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ものぐさ狐 (水月+ヒト・カサネ・カミア・ハル・リュウ・レイ・ミタマ)
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話題は明日戸鳴町で行われるお祭りのことになっていった。
「けど、フタさんって夜店とか出来るんですか? あんまりそういうの任せていい人じゃなさそうなんですけど」
「りんご飴は焼きそばなんかと違って調理が必要ない、置いてあるものを渡すだけなのでフタでも出来るんですよ」
「へぇー……?」
「……お前、か、彼氏なのに……酷くねぇ?」
「彼氏だからって過信したりする方がよくないでしょう?」
穴を掘っている最中に何をするか忘れてボーッと立っていたこともある、なんて話を以前聞かされた。そりゃ夜店を任されていることに不安を覚えるだろ。
「なぁ、ネザメさんとミフユさんの他にお祭り行かないって子、居るか?」
「明日だよね? 僕は無理かな、お仕事あるもん」
カミアは今日来てくれていることがイレギュラー、明日も一緒に居られるなんて思い込めるほど俺は馬鹿じゃない。
「カミアはそうだよな。他は?」
ちらほらと帰ってくる返事は「行くー」「行くつもり」というものばかり。
「……みんな来るのか、よかった。待ち合わせとかするか?」
「駅前でいいんじゃな~い?」
「人多そうだけど大丈夫かな」
「そんな大人数押しかけるような祭りじゃないっすよ。夜店ちょろっとと、花火が少しっすから」
「花火やるんやったら人えらい来るもんとちゃうん、東京もんは花火嫌いなんか?」
「打ち上げなら人雪崩起こすレベルで集まるっすけど、確かナイアガラ式のっすから……」
紐だとかに花火をいくつも吊るすことで、火花がまるでナイアガラの滝のように降り落ちるアレか。手持ちなら庭でやる機会があるし、打ち上げならテレビでよく見るけれど、ナイアガラはあまり見ないから楽しみだな。
「どこでやるんじゃ? 神社や寺にはワシ入りとぉないぞ」
「主な場所は神社の横の公園……っすよね?」
「はい。本部は神社に設置されていますが、夜店が出ているのはほぼほぼ神社の隣の公園です」
「……その公園が神社の敷地を使うたもんでなければええが……敷地じゃったらワシ入らんから、みっちゃんかき氷とか買うてきてくりゃれ」
「コンちゃん神様なんだから別にいいじゃん神社入っても」
「挨拶せにゃならん。嫌じゃ」
「面倒臭がりだなぁ……入り口近くで待ってるコンちゃんに物届ける俺の面倒臭さを汲んで欲しいよ。はぁ……ちょっと土地移動したらわざわざ神社探してお参りするリュウを見習って欲しいね」
「神さんそのもんと神社育ちの人間のガキ比べたアカンで水月」
「そうじゃそうじゃ! 今のはなみっちゃん、母親がまだ席に着いとらんのに勝手に飯を食い始めた息子に「タロちゃんはよしって言うまで食べないのにねぇ」と犬を引き合いに出すようなもんじゃぞ!」
「親待たずに飯食い始めるバカ息子とか犬以下だろどう考えても」
「くぬぅううたとえが悪かったか!」
悪いのはたとえじゃなくミタマのものぐさ根性だと思う。
「鳴雷さんはえらいですね。息子の立場なのにちゃんと母親が怒る定番ポイントを分かっているなんて」
ヒトの手の甲が俺の頬を撫でる。
「普通だと思いますけど……あ、片親だからですかね? 子供でも手伝いしなきゃ手が足りない時が……」
別にないな。母は完璧超人だから、鈍臭い俺が手伝うより母が一人で全てやった方が早い。俺が幼い頃は恋人を家に呼んで家事をやらせていたりもしたし。手が足りない時、なかったわ。
「親の数関係あれへんやろ。おとん家事一切せぇへんもん」
「そーそ、関係ない関係ない。俺のとこもお父さん居ないけど、姉ちゃん達が家事手伝ってるところ見たことないし」
