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朝食たらい回し (水月+カサネ・セイカ・ネザメ・ミタマ・サキヒコ)
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朝食は流石にバイキング形式ではなかった。フタとサンに顔を洗わせ終わり、着替えさせている最中にミフユがやってきて俺達を昨日パーティをした部屋へと連れて行き、完成した朝食を配ってくれたのだ。一人ワンプレートずつ。
「わ、美味しそう」
ロールパン、スクランブルエッグとカリカリのベーコン、ほうれん草のソテー、コーンポタージュ。そしてデザートにはカットフルーツがあるらしい、まだ出されてはいない。
「多い……」
俺の隣に座るカサネが小さく呟いた。
「な、なぁ……鳴雷くん、俺の分も食べてくれない?」
小さな声のまま俺に話しかけてきた。頼られるのは嬉しいけれど、ちゃんと一人前ずつ用意された物を食べてやるのは難しい。俺は太りやすいのだ。
「ごめんなさい無理です、俺割と食細いので……シュカとかに頼めばいいと思いますよ」
「……アレに? 増やすの?」
カサネの視線はシュカのプレートに向いている。俺の分の数倍盛られたプレートに。
「おわぁ……」
予想以上の山盛りに間抜けな声が漏れた。見回してみれば、みんなそれぞれ微妙に量が違う。穂張兄弟やアキ、歌見の分は少し多く、レイやハルは少なめだ。そんな中、カサネの分が俺とほとんど同じなのは……ミフユが彼は食べるべきだと判断したからだろうな。普段説教から逃げられている仕返しもあるかもしれない。
「ま、食べられるだけ食べてくださいよ」
「……俺カロリーバーでいいのに」
カサネは諦めたように皿を持ち上げてスクランブルエッグをすすり始めた。食べ方は少々気になるが、食べる気になってくれてよかったと安心し、自分の食事に向き直った。
「早苗ちゃんパンあげる……」
「えっ俺そんなにいらない……秋風、やる」
ロールパンが皿を渡ってアキの元に行き着いた。その辺で買えるパンとは格が違う、高級ホテルで扱われているようなパンっぽくて超美味いのに。味はタライ回しの防止には役立たないんだなぁ。
「鳴雷、ベーコンだけでもいらないか?」
「ベーコンを嫌がる男子高校生が居るんですか……!? お肉はアキが喜びますよ」
「早苗ちゃんよろしく」
「えっ、う、うん……秋風、これも」
カサネは隣のセイカの皿へ、セイカは更に隣のアキの皿へ。ミフユのわざとらしいまでに大きなため息が聞こえてきた。
プレートを空にしたらカットフルーツをいただく。普段食べる物とは甘さが違う。紅葉家との経済格差を感じつつ、ふとネザメの皿を見れば、白鳥の形に切られたリンゴがあった。他のフルーツも花や動物の形に切られている……ミフユのネザメ贔屓を感じる。
「水月くん達はこの後すぐに帰ってしまうのかい?」
「そう……です、ね。お祭りは夕方頃からなんですけど、課題とかありますし……ネザメさん達はお祭り来ないんですよね」
「あぁ、僕はやめておくよ。写真とお話、お願いね。月曜日を楽しみにしているから」
「はい!」
朝食を食べてすぐに帰るのは少し寂しいけれど、今晩の祭りは楽しみだ。
帰りは車だ。俺はセイカとアキ、方向が同じリュウと同乗する。
「帰りまで送っていただけることになって……ありがとうございます」
「暑いからねぇ、みんなが熱中症で倒れてはいけないし。頼んだよ」
ネザメは運転手に微笑みかけている。
「よろしくね。穂張さん達、本日はありがとうございました。今晩のお祭りの運営をするそうで、お忙しい中──」
