

「セイカはアキのせいで目が肥えてるんだよ……コサックダンスとかいう反重力ダンスばっか見てるから」

「秋風、最近はブレイクダンス踊ってくれるようになったぞ」

「何それ俺見たことない! えー何、アキダンス好きなの……? 顔似てるし体育祭当日は影武者に頼もうかな……」

カツラとカラコンを用意すればイケると思う。

「兄の風上にも置けませんね」

「よりによってアキくんに半袖半ズボンで炎天下ダンスさせるとかぁ~、鬼畜ぅ~」

「冗談だよ! ほら、みんなで合わせよ。通しでやろうよ。な、カンナ」

「ぅん……みー、くん。てん、くん……がんば、て、ね」

「名指し……! 緊張感あるわぁ」

「りゅーは足絡まったり逆回転したりするからリズム感以前の問題なんだよね~」

落ちこぼれ同士仲良く頑張ろうとリュウと肩を組み、すぐに離れて二列に並ぶ。セイカの雑なカウントが終わり、前奏が始まる。

(絶対他のグループより難易度高いですってこのダンス!)

内心喚き散らしつつ、一生懸命踊った。下手くそだけれど、練習も学校外ではやっていないけれど、今だけは本気で頑張った。
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