冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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Uターン系秘書 (水月+セイカ・アキ・ミタマ・荒凪)

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母のせいでまたアキとセイカがイチャイチャし始めた……まぁいいか、百合は至高、目の保養だ。

《ごめん、あの人の機嫌損ねるの怖くて。鳴雷から癇癪持ちって聞いてたし》

《俺はそれより朝、顔洗う時に俺を置いてったのが気になるな。兄貴に言われたんだぜ? 手伝ってやれって、なのにアンタは居なかった。酷いじゃねぇか、アンタの介助は誰でも出来ても俺の道案内を完璧にこなせるのはアンタだけなのに》

《それもごめん。ちょっと、拗ねてて……秋風なら俺がヒトと寝ろって言っても、強引に俺と寝てくれると思ってたから……》

《はぁ~? 機嫌損ねるの嫌なくせに奪って欲しかったのか? 分かんねぇよそんなん……ったく受け身なワガママプリンセスだぜ》

《……その上、鳴雷に愚痴って、本当にごめん。反省してる……次から気を付けるからっ、また俺と仲良くしてくれる?》

ん? 俺の名前呼んだか? うっわー俺には向けないきゅるん顔。何あのぶりっ子仕草、俺知らない。

《ったりめぇだろスェカーチカぁ!》

アキがセイカを抱き締めた。そりゃそうだ、あんな顔で見上げられて落ちない男は居ない。

「俺にはそんなぶりっぶりな態度取らねぇくせにぃ!」

「わっ……み、見てたのか、やめろよ恥ずかしい……」

「セイカ、アンタ……どこまで酷い態度取っても愛してくれるかの試し行動取るタイプね。多少ならそういうのも可愛いけど、ちゃんとツンした分のデレを設けないと今のアキ以上に厄介な拗ね方されるわよ」

「百戦錬磨カッコガチカッコトジルのおかーたま……!」

「……は、はい。肝に、銘じます」

「これからは俺にもぶっりぶりのきゅるん顔見せてくれるってことカナ!? セイカたん!」

「…………っ、うぅ……」

「嫌そう!」

まぁ、いいか。セイカの普段の冷たい態度が試し行動なら、証明し続けてやれば済む話だ。アキの愛情は頻繁には試さず、俺の愛情を試し続けているということは、パッと見アキの方に懐いているように見えるかもしれないけれどセイカが本当に好きで信頼しているのは俺ってことだし?

「ぬへへへ……まぁ、好きにしてくれ、セイカ。俺はあらゆる態度に興奮するから」

「……気を付けるよ。ちゃんと……恋人らしく、する。冷たい態度取っちゃったら……言ってくれ、直す……から」

「俺ツンデレなセイカたんも好きよ?」

「…………直したい。甘やかされて、悪化して……ぃ、いじめ、てる……みたいになったらっ……俺」

「……大丈夫、そんなことにはさせないよ」

震え始めたセイカを抱き締めて背中を撫でてやると、震えは少しずつ落ち着いて、彼は俺の胸に顔をうずめた。泣いている、とまでは言わないが涙が滲んできたのだろう。泣き顔を見せて欲しいところだが、流石に我慢だ。

「すぇかーちかぁ……」

俺にセイカを盗られたアキが寂しそうな声で彼を呼ぶ。もうしばらくしたら返してやるかと笑っていると、俺の腕を持ち上げてのれんをくぐるように腕の中に入ってきた。

「ぇへへ……にーにぃ!」

「きゃわわ……! んーまっ、んーまっ、んちゅちゅちゅ……」

満面の笑顔で俺を見上げる。こんな可愛い弟、頬擦りせずに居られるものか、顔全体にキスの雨を降らせずには居られるものか!

