冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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金魚を欲しがるのは (水月+歌見・ミタマ・サキヒコ・荒凪・カンナ・ハル・サン・アキ・セイカ)

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カンナと共に歌見の背に声援を送っていると、何故応援しているのか知らないだろうに荒凪も「がんばれ」なんて言い始めた。

「ぼうるすくい……金魚ではないのですね」

「からーひよこも居らんのぅ」

サキヒコとミタマはどうやらジェネレーションギャップを……ん? 二人とも昔の祭りなんて知らないんじゃないのか? サキヒコは由緒正しい紅葉家次期当主の側仕えで、ミタマは神社から出たことがなかった狛狐だろ?

「サキヒコくん金魚すくい知ってるの?」

「先週ミツキが見ていたあにめでやっていただろう。本当に金魚なら取った後にどう飼うか迷うところだったが、ぼうるならその心配もないな。ミツキ、私もぼうるすくいがしたい。主様へのお土産にするのだ、構わないか?」

「もちろんいいよ、頑張って綺麗なボール取りな」

金魚すくいのシーンがあるアニメ……先週風呂場で一人で見ていたアレかな? サキヒコ、実体化出来るようになってからも霊体のまま何も言わず俺の近くにただ居ることも多いみたいなんだよな、話しかけてくれればいいのに。やっぱり疲れるのかな。

「コンちゃん、カラーひよこって?」

「からふるな鳥の幼体じゃ。よう知らんが祭りで買えるらしい、すぐ死ぬみたいで子供がよぉ神社の裏手に埋めに来とったわ」

「そうなんだ……子供に雛の世話は厳しいよね」

二人とも、祭りに参加した経験を話していた訳じゃなかったんだな。やっぱり今回が初参加か、表情を見た感じ楽しめていそうだ。

「ただいまー」

「おかえりなさい歌見先輩! 戦績は?」

「悪くはないと思うんだが」

歌見は透明のカップを差し出す。中にはいくつもの金魚のオモチャとボールがあった。

「えー、金魚五つにスーパーボール四つだな」

「すっご! 金魚難しくなかったですか!? ヒレ刺さって破けちゃったんですけど俺」

「お前まさかケツからいったのか? 頭からだろ普通」

「尻尾大きいから重さ分散するかと思って……」

「ははっ、読み違えたか。時雨! ほらおいで、金魚欲しかったんだろ? 好きなの選びな、って言っても全部同じだけどな」

「いや、このレベルのプラスチック製品はバリの具合に結構差がある……目の塗装とかもズレてることありそうだから慎重に選ぶんだぞ、カンナ」

赤い半透明のプラスチックに、黒い目が二つ。単純な作りのそれをカンナは一つつまみ上げ、吟味する様子なく歌見に礼を言った。俺の忠告は無視されたらしい。

「ぁり……がとう。うた……さん」

「いいよいいよ。久しぶりの金魚すくい楽しかったしな。お、そうだ。荒凪くんもいるか? 金魚」

歌見が金魚のオモチャを一つつまみ上げる。

「さかな?」

「そ、魚。可愛い金魚さんのオモチャだ。やるよ」

荒凪の手に濡れたそれが落とされる。手のひらの一部に白く厚い皮膚が貼り、中指と薬指の間に水掻きが生える。

「残りどうしよう、アキくんも欲しがるかな? アキくん知らないか?」

「向こうの方に気配を感じるぞぃ」

歌見はすぐに目を逸らしたため荒凪の手の変化には気付いていないようだ。俺は素早くハンカチを使い、金魚のオモチャと荒凪の手から水気を取った。

「ふぅ……よかったな、荒凪くん。金魚さん可愛いな」

「うん。なな、ありがと」

「ん? あぁ気にするな、いっぱい取れたし」

「先輩が金魚すくい上手いのなんか意外です。あ、別に不器用そうって訳じゃなくて、人が良いし変なとこ負けず嫌いだからお祭りとかのちょっとズルい商売のカモにされてそうな感じがあって」

「なんかムカつくな……金魚すくいは昔からよくやってたから慣れてるだけだよ。妹によくねだられたんだ、赤くてデカいのがいいだのデメキンが欲しいだの」

「ガチ金魚ですか? えー俺本物の金魚の金魚すくい見たことないです」

「マジか、都会ってそうなのか? なんかちょっと寂しい気もするが……プラの金魚は死なないし触り放題だからな。お前にもやろうか、金魚」

「いえ、アキにあげてください。きっと欲しがりますから」

何となく居場所が分かるらしいミタマに先導を頼み、アキ達の元へ案内してもらった。アキとセイカ、それにリュウの三人組のままだと思っていたが、彼らはハルとサンととっくに合流していたらしく、二人も一緒に居た。

「あれ、みっつんとしぐしぐじゃん。うたさん達も居る。やほやほー、ねぇ何回った~? なんか面白い夜店あった~?」

「水月居るの? 見て、戦利品」

「あぁそうそうすごかったんだよサンちゃん、スマートボール超上手いの!」

サンは俺の顔を確認すると腕にぶら下げたビニール袋を揺らした、お菓子が詰まっているらしい。

「こんなにお菓子もらえるのか……鳥待が喜びそうだな」

「何回もやったからそんな得って感じじゃないよ」

「先輩そういえばシュカとも一緒じゃありませんでしたっけ」

「輪投げは一緒にやったけど、その後はどこに行ったか知らないな。こういうのは一緒に回るもんだと思ってたけど、お前らすぐ離れて一人でウロウロし始めるんだもんなぁ……」

歌見はどこか寂しそうな表情でそう話した。

「っとそうだ、アキくん、金魚どうだ? いるか?」

荒凪から遠く離れた位置で立ち止まっていたリュウ、その隣に居たアキに歌見は金魚のオモチャを見せた。

《魚のオモチャいるかって》

《え、いらね》

「いいって」

「そうか、欲しがると思ったんだが」

「……俺もらってもいい?」

「ん? セイカ欲しいのか? いいぞ、ほら」

「ありがとう……」

俺の予想に反してアキは金魚を受け取らず、金魚はセイカの手に渡った。セイカは赤い半透明のそれを提灯の光に透かし、僅かに口角を上げた。
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