冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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りんご飴といちご飴 (水月+フタ・リュウ・カンナ)

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荒凪を歌見とミタマに任せ、リュウとカンナの元へ戻ると、カンナに今川焼きを渡された。

「みぃくん、の……」

「買っといてくれたのか、ありがとう」

「……おかえり水月ぃ」

リュウは俺の腕や胸や腹をパッパッと払ってから俺の手を握った。

「水月ぃ、夜店食いもん以外もいっぱいあるみたいやし、そっちも行こうや。りんご飴でも買うて」

「あぁ、そろそろフタさんにも会いたいしな」

夜店の店員ことフタの弟分達に何度もりんご飴屋台の場所を教わった。そろそろ行ってみよう、サンも居るかもだし。

「あったあった。いちご飴もあるんだな」

「ぼく……そっちに、する」

「カンナはいちご飴にするのか? 似合うなぁ、リュウは?」

「りんご飴、せっかくやし」

「そうだなぁ……せっかくだし」

他の彼氏達に声をかけ、三人でりんご飴屋台に向かった。ボーッと店番をしていたフタの買おがパァっと明るくなる。

「あ……! みつきぃ!」

「こんばんはフタさん、店番お疲れ様です」

「みつきもお祭り来たんだ~。楽しい?」

「はい、すっごく。りんご飴二つといちご飴一つ、もらえますか?」

「はーい。えっとぉ……」

台の上に置かれた電卓がカタカタ揺れる。勝手に数字が入力されている。

「……五百円だって~」

りんご飴は一つ二百円、いちご飴は一つ百円なので合っているが……何だ今の心霊現象。フタの飼い化け猫か?

「ん、ちょーどお預かりしましてぇ~……お釣りは……ちょーどだから、ない……?」

フタは台の上に置かれたメモを見ながら話している。弟分かヒトが応対の仕方を書いてやったのだろう。

「ありがとうございました~」

渡された飴三本をカンナとリュウに手渡しつつ、夜店の脇に避けてフタを観察する。黒地に金の糸で虎の刺繍が施された浴衣は威圧感を演出しているが、フタの緩い態度がそれを弱めている。

「フタさん、胸元開けすぎじゃないですか?」

雑に着ているせいか腹筋がチラリと見えるほど胸元がざっくりと開いている。パイプ椅子に座っていた彼を立たせ、胸元をきっちり閉めてやった。

「よし。俺以外にこんなえっちな谷間見せちゃダメですからね。あと、袖もあんまり捲らない方がいいですよ」

肘の辺りまで袖を捲り上げているから、腕の刺青が丸出しだ。そもそも刺青をしているのかどうか知らないが、少なくとも見えるところにはないフタの弟分達の店に比べ、客足が遠いように見えるのはフタが刺青を晒しているからと考えてもよさそうだ。

「なんで? 暑いじゃん」

「だってフタさんの腕、男らしくてセクシーなんですもん……俺以外にこんなカッコイイ腕見せびらかして欲しくないです」

フタの腕を掴み、手のひらに頬を擦り寄せて甘えてみる。

「……よく分かんないけど~、みつき嫌なら気ぃ付ける~…………何すればいいんだっけ?」

「袖、捲らないようにしてください」

あんまり売れ残りが多いとフタはヒトに叱られるかもしれない。俺は遠のいた客足を取り戻すため、ひとまずフタの刺青を隠させた。

「浴衣って袖口大きいからまだ不安ではあるけど……薄暗いし、大丈夫だよな?」

「せやなぁ、見える距離に来た時にはもう金払っとるやろ。リピーターつくタイプの店ちゃうし、ええんちゃう?」

何も語らずともリュウは俺の行動の意図を察してくれていたようだ。りんご飴を舐めながら俺を後押ししてくれた。浴衣姿でりんご飴を舐める彼氏の姿を撮らないバカは居ないので、もちろん撮影した。当然カンナも。フタのことも。

「みんな可愛いなぁ……ふへへ。あ、そうだフタさん、サンさんどこに居るか知りません? フタさんのとこに居ると思ったんですけど」

「知らな~い。人混みあんま好きじゃないはずだからぁ~、なんか隅っことかだと思うけど~」

「あ……人混み嫌いなんですか」

「そらせやろ、ぶつかられるわ杖蹴られるわが目に浮かぶようやわ」

「……そっかぁ」

「サンちゃん喧嘩っ早いからね~」

ぶつかられたり白杖を蹴られたりしたら、相手に殴りかかるという意味なのか?

