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推しとツーショット (水月+カンナ・カミア・ハル)
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これ以上はハルが推しの過剰摂取で壊れてしまう。そう判断した俺は席を立ち、双子仲良く座っているカミアの元へ向かった。
「カミア、ご機嫌だな」
「うんっ、だってお兄ちゃんと一緒だし、ハルくんの反応も一々嬉しくて! えへへ……でもねみぃくん、なんかまだみんなにちょっと避けられてる気がして……どうすればいいかなぁ?」
「そうなのか?」
カンナにばっかりベタベタしてるだけじゃないのか?
「やっぱりアイドルだからかなぁ……僕ここでは普通に、みんなと同じみぃくんの彼氏として、他の子と仲良くなりたいんだぁ。友達欲しいんだよ、僕」
ならカンナから離れて他の子に話しかけてみればいいのに。
「でもハルくんにアイドルとして喜ばれるのも嬉しくって。僕ってばダメだなぁ、一貫性がなくってさ」
「いいんじゃないか、ずっとアイドルやってきたんだから、アイドル根性染み付いてるのもカミアの個性だよ」
「……かみ、あ……アイドル、こんじょ……ない」
少し落ち込んだ様子のカミアを励ましていたら、突然カンナが口を挟んできた。
「とー、く……ぷら、べーと……話し、すぎ……アイドル、なら……イメージ、固めて……秘密、する……とこ、ちゃんと……ひみ、しない……と、げんめ……る、ファン、増え、ちゃ……」
「幻滅するヤツなんかさせときゃいいんだよ」
「……みぃくん、よけ……な、こと、言わな……で。配信、とか……愚策、ちゅ、の……愚策。あり、えな……距離、近……感じ、ちゃ……アイドル、の、特別感……うすれ、る」
「身近なアイドルの方がウケがいいんじゃないのか?」
「う、うん……事務所の方針はそうだよ。でもお兄ちゃんの理想のアイドルは絶対的な偶像で、お兄ちゃんの理想ならそれは当然社長やママより絶対絶対正しいから、お兄ちゃんのアドバイスは聞いてたいかな。だからみぃくん黙っててくれる? ごめんね。みぃくんハルくんに誘われて初めてライブ来たレベルの素人だから……みぃくんの意見は正直あてにならないって言うか」
酷い言われようだな。
「アイドルに興味のなかったド素人を惹き付けてこそアイドルなんじゃないのか?」
「ぅ……そ、それはそうかも? でもみぃくんってさ、なんか、棲み分け大事にするタイプじゃん? ファンは選別しちゃえって感じ……」
「みぃ、く……せー、へき、尖って……る、から」
「尖ってないよまんまるだよ!」
「尖って……人、さんこ……しな、ほーが、い……」
「尖ってないってば!」
「やっぱりそうだよね、お兄ちゃん」
「俺ミュートされてる!?」
こうやってカンナとしか話さないからカミアに友達が出来ないのでは?
「カ、カミアぁ……」
ヘロヘロとした情けない声は、俺のものではない。
「あ、ハルくん。ごめんね、みぃくんが来たから話中断しちゃってた」
「写真……ツーショ……」
「うんうんもちろん。どこで撮る? あ、みぃくんカメラお願~い。そことかどう? 紅葉さんのお家すごいから、背景に困んないね」
「ぅん……」
ハルのこんな大人しい姿、見たことない。よろよろとカミアに着いて行ったハルは、目の焦点が合わないままにカミアの隣に立った。
「ここ並んで、んー、ポーズどうする? 二人でハート作る」
「ひゃっ、と……」
「ハート。手を、こうしてぇ……」
「て、てっ……」
「こう。親指はピンってして、他の指丸くするの」
カミアに言われるがままにハルはハート型の片割れを手で作り、カミアと指先が触れ合った瞬間小型犬の鳴き声のような悲鳴を上げた。
「ひゃんっ!? ごめんなさい触っちゃったぁ!」
「えー? なんで謝るの。ほらほら、もっと近付いて」
カミアは右腕をハルの肩に回し、左手でハートの片割れを作った。ハルはぷるぷる震えながらも右手をハートの片割れの形にしようとする。
「目線はみぃくんが持ってるスマホだよ? 僕見てどうするのさ」
「はっ、ひゃっ? ごめんなひゃいっ」
「みぃくんあっちあっち。ふふ、ハルくん面白ーい」
「えっ? い、いえ、ふへへへ……」
いい笑顔だ。俺は思わずシャッターを切った。連続で何枚か撮っておいた。
「撮れたぞ」
「撮れた? ありがとみぃくん。撮れたってハルくん、見に行こっ」
「ひゃわっ……!」
カミアに手を引かれ、ハルは乙女のように肩を縮める。
「見せて。わ、よく撮れてる。流石みぃくん」
「流石か?」
「うん、カメラってね、撮る人が被写体の魅力分かってないといいの撮れないんだ。みぃくん彼氏大好きだから、ハルくんすっごく綺麗に撮れてる」
「……カミアのことも大好きだぞ?」
「んー、だって、僕もっといい写りすることあるもん」
「プロと一緒にするなよなぁ……」
「あははっ、うそうそ。僕もよく撮れてる。みぃくんの愛が伝わってくるなー、とか、言ってみたり……へ、へへっ」
アイドルらしく自信に溢れた言動をしてみたかと思えば、途中で照れて素を出して、笑って誤魔化そうとする。そんな仕草はカミアに言わせれば一貫性がない短所だろうとも、俺にとってはただひたすらに可愛い長所だった。
「カミア、ご機嫌だな」
「うんっ、だってお兄ちゃんと一緒だし、ハルくんの反応も一々嬉しくて! えへへ……でもねみぃくん、なんかまだみんなにちょっと避けられてる気がして……どうすればいいかなぁ?」
「そうなのか?」
カンナにばっかりベタベタしてるだけじゃないのか?