「……コンちゃんとサキヒコくんは、まだ家ウロウロしてるのかな。そろそろ帰るんだけど……連絡取れないしなぁ、どうすればいいかな、セイカ」
ネザメがヒトに話しかけ始めたので、暇になった俺はそっとセイカに耳打ちした。
「知らねぇよ……」
「ワシならここに居るが」
ぬっ、とセイカの向こうから金髪糸目の美少年が現れる。
「うわっ……びっくりした。いつから居たの? サキヒコくんも居る?」
「しゅーちゃんを起こしとった辺りから居たぞぃ。うむ、さっちゃんも一緒じゃ」
「戻ってきたんなら声かけてくれればよかったのに」
「くふふっ、すまんのぅ。みっちゃんほんまに気付かんから面白ぅて」
霊感のない俺には視えないんだから気付くも気付かないもないだろう、俺は少しムッとして言った。
「それはそうなんじゃが、ふーちゃんはよぉ話しかけてくれとったから、ワシらが戻ったことくらいにはそのうち気付くと思うたんじゃよ」
「えー……? あぁ……そういえば。でもフタさんよく何もないところに話しかけてるし、飼い猫と遊んでるんだと思ってたよ」
「帰る頃になってようやく探すのも酷いと思うがのぅ、ワシらにもふるーつをやろうという気はないのか? ん?」
「ひいおじいさんのところに居るんだろうと思ってたから……」
「ま、確かに昨日の夜遅く、あの者はワシらに美味しいお菓子をくれたわ。あんな美味いもん初めて食うた、のぅさっちゃん」
こくりと頷く、こちらもまた知らぬ間に現れたおかっぱ頭の美少年。
「……サキヒコくん、色々話せた?」
「あぁ……それはもう。ミツキ、改めてありがとう。私を見つけてくれて……本当に感謝している」
「いいよいいよ」
「……よければ、今後も主様に会わせて欲しい」
「うん、出来るだけここに遊びに来ればいいんだよね? 善処するよ。バイトあるから平日は無理だけど……休日は、可能な限り」
あまり考えたくはないが、サキヒコの主人だったネザメの曽祖父は高齢だ。いつまで元気にサキヒコと交流出来るか分からない。ネザメとミフユとも相談して出来る限りサキヒコを連れてきてやらなくてはな。
「わ、美味しそう」
ロールパン、スクランブルエッグとカリカリのベーコン、ほうれん草のソテー、コーンポタージュ。そしてデザートにはカットフルーツがあるらしい、まだ出されてはいない。
「多い……」
俺の隣に座るカサネが小さく呟いた。
「な、なぁ……鳴雷くん、俺の分も食べてくれない?」
小さな声のまま俺に話しかけてきた。頼られるのは嬉しいけれど、ちゃんと一人前ずつ用意された物を食べてやるのは難しい。俺は太りやすいのだ。
「ごめんなさい無理です、俺割と食細いので……シュカとかに頼めばいいと思いますよ」
「……アレに? 増やすの?」
カサネの視線はシュカのプレートに向いている。俺の分の数倍盛られたプレートに。
「おわぁ……」
予想以上の山盛りに間抜けな声が漏れた。見回してみれば、みんなそれぞれ微妙に量が違う。穂張兄弟やアキ、歌見の分は少し多く、レイやハルは少なめだ。そんな中、カサネの分が俺とほとんど同じなのは……ミフユが彼は食べるべきだと判断したからだろうな。普段説教から逃げられている仕返しもあるかもしれない。
「ま、食べられるだけ食べてくださいよ」
「……俺カロリーバーでいいのに」
カサネは諦めたように皿を持ち上げてスクランブルエッグをすすり始めた。食べ方は少々気になるが、食べる気になってくれてよかったと安心し、自分の食事に向き直った。
「早苗ちゃんパンあげる……」
「えっ俺そんなにいらない……秋風、やる」
ロールパンが皿を渡ってアキの元に行き着いた。その辺で買えるパンとは格が違う、高級ホテルで扱われているようなパンっぽくて超美味いのに。味はタライ回しの防止には役立たないんだなぁ。
