冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
1,680 / 2,304

突飛な正体考察 (水月+セイカ・ミタマ・サキヒコ)

しおりを挟む
二時間目と三時間目の隙間の休み時間、俺はまたセイカを連れて屋上への扉前の広間に向かった。二連続同じ相手との逢瀬は当然ハルとリュウからは非難轟々。カンナとシュカは無言。セイカは少し居心地悪そうにしていた。

「……今度は何の話? フタの話したし、その……今日、する場所と時間の取り方も……決めたじゃん」

詳しいセックスの予定を立てたことでセイカは常にそれを意識するようになってしまったらしく、頬を赤らめもじもじとしている。今すぐに手を出したい。

「クッ……! 鎮まれ俺の息子……!」

「…………で、何の話だよ」

「あ、うん。荒凪くんの話。今秘書さんが調べてるだろうし、次の水曜日はスイさんに霊視予約してるんだけど」

スイに渡された名刺から俺は彼女……彼? 彼女? にメッセージアプリを使って仕事の依頼をした。リュウが異様に怯えていたように、ある程度オカルトに通じた者にとって荒凪に関わるのは避けたいことのようで、かなり渋っていた。

「俺も個人的に荒凪くんの正体について考察してみたんだ」

「正体? あぁ、実は人魚じゃないとかいう話だっけ」

「昨日の夜、お祭りの後ネイさんに呼び出されてたんだよ俺。日本神秘の会……荒凪くんを養殖したっていう組織のことネイさん調べてるから、荒凪くん連れてって色々情報渡したんだ」

「いいのかよそれ、あの人怒らないか?」

「秘書さん? さぁ……それは正直分からない、俺は大丈夫だと思ってるけど」

「……ふーん。それで?」

「ネイさんが荒凪くんからその会のこと聞き出そうとした時、様子がおかしくなった。弟について話した時みたいに……ゃ、ちょっと種類は違った気がしたけど。その時にさ、物部さん? って言ってたんだよ」

セイカは軽く頷きながら聞いてくれている。

「……セイカ、実は当たってたのかも。セイカ最近よく漫画とかゲーム楽しんでるみたいだけど、ネットの都市伝説とかフリーゲームの方はどうだ?」

「ん……? いや、都市伝説とかはあんまり。お前そういうのも好きなのか? 幅広いなぁホント……口裂け女くらいしか知らないよ俺。フリーゲームって何?」

「企業が出してる数千円のじゃなくて、個人とか数人のグループ制作の無料ゲーム」

「インディーズ?」

「んー……まぁその辺の細かい区分はいいや、実況とかで見てないんだな?」

「あぁ、うん。お前の棚見てゲーム名調べて実況動画探してるから」

ゲーム実況動画を見ているのは単にそれを好んでいるのではなく、俺と話を合わせるため俺の話を理解するため知識を収集しているというのが、実感出来る言葉だ。ときめく。キュンキュンする。ギンギンになっちゃう。

「洒落怖……掲示板に投稿された怖い話、それを元にしたフリーホラゲがあってね、それ知ってたらネット読み漁ってなくても知ってるかなって思ったんだけど」

「……知らない」

「そっか。うん……俺が今話してる都市伝説ってのは、口裂け女とか人面犬とか昭和頃のヤツじゃなくて……くねくねとか八尺様とか、ちょっと世代が手前のヤツな。で、それを色々知ってる人は多分、物部って聞くとちょっと身構える」

「ふぅん……?」

「リョウメンスクナ、って話があるんだよ。まぁ掲示板投稿だからしっかりタイトルある訳じゃないんだけど……通称的な、ね」

「両面宿儺……あ、今漫画読んでる」

「え? あぁ、セイカが今読んでるのとは関係ないよ、元ネタは同じだろうけど。そもそもは日本書紀だかに出てくる鬼神とか、どこぞの英雄とか……最大の特徴は名前の通り顔が二つあること。俺が今言ってるのは、結合双生児を使って作られた呪いのミイラの話。頭と腕が二人分ずつだったからリョウメンスクナって名付けた……的な話だったかな? あの話読んだのかなり昔だからな~、ハッキリとは覚えてない。帰ったら一緒に読もうか」

「……それで?」

「あぁ、うん。そのミイラが入ってた箱を開けちゃったってとこから始まって」

「それで怪奇現象が次々って流れ?」

「見た人が死んだ、だったかな。で、お坊さん? 的なのが急いで回収した……話自体はそれだけ。そのミイラ、大正? の頃、全国各地回ってて、移動させられる度に地震とかの災害が起こってたって話」