「やっぱりアイドルだからかなぁ……僕ここでは普通に、みんなと同じみぃくんの彼氏として、他の子と仲良くなりたいんだぁ。友達欲しいんだよ、僕」
ならカンナから離れて他の子に話しかけてみればいいのに。
「でもハルくんにアイドルとして喜ばれるのも嬉しくって。僕ってばダメだなぁ、一貫性がなくってさ」
「いいんじゃないか、ずっとアイドルやってきたんだから、アイドル根性染み付いてるのもカミアの個性だよ」
「……かみ、あ……アイドル、こんじょ……ない」
少し落ち込んだ様子のカミアを励ましていたら、突然カンナが口を挟んできた。
「とー、く……ぷら、べーと……話し、すぎ……アイドル、なら……イメージ、固めて……秘密、する……とこ、ちゃんと……ひみ、しない……と、げんめ……る、ファン、増え、ちゃ……」
「幻滅するヤツなんかさせときゃいいんだよ」
「……みぃくん、よけ……な、こと、言わな……で。配信、とか……愚策、ちゅ、の……愚策。あり、えな……距離、近……感じ、ちゃ……アイドル、の、特別感……うすれ、る」
「身近なアイドルの方がウケがいいんじゃないのか?」
「う、うん……事務所の方針はそうだよ。でもお兄ちゃんの理想のアイドルは絶対的な偶像で、お兄ちゃんの理想ならそれは当然社長やママより絶対絶対正しいから、お兄ちゃんのアドバイスは聞いてたいかな。だからみぃくん黙っててくれる? ごめんね。みぃくんハルくんに誘われて初めてライブ来たレベルの素人だから……みぃくんの意見は正直あてにならないって言うか」
酷い言われようだな。
「アイドルに興味のなかったド素人を惹き付けてこそアイドルなんじゃないのか?」
「ぅ……そ、それはそうかも? でもみぃくんってさ、なんか、棲み分け大事にするタイプじゃん? ファンは選別しちゃえって感じ……」
「みぃ、く……せー、へき、尖って……る、から」
「尖ってないよまんまるだよ!」
「尖って……人、さんこ……しな、ほーが、い……」
「尖ってないってば!」
「やっぱりそうだよね、お兄ちゃん」
「俺ミュートされてる!?」
こうやってカンナとしか話さないからカミアに友達が出来ないのでは?
「カ、カミアぁ……」
ヘロヘロとした情けない声は、俺のものではない。
「あ、ハルくん。ごめんね、みぃくんが来たから話中断しちゃってた」
「写真……ツーショ……」
「うんうんもちろん。どこで撮る? あ、みぃくんカメラお願~い。そことかどう? 紅葉さんのお家すごいから、背景に困んないね」
「ぅん……」
ハルのこんな大人しい姿、見たことない。よろよろとカミアに着いて行ったハルは、目の焦点が合わないままにカミアの隣に立った。
「ここ並んで、んー、ポーズどうする? 二人でハート作る」
「ひゃっ、と……」
「ハート。手を、こうしてぇ……」
「て、てっ……」
「こう。親指はピンってして、他の指丸くするの」
カミアに言われるがままにハルはハート型の片割れを手で作り、カミアと指先が触れ合った瞬間小型犬の鳴き声のような悲鳴を上げた。
「ひゃんっ!? ごめんなさい触っちゃったぁ!」
「えー? なんで謝るの。ほらほら、もっと近付いて」
カミアは右腕をハルの肩に回し、左手でハートの片割れを作った。ハルはぷるぷる震えながらも右手をハートの片割れの形にしようとする。
「目線はみぃくんが持ってるスマホだよ? 僕見てどうするのさ」
「はっ、ひゃっ? ごめんなひゃいっ」
「みぃくんあっちあっち。ふふ、ハルくん面白ーい」
「えっ? い、いえ、ふへへへ……」
いい笑顔だ。俺は思わずシャッターを切った。連続で何枚か撮っておいた。
「撮れたぞ」
「撮れた? ありがとみぃくん。撮れたってハルくん、見に行こっ」
「ひゃわっ……!」
カミアに手を引かれ、ハルは乙女のように肩を縮める。
「見せて。わ、よく撮れてる。流石みぃくん」
「流石か?」
「うん、カメラってね、撮る人が被写体の魅力分かってないといいの撮れないんだ。みぃくん彼氏大好きだから、ハルくんすっごく綺麗に撮れてる」
「……カミアのことも大好きだぞ?」
「んー、だって、僕もっといい写りすることあるもん」
「プロと一緒にするなよなぁ……」
「あははっ、うそうそ。僕もよく撮れてる。みぃくんの愛が伝わってくるなー、とか、言ってみたり……へ、へへっ」
アイドルらしく自信に溢れた言動をしてみたかと思えば、途中で照れて素を出して、笑って誤魔化そうとする。そんな仕草はカミアに言わせれば一貫性がない短所だろうとも、俺にとってはただひたすらに可愛い長所だった。
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