1,570 / 1,942
両手に双花 (水月+カンナ・カミア・アキ・カサネ)
しおりを挟む
カサネは大勢の集まりが苦手。一対一ならいいって訳じゃない、少しマシなだけ。付き合うことを許容してくれた俺でもそれは例外じゃない。他人と同じ空間に居る、それが苦痛。カサネにとっての苦痛。
「…………ぁ、の……お、俺……家族とも、一緒に居るの、あんまり好きじゃねぇから……な、鳴雷くんと、まだ親しくねぇからとかっ、そういうこと思ってる訳じゃねぇからっ」
訂正、他人じゃなくても苦痛、らしい。親しくなってもあんまり会ってくれないってことか? フォローのように情報を出してきたが、余計に落ち込むばかりだ。
「ちが……ちがう、鳴雷くんに、会いたくないとかじゃねぇべ……あの…………ぁ、散歩っ、お散歩付き合ってくれるって、言ってたよな……こ、今度っ、一緒に……」
「はい、デートしましょうね」
よかった、俺に一切会いたくないという訳ではないんだな。そりゃそうか、俺が少々強引だったとはいえ交際しているのだから。
「……ごめん。大して顔良くないくせに、ワガママ言って……全然ヤらせないで」
「何言ってるんですか、カサネ先輩は可愛いです!」
「…………そう。ありがとう……えっと、じゃあ、俺、その……あっちに、居るから」
カサネはクッションの影に隠れるように、部屋の隅に腰を下ろし、スマホを弄り始めた。ハルとレイは相変わらず寝ている犬に夢中、ネザメはセイカとの話が盛り上がっている。
(どうしましょ、カサネたん追いかけるのは悪手ですよな)
セイカがネザメと話しているということは、アキは暇なのでは? と彼を探す。黒づくめの彼はすぐに見つかる。予想通り彼は暇そうにしていた。
「アキ……」
「かさねー」
手を上げながら呼ぼうとした瞬間、アキはカサネの方へ駆けた。
「ひっ……!? あ、えっと、鳴雷くんの弟だっけ……鳴雷もヤバいけど、お前もヤバいな。微笑むだけで人生歪ませられるだろ」
「かさね、犬~……ぅー……持つ? するです?」
「…………その場合は、飼う、だな」
「買う? するです?」
「ん……? 飼育の方な。漢字は分かるか?」
「かんじ~……難しいするです。犬、犬です、犬見るするしたいです」
「犬……フランクならそっち。えー、レイちゃんとハルちゃん? だっけな。に随分チヤホヤされてるよ」
アキはカサネが指した方へ向かった。カサネはホッとした様子でまたスマホを弄り始める。アキと話すのはハルやレイほど緊張していないようだった、カタコトなのが大きいのだろうか。
《犬……か? なんか、顔の形違うな》
「あ、アキくんも見に来たの~?」
「ここ座るっすか? 霞染せんぱいちょっと詰めて欲しいっす」
「りょ~」
アキはレイの隣に落ち着いたか。じゃあ俺はどうしようかな。
「みーぃくんっ」
「カミア、カンナも居るな。どうした?」
「隙ありって感じ。お話しよっ」
隙あり? あぁ、俺が話し相手が居なくて暇をしていたのを見抜いたのか。
「もちろんいいぞ。座るか」
「わーい」
クッションを背もたれにして床に腰を下ろし、胡座をかく。カンナとカミアは隣に座るかと思っていたが、カンナは俺の膝にそっと座った。
「……! じゃあ、僕こっち……」
左膝に座ったカンナに対し、カミアは右膝に座った。腰に腕を回してやると二人は素直に俺の腕に体重を預ける。
「えへへ……みぃくんのお膝~、お兄ちゃんよく座ってるの?」
「……た、まに?」
「まぁ、学校じゃ出来ないしな」
「でも毎日みぃくんに会えてるんだよねお兄ちゃん、みぃくんは毎日お兄ちゃんに会えてるし……いいなぁ、羨ましい」
「その分今日たっぷり話そうな」
強く抱き寄せて愛らしく巻いた髪に頬を擦り寄せる。
「うん……でも、何話そうかなぁ」
「なんでもいいぞ、話したいこと話してくれ」
「…………お仕事の愚痴でもいーい?」
「もちろん。それでカミアが少しでも楽になるなら。な、カンナ。お説教はしないでやれよ?」
カンナがたまにカミアに行う説教は、俺には的外れに思える。説教の内容を聞く限り、カンナはアイドルは絶対的な偶像であるべきと考えているようだが、カミアは親しみやすさや顔と同じ可愛らしい性格で売れたアイドルなのだから、カンナのアドバイスや説教はカミアには合っていないと思う。
(まぁわたくしアイドルに関してはド素人ですが)
けれどカミアは自分の魅力を理解していないのか、兄を盲信しているからなのか、カンナのアドバイスを聞こうとしてしまう。だからカンナに話させないのが一番だ。
「……? ぼく、せっきょ……した、こと……な、よ?」
