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最初から行けばよかった (水月+ヒト・サン・ネザメ・ミフユ・カサネ・アキ)
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犬二匹に顔を舐め回されているカサネは、たまに呻くだけでほとんど動かない。しかし何故あのぐうたらなパグ犬が立ち上がったのだろう、もしかして飼い主を盗られたくなくて? だとしたら可愛いな。
「ただいま戻りました……」
顔を洗ってきたヒトが帰還。両手を広げて出迎えてみると疲れた顔は一気に花開き、俺の腕の中へ飛び込んできた。
「鳴雷さん……! あぁ、私の癒し……私の全て!」
随分依存されたものだ。当初彼を攻略するつもりはなかったのだが、ここまで可愛いところを見せられると攻略しない選択肢を選んだ当時の俺はバカだったとしか考えられない。
数分後、カサネが顔を洗いに行った。満足げなボーダーコリーはオモチャのロープを噛み始め、パグ犬はクッションの上で丸まった。
「ただいま……なぁっ、と、年積……そろそろ散歩の時間なんだ……だから、そのっ、か、帰る……帰、りたい」
「今から散歩なんですか? もう日ぃ暮れますよ」
「そっ、その日でアスファルトが鉄板なんだよっ。フランクが肉球火傷するだろっ」
「あぁ、なるほど……」
「帰るのなら──」
「もしよければ庭を使わないかい? 芝生だから昼間だろうと熱くはなっていないよ、メープルもいつも走り回ってる。ポールや坂、トンネルなんかもあるよね、ミフユ」
俺との会話が終わるのを待って、カサネへの返事のためミフユが口を開いたその時、ネザメが会話に割り込んだ。
「ええ、そこらのドッグランよりは設備がいいかと。どうする繰言二年生、帰るか? 庭に出すか? ネザメ様の厚意を無下にしないだろうな」
「……じゃっ、じゃあ……庭、にっ」
「案内しよう」
「セイカ、そろそろアキも外に出て大丈夫な頃だろ。庭で遊びたくないか聞いてみてくれ」
「私は行きたくないので鳴雷さんも行かないでください」
言われなくともヒトにその気がなければ俺は動けない、自分より体格のいい相手に抱き締められているのを振りほどくような力俺にはないのだから。
「にーにっ、一緒に行くするです」
カサネ達が戻るまでヒトや他の残る彼氏達とダラダラ過ごすかと考えていたのに、アキが満面の笑顔で手を差し伸べてきた。
「ぁ……」
ヒトに行かないでと言われたばかりだ。どうするか迷ってすぐに上げられなかった俺の手をアキが握った。
「行くー、するです。にーに」
「……秋風さん、でしたっけ? お兄さんは外へは行きませんよ。フタやサンのような愚弟ではないあなたなら聞き分けますよね?」
アキは首を傾げている。
「すいませんヒトさん、アキは日本語まだ全然だめで……アキ、ぁー…………あの、ヒトさん。お庭行きませんか?」
「……嫌です。ここに居てください」
俺を強く抱き締めるヒトは座り込んで動く気配を見せない。
「…………ぁー、ごめんな、アキ。お兄ちゃん……行く、出来ない。分かったか?」
「……にーに行くするしないです?」
「あぁ、行かない」
「…………にーに、一緒遊ぶする、欲しい……でした」
残念そうに言うとアキは斜め後ろに居たセイカを抱き上げ、他の彼氏達に続いて庭へ向かった。
「……二人きりになりましたね」
「みんな行っちゃいましたね……まさか全員行くとは。俺達も行きませんか?」
「私と二人は嫌ですか?」
「全然そんなことないです! ないんですけど、せっかくみんなで集まってるのに……ヒトさんだって豪華なお庭見てみたくないですか?」
「…………噴水ありますか?」
「噴水……どうだっけ…………すいません、俺も頻繁に来て探検してるって訳じゃないので分かんないです」
噴水が好きなのか? 子供っぽいと言うべきか、可愛いところがあるんだな。
「探してみます?」
「……はい」
ようやく離してくれた。先に立ち上がってヒトに手を貸す。彼に密着されていたがために汗ばみ、肌に張り付いていたシャツを引っ張って剥がす。
「行きましょ」
「……庭に行きたがるあなたを無理に留めても、あんまり私を見てくれなさそうだったので、行くんですからね」
「ごめんなさい、俺寂しがりなんです。みんなで居たくって」
部屋を出て庭へ──庭ってどっちだ?
