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射的前の号泣 (水月+サン・ミタマ・ハル・カンナ・リュウ・歌見・荒凪・ノヴェム・ネイ)
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サンにねだられ、彼にも鈴カステラを食べさせてやった。素直にねだり、素直に美味しさを表情で教えてくれる彼は、とても193センチの大男とは思えない愛らしさを持っている。
「ご機嫌な顔だね、水月」
筆だこのある筋張った大きな手で顔を撫で回され、サンへの愛しさで緩んだ表情を知られてしまった。
「そりゃそうだよ、みんなでお祭りなんて最高に楽しいことしてるんだから。今サンがすごく可愛い顔見せてくれたし」
「ボクが? そっか……ふふ」
サンは俺を強く抱き締める。機嫌良さげな笑顔を見上げ、彼に身体を預けた。
「みっちゃんみっちゃん、ワシにもそれおくれ」
「カステラ? いいよ。サン、ちょっと腕緩めて」
鈴カステラの最後の一つをミタマの口に入れた。あれ? 俺……鈴カステラ食べたっけ? 二袋も買ったんだけどな。
「美味いのぅ。今日だけでたくさん美味いものを知った、神社を出てよかった……何より、ずーっとみっちゃんと一緒で寂しい思いをせんしのぅ。みっちゃんが構ってくれん時はさっちゃんと話せるし……」
「ボク?」
「サキヒコの方じゃ。そういえば同じあだ名をつけてしもうとったのぅ……ま、ええか。とにかく、寂しゅうないんがいっちゃんええ。感謝しとるぞみっちゃん、首の件だけでなく、な」
改めて感謝と愛情を伝えられると照れてしまうな。
「コンちゃん寂しがりなの?」
「そうじゃの。人肌は素晴らしいものよ」
「ボクも割とそうだよ。ね、水月」
「帰さないように薬盛ったり縛ったりするもんね、サンは。でも絵描いてる時とか返信もしてくれなかったり結構極端じゃない?」
「極端……ん~、まぁそういうとこはあるかも?」
「そんなところも魅力だよ」
鈴カステラが入っていた袋を捨て、サンの頬やミタマの顎を撫でつつ、りんご飴を舐めながら二人と話す。
「ねーねーみっつん、みんなかき氷食べ終わったし、あっち見に行ってみよ~?」
「あぁ、分かった。サン、どのかき氷が一番よかった?」
「いちご練乳かな~」
「カンナのだな。カンナ! かき氷ダービー、サン杯優勝おめでとう!」
「……? ぁ、り……がと……?」
「賞品はボクからのハグ~……どこに居るの?」
「…………こ、こ」
カンナは少し悩むような素振りを見せた後、普段よりも僅かに大きな声で居場所を知らせた。
「ハグ~……ん、なんか多い」
大きく腕を広げたサンの腕の中にはカンナだけでなく、彼と腕を組んでいたリュウの姿もあった。サンは特に気にした様子はなく、二人とも抱き締めて頭や顔を撫でて愛でている。
「ゎ……」
「んー……ぐいぐい来るわぁサンちゃん」
髪や顔の上の方には触れず、頬をもちもちと弄んでばかりの手にカンナも抵抗する様子は見られない。
「ハル、何か食べたいのあるのか?」
「食べたいのって言うか~、射的! やりたいの~」
「あぁ、射的な。そういえばあったなぁ」
見た覚えがある。綿菓子の夜店の向かいだったか。ついでにアキと荒凪に綿菓子を買ってやろうかな。
「射的? ボクもやりた~い」
サンには射的は難しいんじゃ……いや、ビーチバレーにも参加していたくらいだし、誰かが位置を測ってやれば出来るのかな。
「あっ……」
射的屋台の前までやってきて、俺は足を止めてしまい車椅子に軽く撥ねられた。
「あ、悪い。でも急に立ち止まるなよ」
「みつきー……? いたい?」
「大丈夫だよ荒凪くん。すいません先輩……」
足を止めた理由は屋台に並んでいる金髪の親子を見つけたからだ。浴衣に身を包んだ彼らは英語で語らい、笑い合っている。
「……ネイさん! こんばんは」
声をかけるか一瞬迷ったが、心の準備が整わないうちに向こうに見つけられるよりはマシかと、俺の方から話しかけた。
「あぁ水月くん、こんばんは」
《……!? 水月お兄ちゃん! お父さん離して、お兄ちゃんとこ行く!》
ネイと手を繋いでいるノヴェムが暴れ出す。ネイの手を振りほどこうとしているのか、腕をぶんぶん振っている。
「こ、こらノヴェム……」
《はーなぁーしぃー、てぇ!》
「あっ……」
振りほどくのに成功したノヴェムは俺に向かって一直線に走ってくる。屈んで手を広げて待ってやろうかと、屈むスペースを確保するため一歩前に出たその時──べちっ、とノヴェムが地面に倒れた。転んだ上に手もつけず顔を打つとは……なんて鈍臭い。
「ノ、ノヴェムくん……!」
「ぅ……うぇええええんっ! うぁああああ……!」
倒れたまま泣き喚くノヴェムの元に走り、抱き上げる。浴衣についた砂埃を払い、前髪も払ってやる。
「どこ打った? 鼻? 膝は?」
「ふぇえぇん……」
「どこ痛いのノヴェムくん」
「ぅええ……」
「泣き止まんのぅ」
「ひっどいコケ方だったも~ん……痛そ~」
「子供泣き止ませるにはお菓子だよ、水月」
サンのアドバイス通り、持っているりんご飴をノヴェムに差し出してみる。
「ノヴェムくん、りんご飴食べる?」
