冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ベッド割を決めよう (水月+ネザメ・ミフユ・ヒト・フタ・サン・ハル・リュウ・シュカ・セイカ・レイ・歌見・カサネ・ミタマ)

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風呂上がり、いつものようにサンの髪を乾かしてあげた。温風と冷風を切り替えながら櫛を通し丁寧に仕上げた長髪には艶が宿る。

「出来た! ふぅ……達成感すご」

濡れて重くなった髪は床に引き摺ってしまうので持ち上げて運んでいたが、乾いた今は巻いたくせっ毛が復活したので持ち上げなくともくりんと巻いて床に擦れなくなった。

「ありがと水月ぃ~」

お礼のハグと軽いキスを受け、自分の髪を乾かすため再びドライヤーを持った。



風呂後の身体のお手入れ、歯磨きなどを終え、ネザメとミフユが彼氏達にと用意してくれた寝室へ向かう。

「ここがお客様用の寝室さ。まぁ泊まっていくお客様などまず居ないから、作ったはいいものの使っていない部屋らしいけどね」

「ベッド六つってことは~……二人で一つ?」

「そうなるね、二人組を作ってもらうことになる。ベッドの広さは問題ないと思うのだけれど、どうだろう?」

カンナとカミアはそれぞれ俺の腕を抱いている。俺達三人は別室を使わせてもらう予定だから、彼氏達がどう組むのか見守ろう。

「あーにきっ、一緒に寝よ」

「いいよ~」

サンは早速フタに声をかけた。当然フタはそれを受け入れる。

「りゅー、一緒に寝よ~」

「ええで。なんや意外やわ。自分、りゅーなんかと一緒に寝るん嫌や~とか言いそうやのに」

「え~? いやぁ……マシな方っしょ、りゅー」

「まぁ旅行ん時も一緒やったもんなぁ」

ハルは過去のトラウマからガタイのいい男との密着は苦手だ、比較的小柄なリュウとならリラックスして眠れるだろう。

「な、なぁっ……年積、絶対に二人組?」

俺と同じく「二人組作ってー」というセリフが大嫌いなのだろうカサネがミフユにコソコソと尋ねた。

「うむ、十二人だからな」

「ねぇ~……辛いってぇ~……お前らはどうか知らねぇけど俺今日ほぼ全員初対面よ? そ、そこから一緒に寝る相手選べとか……むり……」

そりゃそうだ。

「て、ていうかフランクは? いつも隣で寝てるんだけどっ」

「犬と同じ部屋で寝るなんて嫌ですよ私」

背後で腕を組んでいたヒトが会話に参加してきたのに驚いたのか、カサネは大きく身体を跳ねさせて怯えた。

「……あ、あの、さっきの部屋に居るのか?」

「あぁ、メープルの小屋は庭にあるのだが、今日会ったばかりの犬と一緒に寝るのは流石に嫌かと思ってな。メープルは小屋に戻したが貴様の犬はあの部屋に居る」

「…………なんでその気遣い俺にしてくれないかな」

「何か言ったか?」

「い、いや……別に。あの、さ……俺フランクのとこで寝るわ。一人にするの不安だし……ここで、寝るの、無理だし。ぁ……あの部屋結構クッションとか多くてっ、工夫すりゃベッドっぽいの作れるしなっ、確か毛布もあったし……」

「犬用のブランケットだ、小さいぞ?」

「に、二枚くらい被るよ……じゃあ、俺……あっちで寝るからっ」

ミフユの横をすり抜け、ネザメの背後を通り抜け、カンナとカミアに会釈をして扉を開けた。小走りで遠ざかっていく足音は扉が閉まると聞こえなくなる。

「…………誘ったげた方がよかったかな?」

ハルが眉尻を下げてリュウを見つめる。リュウは「気にしぃなや」と明るく笑い、彼の手を引いてベッドに腰かけた。

「……ワシ寝んでもええから、十一人になって一人でベッド使えたんじゃが……言うた方がよかったかの?」

風呂に入っている間は消していた三本の尾を揺らし、ミタマが首を傾げる。

「うーん、カサネ先輩は多分同じ部屋で寝るのもちょっと嫌だったんだと思うから、言っても一緒だったと思うよ。そんな顔しないで、コンちゃん」

ぺしょっと垂れた狐耳が可愛くて、可哀想で、狐色の頭を優しく撫でる。

「……サキヒコくんはまだおじいさんのところ?」

「む……うむ、そのようじゃな。あっちの方に存在を感じるぞぃ」

俺も全彼氏の居場所感知する能力欲しいな。

「しかし、元主人の男も一晩中起きているような真似はせんじゃろう。出来んと言った方が正しいか。ヤツが眠ったらサっちゃんと豪邸見学させてもらうのじゃ~」

眠らないミタマにはどうしても一人の時間が出来てしまうなと気にしていたところでのこの発言はありがたい。ミタマは人間達が寝静まった夜を寂しいものではなく、ワクワクする時間と捉えているようだ。安心した。

「では二人、ベッドを一人で使えるということですね?」

シュカがベッドを横目に見つつミフユに確認した。過酷な経験から他人の傍で眠れない彼にとって、俺以外と同じベッドを使うだなんてありえない。

「あっそうなるんだったら誰かりゅーあげる~」

「私は一人で使います。私が心を許せるのは辛うじて水月。皆さんを信用していないだとか、嫌いだとか、そういう訳じゃありませんが……一緒に寝るのは嫌です」

カーテン付きのベッドとはいえ他人と同じ部屋で眠れるだろうかと考えているのだろう、シュカは自分が使うつもりのベッドのカーテンを手慰みに弄りながら憂鬱そうに呟いている。

「俺、歌見せんぱいとにするっす。いいっすよね歌見せんぱい」

「ん? あぁ、俺もそのつもりだった」

元同僚で歳が近め、趣味も似ている二人はそこそこ仲がいい。歌見とレイは夏休みの旅行でも同じ部屋で眠っていたし、予想通りだ。残りはアキとセイカとヒトか……アキとセイカが組むのは考えるまでもない、言うまでもないから宣言しないのだろう。ヒトは一人でベッドを使うことになるな。カサネが部屋を出たのは正解かもしれない、ヒトと組まされるのは彼にとって最悪の選択肢だろう。

「……秋風さん、私と一緒にベッドを使いませんか?」

と考えていたらヒトがまさかの提案をした。日本語を理解していないアキは首を傾げ、それから翻訳を求めてセイカを見つめた。しかしセイカは驚いていてアキの視線に気付いてすらいない。

「兄貴は一人でベッド使いたがるかと思ったよ」

「鳴雷さんと顔が似ているので……眠るまで眺めていたらいい夢が見れそうじゃないですか」

「ぁ……じゃ、じゃあ、俺が一人で寝るってことで…………やったー、広々ー……」

「りゅーあげるってば~」

「本気やったんかいな。どないするんせーか、俺はどっちゃでもええけど……アキくんと寝たない?」

「そりゃ秋風とがいいけどそれは消極的って言うか、他に秋風とがいいって言う人居るならそっちに譲るって言うか」

秋風とがいいって言うだな。

「せーかはそれでよぉても、アキくんはどやろ。聞いてみんと。なぁヒトさん」

「ええ、翻訳をお願いします。鳴雷さんの弟さんの秋風さんのことですから、私のお願いを断ったりなんてしないと思いますが……」

どういう思い込みなんだそれは。さて、アキはどう答える? 何となく答えは分かっているけれど。
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