「ほら、鳴雷さんがえらいんですよ」
ヒトの左腕が俺の腹をきゅっと締める。右手は相変わらず手の甲で俺の頬を愛でている。
「繰言さんは家事の手伝いなんかはするんですか?」
「えっ、ゃ……し、しねぇかな。俺、飯は自分で買ってるから……洗濯も自分の分だけだし、ゴミ出しも自分のだけ……うん、手伝いしてねぇ」
「おや、随分自立した生活をなさってるんですね。それはそれでえらいですよ。私を癒してくれる鳴雷さんの方がえらいですけど」
「比べなくていいですよヒトさん」
「…………私、また……何か余計なことを?」
無自覚なんだもんなぁ。
「比べて褒められても俺そんなに嬉しくないです。冗談混じりならともかく」
「……気を付けます。鳴雷さんが一番嬉しいことって何ですか?」
「そりゃ雄っぱい揉ませてくれること……ではなく! ではなく、えーと、まぁ普通に、俺だけ褒めてくれれば……ハハ」
「いつでも触っていただいて構いませんが、体勢的に今は少し難しいですね……太腿なら今好きにしていただいて構いませんよ?」
「ウッヒョーいえいえ揉み尽くしそんなてやるぜ節操ナシな真似は」
「鳴雷くん本音と建前グチャグチャじゃねぇ? 一旦整理した方がいいべ」
俺は内心「ウッヒョー揉み尽くしてやるぜ」と喜びつつも「いえいえそんな節操ナシな真似は……」と断ったつもりなのだが。本音と建前グチャグチャとは一体……本音が声に出ていたのかな?
「そ、そんな変なこと言ってました?」
「何言ってるかよく分かりませんでした」
「ホントですか……すいません。揉みますね」
「ええ、どうぞ」
ヒトの太腿に再び手を這わせる。筋肉質な触り心地が俺の頬を緩ませる。
「うっわ~……見てみっつんのやらしい顔」
「よぉしとる顔やけど、何回見てももったいない思うわ」
「表情で分かる残念イケメンっぷり……マリモのゆるキャラに似てるべ」
彼氏達から好き放題言われてしまった。もっと表情筋に気を配らなければ。しかし太腿を揉みながらキリッとしていても滑稽だろう、どんな顔すればいいのか分からなくなってきた……
「けど、フタさんって夜店とか出来るんですか? あんまりそういうの任せていい人じゃなさそうなんですけど」
「りんご飴は焼きそばなんかと違って調理が必要ない、置いてあるものを渡すだけなのでフタでも出来るんですよ」
「へぇー……?」
「……お前、か、彼氏なのに……酷くねぇ?」
「彼氏だからって過信したりする方がよくないでしょう?」
穴を掘っている最中に何をするか忘れてボーッと立っていたこともある、なんて話を以前聞かされた。そりゃ夜店を任されていることに不安を覚えるだろ。
「なぁ、ネザメさんとミフユさんの他にお祭り行かないって子、居るか?」
「明日だよね? 僕は無理かな、お仕事あるもん」
カミアは今日来てくれていることがイレギュラー、明日も一緒に居られるなんて思い込めるほど俺は馬鹿じゃない。
「カミアはそうだよな。他は?」
ちらほらと帰ってくる返事は「行くー」「行くつもり」というものばかり。
「……みんな来るのか、よかった。待ち合わせとかするか?」
「駅前でいいんじゃな~い?」
「人多そうだけど大丈夫かな」
「そんな大人数押しかけるような祭りじゃないっすよ。夜店ちょろっとと、花火が少しっすから」
「花火やるんやったら人えらい来るもんとちゃうん、東京もんは花火嫌いなんか?」
「打ち上げなら人雪崩起こすレベルで集まるっすけど、確かナイアガラ式のっすから……」
紐だとかに花火をいくつも吊るすことで、火花がまるでナイアガラの滝のように降り落ちるアレか。手持ちなら庭でやる機会があるし、打ち上げならテレビでよく見るけれど、ナイアガラはあまり見ないから楽しみだな。
「どこでやるんじゃ? 神社や寺にはワシ入りとぉないぞ」
「主な場所は神社の横の公園……っすよね?」