「……? ん……」
小さな舌が水飴をちろと舐める。小さな口が端をはむはむとしゃぶる。すっかり泣き止んだ、前髪の隙間に指を入れて目元を拭ってやり、微笑みかけるとノヴェムは頬を真っ赤に染めた。
「ご機嫌な顔だね、水月」
筆だこのある筋張った大きな手で顔を撫で回され、サンへの愛しさで緩んだ表情を知られてしまった。
「そりゃそうだよ、みんなでお祭りなんて最高に楽しいことしてるんだから。今サンがすごく可愛い顔見せてくれたし」
「ボクが? そっか……ふふ」
サンは俺を強く抱き締める。機嫌良さげな笑顔を見上げ、彼に身体を預けた。
「みっちゃんみっちゃん、ワシにもそれおくれ」
「カステラ? いいよ。サン、ちょっと腕緩めて」
鈴カステラの最後の一つをミタマの口に入れた。あれ? 俺……鈴カステラ食べたっけ? 二袋も買ったんだけどな。
「美味いのぅ。今日だけでたくさん美味いものを知った、神社を出てよかった……何より、ずーっとみっちゃんと一緒で寂しい思いをせんしのぅ。みっちゃんが構ってくれん時はさっちゃんと話せるし……」
「ボク?」
「サキヒコの方じゃ。そういえば同じあだ名をつけてしもうとったのぅ……ま、ええか。とにかく、寂しゅうないんがいっちゃんええ。感謝しとるぞみっちゃん、首の件だけでなく、な」
改めて感謝と愛情を伝えられると照れてしまうな。
「コンちゃん寂しがりなの?」
「そうじゃの。人肌は素晴らしいものよ」
「ボクも割とそうだよ。ね、水月」
「帰さないように薬盛ったり縛ったりするもんね、サンは。でも絵描いてる時とか返信もしてくれなかったり結構極端じゃない?」
「極端……ん~、まぁそういうとこはあるかも?」
「そんなところも魅力だよ」
鈴カステラが入っていた袋を捨て、サンの頬やミタマの顎を撫でつつ、りんご飴を舐めながら二人と話す。
「ねーねーみっつん、みんなかき氷食べ終わったし、あっち見に行ってみよ~?」
「あぁ、分かった。サン、どのかき氷が一番よかった?」
「いちご練乳かな~」
「カンナのだな。カンナ! かき氷ダービー、サン杯優勝おめでとう!」
「……? ぁ、り……がと……?」
「賞品はボクからのハグ~……どこに居るの?」
「…………こ、こ」
カンナは少し悩むような素振りを見せた後、普段よりも僅かに大きな声で居場所を知らせた。
「ハグ~……ん、なんか多い」
大きく腕を広げたサンの腕の中にはカンナだけでなく、彼と腕を組んでいたリュウの姿もあった。サンは特に気にした様子はなく、二人とも抱き締めて頭や顔を撫でて愛でている。
「ゎ……」
「んー……ぐいぐい来るわぁサンちゃん」
髪や顔の上の方には触れず、頬をもちもちと弄んでばかりの手にカンナも抵抗する様子は見られない。
「ハル、何か食べたいのあるのか?」
「食べたいのって言うか~、射的! やりたいの~」
「あぁ、射的な。そういえばあったなぁ」
見た覚えがある。綿菓子の夜店の向かいだったか。ついでにアキと荒凪に綿菓子を買ってやろうかな。
「射的? ボクもやりた~い」
サンには射的は難しいんじゃ……いや、ビーチバレーにも参加していたくらいだし、誰かが位置を測ってやれば出来るのかな。
「あっ……」
射的屋台の前までやってきて、俺は足を止めてしまい車椅子に軽く撥ねられた。
「あ、悪い。でも急に立ち止まるなよ」
「みつきー……? いたい?」
「大丈夫だよ荒凪くん。すいません先輩……」
足を止めた理由は屋台に並んでいる金髪の親子を見つけたからだ。浴衣に身を包んだ彼らは英語で語らい、笑い合っている。
「……ネイさん! こんばんは」
声をかけるか一瞬迷ったが、心の準備が整わないうちに向こうに見つけられるよりはマシかと、俺の方から話しかけた。
「あぁ水月くん、こんばんは」
《……!? 水月お兄ちゃん! お父さん離して、お兄ちゃんとこ行く!》
ネイと手を繋いでいるノヴェムが暴れ出す。ネイの手を振りほどこうとしているのか、腕をぶんぶん振っている。
「こ、こらノヴェム……」
《はーなぁーしぃー、てぇ!》
「あっ……」
振りほどくのに成功したノヴェムは俺に向かって一直線に走ってくる。屈んで手を広げて待ってやろうかと、屈むスペースを確保するため一歩前に出たその時──べちっ、とノヴェムが地面に倒れた。転んだ上に手もつけず顔を打つとは……なんて鈍臭い。
「ノ、ノヴェムくん……!」
「ぅ……うぇええええんっ! うぁああああ……!」
倒れたまま泣き喚くノヴェムの元に走り、抱き上げる。浴衣についた砂埃を払い、前髪も払ってやる。
「どこ打った? 鼻? 膝は?」
「ふぇえぇん……」
「どこ痛いのノヴェムくん」
「ぅええ……」
「泣き止まんのぅ」
「ひっどいコケ方だったも~ん……痛そ~」
「子供泣き止ませるにはお菓子だよ、水月」
サンのアドバイス通り、持っているりんご飴をノヴェムに差し出してみる。
「ノヴェムくん、りんご飴食べる?」
「……? ん……」
小さな舌が水飴をちろと舐める。小さな口が端をはむはむとしゃぶる。すっかり泣き止んだ、前髪の隙間に指を入れて目元を拭ってやり、微笑みかけるとノヴェムは頬を真っ赤に染めた。
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