「おま、つり…………すぴ、れーしょ……湧き……だから、おまつり……よく、分か……とこに、居る……と、思……」

「そっか、祭りはインスピレーション湧かすいいイベントだもんな、サンなら絶対体験したがるよ。流石カンナ」

表現者らしい視点だ、とは言わないでおこうかな。

「いんぴしょん……? みつきぃ、それなに……あ、いらっしゃーい」

客が来たようだ。邪魔にならないようにしないとな……なんか、客デカいな。女性……だよな? 二メートル以上ないか? いや、ないか……んん? なんか、不思議とサイズ感が分かりにくい人だな。

「りんご飴二つ」

「はーい。えっとぉ……あれ、どったのイチ。早く計算してよ」

「四百円でしょ、ほら。久しぶりぃ、猫ちゃん達元気?」

「元気~」

なんだ、知り合いか? 女の知り合い……嫌だな。

「前にフタちゃんが見つけてくれた迷い猫覚えてる? 脱走中に仲良くなったのか、庭に毎日野良猫が来てて、結局その子も飼うことになったんだって」

「…………あのさー」

「ん?」

「……おにーさん誰?」

なんだ、名前どころか性別もあやふやな程度の知り合いか。そこまで嫉妬する必要はなさそうだな。

「元女子高生探偵スイちゃんよ! ちょくちょく猫探しのお仕事一緒にしてるじゃない! もぉお忘れっぽいんだからぁ!」

「イチぃ、知ってる? ニィは? ミィ……知らないって~」

「高級猫缶何度供えてやったと思ってんのよこの性悪モンペクソ猫共が!」

猫繋がりでの知り合いなのか? イチニィミィの幽霊猫三セットを認識しているということは、彼女も霊能力者か。

「はぁ……もう……早くりんご飴ちょうだい」

「はーい。えっとぉ……四百円だって」

「さっき渡したじゃないのよぉおお! ねぇ見てたでしょそこの少年たち……ってめっちゃ美形! えっえっ……何、逆に怖い。ねぇフタちゃんアレ人間? 人間がしてていい顔じゃないけど」

無礼だと怒ればいいのか、光栄だと喜べばいいのか、どっちだ?

「俺は正真正銘人間ですよ……あの、フタさんのご友人……でよろしいですか?」

「知り合いくらいよ。たまに仕事回す仲」

「はぁ……」

「そっちこそフタちゃんの何?」

「えっと……」

「みつきは俺の恋人だよ~」

言い淀んでいた俺の前に出て、庇うようにしながらフタは躊躇いなく真実を晒した。

「ふーん。じゃあフタちゃんがヤクザなのも分かってる感じよね?」

「えっ、まぁ、はい」

女は俺達の関係も、フタが俺を隠そうとしていることも気に留めず、フタの肩越しに俺を覗き込んで……やっぱりめちゃくちゃデカいなこの人。

「じゃあいっか……あたし表向きは探偵なんだけど、ほんとは何でも屋なの。殺し以外は犯罪でもやるから、何かあったら頼ってねン。お金はそれなりにもらうから少年に払えるとは思えないけど~……ま、そん時はフタちゃんにでもオネダリしたらいいわ」

強引に名刺を渡された。如月探偵事務所、と書いてある。

「元美人女子高生のスイちゃんって呼んでね。よろしく~……あ、元は女子高生の方にかかるからね、今も美人なのは美人だから」

「はぁ……美人女探偵とかでいいんじゃ…………まぁ、お仕事依頼することはないと思いますけど、鳴雷です、よろしくお願いします……」

「よろしくナルちゃん」

「……みつきに触んないで」

握手のためかスイが伸ばしてきた手をフタがぱしんっと叩いた。フタの独占欲が嬉しくて、胸がきゅうっと痛くなった。
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