冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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リアルV (水月+ミタマ・フタ)

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フタが俺に対して独占欲を抱いてくれている。温厚で忘れっぽい彼のそんな一面に胸が締め付けられる、ギャップ萌えというヤツだ。

「何よぉー……握手くらいいいじゃない。たまにはイケメンに触らないと人生のやる気が出ないわ」

「だめ、みつき俺の。あっち行って」

「はいはい……ってまだりんご飴もらってないんだけど。二個! 早くちょーだい!」

「二個? イチ、いくら?」

「もうお金払ったってばぁ!」

フタのこれは冗談でも何でもない、知り合いだからいいものの相手が他人だったらどうなっていたことか。刺青が見えなくともその身長と肩幅だけで相手を威圧し、二重三重に金を取っていたかもしれない。一人で店番をさせていて本当に大丈夫なのだろうか。

「フタさん、このお姉さんもうお金払ってますよ。俺見ました。早くりんご飴渡してあげてください」

「あ、そうなの。みつきすごいねぇ、よく見てよく覚えてるんだね」

「……ね、ね、ナルちゃん。もっかい言って?」

「へ……? 何をですか?」

「だからぁ……おねーさんって」

「はぁ……? お姉さん……?」

「……! ふふふふ……私おねーさんに見えるぅ?」

「はぁ……まぁ」

何なんだ? 意外と歳食ってるのかな。

「はい、二個」

「ん、ありがとフタちゃん。あたし飴とか大好きなのよね~」

りんご飴二つを受け取ったスイは嬉しそうに口を開き、赤く丸く可愛らしいそのりんご飴を、齧った。バキバキと音を立てて、そう薄くはない水飴の膜を破り、そのまま中身のリンゴに歯を立て、齧り取る。

「おいし~」

思わず真似をしてしまう。舐めていたりんご飴に歯を立てる。しかし当然齧るなんてこと出来やしない。硬いのは当然、いちご飴ならともかくりんご飴は大き過ぎて上手く顎に力が入らない。

「りんご飴って中のリンゴスカスカのイメージあったけど、これ割とジューシーね」

「へー……」

「へーって何よ、フタちゃんが売ってるんでしょ」

他の夜店とは違い、りんご飴はこの場で作るものではない。ただ並べた物を管理しているだけのフタはりんご飴が褒められたところで嬉しくも何ともないのだろう、興味なさげな顔をしている。

「一本目ごちそうさま~」

りんご飴はそんな短時間で食べ終えるものじゃないだろ。

「おーい、みっちゃ~ん! おぉ居った居った、さっちゃんと合流出来たんじゃ。はよぉこっちゃ来」

手を振りながらミタマが走ってきた。ということは、荒凪を連れた歌見もこちらに来るということだ。リュウを庇っておいてやらないとな。

「む……?」

「コンちゃん、サンちゃんどこに居たの?」

「ぼぉるすくいの横で焼き鳥食っとったぞぃ。それよりみっちゃん、何じゃそいつは」

「え、何って」

ミタマの目は二個目のりんご飴をバリボリと噛み砕きながら食べているスイに向いている。

「……フタさんの知り合いらしいけど」

「ほーん……すごいのぅ、霊体が肉体からはみ出とる。ゃ、わざとか? なるほどなるほどそういう化け方もアリか……しかし所詮人間、肉体の質量は誤魔化せん。覆うしかないから妙に大きい、違和感すごいぞぃ」

「…………ぁ?」

二個目のりんご飴の棒を咥えたまま、スイは地の底から響くようなドスの効いた声を漏らした。

「そう怒るな。小難しい小細工なんてせずめいくでも頑張った方が仕上がりはよくなると思うぞぃ、美女を装いたいんじゃろ?」

「…………人間様のやることに指図すんじゃないわよ獣風情が」

ミタマが人ではないと見破っているのか、やはりフタとは霊能力者仲間でもあるんだな。フタが孤独でなくて嬉しいような、妬ましいような。

「しかしのぅ」

「コスプレか着ぐるみなら、着ぐるみの方が原作に忠実な姿になるに決まってるわよね? だったらアタシもこのやり方の方がアタシのなりたいアタシになれるの、これ以上口出さないでくれる?」

「……まぁ、別にワシには関係ないからの。ヌシがそれでええんならええが……やっぱりデカ過ぎると……あぁ分かった分かったもう言わん、そう睨むな」

ミタマは諦めたように、呆れたように引き下がった。

「あの……何の話してたかよく分からなかったんですけど、コンちゃんが失礼なこと言ったみたいで……すいません。俺からも謝らせてください」

霊能力者なら荒凪のことで相談が出来るかもしれない。せっかく名刺ももらったし、関係は良好に保っておきたい。

「…………何か分かっててつるんでるのよね?」

「コンちゃんのこと、ですよね。はい……だから、あの、祓ったりとかは」

「依頼もされてないのにしないわよ。残念ね、なんか憑けてるのが分かったから名刺渡したんだけど……まさか妖怪飼ってるようなのなフタちゃん以外にも居るなんてね。でも、ナルちゃん、こっちは友達の妖怪とは関係ないんじゃない? アンタ呪われてるわよ」

「……え?」

「あぁ、現在進行形じゃなくて、呪われた痕跡があるのよ。一回呪ったけど~……やめた? 的な」

心当たりが全くない。寒気がしてきた。

「かけられてる最中なら呪い返ししてあげるから~……原因不明の体調不良とか、変に不幸が続くとか、呪いっぽいことあったら名刺の番号にTELしてねン」

「は、はい……」

「物の怪の類に好かれそうな顔しちゃって。うふ、常連が出来たかも……じゃ、電話待ってるから~」

りんご飴の棒を夜店脇のゴミ箱に捨て、下駄をカラコロ鳴らしてスイは去っていった。

「……コンちゃん、俺呪われてたの?」

「負の感情を霊力に乗せてぶつけることを呪うっちゅうんじゃ。じゃからあの坊が言っとったんはほんのさっきの……ほれ、鼻血出した件じゃろ。多分」

「多分って……そっか、心当たりあることでまだよかったよ」

呪われたなんて物騒な言い方をしてくれたものだ、様子がおかしくなった荒凪の悪影響をちょっと受けただけなのに。

「電話しろとか言うとったが、もう口説いたんか?」

「名刺もらっただけだよ。俺女の人には興味ないし、口説くわけないじゃん」

「ん……? あぁそうか、分かっとらんかったんか。アレ男じゃぞ。莫大な霊力を使って霊体を肥大化させ、肉体を覆った状態で実体化……要するに女の見た目の着ぐるみ被っとるだけじゃ。すごい技術じゃぞ、人間が霊体を実体化させるのも、霊体の姿を好き勝手弄くり回すのも。霊力も技術も無駄遣いじゃと思うがな」

「町を賄えるレベルの電力とスパコンを使って超高ポリゴンのモデルをヌルヌル動かしてる……的な感じ?」

「いやそのたとえよう分からん」

「レースふりっふりの衣装で髪の毛も超細かくて、ヒラヒラした布が違和感なく動くようものすごい物理演算もされてて……なんだその技術力! 的な話じゃないの?」

「分からん分からん」

「どれだけ動いても衣装と髪と体が貫通し合ったりしなくて」

「分からんのよ」

ミタマはサキヒコよりも現代に詳しいと思っていたが、サブカル方面にはまだまだのようだ。帰ったら3Dモデルの進化の歴史をみっちり教えてやらなくては。
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