冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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間接キス騒動 (水月+ノヴェム・ネイ・ハル・リュウ・シュカ・サン)

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ノヴェムを泣かせてしまった。理由は不明。転んで泣いた彼の機嫌をりんご飴で癒して、食べかけだからと取り返そうとすると嫌がって──そこまでは分かるが、こっちが折れて渡そうとしたら余計に泣いた理由が全く分からない。

「何なんだ……あ、ハル、車椅子の後ろのポケットにウェットティッシュ入ってるから取ってくれないか?」

「うわー……みっつんマジ罪な男~……」

「ハル? おーい、早く取って欲しいんだけど」

「……えっ? あっ、何? ごめん聞いてなかった」

ちょうど車椅子の背後に居た彼にもう一度用件を伝え、ウェットティッシュを取ってもらった。

「赤ちゃんのおしり拭きじゃん」

「一番肌に優しいだろ? 最近マシだけどセイカ肌ボロッボロだったからな……」

ノヴェムの柔肌にもピッタリだ。飴でベタベタする頬を拭いてやり、ついでに涙も軽く拭って抱き締めた。

《……? おにー、ちゃ……? ひっく……ぐす……おにぃ、ちゃん……ぼくのこと……ノヴェムのこと、嫌いじゃないの?》

「よしよし。ご機嫌直ったかな? りんご飴、欲しいの? 欲しくないの?」

りんご飴を差し出してみるも、ノヴェムは困惑した様子で受け取ろうとしない。やっぱりいらないのか? だからって渡そうとした時に泣き叫ぶのはおかしい気もするが……子供って難しいなぁ。

《ノヴェム、よく聞いてください》

泣き止んで鼻をぐすぐすと鳴らすばかりのノヴェムにネイが話しかける。学校で英語を習ってはいるが不俺は得手だ、リスニングは特に苦手だ、ほとんど聞き取れない。

《水月くんが飴を引き離そうとしたのは、あなたが飴にかぶりついて口周りが汚れたからですよ。拭いたり、綺麗に食べる方法を教えようとしただけでしょう。あなたが間接キスを気にするおマセな子供だなんて水月くんは考え至っていません。理解しましたか?》

《え……? え……? でも、お兄ちゃん……ぼくに、飴くれるって……ぼくが、舐めちゃったからぁ……も、いらないって……ぼく、きもちわるいって……》

《あなたが泣いたから飴を与えようとしただけですよ、口周りの汚れは後回しにして》

《…………お兄ちゃん、ぼくのこと……嫌いじゃない? お兄ちゃんっ、ノヴェム好き……?》

《ええ、きっと》

《お兄ちゃん……間接キス気付いてないんだ。ぁ……に、日本の人ってそうなのかな? 人にさわるのあんまりしないって聞いたから、間接キスもすごく気にすると思ってた……》

《いえ、日本は衛生に厳し…………いや……茶道では回し飲みを……》

話し合いが止まる。ネイが悩んだ顔のまま立ち上がり、ノヴェムから俺へと視線を移した。

「日本人って他の国より回し飲みとか気にすると思います?」

「え? さぁ……他の国知らないんで……ぁ、でも、マスク率高いらしいですし、あんまりしないかも……?」

「茶道では回し飲みをしますよね」

「えっと……ハル、分かるか?」

ハルは確か週一で茶道を習っていたはずだ。

「するね~。でも口つけるとこは変えるよ? 口拭く紙もあるし~」

「同じもん食うたら場に馴染めるーみたいなんもあるなぁ、同じ釜の飯食うてっちゅうやっちゃ」

「他の国でもそうじゃな~い? お客様として行ったらまずご飯振る舞われるからぁ~、それをその場の作法で美味しく食べられたら向こうも気ぃ緩めてくれる感じ~……人間みんなそうだと思うなぁ~」

「あー……秘境ロケとかでも民族独自のもんとか芸人さんよう食わされてはるもんなぁ」

「……アレはテレビ的にはゲテモノ食い枠じゃない? 撮れ高狙いだよ」

ハルとリュウがなんか議論始めちゃった。

「お兄さーん、射的やんないの?」

「あっ、申し訳ないデス……子供が転んでしまって、機嫌が治るまで少し待つので、離れておきマスね。水月くん達、列の邪魔にならないところへ……」

「あ……すいません、俺が声掛けなかったら今頃射的やれてたのに」

俺が黙っていたらノヴェムが転ぶことも、飴のどうこうで泣くこともなかったんだ。声をかけたのは軽率だったかな。

「兄弟盃ゆう文化もあってやな……」

「ヤクザじゃん! 中国とかは円卓あるし~、ピザなんかも分け合う代表的な料理だよね。日本はしっかり和食ってなったら一人一つのお膳だし、やっぱ他国よりは抵抗ある感じじゃない?」

「ピザって分ける料理なんですか?」

「鍋はどうなんねんな、同じとこで煮立っとるもん箸でつつき回すやないの」

「あーそっか……んーでも鍋なんかどこの国にもない?」

「口噛み酒やの団子やのはなかなかやと思うで?」

一人でピザ一枚どころか二、三枚食べそうなシュカが口を挟んでるな。食いしん坊可愛い疑問だ、リュウとハルには無視されてるけど。

「……ピザ一枚食べますよね?」

ピザの件がよほど気になったのかシュカはサンに尋ねた。

「食べな~い。多くて飽きるもん。何枚か頼んで二切れずつくらい食べるかな~」

「なるほど……人数と金があればそうなるか……」

背後で彼氏達が話し込む中、ノヴェムはすっかり機嫌が直ったようで俺の胸に頬を寄せて心地よさそうにしている。心音でも聞いているのだろうか、安心してくれたら嬉しい。

「……なんか議論巻き起こしちゃいました、すいません」

「え、いえ……別に。なんでまた回し飲みの話を?」

「実はノヴェムは……あなたがノヴェムと関節キスになったことに気付いて取り上げたとか、ノヴェムの食べかけになってしまったから嫌がって渡そうとしてきたとか、そう思い込んでしまったようです。あなたに嫌われたのではないかと泣いてしまって……」

「えっ」

「誤解は解きました、その過程で聞かれたのですよ……間接キスへのハードルの高さに文化の違いは関係あるのかどうか。私、日本生まれ日本育ちでしょう? アメリカの風潮よく知らなくて……」

「なるほど……それであんな質問を……にしても、間接キスなの気にしてたんですね、ノヴェムくん」

「正確には間接キスなのを気にしているのではないかと気にしていた、と言いますか……」

どちらにせよ俺との間接キスを意識していたのは確かだ。何度も不意打ちのキスをかましておいて、ウブなんだかマセてるんだか分からないな。

「ネイさ~ん! ちょっと俺達だけじゃ判別つかないから海外知識貸して~?」

「おや、困りましたね。海外に住んだ経験はないのですが……ふふ…………分かりましたー! すぐ行きます!」

けどこの程度の潜入任務モドキ、楽勝だ。そう俺に囁いてからネイは俺の背後に回った。

「ノヴェムくん」

「……? なぁに、お兄ちゃん」

俺は誰も俺達を見ていないのを確認してからノヴェムのもちもちほっぺに唇を寄せた。
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