「鳴雷さん? 庭に行くんじゃないんですか? 早く行きましょうよ」
「……すいません、どこか分かりません」
家の造りが難解なんて訳じゃないけれど、広いから間違った方向に行ったら面倒臭い。ミフユに道を教えてもらおうと電話をかけたら「そこで待っていろ」と言われ、切られた。
「来てくれるみたいです」
数分待つと廊下の向こうから走ってくる小さな影が見えた。ミフユ一人か、まぁそうだよな。
「全く……初めから着いてくればいいものを……」
ミフユはぶつぶつと愚痴を呟きながら早足で俺達を庭に案内してくれた。すっかり日は落ちて空は真っ暗、灯りなんて設置されていない庭の様子はよく見えない。けれど、遠くの方でゆらゆらと光の玉が揺れているのが分かった。
「アレ何……?」
「繰言くんだよ」
彼氏達のほとんどは庭の端にも置かれたベンチの上でくつろいでいる。目を細めて光の玉を見つめる俺の隣にネザメがやってきた。
「カサネ先輩なんですか?」
「あぁ、メープルとも遊んでくれているんだ。追いかけている……追いかけさせているのかな? よく見えないね、とにかくメープル達と遊んでいるんだ」
「へぇー……走って大丈夫なんですか? 体育いつも見学なのに」
「心配だよねぇ。散歩なら歩いているだけだからそこまで身体に負担はないだろうけど、ここから見ている感じ……かなり走っているものね」
「ちょっと見てきた方がいいかな……そういえば、アキ居ませんね、セイカも……」
「メープル達と一緒に遊んでいるみたいだよ。もしかしたら懐中電灯を秋風くんに渡して、繰言くんは休んでいるのかもしれないね」
「だといいんですけど」
時折庭の向こうの方から「うわぁああ」だの「止まれぇえ」だの聞こえてくる、走るアキに抱えられたセイカが叫んでいるのだろう。
「……サン、フタはどこに?」
「居ないの? 知らないよ」
「フタさんも一緒に遊んでくれているはずですよ」
「ならいいんですけど……勝手にどっか行ってませんかね。はぁ……目につくところに居ないと不安です…………最初から着いていけばよかった」
弟を気にする兄二人の姿が面白いのか微笑ましいのか、ネザメは穏やかな笑顔を浮かべて俺達を眺めていた。
「ただいま戻りました……」
顔を洗ってきたヒトが帰還。両手を広げて出迎えてみると疲れた顔は一気に花開き、俺の腕の中へ飛び込んできた。
「鳴雷さん……! あぁ、私の癒し……私の全て!」
随分依存されたものだ。当初彼を攻略するつもりはなかったのだが、ここまで可愛いところを見せられると攻略しない選択肢を選んだ当時の俺はバカだったとしか考えられない。
数分後、カサネが顔を洗いに行った。満足げなボーダーコリーはオモチャのロープを噛み始め、パグ犬はクッションの上で丸まった。
「ただいま……なぁっ、と、年積……そろそろ散歩の時間なんだ……だから、そのっ、か、帰る……帰、りたい」
「今から散歩なんですか? もう日ぃ暮れますよ」
「そっ、その日でアスファルトが鉄板なんだよっ。フランクが肉球火傷するだろっ」
「あぁ、なるほど……」
「帰るのなら──」
「もしよければ庭を使わないかい? 芝生だから昼間だろうと熱くはなっていないよ、メープルもいつも走り回ってる。ポールや坂、トンネルなんかもあるよね、ミフユ」
俺との会話が終わるのを待って、カサネへの返事のためミフユが口を開いたその時、ネザメが会話に割り込んだ。
「ええ、そこらのドッグランよりは設備がいいかと。どうする繰言二年生、帰るか? 庭に出すか? ネザメ様の厚意を無下にしないだろうな」
「……じゃっ、じゃあ……庭、にっ」
「案内しよう」
「セイカ、そろそろアキも外に出て大丈夫な頃だろ。庭で遊びたくないか聞いてみてくれ」
「私は行きたくないので鳴雷さんも行かないでください」
言われなくともヒトにその気がなければ俺は動けない、自分より体格のいい相手に抱き締められているのを振りほどくような力俺にはないのだから。
「にーにっ、一緒に行くするです」
カサネ達が戻るまでヒトや他の残る彼氏達とダラダラ過ごすかと考えていたのに、アキが満面の笑顔で手を差し伸べてきた。