「人間の幼体らの戯れはかわええのぅ」

「水月ちょっとキモいけどね……コンちゃんも水月と付き合ってんのよね? あんまイチャついてるとこ見たことないけど。したくならないの?」

「ぅ……ワシは、そのー……」

「二、三百年童貞処女じゃ拗らせもするか」

「ぬわっ! と、とんでもないことを言うてくれたな! ワシは別に拗らせておる訳ではないわぃ!」

「じゃあ枯れてんの? 自分が食べるより若者がモリモリ食べてるの見る方が好きになってきちゃったの?」

「脂ものが食えなくなったおじさん扱いするでない! ワ、ワシだって、ワシだってぇ……!」

セイカとアキ二人まとめて愛でていると、ミタマが走ってきた。

「コンちゃん、プールサイド走っちゃダメだよ」

「みっちゃん! ワシ……ワ、ワシも、撫でて……」

「もうちょっとこっちおいで」

そろそろとこちらへ寄ったミタマの頭に手を伸ばすと、耳がパタリと寝た。そのまま頭を撫で、もう片方の手で顎の下や頬も撫でてやると、三本の尾が激しく揺れた。

「くふふふ……もうよいぞぃ」

「もういいの?」

「うむ! 見たかゆーちゃん、ワシの勇姿を」

「飼い犬ね」

「無礼者ぉーっ!」

何騒いでるんだ……と呆れつつも、その騒がしさが何より愛おしい。

「サキヒコくん、おいで」

全員撫で回してしまおうとサキヒコを呼んだその時、アキの部屋とプールを繋ぐ扉が乱暴に開けられた。

「はぁーっ……あっつ……走らせやがって。初日で人魚食うとか欲深過ぎませんかね」

Uターンしていた秘書が着いたのだ。ひとまずは母が応対するだろうから、数秒だけでもサキヒコを撫でよう。綺麗に切り揃えられたおかっぱ頭の撫で心地は他の髪型では味わえない。

「来たわね真尋くん! 説明してもらうわよ」

「いや保護したばっかでよく分かってないんですって……」

「んなもん一般家庭に預けるんじゃないわよ!」

「穂張事務所に預ける訳にはいかないでしょ? おとーとはもっと無理。会社にはプールがない」

「真尋くんの家は?」

「妖怪は結界に弾かれちゃうんですよね。ここが一番マシなんです、ちょくちょく来て色々調べるつもりではありましたよ」

「……なんか、ないんですか? 妖怪の保護施設とか」

「ないですね。霊能力者には祀られていない怪異は全て害悪という思い込みがあります。実際ほぼそうですし」

「じゃあ、あなた以外が荒凪くんを見つけていたら……」

秘書は親指で首を掻っ切る仕草を見せた。俺に笑顔を見せてくれた、俺が痛がらないか気にしてくれた可愛い荒凪が妖怪だというだけで殺されるかもしれなかったことに、ゾッとした。

「妖怪愛護も妖怪保護も、存在しませんからね」

「真尋くんはなんで妖怪保護してるの?」

「俺、スマホ入ってた箱とか取って置いちゃうんですよ」

急に何を言っているんだ?

「なるほど、使えそうな物は確保しておく貧乏性ってワケ」

母すげぇ!

「破裂音でパニック起こすヤツでも、連れ歩いてたら指がちぎれかけた時に繋ぎ止めてくれたりするんですよ」

「シェパードさんですか?」

「お、よく知ってますね。彼の近くで大音量で銃撃つ系のゲームやっちゃダメですよ、彼だけは他のチンピラと違って従軍経験があるので暴れられると本当に大変ですから」

「気を付けます……」

「社会不適合の烙印を押されたチンピラが、俺の指揮の元今までどんな働きをしてきたか俺は知っています。なら、殺人の旨みを覚えた訳でもないのに祓うべきとされた妖怪を、ちゃんと育てればどんな優秀な手駒になるか! 胸が踊りますよね」

「……はい! 荒凪くんは優しい子です、きっとたくさん人を助けられますよ」

「おぉ、あなたのお墨付きとはありがたい。早速打ち解けられたようで何よりです、さて……本題に入りましょうか、一体何が起きたか説明してくれますね?」

殺されるかもしれなかった荒凪を保護し、明るい将来を拓いてくれたような言動に、俺は気付けば絆され、懐き、秘書に笑顔を向けてしまっていた。
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