冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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一緒に寝ないの? (水月+アキ・セイカ・ヒト・フタ・サン・リュウ)

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既に組む相手が決まった彼氏達はベッドも決め、寝支度を始めた。そんな中、セイカのロシア語が部屋に静かに響く。英語ならともかくロシア語は全く分からないので、セイカの発音が拙いのか上手いのか分からない。

《秋風、ベッド六つしかないから二人一組で使えってことになってんだけど》

《おぅ、そんくらい何となく分かってるぜ。端のベッドにしようぜスェカーチカ、真ん中はヤダ》

《ヒトさんが一緒に寝ようって言ってるぞ。俺は天正と寝るから》

《……? 俺スェカーチカと一緒じゃねぇの?》

《だからお前はヒトさんに誘われてんだって》

アキの表情が曇ってきたように感じる。セイカはどう説明しているのだろう。

《スェカーチカ、俺と寝たくねぇの?》

《俺は天正と寝る》

アキは深いため息をつき、後頭部をガリガリ引っ掻いた。

「……おやすみなさいです、せーか」

「ぇっ……? あ、あぁ……おやすみ……」

アキはぺたぺたと歩いてヒトの前に立ち、にっこり微笑んだ。アキがよくやる愛想笑いだ、日本に来る直前に仕込まれたとか言ってたってセイカが話してくれたっけな。

「……! 可愛い……本来弟とはこうあるべきです。見習いなさいお前達」

「見えませ~ん」

「…………ん? なに、ヒト兄ぃなんか言った?」

態度の悪い弟とボーッとしていた弟に舌打ちをし終えると、ヒトは笑顔でアキに向き直った。

「一緒に寝ましょう、秋風さん」

「……ひとー? です?」

「え? あぁ、はい。私はヒトですよ。あまり話していないから、まだ名前があやふやですか? 外国育ちでは日本人の名前を覚えるのは難しいかもしれませんね」

二文字でも覚えにくいもんなのかな。

「ぷりーず、こーる、みー……」

アキの母国はアメリカでもイギリスでもなくロシアなんだってば。興味のないとこに対しては適当だなぁこの人。

「ヒトお兄ちゃん」

「すいませんヒトさん俺の弟なんですよ」

「鳴雷さんの弟ということは私の弟じゃないですか」

その理論ならアキの義兄の数は二桁を超える。

「娘の歳を鑑みて、適当な頃合いで離婚しますから……その頃にはきっと同性婚も合法化されているはずですから、穂張 水月になってくださいね」

「うへへへへ」

子供が居るのに離婚を軽々しく考えないでください。同性婚が認められても重婚が認められなければ俺は誰とも籍を入れるつもりはありません。鳴雷って苗字カッコよくて気に入ってるので嫌です。この三つのうちのどれかを口に出そう。

「んへへへ……もぉヒトさんったらぁ」

プロポーズが嬉しくて言おうと思ったことが上手く言えない。

「ふぅ……婚約成功です。秋風さん。ぷりーず、こーる、みー、ヒトお兄ちゃん。ヒト、お兄ちゃん…………狭雲さーん?」

《秋風、ヒトお兄ちゃんって呼べってヒトさんが言ってる》

アキは何故か翻訳をしてくれたセイカからぷいっと顔を逸らした。なんだ? アキがヒトと組むことを了承した件といい、何かおかしいぞ?

「……秋風さん?」

「…………ひとー、おにー……ちゃ」

「はい! 私がお兄ちゃんです! はぁ……可愛い。鳴雷さんそっくりだし……あれ、私この子産んだかも」

「キッショ」

「あんな無礼な弟共なんてもう要りません」

「じゃあもう売り上げ一銭も渡さない」

「それは違うじゃないですか!」

サンに対し背を向けていたヒトが慌てて振り向く。

「私達はビジネスパートナーでもあるはずですよ? 商談の場には私が居なければ困ることだってあるでしょう」

「あんまりないかな……」

「……いいでしょう。あなたがそう言うなら私にだって手がありますよ。サン、あなたが絵の売り上げを一銭も私に渡さないと言うのなら、私はフタの世話を今後一切致しません」

「は……? ちょっと待ってよそれは困る!」

「あなたが世話をしなさい」

「老老介護より無理があるよ! はぁっ、もう……この卑怯者。分かった、いいよ、金は渡すよ。どうせそんなにお金使わないし……」

フタの世話って脅し文句になるんだ……そんなに大変なのか? 確かに忘れっぽいし短絡的な行動を取ることもあるけれど、成人した大人だぞ? いや、サンが言っている通りサンにとって金があまり重要なものじゃないだけかもしれないけれど。

「交渉成立、弟とはビジネスパートナーのままです。愛でられる弟はあなた一人ですよ」

ヒトがアキの頭に手を乗せる。

「ふわふわ……!」

白い髪の柔らかさに感激している様子だ。アキは自分の頭を撫でて嬉しそうなヒトをジーッと見上げている、どういう感情を抱いているのか全く読めない。

「……な、なぁ、鳴雷」

「ん? どうしたセイカ」

「秋風にセイカって呼ばれたぁ……スェカーチカじゃなくて……なんでだろ、なんか、なんか怒らせたかも……」

「……そう呼ばれる前、どんな話したんだ?」

「え……? ヒトさんが一緒に寝ようって言ってるって。それだけ……だけど」

それだけでアキが怒るだろうか? そもそもアキがセイカと一緒に寝ないことを了承するか? いや、それは俺が二人の仲の深さを測り違えているだけだろうか。

「本当にそれだけか?」

「え……う、うん……他に言うことないし」

「なんかもっと長々話してたけど」

「秋風なかなか分かってくれなくて。でも内容はヒトさんの翻訳だけだし……嫌われるようなこと、してないのに……」

そもそも怒らせたとか嫌われたとかはネガティブなセイカの憶測だ。

「うーん……まぁ、とりあえず今日はもう寝ろよ。明日になっても様子がおかしかったらまた俺に言ってくれ、何とかするよ」

「…………うん」

頭をぽんぽんと撫で、セイカから少し離れる。

「リュウ!」

「んー? なにぃ水月ぃ」

「……セイカ、ちょっと落ち込んでる。何しろって訳じゃないけど、頭に入れといてくれ」

リュウにだけ聞こえるように彼の耳元でそっと囁いた。
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