「お兄ちゃんの発言は全て金言! みぃくん、お兄ちゃんに変なこと言わないで!」
「カミア……お前本っ当にブラコンだなぁ」
「みぃくんに言われたくない。ねぇお兄ちゃん」
「うん、みーく……のが、すご、ぃ」
そうか? どう考えてもカミアの方がブラコン度は上だろう。
「ねぇねぇみぃくん、アキくんともお話したいなっ。前会った時全然だったし……みぃくんと一緒で、あの子すっごくカッコイイし!」
「あぁ、いいぞ。アキ~!」
アキを呼ぶと犬を眺めていた彼はすぐに立ち上がり、俺の方を見ると慌てた様子でセイカの元へ向かった。翻訳が必要だと思ったのか? いや、カサネの方にも行ったな。
「……? みぃくん、アキくん何してるの?」
「さ、さぁ」
アキはセイカとカサネを小脇に抱え、ドヤ顔で俺を見下ろしている。なんなんだろう……
「…………ぁ、の……お、俺……家族とも、一緒に居るの、あんまり好きじゃねぇから……な、鳴雷くんと、まだ親しくねぇからとかっ、そういうこと思ってる訳じゃねぇからっ」
訂正、他人じゃなくても苦痛、らしい。親しくなってもあんまり会ってくれないってことか? フォローのように情報を出してきたが、余計に落ち込むばかりだ。
「ちが……ちがう、鳴雷くんに、会いたくないとかじゃねぇべ……あの…………ぁ、散歩っ、お散歩付き合ってくれるって、言ってたよな……こ、今度っ、一緒に……」
「はい、デートしましょうね」
よかった、俺に一切会いたくないという訳ではないんだな。そりゃそうか、俺が少々強引だったとはいえ交際しているのだから。
「……ごめん。大して顔良くないくせに、ワガママ言って……全然ヤらせないで」
「何言ってるんですか、カサネ先輩は可愛いです!」
「…………そう。ありがとう……えっと、じゃあ、俺、その……あっちに、居るから」
カサネはクッションの影に隠れるように、部屋の隅に腰を下ろし、スマホを弄り始めた。ハルとレイは相変わらず寝ている犬に夢中、ネザメはセイカとの話が盛り上がっている。
(どうしましょ、カサネたん追いかけるのは悪手ですよな)
セイカがネザメと話しているということは、アキは暇なのでは? と彼を探す。黒づくめの彼はすぐに見つかる。予想通り彼は暇そうにしていた。
「アキ……」
「かさねー」
手を上げながら呼ぼうとした瞬間、アキはカサネの方へ駆けた。
「ひっ……!? あ、えっと、鳴雷くんの弟だっけ……鳴雷もヤバいけど、お前もヤバいな。微笑むだけで人生歪ませられるだろ」
「かさね、犬~……ぅー……持つ? するです?」
「…………その場合は、飼う、だな」
「買う? するです?」
「ん……? 飼育の方な。漢字は分かるか?」
「かんじ~……難しいするです。犬、犬です、犬見るするしたいです」
「犬……フランクならそっち。えー、レイちゃんとハルちゃん? だっけな。に随分チヤホヤされてるよ」
アキはカサネが指した方へ向かった。カサネはホッとした様子でまたスマホを弄り始める。アキと話すのはハルやレイほど緊張していないようだった、カタコトなのが大きいのだろうか。
《犬……か? なんか、顔の形違うな》
「あ、アキくんも見に来たの~?」
「ここ座るっすか? 霞染せんぱいちょっと詰めて欲しいっす」
「りょ~」
アキはレイの隣に落ち着いたか。じゃあ俺はどうしようかな。
「みーぃくんっ」
「カミア、カンナも居るな。どうした?」
「隙ありって感じ。お話しよっ」
隙あり? あぁ、俺が話し相手が居なくて暇をしていたのを見抜いたのか。
「もちろんいいぞ。座るか」
「わーい」
クッションを背もたれにして床に腰を下ろし、胡座をかく。カンナとカミアは隣に座るかと思っていたが、カンナは俺の膝にそっと座った。
「……! じゃあ、僕こっち……」
左膝に座ったカンナに対し、カミアは右膝に座った。腰に腕を回してやると二人は素直に俺の腕に体重を預ける。
「えへへ……みぃくんのお膝~、お兄ちゃんよく座ってるの?」
「……た、まに?」
「まぁ、学校じゃ出来ないしな」
「でも毎日みぃくんに会えてるんだよねお兄ちゃん、みぃくんは毎日お兄ちゃんに会えてるし……いいなぁ、羨ましい」
「その分今日たっぷり話そうな」
強く抱き寄せて愛らしく巻いた髪に頬を擦り寄せる。
「うん……でも、何話そうかなぁ」
「なんでもいいぞ、話したいこと話してくれ」
「…………お仕事の愚痴でもいーい?」
「もちろん。それでカミアが少しでも楽になるなら。な、カンナ。お説教はしないでやれよ?」
カンナがたまにカミアに行う説教は、俺には的外れに思える。説教の内容を聞く限り、カンナはアイドルは絶対的な偶像であるべきと考えているようだが、カミアは親しみやすさや顔と同じ可愛らしい性格で売れたアイドルなのだから、カンナのアドバイスや説教はカミアには合っていないと思う。