「ぁ……」
ヒトに行かないでと言われたばかりだ。どうするか迷ってすぐに上げられなかった俺の手をアキが握った。
「行くー、するです。にーに」
「……秋風さん、でしたっけ? お兄さんは外へは行きませんよ。フタやサンのような愚弟ではないあなたなら聞き分けますよね?」
アキは首を傾げている。
「すいませんヒトさん、アキは日本語まだ全然だめで……アキ、ぁー…………あの、ヒトさん。お庭行きませんか?」
「……嫌です。ここに居てください」
俺を強く抱き締めるヒトは座り込んで動く気配を見せない。
「…………ぁー、ごめんな、アキ。お兄ちゃん……行く、出来ない。分かったか?」
「……にーに行くするしないです?」
「あぁ、行かない」
「…………にーに、一緒遊ぶする、欲しい……でした」
残念そうに言うとアキは斜め後ろに居たセイカを抱き上げ、他の彼氏達に続いて庭へ向かった。
「……二人きりになりましたね」
「みんな行っちゃいましたね……まさか全員行くとは。俺達も行きませんか?」
「私と二人は嫌ですか?」
「全然そんなことないです! ないんですけど、せっかくみんなで集まってるのに……ヒトさんだって豪華なお庭見てみたくないですか?」
「…………噴水ありますか?」
「噴水……どうだっけ…………すいません、俺も頻繁に来て探検してるって訳じゃないので分かんないです」
噴水が好きなのか? 子供っぽいと言うべきか、可愛いところがあるんだな。
「探してみます?」
「……はい」
ようやく離してくれた。先に立ち上がってヒトに手を貸す。彼に密着されていたがために汗ばみ、肌に張り付いていたシャツを引っ張って剥がす。
「行きましょ」
「……庭に行きたがるあなたを無理に留めても、あんまり私を見てくれなさそうだったので、行くんですからね」
「ごめんなさい、俺寂しがりなんです。みんなで居たくって」
部屋を出て庭へ──庭ってどっちだ?
「鳴雷さん? 庭に行くんじゃないんですか? 早く行きましょうよ」
「……すいません、どこか分かりません」
家の造りが難解なんて訳じゃないけれど、広いから間違った方向に行ったら面倒臭い。ミフユに道を教えてもらおうと電話をかけたら「そこで待っていろ」と言われ、切られた。
「来てくれるみたいです」
数分待つと廊下の向こうから走ってくる小さな影が見えた。ミフユ一人か、まぁそうだよな。
「全く……初めから着いてくればいいものを……」
ミフユはぶつぶつと愚痴を呟きながら早足で俺達を庭に案内してくれた。すっかり日は落ちて空は真っ暗、灯りなんて設置されていない庭の様子はよく見えない。けれど、遠くの方でゆらゆらと光の玉が揺れているのが分かった。
「アレ何……?」
「繰言くんだよ」
彼氏達のほとんどは庭の端にも置かれたベンチの上でくつろいでいる。目を細めて光の玉を見つめる俺の隣にネザメがやってきた。
「カサネ先輩なんですか?」
「あぁ、メープルとも遊んでくれているんだ。追いかけている……追いかけさせているのかな? よく見えないね、とにかくメープル達と遊んでいるんだ」
「へぇー……走って大丈夫なんですか? 体育いつも見学なのに」
「心配だよねぇ。散歩なら歩いているだけだからそこまで身体に負担はないだろうけど、ここから見ている感じ……かなり走っているものね」
「ちょっと見てきた方がいいかな……そういえば、アキ居ませんね、セイカも……」
「メープル達と一緒に遊んでいるみたいだよ。もしかしたら懐中電灯を秋風くんに渡して、繰言くんは休んでいるのかもしれないね」
「だといいんですけど」
時折庭の向こうの方から「うわぁああ」だの「止まれぇえ」だの聞こえてくる、走るアキに抱えられたセイカが叫んでいるのだろう。
「……サン、フタはどこに?」
「居ないの? 知らないよ」
「フタさんも一緒に遊んでくれているはずですよ」
「ならいいんですけど……勝手にどっか行ってませんかね。はぁ……目につくところに居ないと不安です…………最初から着いていけばよかった」
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