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お揃いのネックレス (水月+ネザメ)

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俺の誕生日の際、ネザメはネックレスを贈ってくれた。シンプルなデザインで、ネザメの名前が彫られた物だ。だから今度は俺がネザメに俺の名前が彫られたネックレスを贈ってみた、という訳だ。

「ふふ……」

俺の意図に気付いているのかいないのか、ネザメは嬉しそうに笑ってネックレスを眺めている。ネックレスの飾りをクルクルと回している姿は何とも幼く愛らしい。

「ありがとうねぇ、水月くん。順番を付けるようなことは言いたくないのだけれど、やっぱり君からの贈り物が一番嬉しいよ」

魅力的なプレゼントばかりだったから不安だったけれど、ネザメはとても喜んでくれた。俺は俺のセンスを信じてよかったんだ、いや、ネザメからのプレゼントをそのまま真似たのだから俺のセンスじゃなかったな。

「これ、僕があげた物によく似てるよね。ふふっ……お揃いになる訳だ」

「これのことですか?」

俺は服の中に入れていたネックレスを引っ張り出し、ネザメに見せた。

「あ……! 着けてくれていたのかい?」

「もちろん、ネザメさんの誕生日ですから。毎日使いたいんですけど汚れたり傷付いたりしたら嫌なので、特別な日にだけ着けるようにしてるんです」

「隠したりせず見せてくれればよかったのに」

「ふふ、ごめんなさい」

「もう……ずるいなぁ。ねぇ、着けてくれないかい? お揃いのネックレス」

「はい、もちろん」

俺の返事を聞いたネザメは俺にネックレスを渡し、ソファの上で腰ごと俺に背を向けた。

「あ、後ろ髪かき上げてもらっていいですか?」

このままでは後ろ髪を巻き込みそうだったのでそう頼んだ。不用意な行為だった、無防備なうなじを目の前に差し出され、強く興奮を煽られた。

「……っ、うぉお……」

「水月くん?」

「いっ、いえ、着けますね~……」

柔らかそうな亜麻色の髪、その生え際が俺を狂わせる。髪と肌の境目にある、髪と言うには細過ぎる、産毛と言うには太く長い、やわやわとした頼りない毛達……舐めしゃぶりたい。

「くぅう……!」

最高の光景を見る喜びと、それを前に耐える苦痛に呻く。そっとネザメの首にネックレスを巻く。興奮のせいか上手く留め具を扱えない。

「水月くん、以前話したことを覚えているかな。ネックレスは支配、被支配を表すアクセサリーだと……ただファッションを楽しみたい人には鬱陶しいだけの話かもしれないね。でも、水月くん、僕はそんな話をしっかり噛み締めた上で僕にネックレスを着けて欲しいな」

互いに互いの名前が刻まれたネックレスを贈り合い、付け合う。恋人同士にしか許されない行為だ。それだけでも緊張するのに、そんなふうに言われては手が震える。

(支配、被支配ってネザメちゃまは今どっち側のつもりなんですかな!?)

俺の誕生日にネックレスを贈ってきた時は、間違いなく俺を支配したいと考えていただろう。けれど今はどうだ? 気変わりしたのではないか? うなじを見せつけて俺にネックレスを着けさせて、そんなのもう俺に支配して欲しいってことでは!?

(震えるな手! ここで震えるのはダサいでそ!)

俺は美少年の尻に敷かれるのも、美少年を膝に乗せて愛でてやるのも、どちらも好きだ。しかしネザメに対してはあまり優位を譲りたくない、彼は俺を抱こうとしかねない。

「…………っ、ふぅ……着けました、よっ」

「ありがとう水月くん」

何とか着け終えた。ネザメが振り返る前に額の汗を拭い、満足そうな顔のネザメに微笑みかけた。

「水月くん……」

「よくお似合いです、ネザメさん」

「……ありがとう。とても嬉しいよ、何度でも言うけれど……僕、本当に本当に、すごく……嬉しいんだ」

いつも詩的な言葉で耽美な態度を取っているネザメが、単純な言葉で喜びを表現しているのにはクるものがある。

「ネザメさん……!」

ときめきに任せてネザメの肩を抱き、そっと頬を撫で、顎を持ち上げる。

「……!」

ネザメはポッと頬を赤らめ、目を閉じた。何度もしているはずのキスに酷く緊張しながら、そっと唇を重ねた。

「………………水月くん」

亜麻色の長い睫毛が特徴的な瞼が震えながらゆっくりと持ち上がり、潤んだ瞳が現れる。

「水月、くん…………あのね、僕……」

「……はい」

「君に、その、だっ……抱いて、欲しいんだ。今日は……みんなに集まってもらっているし、準備も出来ていない。今日じゃなくて……今度、また、機会を作るから、その時に」

「……! はい! ようやくその気になってくれたんですね……嬉しいです! 絶対絶対損はさせません!」

「そ、そうかい……楽しみにしている、というのもはしたないね。うん、でも……楽しみにしているよ、水月くん」

誕生日記念の初セックス、なんて結構ロマンチックだと思うのだけれど、ネザメの言うことももっともだ。みんな集まっている、乱交をする訳でもないのならみんなで過ごすべきだろう。
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