「鳴雷、ベーコンだけでもいらないか?」
「ベーコンを嫌がる男子高校生が居るんですか……!? お肉はアキが喜びますよ」
「早苗ちゃんよろしく」
「えっ、う、うん……秋風、これも」
カサネは隣のセイカの皿へ、セイカは更に隣のアキの皿へ。ミフユのわざとらしいまでに大きなため息が聞こえてきた。
プレートを空にしたらカットフルーツをいただく。普段食べる物とは甘さが違う。紅葉家との経済格差を感じつつ、ふとネザメの皿を見れば、白鳥の形に切られたリンゴがあった。他のフルーツも花や動物の形に切られている……ミフユのネザメ贔屓を感じる。
「水月くん達はこの後すぐに帰ってしまうのかい?」
「そう……です、ね。お祭りは夕方頃からなんですけど、課題とかありますし……ネザメさん達はお祭り来ないんですよね」
「あぁ、僕はやめておくよ。写真とお話、お願いね。月曜日を楽しみにしているから」
「はい!」
朝食を食べてすぐに帰るのは少し寂しいけれど、今晩の祭りは楽しみだ。
帰りは車だ。俺はセイカとアキ、方向が同じリュウと同乗する。
「帰りまで送っていただけることになって……ありがとうございます」
「暑いからねぇ、みんなが熱中症で倒れてはいけないし。頼んだよ」
ネザメは運転手に微笑みかけている。
「よろしくね。穂張さん達、本日はありがとうございました。今晩のお祭りの運営をするそうで、お忙しい中──」
「……コンちゃんとサキヒコくんは、まだ家ウロウロしてるのかな。そろそろ帰るんだけど……連絡取れないしなぁ、どうすればいいかな、セイカ」
ネザメがヒトに話しかけ始めたので、暇になった俺はそっとセイカに耳打ちした。
「知らねぇよ……」
「ワシならここに居るが」
ぬっ、とセイカの向こうから金髪糸目の美少年が現れる。
「うわっ……びっくりした。いつから居たの? サキヒコくんも居る?」
「しゅーちゃんを起こしとった辺りから居たぞぃ。うむ、さっちゃんも一緒じゃ」
「戻ってきたんなら声かけてくれればよかったのに」
「くふふっ、すまんのぅ。みっちゃんほんまに気付かんから面白ぅて」
霊感のない俺には視えないんだから気付くも気付かないもないだろう、俺は少しムッとして言った。
「それはそうなんじゃが、ふーちゃんはよぉ話しかけてくれとったから、ワシらが戻ったことくらいにはそのうち気付くと思うたんじゃよ」
「えー……? あぁ……そういえば。でもフタさんよく何もないところに話しかけてるし、飼い猫と遊んでるんだと思ってたよ」
「帰る頃になってようやく探すのも酷いと思うがのぅ、ワシらにもふるーつをやろうという気はないのか? ん?」
「ひいおじいさんのところに居るんだろうと思ってたから……」
「ま、確かに昨日の夜遅く、あの者はワシらに美味しいお菓子をくれたわ。あんな美味いもん初めて食うた、のぅさっちゃん」
こくりと頷く、こちらもまた知らぬ間に現れたおかっぱ頭の美少年。
「……サキヒコくん、色々話せた?」
「あぁ……それはもう。ミツキ、改めてありがとう。私を見つけてくれて……本当に感謝している」
「いいよいいよ」
「……よければ、今後も主様に会わせて欲しい」
「うん、出来るだけここに遊びに来ればいいんだよね? 善処するよ。バイトあるから平日は無理だけど……休日は、可能な限り」
あまり考えたくはないが、サキヒコの主人だったネザメの曽祖父は高齢だ。いつまで元気にサキヒコと交流出来るか分からない。ネザメとミフユとも相談して出来る限りサキヒコを連れてきてやらなくてはな。
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