冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
上 下
1,552 / 2,045

機嫌が全て (水月+ハル・ヒト・フタ・サン)

しおりを挟む
カサネが打ち解けられそうに思えてきたので席を立った。次は寿司でも頼んでみようかと見回した俺の目は、部屋の隅に居るハルとサンを捉えた。

「ハル、サン、何してるの?」

「水月? ハルちゃんに三つ編みしてもらってるんだ」

「やほやほみっつ~ん。ご飯いっぱい並んでるから、髪の毛まとめといた方がいいかも~って思ったんだ~」

「へぇ……ハルは気が利くなぁ」

太く長い三つ編みが作られていく様を眺め、俺は「しめ縄みたい」という感想を飲み込んでハルを褒めた。

「えへへ……はい、完成!」

「おー、可愛い。似合ってるよサン。しかし……バランスいいし、毛はみ出してないし、綺麗な三つ編みだなぁ。ハルはホント器用だよ」

「えー、みっつんのが器用じゃ~ん。あの簪とかぁ、着けんのマジ楽しみ!」

「だって俺三つ編みほぼ出来ないぞ?」

糸を編むことは出来るけれど、人の髪を編むのは苦手だ。なにせ経験が少ない。

「そうなの~? あ、ねぇねぇみっつん、一つ結びと二つ結びどっちがいいと思う? 今は一つ結びなんだけど」

「今は一つの方がいいんじゃないか? サンの三つ編み、太くて長くて凶器だし。髪の毛入って汚いどころじゃなくて、周りの人も物も全て薙ぎ倒すようになるよ」

「あははっ、何それ言い過ぎ~! ねぇサンちゃん」

今のは冗談だが、サンが髪を凶器として使う姿を俺は見た。鞭を振るうようにヒトの顔面を殴打した姿を。

「周り全部薙ぎ倒せたら歩きやすそうだね」

「えー、もうサンちゃん怖いよぉ~」

「ふふ、三つ編みありがとねハルちゃん。一緒に回ろ、ボクお肉食べたいな~」

「お肉? えーっと、あっち! 腕持つ? 肩持つ?」

「ハルちゃんちっちゃいから肩かな~」

「え~、俺ちっちゃくないってぇ~。サンちゃんがおっきいだけ~」

ノリが近いのか二人は仲がいい。二人とも髪が長いから、後ろ姿だけ見れば女性二人組みたいに……見えないな。サンのガタイが良過ぎる。

「肩幅えぐ……」

「みっつき~」

「ぅおっ……!」

背後から巨体に飛びつかれ、よろける。

「フタっ! すいません鳴雷さんっ、大丈夫ですか? 手を振りほどかれてしまって……! フタ! てめぇいつになったら自分のタッパ理解すんだ! あぁ!?」

俺に抱きついたフタはヒトによって引き剥がされた。

「ヒトさん、まぁまぁ……大丈夫ですから。俺も結構大きい方ですし、鍛えてるので転んだりしません」

「鳴雷さん……甘やかさないでください」

「だって可愛いんですもん。なんかこう……久しぶりに育ての親を見た、人間に育てられた保護ライオンみたいな感じで」

「……ちょっとよく分かりません」

懐いているライオンやトラが飼育員か何かに抱きつく動画、見たことがないのか? 割とよく見る動物動画ジャンルだと思うのだが。

「海外の動画で……見たことないです? じゃあ、いいですけど……とにかく可愛いので、大丈夫です」

「…………そうですか。余計なお世話して申し訳ありませんね」

「ヒトさん? 拗ねないでくださいよ、心配してくれたのはすごく嬉しかったんですから」

「……鳴雷さん」

「はい?」

肩にズシッと重さが戻ってくる。ヒトがフタから手を離したから俺の背後に戻ってきたようだ、うりうりと俺の後頭部に額を擦り付けている。そんなフタに俺からも体重をかけ、信頼や愛情をアピールしてみる。

「三十間近の男が高校生に入れ込んでいるのは、無様だと思いますか?」

「え……急に何言うんですか」

「…………さっき、そんな話してたでしょう」

「俺はしてません、思ってません」

「……そうですか」

「入れ込んでくれてるんですね、俺に。嬉しいなぁ……両想いなの確認する度に幸せな気持ちになるんです。気にしなくていいんですよ歳なんか、俺はヒトさんが好きで……ヒトさんも俺のこと好きなんですよね? だったらそれでいいじゃないですか、それともヒトさんは他人の目がそんなに気になりますか?」

「…………あなたほど強くはないので」

「そう、ですか……それじゃあ、えーと……もう何年か待ってくれたら、俺が大人になったら、ちょっとした歳の差カップルってだけになりますよね? 俺が育つの待ってくれますか?」

「……ふふ」

拗ねた表情だったのに、突然穏やかな笑顔に変わった。訳が分からなくて、言葉が思い付かなくて、ただヒトを見つめる。

「あなたが私との未来をちゃんと考えてくれている、今はそれで十分です。歳の差なんて、どうしようもないことでグダグダ言ってごめんなさい……フタ、来なさい」

歳の話で不機嫌になったけれど、機嫌が直ったから一時的にどうでもよくなったって感じかな。ヒトの悩みには説得よりおだてる方が効果的、と。

「え~……はぁーい」

上機嫌な猫のように俺に擦り寄っていたフタは不服そうな声を上げつつも従順にヒトに着いていく。

「みつきぃ、またねぇ~」

両手でヒトの左腕を掴み、背を曲げてヒトの顔を覗き込んで何やら話しながら歩いていく。兄弟らしい仕草に自然と笑みが零れた。
しおりを挟む
感想 461

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...