「ふーん……で、その呪いのミイラの詳細設定がさっき言った双子をどうにかしたヤツって訳だ」

「そうそう。蠱毒の人間版的なので呪いを作っていった的な話で……」

「それと荒凪に何の関係が?」

「その呪いのミイラ作ったヤツの名前が物部なんだよ、物部天獄。どこぞの教祖で外法使い」

「…………物部」

「荒凪くんが呼んだ名前と同じだろ、今んとこ苗字だけだけどさ。カルト関係ってのも合ってる。荒凪くん……手、たまに増えるし、合致ポイント多くない?」

「顔は一つだろ。一番の特徴は顔二つなことなんだろ?」

「重瞳で瞳孔だけとはいえ目も増えた、しかも計四つ。二人分だろ。で、歯磨きする時に気付いたけどあの子喉の奥にもう一つ口がある、ウツボみたいに」

「……ウツボってそうなんだ」

漫画やオカルトの知識ではなく、実在の生物の知識で俺がセイカより詳しいものがあるとは……ちょっと調子に乗ってしまうな。

「うん、だから人魚の特徴って言っちゃええばそれまでなんだよ。肌やスリットに関してはイルカっぽいし、ヒレは古代魚みたいな多さでトビウオみたいにしっかりして鋭いし折りたためる。鱗は……よく分かんないな、螺鈿みたいな綺麗さってだけで」

「螺鈿?」

「工芸品。貝殻の内側を薄く剥がして貼っつけた漆器とか螺鈿細工って言うんだ。だから荒凪くんの鱗は真珠の輝きだね」

「あぁ……確かに。基本白で、光の当たり具合で虹色に輝く感じ……鯖の鱗とか鳩の羽みたいな感じだと思ってた」

「うん。海の生き物ごちゃ混ぜ人魚ってんなら喉の奥の口はウツボ由来で話がつくし……そもそも人間が混じってるのが、溺死者ベースの怪異とかいう話なら腕や目が数人分あったって何の不思議もない。でも、物部……荒凪くんが呼んだあの名前が引っかかるんだよ」

「荒凪の正体はリョウメンスクナ、って言いたいのか? 筋通ってるって言うか、無理矢理筋通してるって感じだな」

「え、無理あった?」

「顔のパーツは目と口だけじゃないから両面って言うには無茶だし、その目と口もだいぶ無理がある。腕だってたまに増えるだけ。そもそもなんで下半身が魚なんだよ? その怪談通りに人間の双子使って作ったとしたら、魚はどこで混ざったんだよ」

「……そうだよなぁ、でも物部って」

「そこまで珍しい名前じゃないだろ。それに、もしその物部が実在してたとして……お前が言ってるリョウメンスクナはミイラなんだろ? めちゃくちゃ生きてるじゃん荒凪」

「うーん……うん、リョウメンスクナの話でも物部天獄は昔に死んでるし……考え過ぎかぁ!」

「死んでるのかよ! じゃあ関係ないじゃん……はぁーあ、聞いて損した、休み時間損した」

「ご、ごめん……じゃあ荒凪くんが言ってた物部さんって誰かな?」

「知らね。親しい感じだったんなら養殖してる作業員か何かじゃないのか」

「親しげに呼びかけてきた声もあったけど、すごい殺意こもってる声もあったんだよ。荒凪くん口と喉の口で同時に話せるみたいでさ……」

「……殺意ってんなら密猟者か何かだな、そいつに弟殺されたってとこか。二つの口で同時に話せる、ねぇ……分野も大概だけど荒凪はホントにバケモンだな」

「ワシ!?」

「うわっ! 急に耳元で叫ばないでっていうか背後に急に出現するのやめてよ寿命縮むだろ!」

「正面から出た方がいいのか?」

サキヒコが突然目の前に現れ、驚いて後ずさった。

「……っ! ゆっくり出てこれない……? 急にドーンじゃなくてさ、もっと日本幽霊としてジワジワくる奥ゆかしさを持とうよぉ……急にドーンはアメリカンホラーなのよ」

「それはそれで怖いだろ。サキヒコ、分野、気にしなくていいぞ。ほら教室帰るぞオカルト妄想暴走ノミの心臓バカ野郎」

「長蔑称!」

一人で階段を下りようとするセイカを慌てて止め、抱え、教室まで連れて帰った。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...