「はい。本部は神社に設置されていますが、夜店が出ているのはほぼほぼ神社の隣の公園です」
「……その公園が神社の敷地を使うたもんでなければええが……敷地じゃったらワシ入らんから、みっちゃんかき氷とか買うてきてくりゃれ」
「コンちゃん神様なんだから別にいいじゃん神社入っても」
「挨拶せにゃならん。嫌じゃ」
「面倒臭がりだなぁ……入り口近くで待ってるコンちゃんに物届ける俺の面倒臭さを汲んで欲しいよ。はぁ……ちょっと土地移動したらわざわざ神社探してお参りするリュウを見習って欲しいね」
「神さんそのもんと神社育ちの人間のガキ比べたアカンで水月」
「そうじゃそうじゃ! 今のはなみっちゃん、母親がまだ席に着いとらんのに勝手に飯を食い始めた息子に「タロちゃんはよしって言うまで食べないのにねぇ」と犬を引き合いに出すようなもんじゃぞ!」
「親待たずに飯食い始めるバカ息子とか犬以下だろどう考えても」
「くぬぅううたとえが悪かったか!」
悪いのはたとえじゃなくミタマのものぐさ根性だと思う。
「鳴雷さんはえらいですね。息子の立場なのにちゃんと母親が怒る定番ポイントを分かっているなんて」
ヒトの手の甲が俺の頬を撫でる。
「普通だと思いますけど……あ、片親だからですかね? 子供でも手伝いしなきゃ手が足りない時が……」
別にないな。母は完璧超人だから、鈍臭い俺が手伝うより母が一人で全てやった方が早い。俺が幼い頃は恋人を家に呼んで家事をやらせていたりもしたし。手が足りない時、なかったわ。
「親の数関係あれへんやろ。おとん家事一切せぇへんもん」
「そーそ、関係ない関係ない。俺のとこもお父さん居ないけど、姉ちゃん達が家事手伝ってるところ見たことないし」
「ほら、鳴雷さんがえらいんですよ」
ヒトの左腕が俺の腹をきゅっと締める。右手は相変わらず手の甲で俺の頬を愛でている。
「繰言さんは家事の手伝いなんかはするんですか?」
「えっ、ゃ……し、しねぇかな。俺、飯は自分で買ってるから……洗濯も自分の分だけだし、ゴミ出しも自分のだけ……うん、手伝いしてねぇ」
「おや、随分自立した生活をなさってるんですね。それはそれでえらいですよ。私を癒してくれる鳴雷さんの方がえらいですけど」
「比べなくていいですよヒトさん」
「…………私、また……何か余計なことを?」
無自覚なんだもんなぁ。
「比べて褒められても俺そんなに嬉しくないです。冗談混じりならともかく」
「……気を付けます。鳴雷さんが一番嬉しいことって何ですか?」
「そりゃ雄っぱい揉ませてくれること……ではなく! ではなく、えーと、まぁ普通に、俺だけ褒めてくれれば……ハハ」
「いつでも触っていただいて構いませんが、体勢的に今は少し難しいですね……太腿なら今好きにしていただいて構いませんよ?」
「ウッヒョーいえいえ揉み尽くしそんなてやるぜ節操ナシな真似は」
「鳴雷くん本音と建前グチャグチャじゃねぇ? 一旦整理した方がいいべ」
俺は内心「ウッヒョー揉み尽くしてやるぜ」と喜びつつも「いえいえそんな節操ナシな真似は……」と断ったつもりなのだが。本音と建前グチャグチャとは一体……本音が声に出ていたのかな?
「そ、そんな変なこと言ってました?」
「何言ってるかよく分かりませんでした」
「ホントですか……すいません。揉みますね」
「ええ、どうぞ」
ヒトの太腿に再び手を這わせる。筋肉質な触り心地が俺の頬を緩ませる。
「うっわ~……見てみっつんのやらしい顔」
「よぉしとる顔やけど、何回見てももったいない思うわ」
「表情で分かる残念イケメンっぷり……マリモのゆるキャラに似てるべ」
彼氏達から好き放題言われてしまった。もっと表情筋に気を配らなければ。しかし太腿を揉みながらキリッとしていても滑稽だろう、どんな顔すればいいのか分からなくなってきた……
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