(まぁわたくしアイドルに関してはド素人ですが)
けれどカミアは自分の魅力を理解していないのか、兄を盲信しているからなのか、カンナのアドバイスを聞こうとしてしまう。だからカンナに話させないのが一番だ。
「……? ぼく、せっきょ……した、こと……な、よ?」
「お兄ちゃんの発言は全て金言! みぃくん、お兄ちゃんに変なこと言わないで!」
「カミア……お前本っ当にブラコンだなぁ」
「みぃくんに言われたくない。ねぇお兄ちゃん」
「うん、みーく……のが、すご、ぃ」
そうか? どう考えてもカミアの方がブラコン度は上だろう。
「ねぇねぇみぃくん、アキくんともお話したいなっ。前会った時全然だったし……みぃくんと一緒で、あの子すっごくカッコイイし!」
「あぁ、いいぞ。アキ~!」
アキを呼ぶと犬を眺めていた彼はすぐに立ち上がり、俺の方を見ると慌てた様子でセイカの元へ向かった。翻訳が必要だと思ったのか? いや、カサネの方にも行ったな。
「……? みぃくん、アキくん何してるの?」
「さ、さぁ」
アキはセイカとカサネを小脇に抱え、ドヤ顔で俺を見下ろしている。なんなんだろう……
0
お気に入りに追加
1,213
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる
海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?
犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~
雷音
BL
全12話 本編完結済み
雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ
一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。
※闇堕ち、♂♂寄りとなります※
単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。
(登場人物は全員成人済みです)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ポチは今日から社長秘書です
ムーン
BL
御曹司に性的なペットとして飼われポチと名付けられた男は、その御曹司が会社を継ぐと同時に社長秘書の役目を任された。
十代でペットになった彼には学歴も知識も経験も何一つとしてない。彼は何年も犬として過ごしており、人間の社会生活から切り離されていた。
これはそんなポチという名の男が凄腕社長秘書になるまでの物語──などではなく、性的にもてあそばれる場所が豪邸からオフィスへと変わったペットの日常を綴ったものである。
サディスト若社長の椅子となりマットとなり昼夜を問わず性的なご奉仕!
仕事の合間を縫って一途な先代社長との甘い恋人生活を堪能!
先々代様からの無茶振り、知り合いからの恋愛相談、従弟の問題もサラッと解決!
社長のスケジュール・体調・機嫌・性欲などの管理、全てポチのお仕事です!
※「俺の名前は今日からポチです」の続編ですが、前作を知らなくても楽しめる作りになっています。
※前作にはほぼ皆無のオカルト要素が加わっています、ホラー演出はありませんのでご安心ください。
※主人公は社長に対しては受け、先代社長に対しては攻めになります。
※一話目だけ三人称、それ以降は主人公の一人称となります。
※ぷろろーぐの後は過去回想が始まり、ゆっくりとぷろろーぐの時間に戻っていきます。
※タイトルがひらがな以外の話は主人公以外のキャラの視点です。
※拙作「俺の名前は今日からポチです」「ストーカー気質な青年の恋は実るのか」「とある大学生の遅過ぎた初恋」「いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました」の世界の未来となっており、その作品のキャラも一部出ますが、もちろんこれ単体でお楽しみいただけます。
含まれる要素
※主人公以外のカプ描写
※攻めの女装、コスプレ。
※義弟、義父との円満二股。3Pも稀に。
※鞭、蝋燭、尿道ブジー、その他諸々の玩具を使ったSMプレイ。
※野外、人前、見せつけ諸々の恥辱プレイ。
※暴力的なプレイを口でしか嫌がらない真性ドM。
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる