冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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猫の判断 (水月+レイ・ネイ・ノヴェム・アキ・セイカ・リュウ・フタ)

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イジメの話なんてしていたから、嫌なことを思い出したりして心が少し痛んでいた。でもどうにか間に合った、セイカの顔を見るまでに頭の奥深くに沈め直すことが出来た。

「俺も一口食べたんだけど、甘くてふわふわでさ、でもザリザリする感じもあってよかったぞ」

俺が綿菓子屋に着いてこないことでしゅんと落ち込んだ彼は、俺の予想通り俺の顔を見て嬉しそうにしている。嫌な記憶の隠し直しが間に合わなければ、セイカの笑顔を堪能出来なかっただろう。何かしらの負の感情をセイカや自分に向けていただろう。

「わっ……な、鳴雷?」

レイの腰に回していた腕を解き、愛しいばかりの華奢な身体を抱き締めた。

「……なに?」

「んー……アキは?」

「綿菓子の棒捨てに行ってるけど……」

俺の腕の中、セイカが身を捩り後ろを振り返る。その視線を追うと人混みをかき分けてアキがやってきた。いや、戻ってきたのか。

「すぇかーちか~……にーに! にぃに~」

アキはセイカごと俺に抱きつく。苦しいとセイカが文句を言い、俺の腕の中でもぞもぞ動く。

《アキお兄ちゃん!》

「のゔぇむ~」

ノヴェムが笑顔でアキを呼ぶと、アキは俺達を離してノヴェムを抱き上げた。抱き締めてくるんと回り、頬をちゅ~っと吸った。

「きゃー! ふふ……あき、おにーちゃ!」

《ガキのほっぺたヤベェな、スクイーズで欲しいぜ》

アキがキスをしても微笑ましいだけだ、セイカもレイもそんな表情で見守っているから俺と同じ感想なのだろう。何故俺は近くに立ったり抱き上げたりしただけで「犯罪者」「ショタコン」「変態」と罵倒されるのだろう。俺とアキで何がそんなに違うと言うんだ。

《ノヴェムも綿菓子食べますか?》

《食べる!》

「水月くん、並んできます。少しノヴェムを見ていてください。あぁ、水月くん達も綿菓子いりますか?」

「欲しいっす!」

「あ、じゃあお願いします。アキ、こっちおいで」

ノヴェムを抱いたアキを連れて行列から少し離れる。ノヴェムが俺に向かって腕を広げたので、アキから彼を受け取る。

「俺がいい? ふふっ、可愛いなぁ」

「……犯罪感あるわぁ」

「お、リュウ。お前俺見てちょっと隠れただろ」

「あの子居らんか思てちょっと……」

綿菓子を片手にリュウがひょっこりと姿を現した。

「お前まだ食べてるのか? アキはもう食べ終わって……なんか、カラフルだな」

「アキくんは普通のん頼んどったけど、俺のんは特大虹色綿菓子や! ちょっと味ちゃうねんで」

「へぇー、なんかアメリカン」

アメリカのお菓子って妙にカラフルなイメージあるんだよな。行ったことないから実際どうなのかは知らないけど。

「ただ、結構ええ値段すんねんな~……」

「ふぅん? そういうのってSNSに写真上げる用って感じもするけどな」

「SNSなぁ。一応アカウントは作っとんねんけど、なーんもしてへんわ。面倒臭ぉて」

健全とも言えるな。

「ノヴェム、ただいま戻りますデスよ。水月くん達も、どうぞ」

ネイが三つの綿菓子を持って戻ってきた。俺達にそれぞれ渡すと彼は屈んでノヴェムと視線の高さを合わせ、彼の柔らかな金色の髪を撫でた。

「ノヴェムの髪はわたあめみたいにふわふわですねー……ふふ」

「あ、セイカ本当だ。ふわふわで、ちょっとザリザリする。なんかいいなこれ、ふわふわだけより好きかも」

「……昔、綿菓子にぱちぱち弾ける飴が混じってる駄菓子あったっすよね。俺アレめっちゃ好きだったんすよ」

「え、俺世代じゃないかも」

「マジすか!? えぇー……いやそんな歳離れてないでしょ、せんぱい駄菓子とか食べてなかったんすよ多分。なんかいいもん食ってたんでしょ」

母がお菓子作りにハマっている期間はお菓子を買って食べることはあまりなかったと思うが、それでも人並みに駄菓子を食べてきたはずだ。

「……水月くん、いちご飴あるんですか?」

通り過ぎる人々を見ていたネイが不意に俺に尋ねた。

「え? あぁ、りんご飴のとこで売ってますよ。見ませんでした? カンナも食べてましたけど」

「ええ、見逃していたみたいです。りんご飴はノヴェムには大き過ぎますし、いちご飴の方を買った方がいいかもしれませんね」

「りんご飴気に入ってたみたいですし、喜びそうですね。行きましょうか」

「秋風さっきのカステラ食べたいって言ってるんだけど……」

「あー、じゃあまた別行動だな。リュウ、二人頼めるか?」

「ええで~。アキくん、せーか、行こか。鈴カステラあっちや」

ノヴェムに手を振り、アキは不満げなセイカを連れてリュウの手を取った。セイカはやっぱり俺と回りたいんだろうか、自惚れではなさそうだ。

「フタさ~ん、また来たよ」

セイカへの申し訳なさと、俺を求めてくれる嬉しさを胸に、フタが店番をしている夜店へ。またと言ってもフタはさっきのことを覚えていないだろう、少し寂しい。

「みつき!」

「フタさん、いちご飴を……んー、俺も食べたいし、二個、あ、レイも食べる? ネイさんはどうします?」

フシャアアアァッ! と猫の威嚇の鳴き声。電卓の前に座っていた化け猫が毛を逆立てて何かを威嚇している。

「な、何? フタさん、この子なんで急に」

「…………コイツ? イチ、ニィ、ミィ」

フタがネイを指差す。いつの間にか彼の肩に乗っていた二匹の猫が、電卓の前の猫と共に牙を剥き出しにして威嚇の声を上げる。

「……分かった」

飴が並ぶ台を、飴には一切触れずに飛び越えたフタは、その勢いのままネイに殴りかかった。
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