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両手に双花 (水月+カンナ・カミア・アキ・カサネ)

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カサネは大勢の集まりが苦手。一対一ならいいって訳じゃない、少しマシなだけ。付き合うことを許容してくれた俺でもそれは例外じゃない。他人と同じ空間に居る、それが苦痛。カサネにとっての苦痛。

「…………ぁ、の……お、俺……家族とも、一緒に居るの、あんまり好きじゃねぇから……な、鳴雷くんと、まだ親しくねぇからとかっ、そういうこと思ってる訳じゃねぇからっ」

訂正、他人じゃなくても苦痛、らしい。親しくなってもあんまり会ってくれないってことか? フォローのように情報を出してきたが、余計に落ち込むばかりだ。

「ちが……ちがう、鳴雷くんに、会いたくないとかじゃねぇべ……あの…………ぁ、散歩っ、お散歩付き合ってくれるって、言ってたよな……こ、今度っ、一緒に……」

「はい、デートしましょうね」

よかった、俺に一切会いたくないという訳ではないんだな。そりゃそうか、俺が少々強引だったとはいえ交際しているのだから。

「……ごめん。大して顔良くないくせに、ワガママ言って……全然ヤらせないで」

「何言ってるんですか、カサネ先輩は可愛いです!」

「…………そう。ありがとう……えっと、じゃあ、俺、その……あっちに、居るから」

カサネはクッションの影に隠れるように、部屋の隅に腰を下ろし、スマホを弄り始めた。ハルとレイは相変わらず寝ている犬に夢中、ネザメはセイカとの話が盛り上がっている。

(どうしましょ、カサネたん追いかけるのは悪手ですよな)

セイカがネザメと話しているということは、アキは暇なのでは? と彼を探す。黒づくめの彼はすぐに見つかる。予想通り彼は暇そうにしていた。

「アキ……」

「かさねー」

手を上げながら呼ぼうとした瞬間、アキはカサネの方へ駆けた。

「ひっ……!? あ、えっと、鳴雷くんの弟だっけ……鳴雷もヤバいけど、お前もヤバいな。微笑むだけで人生歪ませられるだろ」

「かさね、犬~……ぅー……持つ? するです?」

「…………その場合は、飼う、だな」

「買う? するです?」

「ん……? 飼育の方な。漢字は分かるか?」

「かんじ~……難しいするです。犬、犬です、犬見るするしたいです」

「犬……フランクならそっち。えー、レイちゃんとハルちゃん? だっけな。に随分チヤホヤされてるよ」

アキはカサネが指した方へ向かった。カサネはホッとした様子でまたスマホを弄り始める。アキと話すのはハルやレイほど緊張していないようだった、カタコトなのが大きいのだろうか。

《犬……か? なんか、顔の形違うな》

「あ、アキくんも見に来たの~?」

「ここ座るっすか? 霞染せんぱいちょっと詰めて欲しいっす」

「りょ~」

アキはレイの隣に落ち着いたか。じゃあ俺はどうしようかな。

「みーぃくんっ」

「カミア、カンナも居るな。どうした?」

「隙ありって感じ。お話しよっ」

隙あり? あぁ、俺が話し相手が居なくて暇をしていたのを見抜いたのか。

「もちろんいいぞ。座るか」

「わーい」

クッションを背もたれにして床に腰を下ろし、胡座をかく。カンナとカミアは隣に座るかと思っていたが、カンナは俺の膝にそっと座った。

「……! じゃあ、僕こっち……」

左膝に座ったカンナに対し、カミアは右膝に座った。腰に腕を回してやると二人は素直に俺の腕に体重を預ける。

「えへへ……みぃくんのお膝~、お兄ちゃんよく座ってるの?」

「……た、まに?」

「まぁ、学校じゃ出来ないしな」

「でも毎日みぃくんに会えてるんだよねお兄ちゃん、みぃくんは毎日お兄ちゃんに会えてるし……いいなぁ、羨ましい」

「その分今日たっぷり話そうな」

強く抱き寄せて愛らしく巻いた髪に頬を擦り寄せる。

「うん……でも、何話そうかなぁ」

「なんでもいいぞ、話したいこと話してくれ」

「…………お仕事の愚痴でもいーい?」

「もちろん。それでカミアが少しでも楽になるなら。な、カンナ。お説教はしないでやれよ?」

カンナがたまにカミアに行う説教は、俺には的外れに思える。説教の内容を聞く限り、カンナはアイドルは絶対的な偶像であるべきと考えているようだが、カミアは親しみやすさや顔と同じ可愛らしい性格で売れたアイドルなのだから、カンナのアドバイスや説教はカミアには合っていないと思う。

(まぁわたくしアイドルに関してはド素人ですが)

けれどカミアは自分の魅力を理解していないのか、兄を盲信しているからなのか、カンナのアドバイスを聞こうとしてしまう。だからカンナに話させないのが一番だ。

「……? ぼく、せっきょ……した、こと……な、よ?」

「お兄ちゃんの発言は全て金言! みぃくん、お兄ちゃんに変なこと言わないで!」

「カミア……お前本っ当にブラコンだなぁ」

「みぃくんに言われたくない。ねぇお兄ちゃん」

「うん、みーく……のが、すご、ぃ」

そうか? どう考えてもカミアの方がブラコン度は上だろう。

「ねぇねぇみぃくん、アキくんともお話したいなっ。前会った時全然だったし……みぃくんと一緒で、あの子すっごくカッコイイし!」

「あぁ、いいぞ。アキ~!」

アキを呼ぶと犬を眺めていた彼はすぐに立ち上がり、俺の方を見ると慌てた様子でセイカの元へ向かった。翻訳が必要だと思ったのか? いや、カサネの方にも行ったな。

「……? みぃくん、アキくん何してるの?」

「さ、さぁ」

アキはセイカとカサネを小脇に抱え、ドヤ顔で俺を見下ろしている。なんなんだろう……
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