冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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機嫌が全て (水月+ハル・ヒト・フタ・サン)

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カサネが打ち解けられそうに思えてきたので席を立った。次は寿司でも頼んでみようかと見回した俺の目は、部屋の隅に居るハルとサンを捉えた。

「ハル、サン、何してるの?」

「水月? ハルちゃんに三つ編みしてもらってるんだ」

「やほやほみっつ~ん。ご飯いっぱい並んでるから、髪の毛まとめといた方がいいかも~って思ったんだ~」

「へぇ……ハルは気が利くなぁ」

太く長い三つ編みが作られていく様を眺め、俺は「しめ縄みたい」という感想を飲み込んでハルを褒めた。

「えへへ……はい、完成!」

「おー、可愛い。似合ってるよサン。しかし……バランスいいし、毛はみ出してないし、綺麗な三つ編みだなぁ。ハルはホント器用だよ」

「えー、みっつんのが器用じゃ~ん。あの簪とかぁ、着けんのマジ楽しみ!」

「だって俺三つ編みほぼ出来ないぞ?」

糸を編むことは出来るけれど、人の髪を編むのは苦手だ。なにせ経験が少ない。

「そうなの~? あ、ねぇねぇみっつん、一つ結びと二つ結びどっちがいいと思う? 今は一つ結びなんだけど」

「今は一つの方がいいんじゃないか? サンの三つ編み、太くて長くて凶器だし。髪の毛入って汚いどころじゃなくて、周りの人も物も全て薙ぎ倒すようになるよ」

「あははっ、何それ言い過ぎ~! ねぇサンちゃん」

今のは冗談だが、サンが髪を凶器として使う姿を俺は見た。鞭を振るうようにヒトの顔面を殴打した姿を。

「周り全部薙ぎ倒せたら歩きやすそうだね」

「えー、もうサンちゃん怖いよぉ~」

「ふふ、三つ編みありがとねハルちゃん。一緒に回ろ、ボクお肉食べたいな~」

「お肉? えーっと、あっち! 腕持つ? 肩持つ?」

「ハルちゃんちっちゃいから肩かな~」

「え~、俺ちっちゃくないってぇ~。サンちゃんがおっきいだけ~」

ノリが近いのか二人は仲がいい。二人とも髪が長いから、後ろ姿だけ見れば女性二人組みたいに……見えないな。サンのガタイが良過ぎる。

「肩幅えぐ……」

「みっつき~」

「ぅおっ……!」

背後から巨体に飛びつかれ、よろける。

「フタっ! すいません鳴雷さんっ、大丈夫ですか? 手を振りほどかれてしまって……! フタ! てめぇいつになったら自分のタッパ理解すんだ! あぁ!?」

俺に抱きついたフタはヒトによって引き剥がされた。

「ヒトさん、まぁまぁ……大丈夫ですから。俺も結構大きい方ですし、鍛えてるので転んだりしません」

「鳴雷さん……甘やかさないでください」

「だって可愛いんですもん。なんかこう……久しぶりに育ての親を見た、人間に育てられた保護ライオンみたいな感じで」

「……ちょっとよく分かりません」

懐いているライオンやトラが飼育員か何かに抱きつく動画、見たことがないのか? 割とよく見る動物動画ジャンルだと思うのだが。

「海外の動画で……見たことないです? じゃあ、いいですけど……とにかく可愛いので、大丈夫です」

「…………そうですか。余計なお世話して申し訳ありませんね」

「ヒトさん? 拗ねないでくださいよ、心配してくれたのはすごく嬉しかったんですから」

「……鳴雷さん」

「はい?」

肩にズシッと重さが戻ってくる。ヒトがフタから手を離したから俺の背後に戻ってきたようだ、うりうりと俺の後頭部に額を擦り付けている。そんなフタに俺からも体重をかけ、信頼や愛情をアピールしてみる。

「三十間近の男が高校生に入れ込んでいるのは、無様だと思いますか?」

「え……急に何言うんですか」

「…………さっき、そんな話してたでしょう」

「俺はしてません、思ってません」

「……そうですか」

「入れ込んでくれてるんですね、俺に。嬉しいなぁ……両想いなの確認する度に幸せな気持ちになるんです。気にしなくていいんですよ歳なんか、俺はヒトさんが好きで……ヒトさんも俺のこと好きなんですよね? だったらそれでいいじゃないですか、それともヒトさんは他人の目がそんなに気になりますか?」

「…………あなたほど強くはないので」

「そう、ですか……それじゃあ、えーと……もう何年か待ってくれたら、俺が大人になったら、ちょっとした歳の差カップルってだけになりますよね? 俺が育つの待ってくれますか?」

「……ふふ」

拗ねた表情だったのに、突然穏やかな笑顔に変わった。訳が分からなくて、言葉が思い付かなくて、ただヒトを見つめる。

「あなたが私との未来をちゃんと考えてくれている、今はそれで十分です。歳の差なんて、どうしようもないことでグダグダ言ってごめんなさい……フタ、来なさい」

歳の話で不機嫌になったけれど、機嫌が直ったから一時的にどうでもよくなったって感じかな。ヒトの悩みには説得よりおだてる方が効果的、と。

「え~……はぁーい」

上機嫌な猫のように俺に擦り寄っていたフタは不服そうな声を上げつつも従順にヒトに着いていく。

「みつきぃ、またねぇ~」

両手でヒトの左腕を掴み、背を曲げてヒトの顔を覗き込んで何やら話しながら歩いていく。兄弟らしい仕草に自然と笑みが零れた。
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